中国進出での技術移転で先端技術を奪われる日本企業が打つべき対策

生産地から消費市場へと変貌を進める中国。

多くの外国企業が中国へ進出しています。

そこでは必ず、技術移転をめぐる攻防が展開されます。

それを紹介したのが下の記事です。

中国のIT産業は海外企業との間で、新たな合弁企業の時代を迎えている。これらの合弁企業の多くには、「持ち株比率が中国側51%、外資側49%」という目立った特徴がある。この2%の差が持つ意味とは……。

記事の最後の方で書かれていたのが、

  • 中国サイドは外国企業の技術が欲しい
  • 外国サイドはみすみす先端技術を取られたくない
  • このため、一昔前の技術移転しか進まない

今回はこの問題について考えてみたいと思います。

中国に技術を持っていくと必ず取られる

僕は現役時代に中国相手の商売をしていました。

ですから実体験として分かります。

中国に新しい技術を持っていくと、必ず取られます。

もちろん、取ろうと思っても取れない技術もあります。

しかし取ろうと試みます。

そして取れるならば必ず取ります。

それが中国です。

なぜ中国は技術を奪うのか

日本企業は世界中に進出していますが、ここまで取られるのは中国だけでしょう。

同じように進出している東南アジアでは、取られること自体がレアケースです。

なぜ中国に限って進出企業が技術を奪われるのか?

いくつかの理由があります。

極めて勤勉で必死に学ぶ

中国人は怠け者で働かないとか言ってる連中は、中国人を知らないだけです。

彼らは本当によく働きます。真面目で懸命です。長時間労働も苦にしません。

僕が知る限り、中国人は日本人の次に勤勉です。

欲しいと思った技術を奪うまで、あきらめずに必死に懸命に努力します。

ハングリー精神と向上心が強い

ちょっとでも豊かになりたい。他の人に負けたくない。

この気持ちの強さは、終戦直後の日本人に匹敵すると思います。

フィリピン人とかこんな気持ち、これっぽっちもないもんね。

今よりも豊かになりたい。だからこの技術を手に入れたい。

で、なにせ真面目で勤勉なので、必死にがんばって手に入れちゃう。

真似ることに罪悪感がない

ってか、真似ないのは逆にバカくらいに彼らは考えています。

目の前に成功している人がいる。

同じことをすれば、同じように成功できる。

なのに指くわえて見てるだけで、真似ようとしない。

お前、バカ?

恐らく彼らはこれくらいに考えていると感じます。

技術を奪って何が悪い?

これは特に合弁企業とか、技術使用料を支払っている場合です。

合弁パートナーとして出資した。技術に対して金を払った。

つまり対価を出して技術を買ったんだ!←いやいや (^^ゞ

ゼニ出して買った技術を使って何が悪い?

じゃぁ、なにか?

ヤマダ電機で買ってきた掃除機は、使わずに床の間に飾っとけってのか?

ざけんな、ジャパニーズ!

こんな感覚のように感じます。

中国国内でも真似し合っている

ちなみにこれは、対外国企業だけではありません。

中国企業同士でもそうですし、中国人個人同士でもそうです。

寧波のフライパン

例えば、浙江省に寧波という街があります。

今はどうか知りませんが10年ちょっと前のこと。

ここは世界有数のフライパンの産地でした。

鉄や銅ではなく、アルミのフライパン限定です。

では、寧波にアルミ工場やボーキサイト鉱山があるかというとそうではない。

なぜ寧波が世界的なフライパンの産地になったのか?

どんどん広がるフライパンの輪

ある寧波人が20年ほど前にフライパンを作った。それがよく売れた。

それを見た周りの人たちが、同じようにフライパンを作り出した。

そしてそれを見た周りの人、そのまた周りの人、さらに周りの人。

次から次へとフライパンを作り始め、世界有数のフライパンの産地になった。

これ、冗談ではなく実話です。

温州の使い捨てライター

同じような話は中国全土津々浦々にあります。

有名どころで、同じ浙江省の温州は使い捨てライターの世界最大の生産地です。

でも、タバコの産地でもなく、タバコ農家が集まっているわけでもありません。

誰かがライターを作ったらよく売れたので、みんなが次々と作り始めただけです。

新幹線パクリ事件

向上心が強く、懸命に努力し、真似ることに抵抗感がなく、技術を買うという感覚もある。

僕ら中国商売の経験がある日本人は、彼らのそういう面を知っています。

だから、川崎重工とJR東日本が中国に新幹線を出すという話が出た時。

みんな言ってました。バカじゃねぇか?って。

買ってもらえるのは、せいぜい最初の何編成かだけ。

そこから先は、絶対に中国が自分で作る。

彼らは作れる。なのにいつまでも日本から買ったりしない。

結局、予想通りになりました。

さすがにそれを独自技術だと言って、海外に輸出したのは予想外でした。苦笑

パクるのは日本人も同じだが

もちろん、パクるのは中国人だけではありません。

彼らと同じ温帯に住むアジア人で、同じ文化を持つ我々日本人も然りです。

食べるラー油、ツーリングワゴン、SUV、お掃除ロボット。

国内外を問わず売れると分かれば、我先にパクるのは我々日本人も同じです。

ただ、ハングリー精神と向上心が強い分、彼らは我々以上にパクります。

中国に進出して技術を出せば、絶対にその技術は取られます。

一昔前の技術では戦えない

ではどうすれば良いのでしょうか?

冒頭の記事では、取られると困るので一昔前の技術しか出さないとありました。

はたしてそれが正解でしょうか?僕はそうは思いません。

中国は今や世界の最先端の技術の消費地です。

スマホ普及率は日本以上で、モバイル決済サービスは日本よりも進んでいます。

道ばたの屋台の焼き鳥代を、スマホのアプリで支払っているのが今の中国です。

一昔前の技術で戦えるマーケットではありません。

最先端技術で進出する

ではどうするか?

一つは、取られるのを避けて中国に進出しないことです。

しかし、それでは他の外国企業が進出するだけです。

技術大国の我が国が、指を加えてそれを眺めていて良いとは思えません。

そうなるとやはり、取られる前提で最先端技術で進出するしかありません。

技術戦争で勝ち残れ

もちろん、その最先端技術は必ず中国企業に取られます。

繰り返しますが、彼らは極めて勤勉で優秀です。必ず取ります。

ただ、取るまでにはある程度の時間が必要です。

このタイムラグに、日本が生き残るチャンスがあります。

最先端の技術で中国に進出する。必ず取られる。

だから取られるまでに、さらに新しい技術を開発する。

これ以外に、我が国が技術大国として生き残る道は無いのではないでしょうか?

技術をかけた中国との戦いです。

日本企業は今こそ攻撃的投資を

日銀のマイナス金利政策で、マネーは溢れている。

なのにマネーの行き場がなくて、不動産に流れていると聞きます。

確かに消費が低迷する中で、企業が新たな設備投資をすることはできません。

しかし、中国を相手とした経済戦争、技術戦争に備えるならば。

中国に進出して、その中で勝ち抜き続けようと思うならば。

日本企業は今こそ、研究、技術開発に投資すべきではないでしょうか?

シェアする