TATERU社の融資資料改ざん問題に関する調査結果報告書のまとめ

8月に明らかになったTATERU社のデータ改ざん問題。

特別調査委員会による調査結果報告書が発表されました。

すでに一部マスコミが報じておりますが、グリフラ、トラレンなど、ソシャレンに関するマスコミのいい加減な報道(特にNHKと日経新聞!)が続いたため、僕はソシャレン系についてのマスコミ報道は一切信用しておりません。

そこで、調査報告書(要約版全24ページ)をすべて読み、要点をまとめました。

僕と同じくマスコミをミジンコの爪の先ほども信用していない方、ぜひご覧あれ!

処分内容

先にこの調査結果を受けてTATERU社が発表した処分内容です。

辞任

内容

  • 辞任する取締役:常務取締役営業本部長 古賀聡
  • 辞任年月日:2018年12月27日

辞任の理由

  • 調査の結果、同氏が営業部員の不正行為を認識していると認めるに足る証拠は認められなかった。
  • しかし、Apartment事業を統括する営業本部長の職責から、会社に与えた影響と経営責任は重い。
  • 同氏より辞任の申し出があり、会社がこれを受理した。

問題が起こった部門の長として責任を取ったということでしょう。妥当なところだと思います。

なぜ社長は辞めないんだ!みたいな批判が出るでしょうが、古木氏はTATERU社の創業社長で、しかもまだ上場したばかりの若い会社です。

辞めても代りに引き継いで引っ張れる人材がいるとは思えず、辞めて会社が傾いたら株主他が迷惑を被ります。

なので社長続投は妥当であり、何でもかんでもヒステリックに辞めろと叫ぶべきではないと僕は思います。

報酬減額

  • 代表取締役CEO 古木大咲:月額報酬50%×6カ月間
  • 専務取締役COO 大城崇聡:月額報酬30%×6カ月間
  • 常務取締役 野間大亮:月額報酬20%×6カ月間
  • 常務取締役 佐伯幸祐:月額報酬20%×6カ月間
  • 常務取締役CFO 高杉雄介:月額報酬10%×3カ月間
  • 常務取締役CTO 松園勝喜:月額報酬10%×3カ月間
  • 常務取締役CMO 岡田喜則:月額報酬10%×3カ月間
  • 社外取締役 應本健:月額報酬10%×3カ月間自主返上
  • 社外取締役 秦武司:月額報酬10%×3カ月間自主返上
  • 社外取締役 塩濱剛治:月額報酬10%×3カ月間自主返上

相場が分からないのですが。TATERU社の取締役は上記10人で全員です。社外も含め取締役全員が減給というのは、けっこう重い処分のように感じます。

さて、ここから本題の調査結果報告書です。かなり要約したつもりですが、それでも原稿用紙10数枚分あります。見出しを見て関心がある部分だけ読んでください。

調査概要

調査の対象期間とか調査方法とかについてです。

対象期間等

  • 対象期間:2015年12月以降(マザーズ上場以降)
  • 調査委員会の構成:委員長 濱邦久(弁護士、元東京高等検察庁検事長)以下5名
  • 調査担当者:弁護士30名
  • 調査期間:2018年9月4日~12月26日

留意事項

  • TATERU社から入手した資料、関係者へのヒアリングの他、委員会独自で同社顧客からも資料を収集している。
  • 同社のメールサーバーなど個々人のメールを独自に収集はしていない。
  • 同社から提供された書類の署名捺印は真正になされたことを前提とする。
  • 同社から提供されたコピーは原本の正確なコピーであることを前提とする。
  • 報告書作成にあたり同社から干渉は受けていない。

関係者に対するヒアリング

  • 同社役員と退職者を含む営業部門の従業員94名に書面での質問を行い回答を得た。
  • 改ざん事件の関係者(一部顧客、取引金融機関担当者を含む)123名から、延べ131時間45分のヒアリングを行った。

調査について特記

  • 電子メールサーバー、チャットツール用サーバー、会社支給のパソコン、スマホ内のデータを保全し、分析検討した。
  • 対象は退職者を含む営業部所属社員90名。
  • 対象機材はパソコン95台、スマホ92台。
  • 対象期間は2015年以降。
  • 自動消去されていたデータ等は復元できなかった。
  • 調査対象となったメールは354万件、チャットは11万件。
  • キーワード、人工知能などで抽出した関連度上位1%程度について内容分析。

顧客等に対する調査要請

  • 新築アパート購入に関する取引を行った顧客1,568名に情報提供を要請した。
  • 2015年以降に同社に貸付を行った金融機関33社に融資審査資料の開示協力を要請した。

かなり気合の入った大掛かりでしっかりした調査が行われた印象を受けます。

調査結果

営業体制

  • 営業部においては、ほとんどの業務を営業本部長の決済で遂行できる状態であった。
  • 東日本、西日本を統括する営業本部長が1名ずつ置かれ、その下に各拠点(支店等)の営業部長、その下に営業部員という構成であった。
  • 両営業本部長と全営業部長が出席するテレビ会議が週に2回行われていた。

コンプライアンス体制

  • 社長直轄の内部監査室やコンプライアンス委員会などが設置されていた。
  • コンプライアンス委員会は四半期ごとに開催され、違反等が生じたら協議するものとされていた。

営業業務について

営業マニュアル

全拠点共通の営業マニュアルが存在し、一般的な営業活動は次のようなフローとされていた。

  1. アパート経営に関心を持つ新規会員に営業部員がコンタクト
  2. チャット機能などで会員とやり取りし、資料を作成して会員に物件を提案
  3. 会員からアパート購入の意向が示されたら、営業部員が購入申込書を作成
  4. 併せて収入を証明できる資料など、融資申請関係書類を会員から受領
  5. 上記融資書類を各拠点の営業部長が金融機関に提出、金融機関が審査
  6. 融資が承認されたら会員と不動産売買などを契約

営業業務で指摘される点

  • 上記フローで適宜、上長への進捗状況の報告、社内承認などを行うものとされていた。
  • 金融機関とは別に独自に会員の資産状況と契約との妥当性(アパート経営できるだけの経済力があるか)を確認する明確なルールは定めていなかった。
  • この契約の妥当性に対する意識は高いとは言えない状況だった。
  • 2014年以降、販売目標は前年プラス150~200棟と設定されていた。
  • 営業部員はアパート1棟成約ごとに歩合給が支払われる給与体制であった。

融資書類の扱いについて

  • 融資書類の原本を必要とせず、メール添付でのコピー提出でOKとする金融機関が複数存在した
  • 営業部員は会員の通帳の預金残高部分の紙コピー、メール添付の画像データで受領するが、原本との照合は行っていなかった。
  • 融資書類は営業部長に提出し、営業部長が内容確認の上で金融機関に提出していた。
  • 営業部員が単独で金融機関に提出することは原則としてなかったが、一部経験年数の長い営業部員が金融機関に提出することがあった。

不正行為

不正行為の主旨

  • 改ざん行為を行った営業部員の大半は、改ざん前後の顧客の自己資金に関するエビデンス(口座残高証明書などのこと)のデータを、証拠隠滅のために削除していた
  • 上述の通り削除されたデータで復元できないものもあったが、顧客などからの情報提供、改ざん行為を行った営業部員からの証言などから、調査委員会は改ざん行為があったと認定した。

改ざんの具体的な手法

  • エビデンスの改ざんは主に営業部長と部長代理が行っていた
  • 営業部長の指示で営業部員が改ざんを行ったケースもあった。
  • 営業部長の指示ではなく、営業部員が自ら改ざんを行ったケースもあった
  • 改ざんはパソコンの画像編集ソフトで数字を切り貼りして預金残高を書き換えるなどしていた。
  • それをプリントアウトで郵送、またはPDFをメール添付で金融機関に提出していた。
  • 改ざんは顧客には知らされていなかった

改ざんの規模

  • 改ざんを行った従業員は合計31名
  • 改ざんが行われた案件数は、調査対象期間に成約した2,269件の内の350件

その他の不正行為

  • 複数の銀行口座を持つ顧客に対し、例えばまず、みずほの口座に300万円ある状態で口座残高のコピーを取り、その後で300万円を三井住友に移してコピーを取り、その2つを金融機関に提出して600万円あるように見せかける手口があった。
  • ただ、顧客の拒否、クレーム等リスクが高く改ざんのほうが容易だったため、実行されたケースは限定的であった。(つまり、実行されたものもあった。
  • 他の顧客の残高証明を別の顧客の残高証明として金融機関に提出し、自己資金があるように見せかける手口もあった。
  • ただ、何度も使い回すことは難しかったため、実行されたケースは限定的であった。(これも実行された。)

改ざんに至る経緯

会社風土

  • 同社経営陣は販売目標を達成困難な水準とは認識しておらず、また、ノルマとも考えていなかった。
  • 一方、営業部員は目標達成は極めて困難と考えており、また営業部長は販売目標は必達と認識していた。
  • 同社営業部は上下関係が厳しく、上司の命令には服従、営業成績が良くない営業部長に対する営業本部長のパワハラ的発言、目標未達が続いた部長の降格などがあった。
  • 急成長による成功体験(=過去の販売手法、業務方法を否定しにくい)と厳しい上下関係から、部下が上司に率直に物を言えない風土であった。

上場前の改ざん

  • 改ざんは上場前の2010年頃から行われていた。
  • 上場前は営業部員は管理部員に対し、改ざん作業を依頼していた。

改ざんが行われた背景

  • 営業部員は販売目標をノルマと捉えており、達成するには改ざんしてでも契約を締結する必要があった。
  • 物を言いにくい風土であったため、経営陣が営業現場の実態を把握できておらず、実態に即した販売目標を設定できていなかった
  • 営業部員は歩合給であったため、改ざんすればノルマを達成でき、給与も上がり、パワハラも受けずに済む、つまり、改ざんすることに合理性があった。
  • 上場数年前に改ざんが一部金融機関に発覚し取引が停止されたが、担当者個人の不正と認識、処理されていた。

不正行為の禁止通達

  • 上場前の2014年頃には、不正を行っていたら上場できないとの認識から、部長会議等で営業本部長から各拠点営業部長らに対し、改ざんや二重契約の不正行為を止めるよう通達が複数回に渡って行われた。
  • しかし、不正に関する実態調査は行われなかった。
  • 業務システムが変更されたことで二重契約はできなくなった。
  • しかし、改ざんは管理部への依頼ではなく営業部内で行うことで継続された。
  • 一部営業部長は改ざんを止めたが、販売目標達成が困難になったため、後に改ざんを再開した。

上場後の状況

  • 上場後も販売目標は年々増加し、販売目標のノルマ意識、営業本部長等によるパワハラなどは変わらなかった。
  • そのため、上場後も改ざんは継続された。
  • 改ざんは主に営業部長が行っていたが、営業部長の指示、もしくは指示なく自らの判断で改ざんを行う営業部員もいた。
  • 営業本部長自身は改ざんは行っていなかった。

改ざん発覚までの経緯

  • 2018年2月にアパート契約をした顧客から同社に改ざんが書簡で指摘された。
  • 社長と営業本部長らがその報告を受け、問題処理は営業本部長に一任された。
  • 営業本部長は個別の不正行為として処理し、同様の行為があったかの調査は行われなかった。
  • また、本件は解決されたものとされ、コンプライアンス委員会などに報告されることもなかった。
  • 同年6月に別の顧客から、営業部員が金融機関に提出した預金残高資料に記載されている金額が水増しされたものであると指摘があり、社内調査の結果、事実であると判明した。

改ざんに対する役員の認識

営業本部長

  • 関係者から営業本部長は改ざんを認識していたはずとの供述があった。
  • 営業本部長らはこれを否定。
  • 認識していたことを認める証拠は認められなかった。

その他役員

  • 関係者から社長など他の役員が改ざんを認識していたはずとの供述はなかった。
  • 社長など他の役員は改善はまったく知らなかったと供述。
  • 認識していたことを認める証拠は認められなかった。

事件発生の原因

  • 前述の通り、経営陣は販売目標は達成困難ではなく、ノルマでもないと考えていた。
  • しかし、営業部員(特に営業部長)は通常の営業手法では達成困難であり、またノルマであると認識していた。
  • 改ざんで達成した前年実績を基に、さらに数字が上積みされた販売目標が設定されることが続き、これを達成するために改ざんが繰り返された。
  • つまり、経営陣と営業現場との間で、販売目標の位置付け、達成難度に対する大きな意識の乖離があり、これが事件発生の大きな原因となった。
  • また、厳しい上下関係、パワハラなどから物を言いにくい企業風土となり、事件を生み出す土壌となった。
  • さらに、給与が歩合制であったことも、営業部員が改ざんに手を染める動機、改ざんの言い訳となった。
  • 残高証明書類は営業部員が顧客から受け取り、営業部長が金融機関に提出するフローで、営業部員以外がタッチするようになっておらず、不正行為への抑制が働かなかった。
  • 顧客にアパートを経営するだけの経済力があるかという意識が営業部員には希薄で、多くは融資審査さえ通せばそれで良いと考えていた。
  • 営業本部長も含めてコンプライアンス意識が欠落していた。
  • コンプライアンス委員会に問題を上げる基準がなく、各担当役員が判断していたため(個人の不正と処理、解決済みとされた)、本件についてコンプライアンス部署が機能しなかった。
  • 内部通報制度は整備、周知されていたが、従業員が匿名性を信用していなかったため、利用されなかった。

再発防止策

実施・公表済みのもの

2018年9月14日に同社が発表したもの

  • 事務課を創設し、顧客、金融機関との資料のやり取りを営業部から分離する。
  • 顧客がアパートを経営するだけの経済力があるか事務課がチェックする。
  • 事務課の業務に不正がないか内部監査室が抜き打ち検査を行う。
  • コンプライアンス遵守体制の見直し。
  • 内部通報制度の充実

委員会からの提言

  • 販売目標のノルマ視、上司に率直に物を言えないなど、企業風土の改革が必要。
  • コンプライアンス委員会に問題を上げる基準の明確化、社外有識者の委員への任命など、コンプライアンス委員会を拡充すべき。
  • コンプライアンス部の創設。
  • 業務執行に関わる社外取締役の任命。
  • 教育、研修などによるハラスメント防止対策。

報告書を読んだ感想

事件の構図

まとめるとこういうことですね。

  • 無理な販売目標が設定され、それを達成するために改ざんが行われた。
  • 厳しい上下関係から、ネガティブなことを上に言いにくい企業風土だった。
  • そのため、販売目標に無理があることを経営陣が把握していなかった。
  • その結果、無理な販売目標とそれを達成させるための改ざんが、長年に渡り繰り返された。

どこでも起き得ること

調査報告書を読み進めるに連れて、暗澹たる気分になっていきました。

予算に無理があるけど、それをトップに伝えられない。トップはそうとは知らず無理な予算を組み続け、現場はそれを達成するために不正に手を染める。

これ、どこの会社でも起こり得ることじゃないですか。

他人事じゃないと言うか、これを読んで「TATERUバッカだなぁ~」と笑える会社員が、日本にどれだけいるでしょうか?

もちろん、それでTATERUを擁護するわけではないですが、ほんと他人事じゃないよ、これ。

経営陣はショックを受けたのでは?

それと、営業本部長が知ってたかはともかく、社長や他の役員が改ざんを知らなかったのは本当だと思います。

営業本部長が自らの保身や企業風土などから、実態をトップや他の役員に言わない、言えないって、日本の会社でけっこうあるじゃないですか?

なので、社長他は恐らく本当に知らなかった

で、今回の件で初めて実態を知り、相当なショックを受け、それゆえ、外部委員会を立ち上げて徹底調査を行ったのではないか?

であるならば、経営者として最低限の良識なり良心はあり、再起のチャンスは与えられて良いと思います。(世間が支持するかは別問題ですが。)

不動産クラファンへの影響

ソシャレン投資家としてはこれが最も気になるところです。

TATERU Fundingは不動産投資型クラウドファンディングのリーディングカンパニーでした。

タテファンが切り拓いた道を今歩んでいるのが、RenosyFANTAS fundingCREALの後続3社です。

TATERUの改ざん問題が3社の業績に影響するか?恐らく影響ゼロでしょう。

だって、毎月のように新しいソシャレン事件が起こっていて、ほとんどのソシャレン投資家はTATERU問題とかすでに記憶の片隅にすら残っていませんから。苦笑

再起に期待

調査報告書を最初から最後まで読みましたが、正直なところあまり叩く気になれません。

どこの企業でも起こり得る、単純だけど根深い日本企業らしい問題です。

許される内容ではありませんが、なんて言うかな、極悪人がやった仕業ではなく、悪いと分かっていたけど止められない風土のため、みたいな感じ。(分かりにくくてすいません。)

営業本部長の引責は止むなしですが、社長以下経営陣には企業風土の改革から一歩ずつ着実に進め、再起を果たしてもらいたいと思います。

調査報告書はこちら(PDFファイル)です。一読をおすすめします。

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