当ブログは広告を含みます

ソーシャルレンディング匿名化解除の詳細内容と問題点や各業者の対応

ソーシャルレンディングで長らく問題とされてきた借り手企業の匿名化問題。

2019年3月、金融庁がついに匿名化の解除を発表しました。

でも、

左野くん
左野くん

匿名化解除でどうなるのか、よく分かってないんだよね?

という方も多いのでは?

そこでこの記事では、

  • 匿名化解除までの経緯
  • 匿名化解除の内容
  • ソーシャルレンディング業者の対応
  • 匿名化解除の問題点とデメリット
  • 投資家が取るべき対策

を説明します。

なお、匿名化解除に至る経緯をご存知の方は、第2章から読んでください。

タロウさん
タロウさん

この記事を読めば、匿名化解除を一通り理解できます!

この記事の著者
投資家・ブロガー
タロウ

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファディング専門の投資家です。
2018年にソシャレン・クラファン投資を始め、これまで400件を超える案件に1億9千万円以上を投資し損失ゼロ。
安全性を最重視した投資情報を発信しています。

ソーシャルレンディング匿名化解除への経緯

まず、ソーシャルレンディングで匿名化が始まってから解除に至るまでの経緯を、超ザックリと説明します。

匿名化に関する今までの経緯を知らない方だけ読んでください。

タロウさん
タロウさん

大切な部分だけ大まかに説明するよ!

 

大まかな経緯

  1. ソーシャルレンディングが貸金業法に違反する恐れがあった
  2. それを回避する方策の一つとして、借り手企業の匿名化が始まった
  3. しかし、匿名化が一部ソシャレン業者の不正の温床となった
  4. 実際に投資家の被害が多発した
  5. 規制改革論議から2018年6月に匿名化解除の方針が決まった
  6. 2019年3月に金融庁が匿名化を解除した

 

金融庁が方針を転換した

貸金業法違反を回避するために、金融庁が匿名化を実施しました。

ところが匿名化が原因で、ソーシャルレンディングで投資家の被害が多発しました。

それで、金融庁が従来の匿名化から情報開示へと方針を転換した、ということです。

タロウさん
タロウさん

実状に合わない方針を、金融庁が180度転換しました!

ソーシャルレンディング匿名化解除の詳細内容

さて、ここからが本題です。

まず、ソーシャルレンディングの匿名化解除で何がどう変わるのか?

金融庁の発表内容を詳細に説明します。

かなり長いですので、一通り分かっているという方は飛ばしながら読んでください。

タロウさん
タロウさん

匿名化+複数化が何に変わったかを説明します!

 

金融庁の回答内容

法令適用事前確認手続き(ノーアクションレター制度)に基づき、ソーシャルレンディング事業者が2019年3月11日に、金融庁に照会書(PDF)を提出しました。

これに対する回答という形で、金融庁が3月18日に回答書(PDF)を発表しました。

それによると、

  1. ソシャレン業者と投資家との間、及び
  2. ソシャレン業者と借り手企業との間で
  3. 必要な条件が満たされる場合
  4. 匿名化をせずにソシャレンをやってもOK
  5. つまり、情報を開示してソシャレンをやってもOK

ということです。

右田さん
右田さん

どんな条件が必要なの?

それでは、必要な条件をさっそく見ていきます。

 

ソシャレン業者と投資家との間

ソシャレン業者と投資家との間で、以下の条件が満たされる必要があります。

  1. ソシャレン業者と投資家が匿名組合契約を結ぶ
    • 投資家が貸付業務を執行できず、貸付け行為についての権利と義務を有しない形にする
  2. 匿名組合約款に以下を明記する
    • 投資家は貸付業務を執行できず、貸付け行為についての権利と義務を有しない
    • 投資家が貸付けに関して、借り手と接触することを禁ずる
    • 接触した場合、投資家にペナルティを課す
  3. ソシャレン業者は投資家に以下を説明する
    • 借り手も貸付けに関して投資家と接触することを禁じられている

 

ソシャレン業者と借り手企業との間

ソシャレン業者と借り手企業との間で、以下の条件が満たされる必要があります。

  1. 貸付約款に以下を明記する
    • 貸付金利などの貸付条件を(投資家ではなく)ソシャレン業者が設定する
    • 借り手が貸付けに関して、投資家と接触することを禁ずる
    • 接触した場合、借り手にペナルティを課す
  2. ソシャレン業者の社内規定で以下を規定する
    • 借り手が貸付けに関して投資家と接触した場合、借り手にペナルティを課す

 

金融庁の回答の要点

左野くん
左野くん

なんか、同じような内容が繰り返されているよね?

そうですね。

長々と書かれていますが、要点は次の3つです。

  • 投資家は貸付業務を執行できず、貸付け行為に関与できない
  • 貸付けに関して投資家と借り手は接触できない
  • 接触したら投資家と借り手にペナルティを課す

金融庁はなぜ、この3つを必要な条件として強調しているのでしょうか?

タロウさん
タロウさん

ここからが重要なポイントです!

 

ソーシャルレンディングは貸金業

ソーシャルレンディングは投資家がソシャレン業者を通して企業にお金を貸します。

ですので、ソーシャルレンディングで投資家は実質的に貸金業務を行っています。

しかし、ソシャレン投資家のほぼすべてが貸金業者の登録をしていません

未登録なのに貸金業務を行っているとなると、貸金業法違反になります。

タロウさん
タロウさん

ソシャレンで投資家が貸金業務を行っていると判断されると、貸金業法違反になってしまう。ここが超重要なポイントです!

 

投資家が貸金業務を行っているか否かの判断基準

違反状態を何年も放置してきたとなると、金融庁的にヤバイです。

なので、違反ではない、つまり、投資家は貸金業務を行っていないことにしたい

そこで金融庁は、

  1. 形の上では投資家が貸金業務を行っていても
  2. 投資家が貸付けの実行判断を行っていなければ
  3. 投資家は貸金業務を行っていないとみなされる
  4. (なので、未登録でソシャレンをやってもOK!)

という解釈を出しました。

つまり、

  • 貸付けの実行判断の有無を貸金業務を行っているかの判断基準とした

ということです。

非常に重要な部分なので、繰り返して説明します。

  1. 投資家がソーシャルレンディングで
  2. 貸付けの実行判断をしていなければ
  3. 投資家は貸金業務を行っていないとみなされるので
  4. 投資家は貸金業者の登録をしていなくても
  5. ソーシャルレンディングをやってOK

ということです。

タロウさん
タロウさん

はっきり言って屁理屈です!笑

 

金融庁の最初の見解

そして、金融庁は2014年に最初の見解を示します。

それが、借り手企業の匿名化と複数化です。

つまり、

  1. 借り手企業を匿名化+複数化していれば
  2. 投資家は貸付けの実行判断ができないので
  3. 投資家は貸金業務を行っていないとみなされる
  4. なので、ソシャレンやってもOK!

という見解を示し、それがずっと踏襲されてきました。

左野くん
左野くん

匿名化+複数化していれば、貸金業務を行っていないことになる。

右田さん
右田さん

貸金業務をやっていないのだから、貸金業登録をしていない投資家がソシャレンをやってもOKって理屈ね。

 

複数化が使えなくなった

ところが、2018年6月に規制改革実施計画が閣議決定され、この中で匿名化と複数化の見直しが決まりました。

さきほどの匿名化+複数化が使えなくなったのです。これは困った!

そこで、匿名化+複数化に代わるものを、金融庁職員の優秀な頭脳をフル稼働して考え出した。

それがさきほどの3項目です。

  • 投資家は貸付業務を執行できず、貸付け行為に関与できない
  • 貸付けに関して投資家と借り手は接触できない
  • 接触したら投資家と借り手にペナルティを課す
タロウさん
タロウさん

これが「匿名化+複数化」に代わる、貸付けの実行判断ができないとみなす新しい条件だよ!

 

金融庁の新たな見解

そして2019年3月に、これら3項目を匿名化+複数化に代わる新しい見解として出しました。

すなわち、

  1. 投資家が貸付業務に関与できず
  2. 投資家と借り手が接触できず
  3. ペナルティを食らう恐れまであれば
  4. 投資家は貸付けの実行判断ができないので
  5. 投資家は貸金業務を行っていないとみなされる
  6. なので、ソシャレンをやってもOK!

従来のソシャレンやってもOKの条件だった匿名化が使えなくなった。

そこで、新しいソシャレンやってもOKの条件を作ったということです。

 

金融庁回答のまとめ

条件を投資家の立場からまとめると、次のようになりますが。

  • 投資家がソシャレン業者と匿名組合契約を結ぶ
  • 投資家が借り手企業と接触しないことを約束する
  • 接触した場合にペナルティがあることを受け入れる

匿名化+複数化していなくても、この3つをクリアすればソシャレンやってもOKということです。

匿名化していなくても」というのがポイント。

3条件をクリアすれば、匿名化していなくても=情報を開示していてもソシャレンやってOK。

つまり、3条件をクリアすれば情報を開示できる(匿名化解除)ということです。

タロウさん
タロウさん

投資家がこの3条件をクリアすれば、ソーシャルレンディングで借り手情報を開示できます!

借り手企業との接触の禁止

なお、3条件の中で特に注意すべきは、借り手企業との接触が禁止であることです。

具体的内容は示されていないものの、接触した場合にはペナルティが貸されます。

では、どのような行為が「接触」とみなされるのか?

根拠のない僕の推測は以下の通りです。

  • 次のような内容について、借り手にメールや電話で問合せをする
    • 借入金の用途など貸付けに関する内容
    • 経営状態など借り手企業の実状に関する内容
    • 遅延など借入金の返済に関する内容
    • 担保の処分状況など
    • 返済の見込みなど
  • 返済の催促などの目的で、借り手企業を訪問する
  • 弁護士など第三者を介して上記2項目に類する行為を行う

3つ目ですが、上述の通り金融庁が最重視するポイントは「貸付けの実行判断の有無」です。

第三者は投資家の代理人とみなせますので、投資家が代理人を介して貸付けの実行判断を行っていると認識できます。

したがって、第三者を介してもアウトだと僕は推測します。

左野くん
左野くん

借り手企業との接触は一切しないほうが安全だね。

匿名化解除へのソーシャルレンディング業者の対応

借り手企業の匿名化解除にソーシャルレンディング業者はどう対応したか?

主な業者の対応をまとめました。

タロウさん
タロウさん

業者ごとに対応にかなり差が出ているよ!

 

SBIソーシャルレンディング

2019年4月23日現在、公式な発表はありません。

右田さん
右田さん

業界最大手がダンマリなのね。

 

OwnersBook

基本方針の発表

2019年3月18日に「融資型クラウドファンディングに関する金融庁からの回答に関するお知らせ」という文書を発表しました。

その要旨は以下の通りです。

  • サービス開始以来、案件情報は開示すべきと一貫して主張してきた
  • ソシャレン不祥事の一因は匿名化・複数化にある
  • 2019年3月に関係協会と連名で金融庁にノーアクションレターを提出し回答を得た
  • 今後も業界の健全な発展に寄与する

OwnersBookはサービス開始直前まで、情報を開示して案件募集をしようとしていましたが、当局の同意を得られず断念しました。

また、サービス開始後もインタビュー記事などで情報開示すべきと主張しています。

ですので、匿名化解除で情報を開示する意思を持っていることは間違いないです。

ただ、2019年4月23日現在、匿名化解除にどのように対応するのか、具体的な指針は示していません。

匿名化解除を強く訴えていたOwnersBookにこそ、率先して業界に範を示して欲しいと思っていましたので、この対応は非常に残念です。

左野くん
左野くん

OwnersBookにはまっ先に情報開示して欲しかったね。

 

クラウドバンク

基本方針の発表

まず、2019年3月19日に「融資先の情報開示等に関する方針につきまして」という文書を発表しました。

その要旨は以下の通りです。

  • 4月上旬を目安に金融庁の新見解に対応する
  • 以降、借り手の同意を得られた案件から情報を開示する
  • すべての案件で全面的に情報開示するものではない

3つ目についてですが、上掲文書では次のように書かれています。

他方、「情報充実化」という観点だけに傾倒することなく、実効性のある情報提供のあり方を検討するとともに、弊社が販売するファンドとしてあるべき保全措置が講じられているか十分な確認を行う等、引き続き金融商品取引業者としての責任を果たしていきたいと考えております。(出典:上掲文書)

要は、安全性が担保されるのであれば、必ずしも情報開示にこだわる必要はない、ということでしょう。

後述しますが、情報開示を希望しない借り手もいるはずですので、個人的には個別対応は問題ないと考えます。(投資するかは投資家が判断すれば良いのですから。)

 

具体的対応の発表

続いて、2019年4月17日に「融資先の情報開示等に関する対応につきまして」という文書を発表しました。

その要旨は以下の通りです。

  • 4月17日以降に募集する案件について、融資先を特定できる情報を開示する
  • ログインした会員だけが閲覧できるという方式で開示する
  • 当該情報のブログ等への転載を禁止する

実際に情報が開示されましたが、僕の予想をはるかに超える非常に広範な情報が高いレベルで開示されています。

ただし、すべての案件で情報が開示されたわけではありません。

社名は開示しない、一部の情報の開示に留めるなど、借り手企業によって情報の開示レベルに差が出ています。

上述の通り投資家が最終判断すれば済む話なので、まるで問題ないと僕は考えます。

タロウさん
タロウさん

クラウドバンクはケースバイケースで情報開示です!

 

SAMURAI

SAMURAI FUNDは金融庁の発表翌日に具体的対応策を発表しました。

具体的対応の発表

2019年3月19日に「貸付型クラウドファンディングにおける匿名化解除後の弊社の情報開示方針について」という文書を発表しました。

その要旨は以下の通りです。

  • 今後、原則としてすべての案件で借り手名称などの情報を公開する

公開できる借り手の案件だけを組成する。

それはつまり、情報公開できない借り手には金は貸さないということです。

上述の通り、僕は借り手の要望に合わせて情報公開の範囲を変えるべきという考えなので、SAMURAIの方針とは真逆です。

しかし、YesNoをはっきり言い切る姿勢は強く支持します。

右田さん
右田さん

全案件公開は投資家の支持を集めそうね!

 

クラウドクレジット

2019年4月23日現在、公式な発表はありません。

 

Funds

Fundsはソシャレン業者の中でもっとも早く、金融庁発表の当日に具体的対応策を発表しました。

具体的対応の発表

2019年3月18日に「貸付投資のFunds、匿名化解除に対応し貸付先の企業名などの公開方針を発表」という文書を発表しました。

その要旨は以下の通りです。

  • 4月以降に募集するすべての案件で借り手名称などの情報を公開する

SAMURAI同様に全面公開です。

もともと、Fundsはグループ企業内貸付の形を採っており、貸金業法の適用対象外です。(貸金業法施行令第1条の2第1項第6号

このため、サービス開始当初から借り手企業名を開示していましたが、一部については非開示でした。

これを改め、今後はすべての借り手について情報開示するようです。

左野くん
左野くん

Fundsも投資家の支持を積極的に取りに行く姿勢を堅持しているね。

 

maneoファミリー各社

2019年4月23日現在、公式な発表はありません。

 

Pocket Funding

2019年4月23日現在、公式な発表はありません。

 

LENDEX

2019年4月23日現在、公式な発表はありません。

 

まとめ

ソシャレン各社の対応を表にまとめます。

業者名 対応
SBIソーシャルレンディング 未発表
OwnersBook 未発表
クラウドバンク 借り手ごとに対応
SAMURAI 全借り手について情報開示
クラウドクレジット 未発表
Funds 全借り手について情報開示
maneoファミリー各社 未発表
Pocket Funding 未発表
LENDEX 未発表
タロウさん
タロウさん

SAMURAIとFundsが3馬身のリード、そのあとにクラウドバンクが続いています!

ソーシャルレンディング匿名化解除の問題点とデメリット

さて、匿名化の解除は基本的に良いことです。

ただ、良い事だらけで欠点はゼロというわけでもありません。

ここではあえて、匿名化解除の問題点とデメリットを挙げます。

 

1.情報開示が可能になっただけで義務ではない

今回の匿名化解除の重要なポイントは、

  • 従来の匿名化+複数化によるソシャレンOKが廃止になったのではない

ことです。

匿名化解除は2018年6月に閣議決定された規制改革実施計画に基づくものです。

同計画の47ページには次のように書かれています。

(前略)投資家に個別の貸金業登録を不要とするため従来の考慮の一要素とされてきた匿名化・複数化と並存する運用上の新たな方策を、借り手の属性なども含めて検討する。(出典:規制改革実施計画 PDF

「匿名化+複数化に代わる」ではなく「匿名化+複数化と併存する」です。

あくまでも併存であり、規制改革実施計画は匿名化+複数化の廃止を求めていません。

それゆえ、ソシャレン業者が提出したノーアクションレターの中でも、

(貸金業法違反を回避すると同時に、貸金業法が求める借り手保護を実現するための匿名化+複数化という)対応は、融資型クラウドファンディング事業の発展のために極めて重要な考慮要素であると考えている。(出典:ノーアクションレター(PDF)、カッコ内は筆者)

と、匿名化+複数化を評価こそすれ、その廃止は求めていません。

もちろん、ノーアクションレターに対する金融庁の回答書の中でも、廃止するなど一言も書かれていません。

従来の「匿名化+複数化によるソシャレンOK」はまだ生きています

そして、情報開示を義務付けることは、匿名化を認めないということです。

しかし、匿名化が生きている以上、匿名化を認めないわけにはいきません

だから、情報開示を義務付けることができないのです。

併存が続く限り、この先も情報開示が義務付けられることはありません。

左野くん
左野くん

情報を開示しなくても良い、ってことだね…

さて、なぜ「併存する」になったのでしょうか?以下は僕の推測です。
今回の接触禁止などの新しい3条件は、実質的に「匿名化+複数化に代わる」ものです。
でも「代わる」と書いてしまうと「匿名化+複数化」に問題があったと認めてしまうことになり、それはつまり、金融庁が投資家の被害について責任の一端を認めることになってしまいます。
金融庁として、そして無謬性を誇る国家官僚として、それは絶対にできない。だから「代わる」ではなく「併存する」にしたと僕は推測します。もちろん、規制改革実施計画の文言を「併存する」にしたのも金融庁でしょう。
もう一つ。なぜ今回、ノーアクションレターへの回答という形を採ったのでしょうか?
新しい3条件を金融庁が自ら打ち出すと、新しい3条件を金融庁が自ら作ったことになります。それは従来の「匿名化+複数化」を金融庁が自ら否定することであり、それはできれば避けたい。
そこで、3条件をソシャレン業者に出させ、それを金融庁として追認する形にしようとした。それゆえ、金融庁が書く内容を指定した上でソシャレン業者にノーアクションレターを提出させ、それに回答するという形を採ったのではないでしょうか。
なお、以上はあくまでも僕の推測です。

 

2.借り手情報の開示と非開示が混在する

情報開示が義務でない以上、借り手情報を開示しない業者、案件は今後も残ります。

非開示の業者や案件が支持を失い、今後消えていく可能性はもちろんありますが。

少なくともそれまでは、投資家は開示案件と非開示案件を自己判断で取捨選択することを求められます。

右田さん
右田さん

ちゃんと見て、ちゃんと判断しろってことね。

 

3.開示情報の信憑性

これはけっこう大きな問題です。

ソシャレン業者が開示する情報は本当なのか?ウソではないのか?

さらに、借り手企業がソシャレン業者に提供する情報にウソはないのか?

クラウドバンクが借り手企業の純利益まで出してスゴイ!って声がありますが。

非上場で監査法人も入っていない中小企業であれば、経営数値なんていくらでもごまかせます。

開示する情報の信憑性をソシャレン業者はいかにして担保するのか?

開示された情報にウソがないか、僕たち投資家はいかにして判断するのか?

匿名化解除によって業者、投資家双方に新たな課題が突き付けられたと考えます。

左野くん
左野くん

開示された情報が正しいとは限らないってことか。

右田さん
右田さん

たしかに今までもウソの情報とか山ほどあったものね…

 

4.投資家は借り手に接触できない

上述の通り匿名化解除に伴い、投資家と借り手の接触が禁止されました。

接触禁止の最大のデメリットは、借り手に直接、情報収集をできない点です。

借り手の開示情報に不審な点があり、ソシャレン業者の説明にも納得がいかない。

そういう時に、借り手に直接聞くことができないということです。

さきほど書いた通り、開示情報の信憑性が今後の大きな課題です。

その点で借り手との接触が禁止されたことは大きな痛手です。

タロウさん
タロウさん

ソシャレン業者を通して聞くしか手がありません!

 

5.ソシャレン業者頼みが続く

借り手との接触ができない以上、借り手が大丈夫かについて、かなりの部分をソシャレン業者に頼るしかありません。

2018年のソシャレン不祥事連発で、ソシャレン業者の信頼性が重視されるようになりました。

これはある意味でソシャレン業者への依存です。

匿名化解除で業者依存が少しは解消されるかと期待していたのですが。

解消どころかさらに依存が強まったのかもしれません。

 

6.案件が減少する可能性

情報開示の流れが強まると、開示を望まない借り手がソーシャルレンディングから去っていきます。

これにより、ソシャレン業者が募集できる案件が減る可能性があります。

左野くん
左野くん

そうなると、クリック合戦が激化するかもしれないね…

右田さん
右田さん

すでにSBIもオナブもCREALもスーパーバトルなのに!

 

7.利回りが下がる可能性

案件減少が過度に進むと、ソシャレン業者間で良質な案件の奪い合いが始まります。

競争の結果、ソシャレン業者の貸出金利が下がり、それによって投資家の利回りが下がる可能性があります。

 

8.投資家が言い訳できなくなる

ソーシャルレンディングで被害が発生した際、今まで僕たち投資家は匿名化を原因としてきました。

匿名化がなくなり情報が開示された以上、もはや匿名化を言い訳には使えません。

開示された情報を自ら分析し、投資の是非を判断する。

今まで以上に投資家の自己責任が求められます

タロウさん
タロウさん

業者は情報を出す責任を果たしました。次は投資家が責任を果たす番です!

ソーシャルレンディング匿名化解除への投資家の対策

以上を踏まえた上で、投資家が取るべき対策を2つ挙げます。

タロウさん
タロウさん

先に言っとくけど、当たり前じゃん!ってツッコミ確実の内容です!笑

 

情報開示で案件が安全になるわけではない

匿名化解除で誤解してはならないのは、情報開示=安全な案件、ではないことです。

そして同時に、情報非開示=危険な案件、でもありません。

例えば、次のような2つの案件があったとして、どちらが安全ですか?

項目 案件A 案件B
借り手 三菱地所 山口組系の不動産会社
企業名 非開示 開示
経営数値 非開示 開示
経営状態 3期連続増収増益 3期連続最終赤字
利回り 4% 15%
運用期間 4ヶ月 5年
担保 東京駅丸の内口 釧路湿原
LTV 45% 100%

例が極端すぎますが、明らかに案件Aの方が安全ですよね。

つまり、情報が開示されることと案件の安全度は別の問題ということです。

タロウさん
タロウさん

「情報が開示されている案件=安全度が高い案件」ではありません!

 

1.一つ一つの案件を精査する

そこで、匿名化解除後に投資家に求められる対策ですが。

「開示されているから安全な案件」だと判断することはできません。

同時に「非開示だけれど安全な案件」も存在し得ます。

したがって、投資の是非を開示か非開示かで判断することはできず、開示された情報を分析し判断する必要があります。

つまり、今までと同様に調べることが重要です。

左野くん
左野くん

今まで通り調べなきゃってことだね。

 

2.分析できるだけの知識を身に付ける

もう一つは知識を身に付けることです。

クラウドバンクの開示情報を見て、僕は叩きのめされ絶望感を感じました。

ド田舎の土地の地上権が担保って、どうやって評価額を出せば良いのか?

業務委託報酬請求権への譲渡担保って、いくらの価値があるのか?

まるっきり分かりません。

匿名化解除で情報が開示されても、情報を分析し判断できるだけの知識がなければブタに真珠です。

それは前から分かっていましたが、まさか自分がここまでブタだったとは!

これからソシャレン投資家にもっとも求められるのは、知識を増やすことです。

右田さん
右田さん

知識を増やさないとブタになっちゃうのねw

ソーシャルレンディング匿名化解除のまとめ

かなり長くなりましたので、最後に要点をまとめます。

 

まとめ

  1. 匿名化+複数化に代わる新しいソシャレンOKの条件
    • 投資家とソシャレン業者が匿名組合契約を結ぶ
    • 投資家は借り手企業と接触不可
    • 接触したらペナルティ
  2. 各ソシャレン業者の対応
    • SAMURAI、Funds:全借り手で情報開示
    • クラウドバンク:借り手ごとに対応
    • その他:未発表
  3. 匿名化解除の問題点とデメリット
    • 情報開示は義務化されない
    • 開示案件と非開示案件が混在
    • 開示情報をどうやって信用するか?
    • 借り手に直接問合せできない
    • 依然としてソシャレン業者頼み
    • 案件減少の可能性
    • 利回り低下の可能性
    • 今まで以上に投資家の自己責任
  4. 投資家が取るべき対応
    • 調べることの重要性
    • 知識を身に付ける

情報公開に積極的な業者のリスト

最後に、現時点で情報公開に積極的な業者のリストです。

OwnersBookの名前が一日も早くここに並ぶことを、熱烈なファンの一人として強く願います!

コメント

早期償還

案件の運用が予定より短い期間で終わり、業者が元本を予定より早く投資家に返すことを早期償還といいます。

例えば、運用期間12カ月の予定が6カ月で早期償還になると、受け取る分配金は基本的に半分になります。

ネガティブに捉えられがちですが、業者が確実に売れる物件を選んで案件を組成した証でもあります。

分配原資

分配原資とは分配金の出どころのことです。

例えば、入居者から得る家賃から投資家に分配金を払う場合、分配原資は家賃です。

家賃はインカムゲインですので、分配原資はインカムゲインとも表現できます。

組成

案件を作ることを組成といいます。

  • 投資対象は緑町ハイツ102号室で
  • 利回りは4.5%で
  • 運用期間1年
  • 募集総額2,300万円の案件を作る

こうやって案件が出来上がります。

組成 → 募集 → 運用開始 → 運用終了 → 償還

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングの案件はこのような流れで運営され、その最初の段階が案件の組成です。

元本毀損

元本毀損とは投資したお金が戻ってこなくなることです。

例えば、2,000万円で取得した物件が1,500万円でしか売れなかった場合、元本の一部が戻ってこないことがあります。

また、取得した物件が地震で倒壊し売れなくなったなどで、元本の全額が戻ってこないこともありえます。

クラファン案件の管理手数料

不動産クラファンで区分マンションなどが投資対象になる場合、物件の入居者募集や家賃徴収といった管理業務が行われます。

これらの業務は業者または外部の不動産業者が代行し、そこでは管理手数料が発生します。

案件の利回りはこういった手数料や経費も差し引いた上で計算されたものです。

ですので、投資家が管理手数料を別途支払う必要はありません。

優先出資と劣後出資

不動産クラファンでは一般に投資家と業者が共同で出資し、物件を取得します。

例えば、投資家が2,400万円、業者が600万円出資し、3,000万円の物件を取得するといった感じです。

出資者 出資額
投資家(優先出資) 2,400万円
業者(劣後出資) 600万円
出資総額 3,000万円

この時、投資家分の出資を優先出資業者分の出資を劣後出資といいます。

なぜ、そのような言い方をするのかなど、詳しくは下記記事を参照してください。

優先劣後出資方式と劣後出資比率

キャピタルゲイン型

不動産クラファンの案件は大きくキャピタルゲイン型とインカムゲイン型に分かれます。

投資対象物件を売却した際の売却益を分配原資(分配金の出どころ)とする案件がキャピタルゲイン型です。

一方のインカムゲイン型は運用期間中の家賃収益を分配原資とします。

なお、売却益と家賃収益の両方を分配原資とする併用型の案件もあります。

自社買取

不動産クラファンでは運用期間の最後に物件を不動産投資家など第三者に売却するのが一般的です。

しかし、何らかの事情で売却できなかった場合、自社で物件を買い取ることがあります。

売却できずに元本が戻ってこないところが、業者が買い取ることで元本が戻ってくることになるので、自社買取は投資家にとってメリットです。

劣後出資比率

不動産クラファンでは一般に投資家と業者が共同で出資し、物件を取得します。

例えば、投資家が2,400万円、業者が600万円出資し、3,000万円の物件を取得するといった感じです。

このとき、出資総額に対する業者分の出資額の比率を劣後出資比率といいます。

さきほどの例では20%です。

出資者 出資額 出資比率
投資家 2,400万円 80%
業者 600万円 20%

劣後出資比率が高いほど安全性が高まります。

詳しくは下記記事を参照してください。

優先劣後出資方式と劣後出資比率

償還

案件の運用が終わり、業者が元本を投資家に返すことを償還といいます。

クリック合戦

募集が先着方式の案件では、投資できる人が決まるのは早い者勝ちです。

このため、人気の案件では募集開始と同時に応募が殺到します。

この状態をクリック合戦といいます。

信託受益権

信託受益権とは信託財産から発生する利益を受け取る権利のことです。

詳しくは↓こちらの記事を参照してください。

信託受益権とは?(別タブで開く)

信託受益権とは?(今開いているタブで開く)

抵当権と根抵当権と極度額

抵当権とは借り手が返済できなくなった時に担保を売却し、その代金から他の債権者に優先して返済を受ける権利です。

抵当権は1つの借り入れに対して設定されるため、返済時点で消滅します。

これに対し根抵当権ではあらかじめ融資の上限額を設定し、その範囲内であれば何度でも融資と返済が可能です。

その都度、抵当権の設定登記を行う必要がないため、企業への融資などでよく利用されます。

極度額は根抵当権の融資上限額のことです。

債務履行

まず、「債務」とは他人に対し何らかの行動を行う義務のことです。

そして、債務を実際に行うことを債務履行といいます。

ソーシャルレンディングの場合、借り手(債務者)が返済することや、連帯保証人が借り手に代わって返済することが債務履行にあたります。

LTV

ソーシャルレンディングで使われる用語で、担保評価額に対する融資額の割合をいいます。

例えば、1億円の土地を担保に8千万円を融資する場合、LTVは80%です。

担保が評価額通りに売れるとは限らないため、LTVの数字が小さいほど安全性が高いとされます。

資金使途

ソーシャルレンディングで業者から借りたお金を借り手が何に使うかを資金使途といいます。

延滞

ソーシャルレンディングで借り手が期限内に返済できなくなることを延滞といいます。

また、ソシャレン、不動産クラファンで元本の償還が予定より遅れている状態を延滞と呼ぶことがあります。

業者や投資家によっては「遅延」という表現が使われることもありますが、意味は同じです。