文部科学省の天下り問題が治まる気配を見せません。
最初に断っておきますが、僕は文科省を擁護する派ではありません。
法律に違反しているわけですから、文科省は糾弾されて然るべきです。
ただ、天下りを批判するだけでは問題は解決しないような気がします。
そして、天下りは永遠になくならないような気もしているのです。
なぜ天下りがあるのか?
そもそも、なぜ天下りが必要とされるのか?
例えば防衛省に30人が就職したとします。
課長職くらいまでは同じペースで昇進するそうです。
しかしそこから先は椅子取りゲームです。
最終的に事務次官になれるのは1人だけ。(年次によってはゼロ)
つまり、同期の内の29人は途中で出世レースから脱落することになります。
等しく出世はできない
この29人をどうするか?
同期トップの山田君が部長になった翌年に山下君を部長にする。
これをやると、下の世代がいつまでたっても部長になれません。
では、課長のままにしておくとどうなるか?
同様に下の世代がいつまでたっても課長になれない。
また、万年課長だとモチベーションが下がり、業務に悪影響を及ぼしかねない。
脱落者は外に出す
そこで天下りです。
省の外郭機関や関連する業界に出向させる。
防衛省だと三菱重工など軍事系の企業などです。
出世の道は絶たれたけれど、それなりの地位と収入は確保してやる。
そうすることで、出世レースから外れた29人の行き場を作ってやる。
29人を追い出すことで、防衛省本体の健全性を確保するわけです。
天下りは公務員だけの問題ではない
これって、そこまで悪いことでしょうか?
週に1回出社で年収1千万なんてのはもちろん論外です。
しかし、組織の健全性を保つという点では、よくできた仕組みです。
だからぶっちゃけ、民間企業も同じことをやってますよね。
子会社に出向とか、銀行が融資先に引き取らせるとか。
つまり天下りは公務員だけの問題ではなく、日本社会全体の問題です。
日本の雇用制度とか働き方とか、官民を問わず日本共通の問題です。
天下りが悪いのか?
だから、国民やメディアは叩くところを間違っている気がします。
天下りが悪いのではなく、天下りを必要とする官庁の仕組みに問題がある。
官庁と同様に天下りを行っている、多くの大企業の雇用制度に問題がある。
もっと言うと、日本社会の働き方や構造に問題があるのではないか?
メディアは報じない
なので、メディアは天下りを必要とする官庁、企業の根本問題を報じるべきです。
もちろん、この問題を解決するには相当な痛みを伴う改革が必要なはずです。
しかしそれでもメディアは問題の核心を国民に伝え、官庁や企業に改革を促す世論を作るべきです。
ではなぜメディアは報じないのか?
それはきっと、メディア自身が報じたくないからだと思います。
子会社や地方局に天下りをさせているのは、メディアも同じですから。
天下りはなくならない
天下りを叩いているメディア自身が、天下りを必要とする体質になっている。
その問題を報じると、自分たちも痛みを伴う改革を迫られることになる。
だからメディアは天下りという表層を叩くだけで、根本問題は絶対に報じない。
国民は根本問題に気付くことなく、メディアに煽られて官僚批判だけで終わる。
なので根本問題は永遠に解決されることなく、ゆえに天下りも永遠に続く。
僕はそうなるような気がするのです。