残業削減の負の側面を国民は受け入れる覚悟があるのか?

働き方改革の一環としての残業時間の上限規制。

1ヶ月の上限を100時間未満とする方向で決着しました。

労使間で協議してきた残業時間の上限規制を巡る協議が決着した。月45時間を超える残業時間の特例は年6カ月までとし、年720時間の枠内で「1カ月100時間」「2~6カ月平均80時間」の上限を設ける。長時間労働を前提とした企業の働き方は変革を迫られる。多様な働き方を進め、生産性の向上にどうつなげるかが問われる。労働基準法で労...

過労死ラインが80時間なのに100時間とは何事だ!と。

労働者側だけでなくネット上でも猛反発が出ています。

僕も残業を減らす方向には賛成なのですが。

みなさん、残業が減っても本当に大丈夫ですか?

収入が減る

残業を減らすということは、残業代が減るということです。

そうなると、残業代を収入の一部として見込んでいる人に影響が出ます。

基本給が安い分を残業で補っていた。

その前提で住宅ローンも組んでいた。

残業代が減って収入が減ると、ローンの返済に困るようになります。

商品の質や値段が変わる

しかしそれ以上に大きな問題は、1人あたりの労働時間が減ることです。

社員1人あたりの労働時間が減ると、会社全体で処理できる作業量が減ります。

その結果、会社が生み出す商品やサービスの量や質が低下します。

量や質を維持しようとすると、社員を増やさなければなりません。

社員を増やすとコストがアップしますので、商品やサービスが値上がりします。

残業を減らしたらどうなるか?

もう少し実感がわくように、宅急便を例に考えてみます。

カエル急便では社員がみんな、月平均120時間残業していました。

規制が始まったので、月平均60時間に減らしました。

その結果、荷物がさばききれず、配達の遅れが多発するようになりました。

さてみなさん、OKですか?

残業減らすためだからしょうがないよね、と受け入れますか?

サービスの質が低下する

荷主や利用者からクレーム続出。

でも、残業を増やせない。

困ったカエル急便は、一番の負担だった時間指定と再配達を廃止しました。

時間に関係なく配達し、不在だったら利用者が営業所まで取りに行く。

さてみなさん、OKですか?

残業削減が値上げにつながる

ざけんじゃねぇよ、ちゃんと届けろ!

利用者から非難轟々。でも残業は増やせない。

困ったカエル急便は、ドライバーを増やすことにしました。

そしてその人件費を賄うため、運賃を値上げすることにしました。

さてみなさん、OKですか?

社内努力がブラック労働を生む

社内努力でなんとかしろ!

すぐにこういうことを言い出すクルクルパーが多いのですが。

コスト吸収を社内努力に押し付けた結果が、ブラック労働や低賃金なのです。

値上げを拒否すると、カエル急便は賃金カットか隠れ残業をせざるを得ない。

自分の利便性と安さを守るために、カエル急便のドライバーに犠牲を強いる。

みなさん、それでOKですか?

残業削減は消費者に負担を強いる

働き方改革で残業を減らすこと自体は、僕は大賛成です。

ですが、残業を減らすと社員1人あたりの労働時間が減ります。

社員を増やさない限り、会社全体の労働時間が減ります。

その結果、会社が生産する商品の量が減ったり、サービスの質が低下します。

量と質をキープしようと思ったら、社員を増やすしかありません。

その結果、商品やサービスが値上がりします。

みなさん、それを受け入れる覚悟はありますか?

労働者の犠牲が生み出す便利で安い日本

今の日本は一昔前に比べて、サービスの質が高まり値段が下がりました。

でもそれは、企業や労働者の犠牲の上に成り立っています。

ブラック労働や残業を減らすことは、労働者の犠牲をなくすことです。

それはつまり、今まで労働者の犠牲の上に成り立ってきた、高サービスや低価格が失われるということです。

消費者は必ず文句を言う

そこまで分かった上で、残業削減に賛成しているのでしょうか?

僕は多くの国民はそうではないと思います。

今のサービスの質と安さを維持した上で残業が減る。

何の根拠もなく、論理的裏付けもなく維持されると思っている。

それどころか、残業削減がサービスの質と安さに影響することに気付いていない。

だからきっと、サービスの質が落ちたり、値段が上がったら文句を言い出すと思うのです。

そしてその消費者の圧力が、きっと再び隠れ残業を生み出す気がしています。

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