保育士の給料が足りないんだったら、国会議員を減らせば良い!
中国に対抗するのに空母が必要なら、国会議員の給料をまわせ!
こんな感じで国会議員の給与がよく槍玉に挙げられます。
ところでみなさん、国会議員のコストがいくらかご存じですか?
議員歳費や政党交付金など全部合わせて議員1人あたりいくらか?
つまり、議員を1人減らせば税金がいくら浮くか。
知りませんよね?僕もです。笑
で、調べてみました。
最初に一言
項目ごとに一つ一つきっちりリストアップしていきます。
ただ、僕はものすごく細かく粘着質な性格です。笑
根拠法を挙げ、予算書をチェックし、不明な点はすべて計算します。
長くなるので気が短い人は太字の部分と、最後の一覧表をご覧ください。
また、両院職員の人件費や議場の電気代などは含みません。
議員歳費
それではまず、月給にあたる議員歳費です。
議長、副議長、普通の議員で次のように定められています。
各議院の議長は二百十七万円を、副議長は百五十八万四千円を、議員は百二十九万四千円を、それぞれ歳費月額として受ける。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第1条)
ここから議員1人あたりの議員歳費の月額平均値を出します。
議長、副議長は衆参両院で2人ずつです。
国会議員は衆議院475人、参議院242人で、合計717人です。
議員としての歳費が支払われるのは正副議長を除いた713人となります。
役職 | 月額 | 人数 | 総額 |
---|---|---|---|
議長 | 217万円 | 2人 | 434万円 |
副議長 | 158万4千円 | 2人 | 316万8千円 |
議員 | 129万4千円 | 713人 | 9億2,262万2千円 |
合計 | 717人 | 9億3,013万円 |
議員全員で9億3,013万円です。
717人で割ると、議員1人あたりの平均月給は129万7千円となります。
期末手当
期末手当はボーナスです。6月1日と12月1日に支給されます。
で、その計算方法なんですが…
期末手当の額は、それぞれ前項の基準日現在(同項後段に規定する者にあつては、辞職、退職、除名又は死亡の日現在)において同項に規定する者が受けるべき歳費月額及びその歳費月額に百分の四十五を超えない範囲内で両議院の議長が協議して定める割合を乗じて得た額の合計額に、特別職の職員の給与に関する法律第一条第一号 から第四十三号 までに掲げる者の例により一定の割合を乗じて得た額とする。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第11条の2)
なんのこっちゃ、よく分からん!笑
しょうがないので逆からアプローチして推算します。
平成29年度予算書によると、議員歳費の総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 102億9,182万5千円 |
参議院 | 52億5,297万4千円 |
合計 | 155億4,479万9千円 |
この議員歳費には期末手当が含まれています。
月給+ボーナスの合計で、衆参合わせて年間155億です。
で、先ほど見たように議員の月給は衆参合わせて9億3,013万円です。
月給+ボーナスの合計から月給の合計を引けばボーナスの合計が出ます。
次のようになります。
項目 | 月間総額 | 年間総額 |
---|---|---|
月給+ボーナス | 155億4,479万9千円 | |
月給 | 9億3,013万円 | 111億6,156万円 |
ボーナス | 43億8,323万9千円 |
155億から111億を引いて、ボーナスの合計は43億ちょいです。
これを両院議員717人で割ると、ボーナスの平均は611万3千円です。
議員旅費
公務で出張する場合の旅費です。
議長、副議長及び議員は、議院の公務により派遣された場合は、別に定めるところにより旅費を受ける。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第8条)
平成29年度予算書によると、議員旅費の総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 3億1,561万2千円 |
参議院 | 1億6,196万5千円 |
合計 | 4億7,757万7千円 |
国会議員717人で割ると、議員1人あたり66万6千円/年となります。
議会雑費
議長や特別委員長など、特別な職位の議員に対する手当です。
各議院の役員及び特別委員長並びに参議院の調査会長並びに各議院の憲法審査会の会長及び情報監視審査会の会長は、国会開会中に限り、予算の範囲内で、議会雑費を受ける。ただし、日額六千円を超えてはならない。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第8条の2)
議員が1人減っても議長や委員長の人数は減りませんからね。
今回の趣旨(議員1人やめたら税金がいくら浮くか?)には合いませんが。
判断に迷うので入れておきましょう。笑
平成29年度予算書によると、議会雑費の総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 2,970万0千円 |
参議院 | 2,970万0千円 |
合計 | 5,940万0千円 |
国会議員717人で割ると、議員1人あたり8万3千円/年となります。
文書通信交通滞在費
書類の発送や通信に使う費用です。議員1人あたり100万円/月です。
各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第9条)
議員特殊乗車券等購入費
回数などに制限がありますが、JRや飛行機に無料で乗れます。
各議院の議長、副議長及び議員は、(中略)鉄道及び自動車に運賃及び料金を支払うことなく乗ることができる特殊乗車券の交付を受け、(中略)航空券の交付を受ける。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第10条)
議員特殊乗車券等購入費は議員の選挙区などにより変わります。
議員ごとに調べようがないですので、総額から逆算しましょう。
平成29年度予算書によると、総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 8億7,347万2千円 |
参議院 | 4億4,624万3千円 |
合計 | 13億1,971万5千円 |
国会議員717人で割ると、議員1人あたり184万円/年となります。
弔慰金
議員が亡くなられた場合に、ご遺族に支給されます。
議長、副議長及び議員が死亡したときは、歳費月額十六月分に相当する金額を弔慰金としてその遺族に支給する。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第12条)議長、副議長及び議員がその職務に関連して死亡した場合(次条の規定による補償を受ける場合を除く。)には、前条の規定による弔慰金のほか、歳費月額四月分に相当する金額を特別弔慰金としてその遺族に支給する。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第12条の2)
平成29年度予算書によると、弔慰金の総額は以下の通りです。
ってか、予算って、誰か死ぬ予定でもあるの?笑
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 4,140万8千円 |
参議院 | 4,140万8千円 |
合計 | 8,281万6千円 |
国会議員717人で割ると、議員1人あたり115万5千円/年となります。
公務災害補償費
公務上の災害に対する補償です。
議長、副議長及び議員並びにこれらの者の遺族は、両議院の議長が協議して定めるところにより、その議長、副議長又は議員の公務上の災害に対する補償等を受ける。(国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第12条の3)
平成29年度予算書によると、公務災害補償費の総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 2,420万6千円 |
参議院 | 284万8千円 |
合計 | 2,705万4千円 |
実は、公務災害補償費は国会職員と議員秘書にも支給されます。
ところが、予算書ではこの3つを合わせた金額しか示されていません。
議員、国会職員、議員秘書、みんな合わせて2,700万円です。
なので、議員1人あたりの正確な金額が出せません。
まぁ、出したところで少額ですので、今回は無視します。
立法事務費
法案を作るための調査費用みたいなものです。65万円/月です。
立法事務費は各議員ではなく、議員が所属する政党に交付されます。
立法事務費として各会派に対し交付する月額は、各議院における各会派の所属議員数に応じ、議員一人につき六十五万円の割合をもつて算定した金額とする。(国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律第3条)
政党交付金
政党の活動を助成するために交付されます。
国は、この法律の定めるところにより、政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律第四条第一項の規定による法人である政党に対して、政党交付金を交付する。(政党助成法第3条)
国民1人あたり年間250円として総額が決まり、各政党に配分されます。
共産党は受け取っていませんが、この分は他の政党に配分されています。
平成29年度の政党ごとの配分額は以下の通りです。(出典:総務省報道資料:平成29年分政党交付金の交付決定)
政党名 | 配分額 |
---|---|
自由民主党 | 176億2,263万6千円 |
民進党 | 87億1,897万0千円 |
公明党 | 31億3,536万9千円 |
日本維新の会 | 10億0,956万6千円 |
日本のこころ | 4億9,309万8千円 |
自由党 | 3億9,867万6千円 |
社会民主党 | 3億9,536万8千円 |
総額 | 317億7,368万3千円 |
これを議員数717人で割ると、1人あたり4,431万5千円/年です。
議員秘書手当
国会議員一人あたり、3人の公設秘書が置かれます。
各議員に、その職務の遂行を補佐する秘書二人を付する。2.前項に定めるもののほか、主として議員の政策立案及び立法活動を補佐する秘書一人を付することができる。(国会法第132条)
そして、この3人の秘書の給与は国から支払われます。
給与には月給、住居手当、通勤手当、ボーナスが含まれます。
議員秘書の受ける給与は、給料、住居手当、通勤手当、期末手当及び勤勉手当とする。(国会議員の秘書の給与等に関する法律第2条)
しかし、月給は勤続年数などによって変わりますし。
通勤手当とか住所が分からんから調べようがないもんね。(^^ゞ
なので、総額から逆算してみます。
平成29年度予算書によると、議員秘書手当の総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 123億6,603万2千円 |
参議院 | 63億0,458万7千円 |
合計 | 186億7,061万9千円 |
国会議員717人の公設秘書各3人の年間合計で186億円です。
717人で割ると、議員1人あたり2,603万円/年となります。
議員秘書災害補償費
公務や通勤時に負った災害に対して議員秘書は補償を受けます。
サラリーマンの労災みたいなものですね。
議員秘書及びその遺族は、両議院の議長が協議して定めるところにより、その議員秘書の公務上の災害又は通勤による災害に対する補償等を受ける。(国会議員の秘書の給与等に関する法律第18条)
前述の議員の災害補償同様、正確に出せず少額なので無視します。
議員秘書退職手当
議員秘書にも退職金が支給されます。当然やね。
議員秘書が退職した場合には、その者(死亡による退職の場合には、その遺族)は、両議院の議長が協議して定めるところにより、退職手当を受ける。(国会議員の秘書の給与等に関する法律第19条)
議員がいるから発生する費用であり、議員のコストと見なします。
平成29年度予算書によると、議員秘書退職手当の総額は以下の通りです。
区分 | 年間総額 |
---|---|
衆議院 | 3億0,106万3千円 |
参議院 | 1億8,947万2千円 |
合計 | 4億9,053万5千円 |
717人で割ると、議員1人あたり68万4千円/年です。
国会議員1人あたりのコスト
以上、一つ一つ見てまいりました。
さぁ、それでは全部を足し算してみましょう。こちらです。ドン!
項目 | 月額 | 年額 |
---|---|---|
議員歳費 | 129万7千円 | 1,556万4千円 |
期末手当 | 611万3千円 | |
議員旅費 | 66万6千円 | |
議会雑費 | 8万3千円 | |
文書通信交通滞在費 | 100万円 | 1,200万円 |
議員特殊乗車券等購入費 | 184万円 | |
弔慰金 | 115万5千円 | |
公務災害補償費 | 無視 | |
立法事務費 | 65万円 | 780万円 |
政党交付金 | 4,431万5千円 | |
議員秘書手当 | 2,603万円 | |
議員秘書災害補償費 | 無視 | |
議員秘書退職手当 | 68万4千円 | |
合計 | 1億1,625万円 |
月給、電車代、秘書人件費もろもろ含め、年間1億1,625万円です!
議員1人あたりのコストは年間ザックリ1億円と覚えておけば良いですね。
年間1億円は高いのか?
さて、国会議員1人あたりのコスト、年間1億円は高いのか安いのか?
国会議員は717人ですので、
1億1,625万円×717人=833億5,125万円
議員全員のコストは年間800億円ちょいです。
平成29年度の一般会計の歳出総額は97兆4,547億円です。
なので、歳出に占める議員コストの割合は0.085%です。
特別会計の純歳出196.8兆円も含めると、国の歳出総額は294.3兆円。
これに占める割合で見ると0.028%。あはは、誤差みたいなもんやね。
国民1人あたりの負担額は?
国会議員のコストを、我々国民はどれくらい負担しているのか?
日本の人口は1億2,676万人ですので、
833億5,125万円÷1億2,676万人=658円/人
新生児から死にかけのジジイまで、国民1人あたり年間658円の負担です。
俺ら議員に文句言ってるけど、ラーメン一杯分しか負担してないんだね。笑
まぁ、それでも居眠り議員に658円も払う気持ちにはなりませんが。
議員を減らせば保育士を増やせるのか?
さて、今回のブログの最初の話に戻ります。
保育士の給料が足りないんだったら、国会議員を減らせば良い!
中国に対抗するのに空母が必要なら、国会議員の給料をまわせ!
さてどうなのか?実際に見てみましょう。
全国の保育士の数は41万2,760人です。(出典:厚生労働省平成27年社会福祉施設等調査)
仮に、1人あたり月に1万円給料をアップするとしましょう。
必要な財源は、
1万円×12ヶ月×41万2,760人=495億3,120万円
議員1人あたりのコストは、年間ザックリ1億円。
衆議院議員が475人ですので、衆議院を廃止すればなんとかなります。
非現実的ですね。笑
議員を減らせば空母を作れるか?
最新鋭のヘリ空母、いずも型護衛艦。
2番艦「かが」の建造費は1,170億円です。(出典:防衛省平成24年度防衛関係予算のポイント)
前述したように国会議員の年間コストは総額800億円ちょいです。
国会議員を全員クビにしても作れません。笑
議員を減らしても大したことはできない
ちなみに、高速道路を1km作るのに50億円かかるそうです。(出典:国土交通省 我が国における公共工事コスト構造の特徴)
800億円だと16km作れます。JR中央線で新宿から武蔵境くらいまでです。
つまり、議員を全員クビにしてもその程度のことしかできない。
ましてや、数人や数十人減らした程度では何もできないってことです。
バカの一つ覚えから卒業しよう
もちろん、居眠り議員のコストが年間1億円はバカげています。
バカ議員はクビにして、議員総数100人で十分だと個人的には思います。
でも、バカの一つ覚えで議員を減らせ!もクルクルパー丸出しですよね。
国会議員1人の年間コストはサックリ1億円。
全員クビにしても高速道路16km。
ぜひ、覚えておいてください。