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【寄附金控除】ソーシャルレンディングの所得税の算出と所得控除

寄附金控除とは何か?

この記事を読めば、

  1. ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
  2. 所得税を計算する際の
  3. 寄附金控除の扱いと
  4. 寄附金控除を使った節税の仕方

が分かります。

ちょっとややこしいですけど、できるだけ分かりやすく説明しますね。

タロウさん
タロウさん

ふるさと納税をしている人は要チェックだよ!

以下で「所法」は所得税法、「所令」は所得税法施行令、「所規」は所得税法施行規則、「措法」は租税特別措置法、「地法」は地方税法、「TA」は国税庁タックスアンサーを表します。
この記事の著者
投資家・ブロガー
タロウ

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファディング専門の投資家です。
2018年にソシャレン・クラファン投資を始め、これまで400件を超える案件に2億円以上を投資し損失ゼロ。
安全性を最重視した投資情報を発信しています。

寄附金控除の概要

まず最初に、寄附金控除の重点を説明します。

  1. 自治体などに寄付をすると
  2. 一定の金額が
  3. 課税所得から引かれる

その結果、

  1. 課税所得が減るため
  2. 税金が安くなる

です。

抽象的で分かりにくいと思うので、最初に大まかに説明します。

タロウさん
タロウさん

寄附金控除で税金が安くなる仕組みをザックリ説明するよ!

寄附金控除で税金が安くなる仕組み

例えば、次のような人が寄付をしたとします。

  • 課税所得:500万円
  • 所得税率:20%
  • 寄附先:国
  • 寄附金額:1万円

この場合、課税所得から8千円が差し引かれます。(8千円になる理由は、このあとで説明します。)

所得税率が20%の場合の所得税額の計算式(課税所得×20%-427,500円)に当てはめると、寄附金控除の前後で所得税額が次のように変わります。

【控除前】

  • 課税所得:500万円
  • 所得税額:500万円×20%-427,500円=572,500円

【控除後】

  • 課税所得:499万2千円
  • 所得税額:499万2千円×20%-427,500円=570,900円

控除前に比べて税金が1,600円減りました。

課税所得が減るので、その分にかかる税金が減る。

これが寄附金控除で税金が減る仕組みです。

右田さん
右田さん

課税所得が8千円減ったので、その分にかかる20%の所得税が減ったってことね。

左野くん
左野くん

8千円×20%=1,600円ってことか。

なお、寄付と寄附はまったく同じ意味ですが、法律の条文などでは寄附が主に使われます。

所得税の寄附金控除

寄附金控除の対象や出し方は所得税と住民税とで異なります。

まず最初に、所得税の寄附金控除の決まりや出し方について説明します。

所得税の寄附金控除の対象となる寄附金

寄附金控除の対象となるのは、以下に該当する寄附金です。

  1. 国、地方自治体に対する寄附金
  2. 公益法人などに対する以下の要件を満たす寄附金 ※1
    • 広く一般に募集される
    • 教育の振興、社会福祉への貢献など公益の増進に寄与し、緊急を要する支出に充てられる
  3. 以下の法人の主業務に関連する寄附金
    • 独立行政法人
    • 一定の業務を主目的とする地方独立行政法人
    • 自動車安全運転センター
    • 日本司法支援センター
    • 日本私立学校振興・共済事業団
    • 日本赤十字社
    • 公益社団法人
    • 公益財団法人
    • 私立学校法人
    • 社会福祉法人
    • 更生保護法人
  4. 一定の要件を満たす特定公益信託に対する寄附金
  5. 個人が行う以下に該当する政治献金
    1. 政党、政治団体、政治資金団体、公職の候補者の ※2 ※3
    2. 政治活動に対する寄附金で
    3. 政治資金規正法に基づく報告がなされるもの
  6. 認定NPO法人等に対する寄附金

(典拠:所法第七十八条所令第217条措法第41条の18

ただし、以下に該当するものは寄附金控除の対象となりません。

  • 寄附をした人に特別な利益が及ぶもの
  • 学校への入学に際して行うもの
  • 政治資金規正法に違反するもの
タロウさん
タロウさん

赤い羽根募金や24時間テレビ、国境なき医師団への寄付も寄附金控除の対象だよ!

※1 当該法人の設立に関する許認可が下りることが確実である場合に限り、当該法人が設立される前になされた寄附金も寄附金控除の対象となります。(所令第215条
※2 政党は次のいずれかの条件を満たす必要があります。1.所属国会議員が5人以上。2.以下のいずれかの選挙における全国の得票率が2%以上。a.直近の衆議院総選挙の小選挙区選挙または比例代表選挙、b.直近及びその前の参議院通常選挙の選挙区選挙または比例代表選挙。(政治資金規正法第3条
※3 公職とは以下のいずれかです。1.国会議員、2.都道府県議会議員、3.都道府県知事、4.政令指定都市議会議員、5.政令指定都市市長。(措法第41条の18
認定NPO法人とは、所轄する地方自治体の認定を受けたNPO法人のことです。全国で約1千法人あります。(参考:所轄庁認定NPO法人名簿

所得税の寄附金控除の控除額

寄附金控除で受けることができる控除額の出し方は以下の通りです。

  • 控除額=寄附金の合計額-2千円

※「寄附金の合計額」は総所得金額等の40%が上限です。(典拠:所法第78条第1項

左野くん
左野くん

寄付したお金の合計が2千円を超えると寄附金控除を受けられるってことだね。

総所得金額等とは以下のすべてを足したものです。株や副業などをしていない普通の会社員であれば、給与所得=総所得金額等と考えてOKです。

  • 損失控除後の総所得の金額
  • 特別控除前の譲渡所得の金額
  • 株式などの譲渡所得の金額
  • 上場株式等の配当所得の金額
  • 先物取引の雑所得の金額
  • 山林所得の金額
  • 退職所得の金額

所得税の寄附金控除の節税効果

さきほども説明しましたが、寄附金控除で所得税がどのように減るのか例を見てみましょう。(所得税率が10%の場合、所得税額=課税所得×10%-97,500円)

  • 課税所得:300万円
  • 所得税率:10%
  • → 所得税額:300万円×10%-97,500円=202,500円

仮に、この人が日本赤十字を通して5千円を寄付したとします。

すると、5千円ー2千円=3千円が課税所得から控除されます。

その結果、次のようになります。

  • 控除後の課税所得:300万円-3千円=299万7千円
  • 所得税率:10%
  • → 所得税額:299万7千円×10%-97,500円=202,200円

控除前に比べて税金が300円減りました。

減った課税所得3千円にかかる10%分の所得税が減った形です。

右田さん
右田さん

「減った課税所得額×所得税率」が節税できる金額ってことね。

この章のまとめ

ここまでの要点を簡単にまとめます。

  1. 国などに寄付をすると
  2. 寄付金から2千円を引いた額に
  3. 所得税率をかけた額の
  4. 税金が減る
タロウさん
タロウさん

2千円を引いて税率をかける。仕組み自体はものすごく単純だよ!

所得税の寄附金特別控除

一部の寄附金については、さきほど説明した通常の寄付金控除とは別に、寄附金特別控除を利用できます。

よほどの高額所得者でない限り、こちらの方が節税効果が大きいです。

ただし内容が複雑ですので、自分に関係がなさそうならば次の章に飛んで下さい。

タロウさん
タロウさん

できるだけていねいに説明するよ!

寄附金特別控除の対象となる寄附金

寄附金特別控除には次の3つがあります。(カッコ内はこの記事での略称)

  • 公益社団法人等寄附金特別控除(公益法人控除)
  • 認定NPO法人等寄附金特別控除(NPO控除)
  • 政党等寄附金特別控除(政党控除)

それぞれの特別控除の対象となるのは、以下に該当する寄附金です。

公益社団法人等寄附金特別控除の対象となる寄附金

公益法人控除の対象となるのは、以下の法人に対する一定の要件を満たす寄附金です。

  1. 以下のいずれかの法人に該当し
    • 公益社団法人
    • 公益財団法人
    • 私立学校法人
    • 社会福祉法人
    • 更生保護法人
    • 国立大学法人 ※
    • 公立大学法人 ※
    • 独立行政法人国立高等専門学校機構 ※
    • 独立行政法人日本学生機構 ※
  2. 以下の点について
    • 運営組織と事業活動が適正であること
    • 市民から支援を受けていること
    • 学生等の就学支援事業に充てられること(※のみ)
  3. 一定の要件を満たす法人

(典拠:措法第41条の18の3

なお、3の「一定の要件」は租税特別措置法施行令に定められていますが、長文かつ内容が複雑ですので、各法人に要件を満たすか聞いた方が早いと思います。

左野くん
左野くん

寄付をする時に「寄附金控除の対象になりますか?」って聞いた方が早そうだね。

認定NPO法人等寄附金特別控除の対象となる寄附金

NPO控除の対象となるのは以下に対する寄附金です。

  • 認定NPO法人

(典拠:措法第41条の18の2

認定NPO法人とは、所轄する地方自治体の認定を受けたNPO法人のことです。全国で約1千法人あります。(参考:所轄庁認定NPO法人名簿

政党等寄附金特別控除の対象となる寄附金

政党控除の対象となるのは、個人が行う以下に該当する政治献金です。

  1. 以下のいずれかが行う
    • 政党
    • 政治団体
    • 政治資金団体
    • 公職の候補者
  2. 政治活動に対する寄附金で
  3. 政治資金規正法に基づく報告がなされるもの

(典拠:措法第41条の18

タロウさん
タロウさん

上で説明した通常の寄附金控除と同じ条件だよ!

寄附金特別控除の控除方法

所得税の寄附金控除の控除の仕方には次の2つがあります。

  • 所得控除
  • 税額控除

さきほど説明した通常の寄附金控除は所得控除です。

これに対して寄附金特別控除では、所得控除にするか税額控除にするかを納税者が選択できます。

そこでまず、所得控除と税額控除の違いを説明します。

所得控除と税額控除の違い

所得税は次の手順で算出します。

  1. 収入から
  2. 必要経費や給与所得控除を引いて
  3. 所得を出し
  4. そこから所得控除を引いて
  5. 課税所得を出し
  6. それに所得税率をかけて
  7. 所得税額を出し
  8. そこから税額控除を引いて
  9. 基準所得税額を出し
  10. それに復興特別所得税を足して
  11. 外国税額控除などを引いて
  12. 所得税の申告納税額を出す

要するに、おおもとの収入からいろいろ引き算をして、納税する金額が決まるということです。

そして、4のところで引くのが所得控除、8のところで引くのが税額控除です。

寄附金特別控除ではどちらにするかを選べますが、年収が4千万円前後にならない限り、税額控除の方が節税効果が大きいので有利です。

右田さん
右田さん

所得税率をかけて所得税額を出してから引いた方がオトクってことね。

タロウさん
タロウさん

では、所得控除の場合と税額控除の場合の控除額の出し方を見てみましょう。

寄附金特別控除の所得控除額の出し方

所得控除の場合の控除額の出し方は、上で説明した通常の寄附金控除の控除額の出し方と同じです。

  • 控除額=寄附金の合計額-2千円

※「寄附金の合計額」は総所得金額等の40%が上限です。

例えば、寄附金の合計額が1万円の場合、控除額は8千円です。

課税所得が8千円減るので、例えば所得税率が20%だったら、税金が8千円×20%=1,600円減ります。

寄附金特別控除の税額控除額の出し方

税額控除の場合の控除額の出し方は、3つの寄附金特別控除ごとに微妙に異なります。

それぞれについて説明します。税額

1.公益社団法人等寄附金特別控除の税額控除額の出し方

公益法人控除の場合、2千円を引いたあとで40%をかけます。

  • 控除額=(寄附金の合計額-2千円)×40%

※1 公益法人控除額とNPO控除額の合計は所得税額の25%が上限です。
※2「寄附金の合計額」の上限は、「総所得金額等の40%」から「通常の寄附金控除を受けた寄附金額」を引いた額です。
※3 100円未満は切り捨てます。

(典拠:措法第41条の18の3TA No.1266

さきほどと同じように寄附金の合計額が1万円の場合、控除額は3,200円です。

これが所得税額からまるまる引かれるので、所得税が3,200円減ります。

左野くん
左野くん

さっきの所得控除では1,600円しか減らなかったから、こっちの税額控除の方が確かに節税効果が大きいね!

寄附金の合計額について

※2(「寄附金の合計額」の上限は、「総所得金額等の40%」から「通常の寄附金控除を受けた寄附金額」を引いた額です。) が分かりにくいと思うので補足説明します。

例えば、総所得金額等が200万円で、国に寄付した10万円について通常の寄附金控除を受けたとします。

この場合、「寄附金の合計額の上限」は次のようになります。

  • 200万円×40%-10万円=70万円

このため、仮に公益法人に100万円を寄付したとしても、控除額の計算式「(寄附金の合計額-2千円)×40%」に当てはめられる「寄附金の合計額」は70万円です。

よって、控除額は(70万円-2千円)×40%=279,200円となります。(NPO控除額との合計が所得税額の25%を超えていない場合)

タロウさん
タロウさん

よほどたくさん寄付しない限り上限を超えることはないので、あまり気にしなくて大丈夫だよ!

2.認定NPO法人等寄附金特別控除の税額控除額の出し方

NPO控除の場合も2千円を引いたあとで40%をかけます。

ただし、寄附金の合計額を出す際に引くものが一つ増えます。

  • 控除額=(寄附金の合計額-2千円)×40%

※1 公益法人控除額とNPO控除額の合計は所得税額の25%が上限です。
※2「寄附金の合計額」の上限は、「総所得金額等の40%」から、1.通常の寄附金控除を受けた寄附金額と、2.公益法人控除を受けた寄附金額を引いた額です。
※3 100円未満は切り捨てます。

(典拠:措法第41条の18の2TA No.1263

例えば次のようになります。

  • 総所得金額等:200万円
  • 国への寄附金(通常の寄附金控除):10万円
  • 公益法人への寄附金(公益法人控除):1万円
  • NPO法人への寄附金(NPO控除):8万円
  • → 寄附金の合計額の上限=200万円×40%-10万円-1万円=69万円
  • → 控除額=(8万円-2千円)×40%=31,200円

税額控除ですので所得税が31,200円減ります。

右田さん
右田さん

8万円寄付して31,200円が戻ってくると考えると大きいよね!

3.政党等寄附金特別控除の税額控除額の出し方

政党控除の場合は2千円を引いたあとにかけるのが30%です。

また、寄附金の合計額を出す際に引くものがさらに一つ増えます。

  • 控除額=(寄附金の合計額-2千円)×30%

※1 政党控除額は所得税額の25%が上限です。
※2「寄附金の合計額」の上限は、「総所得金額等の40%」から、1.通常の寄附金控除を受けた寄附金額と、2.公益法人控除を受けた寄附金額と、3.NPO控除を受けた寄附金額を引いた額です。
※3 100円未満は切り捨てます。

(典拠:措法第41条の18TA No.1260

さきほどと同じように計算すると、次のようになります。

  • 総所得金額等:200万円
  • 国への寄附金(通常の寄附金控除):10万円
  • 公益法人への寄附金(公益法人控除):1万円
  • NPO法人への寄附金(NPO控除):8万円
  • 政党への寄附金(政党控除):4万円
  • → 寄附金の合計額の上限=200万円×40%-10万円-1万円-8万円=61万円
  • → 控除額=(4万円-2千円)×30%=11,400円

税額控除なので所得税がまるまる11,400円減ります。

左野くん
左野くん

200万円×40%=80万円だから、通常、公益法人、NPOで寄附金控除を80万円以上受けてたら、政党控除は受けられないってことだね。

上限の25%について注意点

なお、公益法人控除とNPO控除の合計額の上限は所得税額の25%ですが、これらとは別に政党控除の上限が所得税額の25%です。

ですので、公益法人控除、NPO控除、政党控除の3つを合わせて、最大で所得税額の50%まで控除を受けることができます。

タロウさん
タロウさん

以上で所得税の寄附金特別控除の説明は終わりです。次は住民税だよ!

住民税の寄附金控除

寄附金控除は所得税と住民税で対象や控除額の出し方が異なります。

この章では住民税の寄附金控除について説明します。

タロウさん
タロウさん

寄附金控除で住民税も安くなるよ!

住民税の寄附金控除は税額控除

まず、大切なことを押さえておきます。

  • 住民税の寄附金控除は税額控除だけ

さきほど説明したように、所得税の寄附金控除は所得控除が基本ですが、政治献金など一部の寄附金については、税額控除を選ぶことができます。

これに対して、住民税の寄附金控除はすべて税額控除です。

控除額がまるまる住民税から差し引かれます。

住民税の寄附金控除の対象となる寄附金

住民税の寄附金控除の対象となるのは以下の団体などに対する寄附金です。

  1. 住所地の都道府県共同募金会
  2. 住所地の日本赤十字社支部
  3. 住所地の地方自治体が条例で定めた公益法人や認定NPO法人など
  4. 地方自治体(ふるさと納税)

ただし、以下に該当するものは寄附金控除の対象外です。

  • 寄附をした人に特別な利益が及ぶもの

(典拠:地法第37条の2

3については各地方自治体で対象となる公益法人などが異なります。

また、国や政党など上記に含まれない団体への寄附金は、所得税の控除対象であっても住民税の控除対象とはなりません。

右田さん
右田さん

所得税の控除を受けられる、イコール、住民税の控除も受けられる、ではないってことね。

タロウさん
タロウさん

各公益法人などに直接聞くのが確実だよ!

※ 共同募金会、日本赤十字社への寄附金とふるさと納税は、所得税の控除も受けられます。
※ 「住所地」とは寄付を行った年の1月1日に住民票があった自治体です。

住民税の寄附金控除は2種類

住民税の寄附金控除には次の2種類があります。

  • 基本控除
  • 特例控除

そして、さきほどの4つについて適用される控除は以下の通りです。

対象 基本控除 特例控除
共同募金会 ×
日本赤十字社 ×
公益法人・認定NPO法人 ×
地方自治体(ふるさと納税)

ふるさと納税は基本+特例の2つの控除を受けられます。

他の3つは基本控除しか受けることができません。

タロウさん
タロウさん

それでは、控除額の出し方を見ていくよ!

ふるさと納税以外の控除額(基本控除)

まず、ふるさと納税以外の住民税の寄附金控除、つまり、基本控除の出し方を説明します。

基本控除の控除額の出し方

共同募金、赤十字、公益法人への寄附金の合計額を基準に算出します。

  1. 一般の地方自治体の場合
    • 都道府県分:(寄附金の合計額-2千円)×4%
    • 市区町村分:(寄附金の合計額-2千円)×6%
  2. 政令指定都市の場合
    • 都道府県分:(寄附金の合計額-2千円)×2%
    • 政令指定都市分:(寄附金の合計額-2千円)×8%

※「寄附金の合計額」は総所得金額等の30%が上限です。

(典拠:地法第37条の2第314条の7

共同募金と日本赤十字は都道府県分+市区町村分で10%の控除となります。

公益法人などについては、例えば都道府県の条例で定めておらず、市区町村の条例だけが定めていると、6%の控除だけとなります。

なお、基本控除額を出す際の「寄附金の合計額」は総所得金額等の30%が上限です。

例えば、総所得金額等が1千万円だと「寄附金の合計額」の上限は300万円です。

実際に寄附した額の合計が仮に500万円であっても、上の式に当てはめることができるのは300万円です。

左野くん
左野くん

総所得金額等の30%を超えた分の寄附金は、住民税の寄附金控除の対象外ってことだね。

基本控除の節税効果

それでは具体的な例で基本控除の節税効果を見てみましょう。

次のような人が住所地にある日赤支部に寄付をしたとします。

  • 総所得金額等:300万円 → 「寄附金の合計額」の上限=90万円
  • 寄付した金額:10万円

寄附金上限額を超えていませんので、10万円すべてが寄附金控除の対象となります。

仮にこの人が一般の地方自治体に居住していると、住民税の寄附金控除額は次のようになります。

  • 都道府県分:(10万円-2千円)×4%=3,920円
  • 市区町村分:(10万円-2千円)×6%=5,880円
  • → 寄附金控除額の合計:3,920円+5,880円=9,800円

以上より、都道府県分と市町村分を合わせて、住民税が9,800円安くなります。

右田さん
右田さん

10万円寄付して9,800円戻ってくるんだから、節税効果は約10%だね。

ふるさと納税の寄附金控除

ふるさと納税の寄附金控除は少し複雑です。

所得税、住民税とは別に詳しく説明します。

タロウさん
タロウさん

できるだけかみくだいて分かりやすく説明するよ!

ふるさと納税の寄附金控除は3階建て

ふるさと納税では次の3つの寄附金控除を受けることができます。

  • 所得税(所得控除分)
  • 住民税(基本控除分)
  • 住民税(特例控除分)

つまり、3つの控除を足した合計額が、ふるさと納税の寄附金控除額です。

左野くん
左野くん

要するに税金面で思いっきり優遇されてるってことだね。

それでは、3つの控除額の出し方を順に説明していきます。

1.ふるさと納税の所得税の寄附金控除

所得税についてはこの記事の最初の方で説明した通りです。

  • 所得控除額=寄附金の合計額-2千円

※「寄附金の合計額」は総所得金額等の40%が上限です。(典拠:所法第78条第1項

なお、所得税分については所得控除です。

2.ふるさと納税の住民税の基本控除

住民税の基本控除もすでに説明した通りです。

  • 基本控除額=(寄附金の合計額-2千円)×10%

※「寄附金の合計額」は総所得金額等の30%が上限です。

ふるさと納税はすべての地方自治体が対象ですので、都道府県分+市町村分(政令指定都市分)で10%となります。

また、住民税の基本控除は所得控除ではなく税額控除です。

右田さん
右田さん

控除する金額分、まるまる税金が安くなる方だね。

3.ふるさと納税の住民税の特例控除

ここからが新しい内容です。

住民税の特例控除はふるさと納税の寄附金額を基準に、次のように算出します。

  • 特例控除額=(寄附金の合計額-2千円)×(90%-所得税率×1.021)

※ 「寄附金の合計額」は総所得金額等の30%が上限です。
※ 所得税率×1.021となるのは2037年までです。(復興特別所得税)
※ 特例控除額は住民税所得割額の20%が上限です。

(典拠:地法第37条の2第314条の7

特例控除も税額控除です。

ふるさと納税の節税効果

それでは、ふるさと納税で税金がどのように減るか実際に出してみましょう。(計算が分かりにくくなるので、復興特別所得税は無視します。)

次のような例で考えます。

  • ふるさと納税の寄附金合計額:5万円
  • 所得税率:20%
タロウさん
タロウさん

3つの控除をそれぞれ出して、最後に足し算するよ!

1.所得税の寄附金控除

まず、所得控除額を出します。それにかかる所得税率20%分の税金が減ります。

  • 所得控除額=5万円-2千円=4万8千円
  • → 節税額=4万8千円×20%=9,600円
左野くん
左野くん

課税所得が4万8千円減るので、それにかかるはずだった20%分の所得税が払わなくて良くなるってことだね。

2.住民税の基本控除

次は住民税の基本控除分です。

  • 基本控除額=(5万円-2千円)×10%=4,800円

住民税の基本控除は税額控除なので、4,800円がまるまる税金から差し引かれます。

右田さん
右田さん

本来、払わないといけない住民税から4,800円引かれるので、住民税が4,800円減るってことね。

3.住民税の特例控除

最後にふるさと納税だけが使える特例控除です。(復興特別所得税は無視します。)

  • 特例控除額=(5万円-2千円)×(90%-20%)=33,600円

特例控除も税額控除なので、所得税が33,600円安くなります。

4.合計の節税額

以上3つを足すと、ふるさと納税で税金がこのように減ります。

  • 所得税の寄附金控除:9,600円
  • 住民税の基本控除:4,800円
  • 住民税の特例控除:33,600円
  • → 合計節税額:48,000円

このように、ふるさと納税をすると寄付した金額から2千円を引いた額が戻ってきます

タロウさん
タロウさん

一番大きい住民税の特例控除を忘れないようにしてね!

寄附金控除を受けるための手続き

寄附金控除を受けるための手続きを説明します。

ふるさと納税だけ特例があります。

タロウさん
タロウさん

ここから先は簡単だよ!

寄附金控除を受けるには確定申告が必要

確定申告を行うことで寄附金控除が受けられます。

会社員などで年末調整を行っている場合でも確定申告が必要です。

なお、確定申告を行う際には以下の書類を添付または提示します。(所法第120条

  1. 必ず必要なもの
    • 寄付した相手が発行した寄附金の明細(寄付者の氏名、寄付金額、寄付先の名称、その他法令が必要と定めるすべての事項)が分かる受領証(領収書)など
  2. 寄付先によって必要なもの
    • 寄付先である団体や法人、信託などが、当該団体や法人、信託などとして適格であることを示す証明書などの写し

(典拠:所令第262条所規第47条の2

以下の点に注意して下さい。

  • 所得税の確定申告を行うと、住民税の寄附金控除の手続きは不要です。
  • 確定申告を行わない場合は、市町村役場で住民税の寄附金控除の手続きを行います。
  • 受領証(領収書)には確定申告を行う者が寄附者として記載されていなければなりません。
  • e-Taxで確定申告を行う場合、受領証(領収書)の添付は必要ありません。
  • ただし、税務調査が入る可能性があるので、申告期限が終わってから5年間は保管しておくべきです。
タロウさん
タロウさん

必要な書類は寄付先がよく知っているので、寄付した団体や法人に聞くのが確実だよ!

ふるさと納税のワンストップ特例制度

ふるさと納税については、確定申告をせずに寄附金控除を受けられる「ワンストップ特例制度」があります。

面倒な確定申告をせずに済む便利な制度です。(以下、地法附則第7条、第7条の2

利用できる条件

ワンストップ特例制度は下記の条件すべてを満たす人だけが利用できます。

  • 確定申告をする必要がない
  • 寄付先の自治体が5つ以内

給与所得者など、もともと確定申告をする必要がない人が対象です。

何らかの理由で確定申告を行う場合、ワンストップ特例制度は利用できません。

なお、寄付先の自治体が5つ以内であれば、寄付した回数が5回を超えてもかまいません。

左野くん
左野くん

5つの自治体に合計100回でもOKってことだね。

控除を受ける手続き

ワンストップ特例制度でふるさと納税の寄附金控除を受けるには、寄附をした自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を送ります

逆に言うと、この申請書を送りさえすれば、他に何もせずにふるさと納税の寄附金控除を受けることができるということです。

なお、申請書とともに以下1~2のいずれかのコピーをそれぞれの自治体に送ります。

  1. 以下の2点
    • マイナンバーカードの表面
    • マイナンバーカードのウラ面
  2. 以下のA、Bそれぞれから1点ずつ
    1. 以下のいずれか1点
      • 個人番号通知カード
      • 住民票(個人番号が記載されているもの)
    2. 以下のいずれか1点
      • 運転免許証
      • パスポート
      • 在留カード

※ 上記以外が認められる自治体もあります。

以下の点に注意して下さい。

  • 申請書は総務省ホームページ(PDF)からダウンロードできます。
  • 申請書は郵送します。(メール添付、FAXなどは不可)
  • 申請書は寄付をした翌年の1月10日までに各自治体に必着です。(発送日の消印有効ではない)
  • 申請書は寄付1回につき1枚を送ります。(同一自治体への複数回数分をまとめて1枚にするのは不可)
右田さん
右田さん

例えば、3つの自治体に合計50回寄付したら、申請書とマイナンバーカードのコピーとかのセットを50回郵送しないといけないってことね。面倒くさい~

タロウさん
タロウさん

そのレベルになるとe-Taxで確定申告した方が楽かもしれないね!

ワンポイント特例制度の注意点

注意点は以下の通りです。

  • ワンストップ特例制度と確定申告を併用することはできません。
  • 地震保険料控除や医療費控除など、他の所得控除を確定申告で行う場合も、ワンストップ特例制度は使えません。(確定申告で寄附金控除を受けます。)
  • 所得税分も含めて全額が住民税から控除されます。(控除される税金の合計額は変わりません。)
  • 例えば、寄附金控除で所得税が2千円、住民税が8千円減る場合、ワンストップ特例制度を使うと住民税が1万円減ります。
タロウさん
タロウさん

ワンストップ特例制度を使えるのは確定申告を一切しない人だけです。確定申告をする人はふるさと納税の寄附金控除の手続きも確定申告で行います!

ソーシャルレンディングと寄附金控除

寄付型クラウドファンディングで寄付先が認定NPO法人や公益法人などの場合は、寄附金控除を受けることができます。

これに対し、ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)や不動産投資型クラウドファンディングは、寄附金控除を受けることはできません。

また、ふるさと納税の寄附金控除の大半は住民税の特例控除です。

そして、上で説明した通り特例控除は税額控除であり、所得控除ではありません。

このため、ソーシャルレンディングや不動産クラファンの収益を打ち消して課税所得を減らすのには、寄附金控除はあまり有効とは言えません。

タロウさん
タロウさん

寄附金控除はソシャレンや不動産クラファンの節税対策には、あまり効果的じゃないよ!

寄附金控除のまとめ

かなり長くなりましたので、最後に要点をまとめます。

  1. 寄附金控除を受けると
    1. 課税所得が減るので
    2. 支払う税金が減ります
  2. 所得税の寄附金控除の対象は主に以下への寄附金です
    • 国、地方自治体
    • 公益法人
    • 独立行政法人、日本赤十字社、私立学校法人
    • 政党、政治団体、政治資金団体
    • 認定NPO法人
  3. 所得税の寄附金特別控除の対象は以下への寄附金です
    • 公益社団法人など
    • 認定NPO法人
    • 政党、政治団体など
  4. 所得税の寄附金控除の控除の仕方は以下の2通りです
    • 通常の寄附金控除:所得控除
    • 寄附金特別控除:所得控除か税額控除(選べる)
  5. 住民税の寄附金控除の対象は主に以下への寄附金です
    • 共同募金会
    • 日本赤十字社
    • 条例で定めた公益法人や認定NPO法人
    • 地方自治体(ふるさと納税)
  6. 住民税の寄附金控除の控除の仕方は税額控除です
    • 所得控除ではありません
  7. 住民税の寄附金控除は以下の2種類です
    • 基本控除
    • 特例控除(ふるさと納税だけ)
  8. ふるさと納税は以下の3つの控除を受けられます
    • 所得税(所得控除分)
    • 住民税(基本控除分)
    • 住民税(特例控除分)
  9. 寄附金控除を受けるには確定申告が必要です
    • ふるさと納税はワンストップ特例制度を使えます

寄附金控除は制度が複雑です。

基本だけしっかり押さえて、詳細はその都度、寄付先に確認しましょう。

タロウさん
タロウさん

寄付って良いことをするのだから、節税にしっかり活用させてもらおうね!

コメント

元本

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、投資家が出資(投資)したお金のことを元本といいます。

こんな感じに別ウィンドウが開き、ここで用語の解説などをします。

右下の「close」か別ウィンドウの外の部分をタップすると、別ウィンドウが閉まり記事に戻ります。

不成立

不成立とは案件の募集を行ったが、事情により案件を実行できなくなることです。

例えば、応募が最低成立金額に達しない場合、案件を実行できず不成立となります。

また、不動産クラファンで応募は順調に集まっていたものの、取得予定だった不動産に不備が見つかったため取得が中止になり、案件が不成立となることもありえます。

最低成立金額

例えば、ソーシャルレンディングで「投資家から5千万円集めて企業に貸す」という案件があるとします。

この案件を募集して10万円しか集まらなかったら、ぜんぜん足りないので貸せませんよね?

でも、不足が数百万円ならば、その分は業者が自社で資金を出して合計5千万円とし、企業への融資を実行できるかもしれません。

そこで、業者が募集の際に「4千万円以上集まれば、満額集まらなくても不足分は自社で負担して融資を実行します」と約束します。

この場合の4千万円が最低成立金額です。

つまり、最低これだけ集まれば案件を実行しますよというラインのことです。

貸付金利

ソーシャルレンディングでは投資家から集めたお金を企業などに貸し、得られた利益を投資家に分配します。

例えば、企業に7%で貸し、ソシャレン業者が利益を2%取り、5%を投資家に分配します。

ソーシャルレンディングの貸付金利の説明図

企業に貸す際の金利(上図の7%)が貸付金利です。

上場企業系

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングで「上場企業系」とは、運営会社やその親会社が上場企業であることを指します。

上場企業は信用力が高いことから、上場企業系の業者が運営するソシャレン、不動産クラファンは信頼性、安全性が高いと考える投資家が多いです。

ただし、「上場企業系=100%安全」とは限らないので注意が必要です。

運用と運用期間

不動産クラウドファンディングにおいて運用とは、投資家から集めた資金で取得した不動産を、賃貸したり売却したりすることで利益を生み出すことをいいます。

運用を行う期間は案件ごとにあらかじめ決められており、これを運用期間といいます。

マスターリース契約

不動産クラウドファンディングでは投資家の資金で不動産クラファン業者が物件を取得し、入居者から家賃を得ます。

しかし、入居者が見つからなければ家賃が入らず、投資家が分配金を得られなくなります。

そこで、不動産クラファン業者が不動産業者と次のような契約を結びます。

  1. 不動産クラファン業者が不動産業者に部屋を貸す
  2. 不動産業者が入居者に部屋を貸す
  3. 入居者が見つからなくても不動産業者は毎月の家賃を不動産クラファン業者に払う

マスターリース

これがマスターリース契約です。

マスターリース契約により投資家は入居者が見つからないリスクから隔離され、投資の安全性が向上します。

部分当選

ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングの募集には、早い者勝ちの先着方式の他に、応募した人の中から投資できる人を抽選で決める抽選方式があります。

抽選方式では、50万円で応募して当選したら50万円投資できるのが基本です。

しかし、50万円の内、30万円分だけ当選する(=30万円だけ投資できる)こともあります。

これが部分当選です。

当選者の最後の1人が残額を割り当てられて部分当選になる場合の他、多くの人を当選にするために業者が全員を部分当選にする場合などがあります。

借り手企業

ソーシャルレンディングでは投資家から集めたお金を、ソシャレン業者が企業に貸します。

ソーシャルレンディングの仕組み

案件の募集で集められた投資家のお金を借りるのが借り手企業です。

借り手企業が倒産したり返済不能になると、投資家のお金が戻ってこない場合があります。

ソーシャルレンディングのリスク

ですので、ちゃんと返済できるのか?ソーシャルレンディングでは借り手企業の見極めが非常に重要です。

満室賃料

満室賃料とは、その物件が満室の場合に得られる想定賃料のことです。

全4室の1棟アパートで、各部屋の賃料が以下の場合、

  • 101号室:4.5万円
  • 102号室:4.5万円
  • 201号室:5.5万円
  • 202号室:5.5万円

満室賃料は月間20万円、年間240万円です。

空室リスク

空室リスクとは投資対象物件に入居者がつかず、空室で家賃収入を得られなくなるリスクです。

匿名組合型と任意組合型

不動産クラウドファンディングを含む不動産特定共同事業は、主に匿名組合型と任意組合型に分かれます。

主な違いは一般に下表の通りです。

匿名組合型 タイプ 任意組合型
匿名組合契約 契約 任意組合契約
なし 物件の所有権 あり
少なめ 最低出資額 多め
短め 運用期間 長め
有限責任 責任 無限責任
雑所得 所得区分 不動産所得

物件が倒壊して隣接する建物に被害が及んだ場合、任意組合型では出資額を超えて賠償責任が発生します。

匿名組合型の場合は責任範囲は出資額が上限であり、最悪でも全損で済みます。

任意組合型は所得区分が不動産所得で有利なため、相続など節税対策に使われることが多いです。

不動産クラファンではほとんどの案件が匿名組合型です。

不動産特定共同事業

不動産特定共同事業は次のような事業です。

  1. 複数の投資家から出資を受け
  2. 集まった資金で不動産を取得、運用し
  3. 得られた利益を投資家に分配する

多くの場合、1億円の1棟マンションを100口の持ち分に分割し、1口100万円で販売するといった、不動産小口化商品の形を取ります。

不動産特定共同事業のうち、募集などをインターネットを使って行うのが不動産クラウドファンディングです。

不動産小口化商品

不動産小口化商品は不動産を小口の持分に分割して販売する不動産投資商品です。

例えば、1億円の1棟マンションを1口100万円の持分100口に分割し、1口単位で販売します。

仮にこのマンションで1,000万円の利益が出た場合、1口投資した人は10万円、5口投資した人は50万円を得るイメージです。

不動産クラファンの場合、持分には利益の分配を受ける権利が含まれますが、物件の所有権は含まれません。

 

デポジット口座

デポジット口座とは業者内で投資家ごとに設置されるお財布のようなものです。

デポジット口座方式の業者では、投資家は事前に銀行から業者にお金を振り込み、そのお金は業者内のデポジット口座で保管されます。

デポジット口座

そして、デポジット口座のお金で案件に投資します。

また、分配金や償還された元本はデポジット口座で保管され、投資家が必要なときに出金申請し、自分の銀行口座に引き出します。

デポジット口座

 

売却リスク

不動産において、物件が予定通りの価格で売却できない、もしくは、売却そのものができない可能性を売却リスクといいます。

売却リスクが現実化すると、投資家には次のような不利益が生じる場合があります。

  • 分配金が予定額を下回る
  • 分配を受けられない
  • 元本の一部が戻ってこない
  • 元本のすべてが戻ってこない

流動性

不動産において、売買のしやすさや、現金化のしやすさを流動性といいます。

都心の一等地など需要が高く売りやすい物件は「流動性が高い」、逆に農村の空き家など需要が低く売りにくい物件は「流動性が低い」です。

譲渡

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングで自分の出資持分(利益の分配や元本の償還を受ける権利)を、第三者に譲り渡すことを譲渡といいます。

例えば、〇〇FUNDINGで10万円投資し、それを第三者(〇〇FUNDINGを含む)に10万円(もしくはそれ以外の金額)で買い取ってもらうイメージです。

入金と出金

投資するお金をソシャレン、クラファン業者の銀行口座に振り込むことを入金といいます。

運用が終わったお金が業者から投資家の銀行口座に振り込まれることを出金といいます。

元本

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、投資家が出資(投資)したお金のことを元本といいます。

リフォームとリノベーション

リフォーム、リノベーションともに、住宅の改修や改築を指します。

両者の違いはリフォームは「元の状態に戻す」ことであり、例えば壁の張替えや外壁の塗替えはリフォームです。

対して、リノベーションはリフォームよりも大がかりな改修、改築を行うことで「住宅の機能や価値を高める」ことを指します。

例えば、床暖房の新設や、壁を撤去して広々としたLDKへの間取りの変更はリノベーションです。

リフォームが老朽化で800万円に下がった物件の価値を元の1,000万円に戻すのに対し、リノベーションでは機能を付加して1,200万円に高めるイメージです。

分配と分配金

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、運用で得られた利益を投資家に支払うことを分配といいます。

また、支払われる利益を分配金と呼びます。

案件

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、募集される1つ1つの投資商品のことを案件と呼びます。

この用語は次のように使われます。

  • 〇〇業者から新しい案件が出た
  • 今度の案件は利回りが高い
  • 先週は△△案件に10万円投資した
  • □□業者は先月は3案件募集があった
  • ◇◇案件に応募したが抽選で落選した

すいません、上手く説明できなくて。

区分マンション

マンションを部屋単位で購入し投資する場合、「区分マンションに投資する」といった表現をします。

対して、1棟単位で購入、投資する場合は「1棟マンションに投資する」といいます。

独立した部屋1つ1つが区分マンションであり、面積や間取りを問いません。

ワンルームでも4LDKでも区分マンションです。

大島てる

大島てるは全国の事故物件情報を掲載するウェブサイト、及び、そのサイトを運営する会社の名称です。

先着方式と抽選方式

ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングの募集方式は2つあります。

一つは募集開始と同時によ~いどんで早い者勝ちで投資できる人が決まる先着方式です。

もう一つは募集期間中に応募した人の中から抽選で投資できる人を決める抽選方式です。

成立前書面

成立前書面(契約成立前書面、契約締結前交付書面)は、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで案件に応募する前に確認する書類です。

確認することで応募できるようになります。

成立前書面の確認画面

案件の詳細情報や契約内容などが書かれており、契約書に相当するものだと考えてください。

多くの業者で募集開始前から確認が可能です。

サイトに書かれていない情報も多いので、事前に必ず確認することを強くおすすめします。

モニタリング

ソーシャルレンディングにおいてモニタリングとは、借り手が融資契約を守れるか、ソシャレン業者が監視することをいいます。

業者によって異なりますが具体的な作業としては、定期的な借り手企業の訪問、経営者などへのヒアリング、財務書類のチェックなどがあります。

定期的にモニタリングを行うことで借り手の異常などを早期に察知し、貸し倒れを防ぐことができます。

このため、業者のモニタリングの実施とその精度は投資家にとって重要です。

あと入金と事前入金

投資するお金を業者に入金する方法は2つあります。

一つは先着や抽選の結果、投資できることが決まってから業者の口座に振り込むあと入金方式です。

もう一つは募集開始前に業者のデポジット口座への入金が必要な事前入金方式です。

デポジット口座

デポジット口座のお金は応募した案件への出資に充当されます。

ただし、抽選に落選などで投資できなくなると、入金したお金がデポジット口座で寝ることになります。

さらに、このお金を自分の口座に出金する際の振込手数料が投資家負担の業者もあります。

投資家にとってはあと入金の方が有利です。

 

早期償還

ソーシャルレンディングで借り手が予定より早く返済したり、不動産クラウドファンディングで物件が予定より早く売れることがあります。

そういった理由で案件の運用が予定より短い期間で終わり、業者が元本を予定より早く投資家に返すことを早期償還といいます。

例えば、運用期間12カ月の予定が6カ月で早期償還になると、受け取る分配金は基本的に半分になります。

ネガティブに捉えられがちですが、業者が確実に返済できる借り手、売れる物件を選んで案件を組成した証でもあります。

分配原資

分配原資とは分配金の出どころのことです。

例えば、入居者から得る家賃から投資家に分配金を払う場合、分配原資は家賃です。

家賃はインカムゲインですので、分配原資はインカムゲインとも表現できます。

組成

案件を作ることを組成といいます。

  • 投資対象は緑町ハイツ102号室で
  • 利回りは4.5%で
  • 運用期間1年
  • 募集総額2,300万円の案件を作る

こうやって案件が出来上がります。

組成 → 募集 → 運用開始 → 運用終了 → 償還

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングの案件はこのような流れで運営され、その最初の段階が案件の組成です。

元本毀損

元本毀損(元本割れ)とは投資したお金の一部、または、すべてが戻ってこなくなることです。

例えば、不動産クラウドファンディングで2,000万円で取得した物件が1,500万円でしか売れなかった場合、元本の一部が戻ってこないことがあります。

また、取得した物件が地震で倒壊し売れなくなった、ソーシャルレンディングで借り手企業が倒産したなどで、元本の全額が戻ってこないこともありえます。

クラファン案件の管理手数料

不動産クラファンで区分マンションなどが投資対象になる場合、物件の入居者募集や家賃徴収といった管理業務が行われます。

これらの業務は業者または外部の不動産業者が代行し、そこでは管理手数料が発生します。

案件の利回りはこういった手数料や経費も差し引いた上で計算されたものです。

ですので、投資家が管理手数料を別途支払う必要はありません。

優先出資と劣後出資

不動産クラファンでは一般に投資家と業者が共同で出資し、物件を取得します。

例えば、投資家が2,400万円、業者が600万円出資し、3,000万円の物件を取得するといった感じです。

出資者 出資額
投資家(優先出資) 2,400万円
業者(劣後出資) 600万円
出資総額 3,000万円

この時、投資家分の出資を優先出資業者分の出資を劣後出資といいます。

なぜ、そのような言い方をするのかなど、詳しくは下記記事を参照してください。

優先劣後出資方式と劣後出資比率

キャピタルゲイン型

不動産クラファンの案件は大きくキャピタルゲイン型とインカムゲイン型に分かれます。

投資対象物件を売却した際の売却益を分配原資(分配金の出どころ)とする案件がキャピタルゲイン型です。

一方のインカムゲイン型は運用期間中の家賃収益を分配原資とします。

なお、売却益と家賃収益の両方を分配原資とする併用型の案件もあります。

自社買取

不動産クラファンでは運用期間の最後に物件を不動産投資家など第三者に売却するのが一般的です。

しかし、何らかの事情で売却できなかった場合、自社で物件を買い取ることがあります。

売却できずに元本が戻ってこないところが、業者が買い取ることで元本が戻ってくることになるので、自社買取は投資家にとってメリットです。

インカムゲイン型の案件では、最初から自社買取の予定で案件を組成することもあります。

劣後出資比率

不動産クラファンでは一般に投資家と業者が共同で出資し、物件を取得します。

例えば、投資家が2,400万円、業者が600万円出資し、3,000万円のマンションを取得するといった感じです。

このとき、出資総額に対する業者分の出資額の比率を劣後出資比率といいます。

さきほどの例では20%です。

出資者 出資額 出資比率
投資家 2,400万円 80%
業者 600万円 20%
合計 3,000万円

そして、劣後出資比率が高いほど安全性が高まります。

右田さん
右田さん

数字が大きいほど安全だよ。

なぜ高いほど安全なのか?

詳しくは下記記事を参照してください。

優先劣後出資方式と劣後出資比率

償還

案件の運用が終わり、業者が元本を投資家に返すことを償還といいます。

クリック合戦

募集が先着方式の案件では、投資できる人が決まるのは早い者勝ちです。

このため、人気の案件では募集開始と同時に応募が殺到します。

この状態をクリック合戦といいます。

信託受益権

信託受益権とは信託財産から発生する利益を受け取る権利のことです。

詳しくは↓こちらの記事を参照してください。

信託受益権とは?(別タブで開く)

信託受益権とは?(今開いているタブで開く)

抵当権と根抵当権と極度額

抵当権とは借り手が返済できなくなった時に担保を売却し、その代金から他の債権者に優先して返済を受ける権利です。

抵当権は1つの借り入れに対して設定されるため、返済時点で消滅します。

これに対し根抵当権ではあらかじめ融資の上限額を設定し、その範囲内であれば何度でも融資と返済が可能です。

その都度、抵当権の設定登記を行う必要がないため、企業への融資などでよく利用されます。

極度額は根抵当権の融資上限額のことです。

債務履行

まず、「債務」とは他人に対し何らかの行動を行う義務のことです。

そして、債務を実際に行うことを債務履行といいます。

ソーシャルレンディングの場合、借り手(債務者)が利払いや元本の返済をすることや、連帯保証人が借り手に代わってそれらを行うことが債務履行にあたります。

逆に、借り手が経営悪化などに至り、利払いや元本返済をしない(できなくなる)ことが債務不履行です。

LTV

ソーシャルレンディングで使われる用語で、担保評価額に対する融資額の割合をいいます。

例えば、1億円の土地を担保に8千万円を融資する場合、LTVは80%です。

担保が評価額通りに売れるとは限らないため、LTVの数字が小さいほど安全性が高いとされます。

資金使途

ソーシャルレンディングで業者から借りたお金を借り手が何に使うかを資金使途といいます。

延滞

ソーシャルレンディングで借り手が期限内に返済できなくなることを延滞といいます。

また、ソシャレン、不動産クラファンで分配金の支払いや元本の償還が予定より遅れている状態を延滞と呼ぶことがあります。

業者や投資家によっては「遅延」という表現が使われることもありますが、意味は同じです。