Crowd Realtyが「均一利回りオークション」を導入します。
マーケットでの需給関係で利回りを決めるという新しい試みです。
意欲的な取り組みではあるのですが。
投資家としては問題点と課題を指摘せざるを得ません。
詳しく解説します。

ちょっと不支持です…
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「均一利回りオークション」の仕組み
今回、Crowd Realtyが導入するのは「均一利回りオークション」です。
どのような仕組みなのか説明します。
Crowd Realtyとは?
Crowd Realtyは(広義での)エクイティ型クラウドファンディングです。
サービス名 | Crowd Realty |
---|---|
運営会社 | 株式会社クラウドリアルティ |
運営開始 | 2016年12月 |
最低投資額 | 10~20万円 |
利回り | 4~6% |
運用期間 | 18~36カ月 |
Crowd Realtyでは投資家が事業に直接出資します。
そして、その事業で得られた収益の分配を受けます。
ネットを通した事業出資のイメージです。
三菱UFJ、みずほ、新生銀行など金融系大企業から多くの出資を受けています。
●公式サイト:Crowd Realty
均一利回りオークションとは?
現状、ソシャレン、不動産クラファンでは業者側が利回りを指定しますよね?

この案件は利回り5%みたいに。
そして、5%でOKと思ったら投資するわけです。
これに対して均一利回りオークションでは、
します。

4%で10万円!

5%で20万円!
こうして集まった応募の中から、低い利回りから順番に出資が確定します。
これによって何が起こるかと言うと、
- 条件の良い案件
- 2%でも良いから投資したい!→ 利回りが下がる
- 条件の悪い案件
- 7%だったら投資しても良い → 利回りが上がる
つまり、利回りの決定を市場メカニズムに委ねることで最適な利回りが決まるということです。

すまん、よく分からん!笑
応募から利回り決定までの流れ
実は僕も最初よく分かりませんでした。笑
実例で流れを説明します。
1.応募する
まず投資家が希望の利回りと口数で応募します。
以下の例では、募集口数は合計10口とします。
例えば1口5万円だったら、Aさんは2%で30万円の応募です。

利回りも応募額も投資家が決めるのね。
2.出資者が決定する
応募期間が終わると出資者を決めていきます。
まず、利回りの低い人から出資決定です。
そして、同じ利回りの人が複数いる場合は先着順です。
募集口数が10口でAさんが6口決定なので、Bさんは5口希望のところ4口だけの決定となりました。

部分当選ありってことか。
3.利回りが決まる
利回りですが、このままでは同じ案件なのにAさんが損ですよね?
そこで、決定した出資者の中で最も高い利回りが全員の利回りとなります。
利回りでオークション
美術品のオークションなんかで、買いたい人が高い値段をドンドン出していきますよね?
それと同じように、投資したい人が利回りを出していく。
そして、借りる人に有利な(=低い)利回りの人から決まっていく。
まさに、利回りによるオークションです。

ようやく分かった。
募集期間中に「暫定利回り」を発表
均一利回りオークションでは募集期間中は毎日、前日までの暫定利回りが発表されます。
例えば以下のような応募状況だったとします。
- 山田くん:5%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4%
ここで「暫定利回り:4.7%」と発表された。
すると、このままでは出資できそうにない山田くんが、
- 山田くん:5% → 4.6%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4%
応募する利回りを下げることができます。

応募したあとで利回りを変更できるんだ。

募集期間中は何回でも変更できます!
応募額は増やせるが減らせない
また、応募したあとで応募額も変更できます。
ただし、増やすことはできますが、減らすことはできません。
大量に応募して直前でゼロにするみたいなイタズラが起きかねませんので。
増額のみで減額不可は不正対策として理解できます。

問題は利回りの変更です!
「均一利回りオークション」の問題点
均一利回りオークションには投資家の立場から大きな問題点があります。
それは、利回りを上げられないことです。
利回りは下げられるが上げられない
上述した通り、暫定利回りが出たあとで利回りを下げることはできます。
ですが、利回りを上げることはできないのです。
例えばさきほどの例で「暫定利回り:4.7%」と発表された。
- 山田くん:5%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4%
山田くんはこのままでは出資できないので、4.6%に利回りを下げます。
- 山田くん:5% → 4.6%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4%
でも、4.7%でクリアできるなら、中山さんは4%まで下げる必要はないですよね?

もうちょっと上げても大丈夫よね。
僕が中山さんだったら、利回りを4.6%に上げます。
- 山田くん:5% → 4.6%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4% → 4.6%
でも、Crowd Realtyの均一利回りオークションでは、利回りダウンはOKだけど、利回りアップは認められないというのです。

投資家が損じゃん…
利回りアップの機会のみを排除
これに対してCrowd Realtyは「出資者の中で最も高い利回りが適用されるから問題ない」と主張するでしょう。
しかし、本当にそうでしょうか?
さきほどの例の続きで、中山さんのように利回りを上げる人が多数出たとします。
- 山田くん:5% → 4.6%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4% → 4.6%
すると、次回の暫定利回りが4.9%などに上がるでしょう。
当然、投資家は4.8%前後に利回りを上げていきます。
- 山田くん:5% → 4.6% → 4.9%
- 田中くん:4.5% → 4.8%
- 中山さん:4% → 4.6% → 4.85%
これが繰り返されることで最終利回りがアップする可能性はあるのではないでしょうか?
均一利回りオークションは利回りの下げだけ認め、上げの機会を排除していると思います。

不平等です!
市場メカニズムを都合よく使っていないか?
今回のオークション導入について、Crowd Realtyの鬼頭代表はインタビュー記事の中で次のような発言をしています。
市場メカニズムによって需要側と供給側の双方にとって最適な取引条件を決定できます。
需給をマッチングさせる条件を決め、取引相手を見つけるというのが市場のもつ役割
資本市場では(中略)実際のマーケットの需給によって、価格がつきます。
おっしゃることはすべて同意します。
その上で、市場メカニズムとか需給のマッチングとか言うならば、需要、供給の双方に対して平等な仕組みであるべきではないでしょうか?
Crowd Realtyのオークションは、借り手に有利な利下げだけを認め、貸し手に有利な利上げは排除しています。
「市場メカニズムで需給双方に最適」と言ってはいますが、実態は借り手にのみ過度に有利です。
僕はこのオークションの仕組みはアンフェアだと思います。

投資家としては不支持です!
「均一利回りオークション」の課題
ただ、オークションの是非については、気に入らなければ投資しなければ良いだけです。
僕がむしろ心配しているのは、オークションの仕組みが悪用されることです。
他社の利用を想定している
Crowd Realtyは今回のオークションの仕組みの特許を取得しています。
特許の適用範囲は、ソシャレンだけでなく不動産クラファンにも及ぶそうです。
そして、鬼頭代表は次のように述べています。
多くのサービスに使ってもらえたらと考えています。
他の業者の利用も想定しているということでしょう。

ダメなの?
暫定利回りは悪用できる
ダメってわけではないのですが。
さきほどの応募例で暫定利回りは4.7%でしたよね?
- 山田くん:5%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4%
それで、ヤバい!と思った山田くんが利回りを下げましたが。
- 山田くん:5% → 4.6%
- 田中くん:4.5%
- 中山さん:4%
僕が業者だったら4.7%ではなく4.2%とウソをつきます。笑
そうすれば、山田くんはもっと下げるし、田中くんもヤバいと思って下げるかも?
- 山田くん:5% → 4.1%
- 田中くん:4.5% → 4.1%
- 中山さん:4%

ヒヨコならやりかねん…

お金のためなら手段を選ばないから…

世の中ゼニじゃ~!
これに対して「市場メカニズムで適正な利回りに収束する」と言うかもしれません。
でも、理屈と現実は違いますからね。
ある程度の利回りの操作は可能なのではないでしょうか?
透明性の確保が課題
それに、利回りの操作が可能な状態では投資家の信頼を得られません。
特に、ソシャレン界隈は2018年、2019年にいろいろありました。
信頼されにくい土壌があり、懸念が出るのは当然のことです。
暫定利回りが悪用されないか?
透明性の確保が均一利回りオークションの最大の課題だと思います。
今後の発展に期待
以上、軸足ネガティブで書いてきましたが。
新しいものが出てくるのは良いことです。
新しい試み自体は歓迎し、今後より良くなっていくことを期待します。
なお、初のオークション対象案件は4月21日募集開始予定です。
実際にどういう動きをするのか、興味津々で注目したいと思います。

毎日チェックします!
●公式サイト:Crowd Realty
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