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ソーシャルレンディングの借り手企業の匿名化が解除されるまでの経緯

2017年から2018年にかけて、ソーシャルレンディングでは数々の事件が起こりました。

その元凶となったのが、いわゆる「借り手企業の匿名化問題」です。

匿名化問題は2019年3月に金融庁が匿名化を解除したことで一応の解決を見ました。

この記事では匿名化が解除されるまでにどのような経緯をたどったかを紹介します。

タロウさん
タロウさん

ソーシャルレンディングの発展の過程で何があったかを伝え残します。

この記事の著者
投資家・ブロガー
タロウ

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファディング専門の投資家です。
2018年にソシャレン・クラファン投資を始め、これまで400件を超える案件に2億円以上を投資し損失ゼロ。
安全性を最重視した投資情報を発信しています。

ソーシャルレンディングの借り手企業の匿名化とは?

左野くん
左野くん

「借り手企業の匿名化」って何のこと?

匿名化をよく知らない方のために簡単に説明します。(ご存知の方は次の章へ!)

ソーシャルレンディングにおける借り手企業の匿名化とは、ザックリ言うと、

  1. 貸金業法に違反しないために
  2. 借り手企業が具体的に何という会社なのか
  3. 分からないようにする

ことです。

タロウさん
タロウさん

ササッと簡単に説明します!

 

ソーシャルレンディングと貸金業法

ソーシャルレンディングでは、投資家がソシャレン業者を通して企業にお金を貸します

この行為が貸金業務に当たると判断される場合、投資家は貸金業者の登録をする必要があります。(貸金業法第3条

しかし、登録には5千万円以上の純資産が必要などハードルが高く、すべての投資家が貸金業者として登録するのは非現実的です。

このため、ソーシャルレンディングにおいて、この貸金業法の問題が長らくグレーゾーンとなっていました。

 

金融庁の匿名化指導

そして、2014年に金融庁がソーシャルレンディング各社に対し、いわゆる「匿名化の指導」を行いました。

これにより、以下の3条件を満たす場合、投資家は貸金業務を行っていないと見なされることになりました。

  1. 投資家とソシャレン業者が匿名組合契約を結ぶ
  2. 一つの案件での貸付先を複数にする
  3. 投資家が貸付先企業が分からないようにする

この3つ目が「借り手企業の匿名化」です。

タロウさん
タロウさん

何という会社にお金を貸すのか、投資家に分からないようにする(匿名化)ってことだよ!

 

分からない会社にお金を貸すことに

右田さん
右田さん

匿名化でソーシャルレンディングはどうなったの?

借り手企業の匿名化によって、ソシャレン業者は借り手企業をアルファベットで表記するようになりました。

これにより、投資家は自分のお金を貸す相手が具体的に何という会社か、知ることができなくなりました。

普通、誰だか分からない人にお金を貸したりしませんよね?

ところがソーシャルレンディングでは、どこだか分からない会社にお金を貸す状態が長く続いてきたのです。

タロウさん
タロウさん

匿名化によって投資家は、相手が分からない状態での投資を強いられてきました!

借り手企業の匿名化の弊害

金融庁の指導により、投資家は借り手企業が何という会社なのかを知ることができなくなりました。

この匿名化がソーシャルレンディングで大きな弊害を生むことになります。

タロウさん
タロウさん

何が問題なのか説明するよ!

 

借り手企業の匿名化が不正の温床に

借り手企業の匿名化の最大の弊害は、匿名化が不正の温床になったことです。

例えば、投資家から集めた資金をソシャレン業者の親族企業に貸すとか。

集めたお金を投資家に事前に説明したのとは違う使途に流用するとか。

借り手が誰なのか分からないのを良いことに、悪意あるソシャレン業者が不正を行う余地が生まれてしまったのです。

そして、ついにそれが現実化しました。

タロウさん
タロウさん

匿名化が生み出した不正の温床が、投資家に多大な被害をもたらしました!

匿名化によるソーシャルレンディング業者の不祥事

ソーシャルレンディングでは2017年から2018年に数々の事件が起こりました。

そのうち、金融庁による匿名化が原因と考えられる事件を3つ挙げます。

これらの事件では多くの投資家が、すでに大きな被害を受けています。

タロウさん
タロウさん

匿名化で実際に被害が発生しました!

 

みんなのクレジット

投資家から集めたお金が、代表者が経営するグループ企業に貸し付けられました。

また、一部の資金は代表者の個人口座に振り込まれ、代表者の借金の返済に充てられていました。

さらに、募集した案件に実体がなく、集めた資金で以前の案件の返済を行うという、事実上の自転車操業になっていました。

未返済となっていた投資家のお金は、最終的に3%しか戻ってきませんでした。

 

ラッキーバンク

投資家から集めたお金の大半が、経営者の親族企業に貸し付けられていました。

また、すべての案件に不動産担保が付いていましたが、担保評価額が水増しされるなどの不正がありました。

ラッキーバンクは返済不能に陥り、最終的な被害総額は34億円。

被害に遭った投資家のお金は3割しか戻ってきませんでした。

 

トラストレンディング

投資家から20億円近くを集めた案件で事業実体がありませんでした。

また、投資家から集めた資金のうち16億円近くが、同社取締役の関連企業に流出していました。

投資家に返還されていないお金は数十億円に上っています。

 

事件に共通すること

左野くん
左野くん

なんでこんな事件が起こってしまったの?

これらの事件に共通するのは、見えないところで業者が好き勝手をしたことです。

親族企業に貸したり、自分の借金の返済に使ったり、資金を目的外に流用したり。

要は、匿名化で見えないのを良いことに、影でコソコソ悪事を働いた。

逆に言うと、匿名化などせずクリアに見える状態にしておけば、いくつかの事件は防げたはずです。

貸金業法との整合性を図る必要があったとはいえ、匿名化を指導した金融庁の責任は重大です。

タロウさん
タロウさん

貸金業法を適用せずに匿名化していなければ、投資家の被害は防げたはず!

ソーシャルレンディングの匿名化への政府の動き

一方、規制改革の側面から政府内でソーシャルレンディングの匿名化が取り上げられています。

ここでは、2018年2月から6月にかけての動きを見ます。

 

内閣府 規制改革推進会議

2018年2月27日に内閣府で開催された規制改革推進会議では、参加者から次のような意見が出されました。

 

貸金業法を適用することに無理がある

新経済連盟(代表 三木谷浩史楽天会長、副代表 藤田晋サイバーエージェント社長)は次のようにソーシャルレンディングの匿名化を批判しました。(出典:クラウドファンディングに係る規制改革要望 PDF、太字とカッコ内は筆者)

  • 投資家にとって投資対象が不明確となり、投資家の保護が十分に図られない
  • (匿名化の理由は貸金業法の精神である「借り手の保護」だが)貸付型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)の実態をみると、貸金業法の形式的な運用により借り手を保護する必要性がないだけでなく、かえって投資家保護が阻害される事態になっている
  • (投資家は)比較的少額の余剰資金を投資する個人であり、事業者(=借り手企業)相手に(借金取り立ての)追い込みをかける意図はない
  • (借り手は)情報を開示した上で投資家を集め、円滑な資金調達を実現したい
  • (借り手は)事業者であり、個人から追い込みをかけられる懸念は持っていない
  • 少なくとも現行の(ソーシャルレンディングに対する貸金業法の)運用は実態に即したものではない
  • そもそも、現行の貸金業法は貸付型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)という形態をまったく想定していない。そこに既存のスキームを無理やりあてはめようとした結果、無理が出ている

直球ド真ん中で金融庁を批判しています。

要約すると、

  • 貸金業法はソーシャルレンディングが登場する前に制定された
  • その貸金業法をソーシャルレンディングに無理に当てはめた
  • その結果、投資家保護が図られるどころか、阻害されている

ということです。

ソシャレン投資家のすべてが、この新経連の提言に喝采を送ったはずです。

タロウさん
タロウさん

貸金業法を適用させたのが諸悪の根源。新経連の言う通りです!

 

非匿名化を可能にすべき

また、会議に参加した森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士は、次のように指摘しています。(出典:Fintechの進展を踏まえた規制のあり方とクラウドファンディングに係る規制改革について PDF、太字とカッコ内は筆者)

  • (借り手企業の匿名化について)企画部門(=金融庁)の公式見解では「そのような規制は存在しない」(としているが)
  • 監督部門(貸金業者を監督する都道府県)の登録審査の現場では、(中略)複数化・匿名化を講ずる必要があるとの指導が行われている、と各事業者が指摘
  • (企画部門=金融庁は)公式見解を繰り返すばかりで、監督部門(都道府県)に改善が見られない
  • 貸金業者向け監督指針に貸付型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)における非匿名化・個別型の案件が可能であることを前提とした監督上の留意事項を記載してはどうか

こちらも金融庁を痛烈に批判しながら、匿名化と複数化を廃止すべきと提言しています。

右田さん
右田さん

役人以外はみんな何が問題か分かっているってことね。

タロウさん
タロウさん

一番分かっているのは当の役人たちのはず。分かっているのに変えられないのが日本の役人文化なのかもね。

 

規制改革実施計画

そして、2018年6月15日に閣議決定された規制改革実施計画に、匿名化解除が盛り込まれました。(出典:規制改革実施計画 PDF

この中の47ページで匿名化解除の方針が示されました。

要点を抜き出すと以下の通りです。

  • 匿名化・複数化が必須ではないことを前提として、ソーシャルレンディング投資家の貸金業者登録を不要とする新たな方策を検討する
  • その際、金融商品取引法の投資家保護と貸金業法の借り手保護を図る観点を踏まえる
  • 貸金業法の考慮が必要となる場合を明確化する
  • 平成30年度中に結論を出し実施する

役人の書く文章ってのは、どうにも分かりにくいですね。苦笑

つまり、

  • 平成30年度中(2019年3月末まで)に
  • 匿名化と複数化を不要とする
  • 明確なルールを決める

ということです。

規制改革実施計画が閣議決定されたことにより、ソーシャルレンディングにおける借り手企業の匿名化が解除されることが決まりました。

タロウさん
タロウさん

2018年6月に匿名化解除の方針が示されたよ!

ついにソーシャルレンディングの匿名化が解除

そして、規制改革実施計画の閣議決定から9ヶ月後の2019年3月18日。

ついに、ソーシャルレンディングの匿名化が解除されました。

 

金融庁が示した新たな指針

ソシャレン事業者(非公開)が提出した法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)に対する回答という形で、金融庁が指針を発表しました。

ポイントは以下の通りです。

  • 投資家とソシャレン業者が匿名組合契約を結ぶ
  • 投資家と借り手企業との接触を禁止する
  • 接触した場合、投資家と借り手にペナルティを課す

この3条件を満たせば匿名化しなくて良い、つまり、企業名などを公表して良いということです。

これにより、ついに匿名化が解除されました。

タロウさん
タロウさん

借り手が何という会社なのか、やっと分かるようになりました!

ソーシャルレンディングの匿名化解除の経緯のまとめ

以上、ソーシャルレンディングにおける借り手企業の匿名化が解除されるまでの経緯を紹介しました。

最後に簡単にまとめておきます。

  1. ソーシャルレンディングの投資家が貸金業法に違反する恐れ
  2. それを回避するための方策の一つが借り手企業の匿名化
  3. しかし、匿名化が悪意あるソシャレン業者の不正の温床となった
  4. そして、実際に投資家の被害を生み出した
  5. 規制改革論議から2018年6月に匿名化解除の方針
  6. 2019年3月に金融庁が匿名化を解除

新経連が指摘した通り、ソーシャルレンディングに貸金業法を適用させたことがそもそもの誤りです。

それが100億円を超えるソシャレン投資家の被害を生み出しました。

ソーシャルレンディングの発展の過程でこういった出来事があったことを、投資家のみなさんの記憶にとどめてもらえればと思います。

コメント

部分当選

ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングの募集には、早い者勝ちの先着方式の他に、応募した人の中から投資できる人を抽選で決める抽選方式があります。

抽選方式では、50万円で応募して当選したら50万円投資できるのが基本です。

しかし、50万円の内、30万円分だけ当選する(=30万円だけ投資できる)こともあります。

これが部分当選です。

当選者の最後の1人が残額を割り当てられて部分当選になる場合の他、多くの人を当選にするために業者が全員を部分当選にする場合などがあります。

デビュー案件

業者が運営を開始後、初めて募集する第1号案件のことを、このブログではデビュー案件と呼んでいます。

このブログが独自に使っている用語であり、一般用語ではありません。

デビュー案件は一般に安全性、利回りともに高いことが多いです。

また、運営開始直後で会員がまだ少ないため、競争率が低く投資しやすいです。

デビュー案件はおすすめだと僕は思っています。

軍用地案件

軍用地案件はソーシャルレンディングのPocket Fundingが扱っている案件です。

担保が投資用不動産として人気が高い軍用地であるため、元本をほぼ確実に回収できることから、安全性が非常に高い人気の案件です。

なぜ、軍用地案件で元本をほぼ確実に回収できるのかは、この狭いスペースでは説明できません。

3分で読めますので、こちらの記事を参照してください。

軍用地案件の安全性が高い理由

1棟アパート、1棟マンション

不動産クラウドファンディングで「1棟アパート、1棟マンション」という表現を使う場合、アパートやマンション丸々1棟が投資対象であることを表します。

逆に投資対象が部屋単位である場合は「区分マンション」という表現を使います。

(区分アパートというのは聞いたことがありません)

海外案件

ソーシャルレンディングでは投資家のお金を借りるのが海外の企業であったり、借り手が日本企業であっても資金使途が海外企業への出資であるなど、投資家のお金の最終的な行先が海外である案件を海外案件といいます。

不動産クラファンでは投資家のお金で取得するのが海外の不動産である案件を海外案件といいます。

一般に海外案件は利回りが高い一方、海外ゆえにリスクが高くなることが多いです。

投資においてリターンとリスクはワンセットであり、ハイリターン・ローリスクはありえません。

初心者は海外案件には手を出さないことを強くおすすめします。

分散投資

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで分散投資とは、利用する業者や投資する案件、案件のタイプなどを集中させず、複数に分ける投資手法のことです。

例えば、ソシャレンで1つの業者だけを使っている場合、その業者が倒産するとすべての資産を失うことになります。

また、不動産クラファンで東京の物件だけに投資していると、東京の地価の下落が全投資額に影響を及ぼしますよね?

分散投資をすることで大きな被害を防ぎ、万が一の場合でも被害を小さく済ませることができます。

事故

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで分配金の支払いや元本の償還が遅れたり、元本が戻ってこなくなるなどのトラブルを、このブログでは「事故」と表現しています。

業者

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングの運営会社のことを、このブログでは「業者」と呼んでいます。

FundsやCREAL、バンカーズ、いずれも業者です。

Fundsのサイトの画像

「事業者」という表現を使っているメディアもあります。

満了

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで募集額満額の応募が集まることを、このブログでは「満了」と表現しています。

募集額1億2千万円の案件で、応募が1億2千万円集まった状態が満了です。

満了のイメージ画像

「完売」という表現を使っているメディアもあります。

担保順位

1つの担保に複数の貸し手がいる場合の、貸したお金を回収する優先順位のことです。

例えば、評価額1億円の土地を担保に3者が下のように融資したとします。

担保順位 貸し手 融資額
第一順位 悪徳銀行 6千万円
第二順位 腹黒信金 2千万円
第三順位 山田さん 1千万円

借り手が返済できなくなり担保を処分するも、8千万円でしか売れなかった。

この場合、まず悪徳銀行が6千万円を回収、次に腹黒信金が2千万円を回収します。

第三順位の山田さんは1円も回収できません。

ソシャレン業者の担保順位が低い場合は注意が必要です。

源泉徴収税

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングでは、業者が20.42%の所得税を引いてから投資家に分配金を支払います。

この20.42%の所得税のことを源泉徴収税といいます。

引かれた源泉徴収税は業者が税務署に納めます。

壁芯面積

マンションの部屋の面積を測る際に、壁の中心線を基準に出した面積を壁芯面積といいます。

一方、我々が普通に使う壁の内側の線を基準に出した面積は内法面積です。

壁芯面積と内法面積の説明図

1口単位と最低口数

1口単位とは投資できる金額の単位です。

例えば1口=10万円の案件では、20万円、70万円と10万円単位で投資できます。

ですが、13万円や99万円では投資できません。

最低口数とは投資する際に最低限必要な口数です。

例えば以下の案件の場合、

  • 1口単位:1万円
  • 最低口数:2口

最低2万円から1万円単位で投資できます。

右田さん
右田さん

2万円の次は3万円だよ。

こんな感じに別ウィンドウが開き、ここで用語の解説などをします。

右下の「close」か別ウィンドウの外の部分をタップすると、別ウィンドウが閉まり記事に戻ります。

不成立

不成立とは案件の募集を行ったが、事情により案件を実行できなくなることです。

例えば、応募が最低成立金額に達しない場合、案件を実行できず不成立となります。

また、不動産クラファンで応募は順調に集まっていたものの、取得予定だった不動産に不備が見つかったため取得が中止になり、案件が不成立となることもありえます。

逆に成立は応募が集まり案件を実行できるようになることです。

最低成立金額

例えば、ソーシャルレンディングで「投資家から5千万円集めて企業に貸す」という案件があるとします。

この案件を募集して10万円しか集まらなかったら、ぜんぜん足りないので貸せませんよね?

でも、不足が数百万円ならば、その分は業者が自社で資金を出して合計5千万円とし、企業への融資を実行できるかもしれません。

そこで、業者が募集の際に「4千万円以上集まれば、満額集まらなくても不足分は自社で負担して融資を実行します」と約束します。

この場合の4千万円が最低成立金額です。

つまり、最低これだけ集まれば案件を実行しますよというラインのことです。

貸付金利

ソーシャルレンディングでは投資家から集めたお金を企業などに貸し、得られた利益を投資家に分配します。

例えば、企業に7%で貸し、ソシャレン業者が利益を2%取り、5%を投資家に分配します。

ソーシャルレンディングの貸付金利の説明図

企業に貸す際の金利(上図の7%)が貸付金利です。

上場企業系

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングで「上場企業系の業者」とは、業者自身やその親会社などが上場企業である業者を指します。

上場企業は信用力が高いことから、上場企業系の業者が運営するソシャレン、不動産クラファンは信頼性、安全性が高いと多くの投資家に認識されています。

ただし、「上場企業系=100%安全」とは限らないので注意が必要です。

運用と運用期間

不動産クラウドファンディングにおいて運用とは、投資家から集めた資金で取得した不動産を、賃貸したり売却したりすることで利益を生み出すことをいいます。

運用を行う期間は案件ごとにあらかじめ決められており、これを運用期間といいます。

マスターリース契約

不動産クラウドファンディングでは投資家の資金で不動産クラファン業者が物件を取得し、入居者から家賃を得ます。

しかし、入居者が見つからなければ家賃が入らず、投資家が分配金を得られなくなります。

そこで、不動産クラファン業者が不動産業者と次のような契約を結びます。

  1. 不動産クラファン業者が不動産業者に部屋を貸す
  2. 不動産業者が入居者に部屋を貸す
  3. 入居者が見つからなくても不動産業者は毎月の家賃を不動産クラファン業者に払う

マスターリース

これがマスターリース契約です。

マスターリース契約により投資家は入居者が見つからないリスクから隔離され、投資の安全性が向上します。

部分当選

ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングの募集には、早い者勝ちの先着方式の他に、応募した人の中から投資できる人を抽選で決める抽選方式があります。

抽選方式では、50万円で応募して当選したら50万円投資できるのが基本です。

しかし、50万円の内、30万円分だけ当選する(=30万円だけ投資できる)こともあります。

これが部分当選です。

当選者の最後の1人が残額を割り当てられて部分当選になる場合の他、多くの人を当選にするために業者が全員を部分当選にする場合などがあります。

借り手企業

ソーシャルレンディングでは投資家から集めたお金を、ソシャレン業者が企業に貸します。

投資家のお金を借りるのが借り手企業です。

ソーシャルレンディングの仕組み

そして、借り手企業が支払う利息が、投資家が受け取る分配金となります。

一方で、借り手企業が倒産したり返済不能になると、投資家のお金が戻ってこないことも。

ソーシャルレンディングのリスク

ですので、ちゃんと返済できるのか?ソーシャルレンディングでは借り手企業の見極めが非常に重要です。

満室賃料

満室賃料とは、その物件が満室の場合に得られる想定賃料のことです。

全4室の1棟アパートで、各部屋の賃料が以下の場合、

  • 101号室:4.5万円
  • 102号室:4.5万円
  • 201号室:5.5万円
  • 202号室:5.5万円

満室賃料は月間20万円、年間240万円です。

空室リスク

空室リスクとは投資対象物件に入居者がつかず、空室で家賃収入を得られなくなるリスクです。

匿名組合型と任意組合型

不動産クラウドファンディングを含む不動産特定共同事業は、主に匿名組合型と任意組合型に分かれます。

主な違いは一般に下表の通りです。

匿名組合型 タイプ 任意組合型
匿名組合契約 契約 任意組合契約
なし 物件の所有権 あり
少なめ 最低出資額 多め
短め 運用期間 長め
有限責任 責任 無限責任
雑所得 所得区分 不動産所得

物件が倒壊して隣接する建物に被害が及んだ場合、任意組合型では出資額を超えて賠償責任が発生します。

匿名組合型の場合は責任範囲は出資額が上限であり、最悪でも全損で済みます。

任意組合型は所得区分が不動産所得で有利なため、相続など節税対策に使われることが多いです。

不動産クラファンではほとんどの案件が匿名組合型です。

不動産特定共同事業

不動産特定共同事業は次のような事業です。

  1. 複数の投資家から出資を受け
  2. 集まった資金で不動産を取得、運用し
  3. 得られた利益を投資家に分配する

多くの場合、1億円の1棟マンションを100口の持ち分に分割し、1口100万円で販売するといった、不動産小口化商品の形を取ります。

不動産特定共同事業のうち、募集などをインターネットを使って行うのが不動産クラウドファンディングです。

不動産小口化商品

不動産小口化商品は不動産を小口の持分に分割して販売する不動産投資商品です。

例えば、1億円の1棟マンションを1口100万円の持分100口に分割し、1口単位で販売します。

仮にこのマンションで1,000万円の利益が出た場合、1口投資した人は10万円、5口投資した人は50万円を得るイメージです。

不動産クラファンの場合、持分には利益の分配を受ける権利が含まれますが、物件の所有権は含まれません。

 

デポジット口座

デポジット口座とは業者内で投資家ごとに設置されるお財布のようなものです。

デポジット口座方式の業者では、投資家は事前に銀行から業者にお金を振り込み、そのお金は業者内のデポジット口座で保管されます。

デポジット口座

そして、デポジット口座のお金で案件に投資します。

また、分配金や償還された元本はデポジット口座で保管され、投資家が必要なときに出金申請し、自分の銀行口座に引き出します。

デポジット口座

 

売却リスク

不動産において、物件が予定通りの価格で売却できない、もしくは、売却そのものができない可能性を売却リスクといいます。

売却リスクが現実化すると、投資家には次のような不利益が生じる場合があります。

  • 分配金が予定額を下回る
  • 分配を受けられない
  • 元本の一部が戻ってこない
  • 元本のすべてが戻ってこない

流動性

不動産において、売買のしやすさや、現金化のしやすさを流動性といいます。

都心の一等地など需要が高く売りやすい物件は「流動性が高い」、逆に農村の空き家など需要が低く売りにくい物件は「流動性が低い」です。

譲渡

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングで自分の出資持分(利益の分配や元本の償還を受ける権利)を、第三者に譲り渡すことを譲渡といいます。

例えば、〇〇FUNDINGで10万円投資し、それを第三者(〇〇FUNDINGを含む)に10万円(もしくはそれ以外の金額)で買い取ってもらうイメージです。

入金と出金

投資するお金をソシャレン、クラファン業者の銀行口座に振り込むことを入金といいます。

運用が終わったお金が業者から投資家の銀行口座に振り込まれることを出金といいます。

元本

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、投資家が出資(投資)したお金のことを元本といいます。

リフォームとリノベーション

リフォーム、リノベーションともに、住宅の改修や改築を指します。

両者の違いはリフォームは「元の状態に戻す」ことであり、例えば壁の張替えや外壁の塗替えはリフォームです。

対して、リノベーションはリフォームよりも大がかりな改修、改築を行うことで「住宅の機能や価値を高める」ことを指します。

例えば、床暖房の新設や、壁を撤去して広々としたLDKへの間取りの変更はリノベーションです。

リフォームが老朽化で800万円に下がった物件の価値を元の1,000万円に戻すのに対し、リノベーションでは機能を付加して1,200万円に高めるイメージです。

分配と分配金

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、運用で得られた利益を投資家に支払うことを分配といいます。

また、支払われる利益を分配金と呼びます。

案件

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで、募集される1つ1つの投資商品のことを案件と呼びます。

この用語は次のように使われます。

  • 〇〇業者から新しい案件が出た
  • 今度の案件は利回りが高い
  • 先週は△△案件に10万円投資した
  • □□業者は先月は3案件募集があった
  • ◇◇案件に応募したが抽選で落選した

すいません、上手く説明できなくて。

区分マンション

マンションを部屋単位で購入し投資する場合、「区分マンションに投資する」といった表現をします。

対して、1棟単位で購入、投資する場合は「1棟マンションに投資する」といいます。

独立した部屋1つ1つが区分マンションであり、面積や間取りを問いません。

ワンルームでも4LDKでも区分マンションです。

大島てる

大島てるは全国の事故物件情報を掲載するウェブサイト、及び、そのサイトを運営する会社の名称です。

先着方式と抽選方式

ソーシャルレンディングと不動産クラウドファンディングの募集方式は2つあります。

一つは募集開始と同時によ~いどんで早い者勝ちで投資できる人が決まる先着方式です。

もう一つは募集期間中に応募した人の中から抽選で投資できる人を決める抽選方式です。

成立前書面

成立前書面(契約成立前書面、契約締結前交付書面)は、ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングで案件に応募する前に確認する書類です。

確認することで応募できるようになります。

成立前書面の確認画面

案件の詳細情報や契約内容などが書かれており、契約書に相当するものだと考えてください。

多くの業者で募集開始前から確認が可能です。

サイトに書かれていない情報も多いので、事前に必ず確認することを強くおすすめします。

モニタリング

ソーシャルレンディングにおいてモニタリングとは、借り手が融資契約を守れるか、ソシャレン業者が監視することをいいます。

業者によって異なりますが具体的な作業としては、定期的な借り手企業の訪問、経営者などへのヒアリング、財務書類のチェックなどがあります。

定期的にモニタリングを行うことで借り手の異常などを早期に察知し、貸し倒れを防ぐことができます。

このため、業者のモニタリングの実施とその精度は投資家にとって重要です。

あと入金と事前入金

投資するお金を業者に入金する方法は2つあります。

一つは先着や抽選の結果、投資できることが決まってから業者の口座に振り込むあと入金方式です。

もう一つは募集開始前に業者のデポジット口座への入金が必要な事前入金方式です。

デポジット口座

デポジット口座のお金は応募した案件への出資に充当されます。

ただし、抽選に落選などで投資できなくなると、入金したお金がデポジット口座で寝ることになります。

さらに、このお金を自分の口座に出金する際の振込手数料が投資家負担の業者もあります。

投資家にとってはあと入金の方が有利です。

 

早期償還

ソーシャルレンディングで借り手が予定より早く返済したり、不動産クラウドファンディングで物件が予定より早く売れることがあります。

そういった理由で案件の運用が予定より短い期間で終わり、業者が元本を予定より早く投資家に返すことを早期償還といいます。

例えば、運用期間12カ月の予定が6カ月で早期償還になると、受け取る分配金は基本的に半分になります。

ネガティブに捉えられがちですが、業者が確実に返済できる借り手、売れる物件を選んで案件を組成した証でもあります。

分配原資

分配原資とは分配金の出どころのことです。

例えば、入居者から得る家賃から投資家に分配金を払う場合、分配原資は家賃です。

家賃はインカムゲインですので、分配原資はインカムゲインとも表現できます。

組成

案件を作ることを組成といいます。

  • 投資対象は緑町ハイツ102号室で
  • 利回りは4.5%で
  • 運用期間1年
  • 募集総額2,300万円の案件を作る

こうやって案件が出来上がります。

組成 → 募集 → 運用開始 → 運用終了 → 償還

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディングの案件はこのような流れで運営され、その最初の段階が案件の組成です。

元本毀損

元本毀損(元本割れ)とは投資したお金の一部、または、すべてが戻ってこなくなることです。

例えば、不動産クラウドファンディングで2,000万円で取得した物件が1,500万円でしか売れなかった場合、元本の一部が戻ってこないことがあります。

また、取得した物件が地震で倒壊し売れなくなった、ソーシャルレンディングで借り手企業が倒産したなどで、元本の全額が戻ってこないこともありえます。

クラファン案件の管理手数料

不動産クラファンで区分マンションなどが投資対象になる場合、物件の入居者募集や家賃徴収といった管理業務が行われます。

これらの業務は業者または外部の不動産業者が代行し、そこでは管理手数料が発生します。

案件の利回りはこういった手数料や経費も差し引いた上で計算されたものです。

ですので、投資家が管理手数料を別途支払う必要はありません。

優先出資と劣後出資

不動産クラファンでは一般に投資家と業者が共同で出資し、物件を取得します。

例えば、投資家が2,400万円、業者が600万円出資し、3,000万円の物件を取得するといった感じです。

出資者 出資額
投資家(優先出資) 2,400万円
業者(劣後出資) 600万円
出資総額 3,000万円

この時、投資家分の出資を優先出資業者分の出資を劣後出資といいます。

なぜ、そのような言い方をするのかなど、詳しくは下記記事を参照してください。

優先劣後出資方式と劣後出資比率

キャピタルゲイン型

不動産クラファンの案件は大きくキャピタルゲイン型とインカムゲイン型に分かれます。

投資対象物件を売却した際の売却益を分配原資(分配金の出どころ)とする案件がキャピタルゲイン型です。

一方のインカムゲイン型は運用期間中の家賃収益を分配原資とします。

なお、売却益と家賃収益の両方を分配原資とする併用型の案件もあります。

自社買取

不動産クラファンでは運用期間の最後に物件を不動産投資家など第三者に売却するのが一般的です。

しかし、何らかの事情で売却できなかった場合、自社で物件を買い取ることがあります。

売却できずに元本が戻ってこないところが、業者が買い取ることで元本が戻ってくることになるので、自社買取は投資家にとってメリットです。

インカムゲイン型の案件では、最初から自社買取の予定で案件を組成することもあります。

劣後出資比率

不動産クラファンでは一般に投資家と業者が共同で出資し、物件を取得します。

例えば、投資家が2,400万円、業者が600万円出資し、3,000万円のマンションを取得するといった感じです。

このとき、出資総額に対する業者分の出資額の比率を劣後出資比率といいます。

さきほどの例では20%です。

出資者 出資額 出資比率
投資家 2,400万円 80%
業者 600万円 20%
合計 3,000万円

そして、劣後出資比率が高いほど安全性が高まります。

右田さん
右田さん

数字が大きいほど安全だよ。

なぜ高いほど安全なのか?

詳しくは下記記事を参照してください。

優先劣後出資方式と劣後出資比率

償還

案件の運用が終わり、業者が元本を投資家に返すことを償還といいます。

クリック合戦

募集が先着方式の案件では、投資できる人が決まるのは早い者勝ちです。

このため、人気の案件では募集開始と同時に応募が殺到します。

この状態をクリック合戦といいます。

信託受益権

信託受益権とは信託財産から発生する利益を受け取る権利のことです。

詳しくは↓こちらの記事を参照してください。

信託受益権とは?(別タブで開く)

信託受益権とは?(今開いているタブで開く)

抵当権と根抵当権と極度額

抵当権とは借り手が返済できなくなった時に担保を売却し、その代金から他の債権者に優先して返済を受ける権利です。

抵当権は1つの借り入れに対して設定されるため、返済時点で消滅します。

これに対し根抵当権ではあらかじめ融資の上限額を設定し、その範囲内であれば何度でも融資と返済が可能です。

その都度、抵当権の設定登記を行う必要がないため、企業への融資などでよく利用されます。

極度額は根抵当権の融資上限額のことです。

債務履行

まず、「債務」とは他人に対し何らかの行動を行う義務のことです。

そして、債務を実際に行うことを債務履行といいます。

ソーシャルレンディングの場合、借り手(債務者)が利払いや元本の返済をすることや、連帯保証人が借り手に代わってそれらを行うことが債務履行にあたります。

逆に、借り手が経営悪化などに至り、利払いや元本返済をしない(できなくなる)ことが債務不履行です。

LTV

ソーシャルレンディングで使われる用語で、担保評価額に対する融資額の割合をいいます。

例えば、1億円の土地を担保に8千万円を融資する場合、LTVは80%です。

担保が評価額通りに売れるとは限らないため、LTVの数字が小さいほど安全性が高いとされます。

資金使途

ソーシャルレンディングで業者から借りたお金を借り手が何に使うかを資金使途といいます。

延滞

ソーシャルレンディングで借り手が期限内に返済できなくなることを延滞といいます。

また、ソシャレン、不動産クラファンで分配金の支払いや元本の償還が予定より遅れている状態を延滞と呼ぶことがあります。

業者や投資家によっては「遅延」という表現が使われることもありますが、意味は同じです。