4割を超える企業で正社員が不足しているようです。
これは非常に良い傾向だと思います。
もちろん、企業側には批判されるべき虫の良さもあります。
ですが、国民も痛みを受け入れるならば、ようやくデフレから脱出できます。
失われた20年に終止符を打つチャンス到来です!
多くの企業で社員不足
今回のニュースの元ネタは、帝国データバンクの調査結果です。
その内容を詳しく見てみましょう。
正社員が不足していると回答した企業は、過去10年で最高となりました。
非正社員についても3割の企業が不足と回答しており、こちらも高水準です。
調査時期 | 正社員が不足 | 非正社員が不足 |
---|---|---|
2016年1月 | 39.5% | 26.2% |
2016年7月 | 37.9% | 24.9% |
2017年1月 | 43.9% | 29.5% |
正社員が不足している業種
調査対象の51業種の中で、正社員不足が最も深刻だったのは「放送業」です。
回答した企業の内、73.3%の企業が正社員が不足していると回答しています。
以下、正社員不足と答えた企業の割合が高かったのは、「情報サービス」「メンテナンス・警備・検査」などです。
順 | 業種 | 割合 |
---|---|---|
1 | 放送 | 73.3% |
2 | 情報サービス | 65.6% |
3 | メンテナンス・警備・検査 | 62.9% |
4 | 人材派遣・紹介 | 60.8% |
5 | 建設 | 60.1% |
6 | 家電・情報機器小売 | 58.3% |
7 | 運輸・倉庫 | 58.1% |
8 | 専門サービス | 54.8% |
9 | 自動車・同部品小売 | 54.2% |
10 | 電気通信 | 53.8% |
非正社員が不足している業種
一方、非正社員が最も不足している業種は「飲食店」で、回答した企業の実に8割が不足と訴えています。これは深刻ですね。
以下、「娯楽サービス」「飲食料品小売」などが続きます。
順 | 業種 | 割合 |
---|---|---|
1 | 飲食店 | 80.5% |
2 | 娯楽サービス | 64.8% |
3 | 飲食料品小売 | 59.4% |
4 | 繊維・繊維製品・服飾品小売 | 55.6% |
5 | 医薬品・日用雑貨品小売 | 55.6% |
6 | 旅館・ホテル | 53.3% |
7 | メンテナンス・警備・検査 | 52.5% |
8 | 人材派遣・紹介 | 51.1% |
9 | 各種商品小売 | 47.6% |
10 | 家具類小売 | 42.9% |
不足している業種に大きな違いが
この調査結果で、大いに注目すべき点があります。
正社員不足の企業と非正社員不足の企業で、業種が明らかに違うことです。
上の2つの表を並べてみるとよく分かります。
順 | 正社員が足りない業種 | 非正社員が足りない業種 |
---|---|---|
1 | 放送 | 飲食店 |
2 | 情報サービス | 娯楽サービス |
3 | メンテナンス・警備・検査 | 飲食料品小売 |
4 | 人材派遣・紹介 | 繊維・繊維製品・服飾品小売 |
5 | 建設 | 医薬品・日用雑貨品小売 |
6 | 家電・情報機器小売 | 旅館・ホテル |
7 | 運輸・倉庫 | メンテナンス・警備・検査 |
8 | 専門サービス | 人材派遣・紹介 |
9 | 自動車・同部品小売 | 各種商品小売 |
10 | 電気通信 | 家具類小売 |
正社員、非正社員ともに不足と回答したのは、「メンテナンス・警備・検査」と「人材派遣・紹介」だけです。
この2業種以外で非正社員が不足している業種を、太字にしてみました。
ひと目で分かりますよね。
飲食店や小売業など、低賃金のパート、アルバイト、非正規雇用が多い業種ばかりです。
企業が欲しいのは安い正社員
ここで考えてほしいのですが。
飲食店や小売業などでは、低賃金で働いている人たちがたくさんいます。
正社員が不足と言うならば、そういう人たちを正社員として雇えば良い。
そう思いませんか?
そうしないのは、企業が「安い正社員」を求めているだけだと思うのです。
ちょっとそれは虫が良すぎるのではないでしょうか?
正社員・非正社員の賃上げが進む
しかし、そういった虫の良さもそろそろ通用しなくなりそうです。
賃金を上げてでも正社員を雇う動きが出てきています。
帝国データバンクの調査では、企業から次のような声が上がっています。
人手不足感が強まっており、人件費の高騰などで収益悪化が進んでいく可能性が高い
人手不足に人件費アップで対応している表れです。
今後、正社員、非正社員ともに賃上げの動きは加速していくでしょう。
商品やサービスも値上がりする
ただし、良いことばかりではありません。
調査では運送業界から次のような声も出ています。
人手不足による人件費アップはあるものの、供給タイトにより運賃は強含み
ドライバーを集めるために人件費をアップする、そのコストは運賃アップで荷主にも負担を求める、ということです。
これが進めばいずれ、我々が購入する商品やサービスも値上がりします。
暮らしは一時的に苦しくなる
賃金も上がるけれど、同時に物価も上がる。プラマイゼロです。
賃上げよりも先に物価が上がれば、一時的にマイナスにすらなります。
しかし我々国民は、これに耐えるべきです。
ここ数年、我々はデフレに苦しんできました。
- 競争のために値下げする
- 安く売るために人件費を下げる
- 国民が貧しくなる
- 安さへのニーズが高まる
- 1~4の繰り返し
この繰り返しで僕らは貧しくなり続け、それは今もなお続いています。
この悪循環をどこかでストップしなければならない。
今がそのチャンスです。
国民も痛みを受け入れよう
企業にはぜひ、従業員の賃金アップ、社員の正規雇用化を進めていただきたい。
国民一人ひとりが使えるお金が増える方向で動いていただきたい。
その代わり、我々国民も協力しましょう。
賃上げ、正規雇用化のコストを物価アップで受け入れ、企業の動きを支えるべきです。
企業任せ、国任せばかりでは、経済も暮らしも良くなりません。
日本を良くするために国や企業に求めつつ、我々国民自身も痛みを受け入れる覚悟が必要です。