金より時間、地位より自由、安定より放浪 ~オッサン個人事業主の東南アジアぶらぶら一人旅~
家電量販店を出てチャンフンダオ通りを北東に進む。このまま行けばベンタインのロータリーに出る。何度か通った道をまた行くのはおもしろくない。途中で右に曲がり細い路地を進む。ちょうどベンタインのバスターミナルの裏手を歩くことになる。
どうってことのない普通の通りだったのだが、途中から何やら道端に広げたビニールシートの上に物を並べて売る人が目立つように。ついにはそういう商売人が道の片側にずらっと並ぶ有り様に。何を売っているのか? カバン、ベルト、靴下。メーカー倉庫からの流出品かな。デジカメ、時計、携帯電話。はいはい。盗難品ね。東南アジアではありがちな光景だ。
路上マーケットを過ぎると今度はちゃんとした店が軒を連ねる通りに。何を売っているのかのぞいてみると、アンティクな家具に古いコインや紙幣、壺に掛け軸、絵画など。なるほど、ここはホーチミンシティの骨董街だな。好事家には垂涎の品揃えなのだろうが、あいにくこの方面には興味がない。
さらに先に進むと一軒の洋館があった。
フランス植民地時代に建てられたのだろうか? 実に品の良い淡いクリーム色を身にまとっている。
中庭も上品な落ち着きがあって。
聞くと美術館だという。柄にもないが入ってみることにした。入場料がタダだったので。笑
この美術館は絵画専門だった。陶磁器はまだ興味があるのだが、あいにく絵心はまったくない。弱ったなぁ、と思いつつ見てみたのだが、けっこう良い感じの絵が並んでいた。特に気に入ったのがこれ。
琵琶か何かを奏でる女性。
はぁ、家に帰ってきてこんな人が「おかえりなさい」とか言ってくれたら癒やされるよねw
次はベトナムの子供たちが描いた絵。
良いよね、子供の描く絵というのは無邪気で。と思わせたのは1枚目だけだった。
戦車で進軍するベトナム兵。子供がこんな絵を喜んで描く社会というのは少なくともうらやましくはない。そして次の絵。
親が殺され家を焼かれたのだろうか。この色使い。子供がこんな悲しい、強く訴えてくる絵を描くなんて。どんな思いで描いたんだろう。
そうだ。この国はつい40年ほど前まで戦争をしていた国だったのだ。ここからベトナム戦争を描いた絵が続いた。
アメリカへの抗戦を呼びかけるポスター。ちょっと見えにくいと思うが中央の兵士がかぶるヘルメットにUSAと書かれている。
ベトナム戦争は1960年に始まり15年の長きに及んだ。
少年も戦った。
若い女性も銃を手にした。
そして多くの少年や女性が戦場で命を落としたのだろう。
一番強い印象を受けたのがこの絵。
凛とした強さというか。でもなぁ、銃を持った女性が凛として美しいなんて、僕はそんなことを望まない。
中国、韓国相手に緊張が続いてて、ネット上では「開戦だ~!」みたいに威勢のよいこと言ってる連中もいるけど。
でも、こういう絵を見てると思う。戦争というのは実際に銃を手にして戦場に行くことであり、自分が誰かに殺され、そして自分が誰かを殺すことなんだ。自分だけではない。自分の娘が殺され、自分の息子に銃を持たせ、嫁さんに銃の引き金を引かせて人を殺させることなんだ。
なんとか僕らの時代は武力を行使しないで済ませたい。僕らの世代は戦争を起こさなかったと、次の世代に誇りたいと思う