第48回衆議院選挙が10月22日に行われます。
この時期になると必ず出る話題が選挙1回にかかる費用です。
金額はググれば分かりますし、この記事でも過去3回分について紹介します。
よく分からないのが、具体的にどんな作業に費用がかかっているのか?
そして、どこまでが税金負担でどこからが候補者負担なのか?
合計でいくらも大切ですが、内訳もしっかり知りたいなと思いまして。
しつこく細かい粘着質ジジイが選挙にかかる費用を徹底的に調べてみました!
はじめに
財務省の決算書では選挙にかかる費用は以下の項目に分類されています。(カッコ内は所轄官庁)
- 候補者用無料乗車券購入費(総務省)
- 候補者用無料葉書購入費(総務省)
- 新聞広告費(総務省)
- 啓発広報費(総務省)
- 衆議院議員総選挙執行委託費(総務省)
- 衆議院議員総選挙啓発推進委託費(総務省)
- 選挙取締旅費(検察庁)
- 選挙取締庁費(検察庁)
- 在外選挙事務謝金(外務省)
- 在外選挙事務職員旅費(外務省)
これらの項目に具体的にどんな費用が含まれるのか、僕が公職選挙法(以下、法)を読んで、ここで費用が発生していると思ったものをリストアップしていきます。
なお、在外選挙人名簿登録費のように選挙の有無に関係なく発生する費用は、選挙が行われることによって新たに発生する費用ではありませんので省きます。
金額だけサクッと知りたいという人は、この記事の最後の方へレッツゴー。
それではさっそく見ていきましょう!
候補者用無料乗車券購入費
特殊乗車券代
選挙運動中に無料で電車、バスを利用できる特殊乗車券の費用。(法第176条)
参議院選挙区選挙に限り、特急料金なども不要で航空機も利用できます。
- 衆議院小選挙区…15枚
- 参議院選挙区…15枚(合同選挙区の場合は30枚)
- 参議院選挙区…6枚
候補者用無料葉書購入費
葉書購入費
選挙活動に使用する葉書の作成と郵送にかかる費用。公費負担の枚数に上限があります。(法第142条)
- 衆議院小選挙区…候補者1人につき3万5千枚
- 参議院選挙区…選挙区内の衆議院小選挙区が1つの場合、候補者1人あたり3万5千枚。2つ以上の場合は1つ増えるごとに2,500枚追加
- 参議院比例代表…候補者1人につき15万枚
新聞広告費
新聞広告費
候補者や政党が出す新聞広告は以下の回数まで公費で賄われます。(法第149条)
- 衆議院小選挙区…候補者は1人5回まで、政党は候補者数と同じ回数まで(最大16回)
- 衆議院比例代表…政党ごとに候補者数と同じ回数まで(最大28回)
- 参議院選挙区…候補者1人あたり5回(合同選挙区は10回)まで
- 参議院比例代表…政党ごとに候補者数と同じ回数まで(最大25回)
啓発広報費
啓発広報費
投票の方法や選挙結果を選挙人(有権者)に知らせる活動の内、国と中央選挙管理会が行うものにかかる費用(法第6条)
衆議院議員総選挙執行委託費
選挙の執行を市町村に委託する費用で、国が負担します。これが選挙費用のほどんとを占めています。(法第263条)
以下の費用に細分されます。
投票管理費
投票を管理する費用(法第37条)
投票立会人費用
投票に立ち会う人の人件費。各投票所ごとに2~5人(法第38条)。ただし、期日前投票においては2人(法第48条の2第5項)。
投票所設置費
選挙区ごとに投票所を設置する費用(法第39条)
投票用紙、投票箱費用
投票は投票用紙に記入して投票箱に入れると規定されており、この費用(法第46条)
不在者投票費
不在者投票にかかる封筒や郵送などの費用(法第49条)
開票作業費
開票作業にかかる費用(法第61条)
開票立会人費用
開票作業に立ち会う人の人件費(法第62条)
開票所設置費
開票所を設置する費用(法第63条)
候補者の届け出費用
候補者の立候補届け出受理等にかかる費用(法第86条~第86条の4)
選挙事務所の標札
選挙事務所の設置費は候補者負担ですが、標札は公費負担です。(法第131条)
選挙カー、拡声機費用
選挙カーとこれに設置する拡声機の費用は候補者負担ではなく公費負担です。それぞれの台数に上限があります。(法第141条)
- 衆議院小選挙区…候補者1人につき1台ずつ(合同選挙区の場合は2台)
- 衆議院比例代表…選挙区ごとに候補者5人までは1政党につき1台ずつ、5人を超えると10人ごとに1台ずつ
- 参議院選挙区…候補者1人につき1台ずつ(合同選挙区の場合は2台ずつ)
- 参議院比例代表…候補者1人につき2台ずつ
ビラ代
選挙活動に使うビラの費用。公費負担の枚数に上限があります。(法第142条)
- 衆議院小選挙区…候補者1人につきビラ7万枚
- 参議院選挙区…選挙区内の衆議院小選挙区が1つの場合、候補者1人あたり10万枚。2つ以上の場合は1つ増えるごとに1万5千枚追加(上限30万枚)
- 参議院比例代表…候補者1人につきビラ25万枚
ポスター・看板代
以下のものは公費負担です。(法第143条)
- 選挙事務所で使用する立て札と看板
- 選挙カーに取り付ける立て札と看板
- 個人演説会を告知するポスター
- 選挙運動で使用するポスター
掲示場費用
候補者のポスターを貼る立て看板の設置費用(法第144条の2)
政見放送費
テレビやラジオでの政見放送にかかる費用です。新聞広告費ではなく執行委託費に含まれます。(法150条)
経歴放送費
政見放送とは別に候補者の氏名、年齢、主な経歴などを放送する費用。回数が決まっています。(法第151条)
- 衆議院小選挙区…ラジオ10回、テレビ1回
- それ以外…ラジオ5回、テレビ1回
演説会開催施設利用費
学校や公民館などを使って演説会を開催する場合、1施設につき1回まで無料で利用できます。(法第164条)
演説会場の立て札・看板代
演説会場に掲示する立て札、看板の制作費も公費負担です。(法第164条の2)
選挙公報費
候補者の氏名、経歴、政見などを掲載したチラシみたいなものです。有権者の家庭に折込チラシやポスティングなどで配布されます。(法第167条)
衆議院議員総選挙啓発推進委託費
ちょっと自信がないのですが、次の2つがこれに該当するのだと思います。国ではなく自治体が行う啓発活動です。(法261条の2)
選挙結果の告知費用
選挙人(有権者)に対する選挙結果の告知にかかる費用。(法第6条第2項)
当選人の告知費用
当選人を当選人本人、届け出政党、選挙人に告知する費用(法第101条~第101条の3)。
選挙取締旅費・選挙取締庁費
2つの区分が分からないのでまとめます。
選挙取締費
選挙の取締を執行する費用(法第7条)
在外選挙事務謝金・在外選挙事務職員旅費
同じく、2つの区分が分からないのでまとめます。
在外選挙費
日本国外に在住し在外選挙人名簿に登録されている選挙人が在外公館などで投票する費用(法第49条の2)
税金で負担されない費用
以下の費用は公費(税金)では負担されず、候補者の自己負担となります。
また、ここまでで公費負担と書いてきた費用についても、法第93条が定める(供託金没収となる)得票数を下回った場合、一部が自己負担となります。
選挙事務所設置費用
候補者の負担です。設置できる数に以下の制限があります。ただし、交通困難地については以下の制限を超えます。(法第131条)
- 衆議院小選挙区…候補者1人あたり2ヶ所
- 衆議院比例代表…都道府県ごとに1政党1ヶ所
- 参議院選挙区…候補者1人あたり1ヶ所、合同選挙区の場合は2ヶ所
- 参議院比例代表…都道府県ごとに1政党1ヶ所+候補者1人あたリ1ヶ所
選挙事務所スタッフの飲食費
候補者の負担です。提供できる量や金額に制限があります。
- 候補者1人につき15人分までで、1人あたリ1日3食分。選挙事務所が1ヶ所を超える場合は、超過1ヶ所あたり6人分まで追加できる。(法第139条)
パンフレット・書籍代
政策などを伝えるパンフレットなどを頒布することができます。(法第142条の2)
ウェブサイト作成・運営費
選挙運動に使う文書などをウェブサイトで頒布することができます。(法第142条の3)
街頭演説費
街頭演説(法第164条の5)にかかる費用は選挙カー以外は候補者の負担です。
衆議院選挙にかかる費用
けっこうたくさんの費用項目がありましたね。
それでは、これらを合わせていくらになるか、つまり、衆議院選挙1回で税負担が新たにいくら発生するのかを見てみます。
政党交付金の扱い
なお、この税負担に政党交付金を含めているブログやサイトがあります。
確かに政党交付金は選挙で使われますが、選挙が行われる年だけ増額されるわけではありません。
年度ごとに政党に支給される交付金の一部を、選挙がある年は選挙に使い、ない年は料亭での飲み食いに使うだけです。笑
今回の記事で僕が書きたいのは、選挙が行われることによって「新たに」発生する税負担ですので、この記事ではその税負担に政党交付金は含めません。
直近3回の衆議院選挙で生じた税負担
それでは見てみましょう。単位は百万円です。(出典:財務省決算書)
項目 | 2014年 | 2012年 | 2009年 |
---|---|---|---|
無料乗車券購入費 | 67 | 80 | 73 |
無料葉書購入費 | 1,592 | 1,939 | 1,560 |
新聞広告費 | 1,550 | 2,079 | 1,450 |
啓発広報費 | 192 | 162 | 383 |
総選挙執行委託費 | 51,912 | 54,095 | 55,855 |
啓発推進委託費 | 252 | 246 | 765 |
選挙取締旅費 | 4 | 4 | 7 |
選挙取締庁費 | 3 | 3 | 5 |
在外選挙事務謝金 | 88 | 56 | 95 |
在外選挙職員旅費 | 63 | 64 | 61 |
合計 | 55,718 | 58,730 | 60,253 |
直近の2014年第47回衆議院総選挙の費用は557億円でした。
ここ3回は減少傾向ですが、衆議院選挙1回あたりザックリ550~600億円ですね。
選挙費用は高いか安いか?
金額だけ見て高いというのは間違い
2014年選挙で557億円。これって高いのか安いのか?
僕は安いと思います。電卓叩き終わった瞬間に「安っ!」って口から出ました。
確かに557億円というのは大金です。
しかし、日本は人口ランキングで世界10位の大国です。
そんな日本で全国規模のイベントをやれば大金がかかるのは当たり前です。
僕ら年収1千万にも及ばない一般ピーポーが、自分の年収や生活費を基準に高い安いを判断するのは間違いです。
1回あたりワンコイン
なぜ僕が安いと感じたかというと、国民1人あたりで考えるからです。
557億円÷1億2千万人=464円
国民1人あたりの負担はわずか500円足らずです。
ランチ1回分のコストで自分が推す候補者に投票することができる。
しかも、ここしばらく衆議院選挙は平均3年ごとに行われています。
ってことは1年あたりのコストで考えると150円です。
カップヌードル1個分って激安じゃないですか。笑
しっかり選ぼう!
選挙結果への満足度
ということで、僕は選挙コストは極めて安いと感じました。
ただ、コストが安いことと、それで得られるものの満足度は別です。
牛丼250円は安いけれど、クソ不味かったら満足できませんよね。
二度と食うかと思うし、あれで250円は高いと思うことでしょう。
選挙もまた然りです。
選ぶ有権者にも責任が
選挙1回500円足らずは間違いなく安いです。
でもそれで選んだ議員が、ハゲ~!って絶叫だったらガッカリですよね。
500円返せと言いたくなる。
選ばれた議員のみなさんにはしっかり仕事をしていただきたいです。
そして我々もまた、議員に文句を言うばかりではなく、文句を言わずに済むような議員をしっかり選ぶ責任が求められるのではないでしょうか。