中国がノルウェーとの外交関係を正常化させました。
この問題を通して中国の基本的な物の考え方を見てみたいと思います。
ノーベル平和賞での関係悪化
2010年のノーベル平和賞がこの問題のスタートです。
中国の民主活動家、劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞。
国家転覆罪で服役中だった同氏の釈放をノーベル賞委員会が要求。
中国は「内政干渉アルよ~!」と猛反発。
両国関係がチョーベリーバッドとなりました。
経済を求めて関係改善
2013年にノルウェーで政権が交代。
事実上の経済制裁を受けていたノルウェーは中国との関係改善を模索。
両国外交部門で協議を進め、今回ようやく関係正常化にいたった。
ザックリ言うとこんな感じです。
さて、今回の一件を日本のメディアはどう報じたか?
ここはやはり、産経新聞を見てみましょう!
産経はどう報じたか?
12月20日付の産経新聞です。
記事の中から中国のスタンスを示す部分を抜き出してみます。
- 中国はノルウェー産サーモンの輸入制限など報復措置を発動していた。
- 「ノルウェーは深く反省して教訓を学んだ」とノルウェーの対応を評価した。
- 環球時報は「中国を怒らせてはいけないことをノルウェーは6年かけて分かった」との社説を掲載。
- 「一つの中国」の原則に挑戦するトランプ次期米大統領をも牽制した。
中国チョー上から目線
ノーベル賞問題で中国はノルウェーに圧力をかけた。
ノルウェーにごめんなさいと言わせ反省させた。
トランプにもプレッシャーをかけた。
中国、チョー上から目線でムカつく悪い国!
中韓嫌いな右系読者の期待に徹底してこたえ続ける。
決してブレることがない産経の姿勢はステキです。笑
では中国側はどうでしょう?
対外超強硬路線で知られる環球時報を見てみましょう!
ノルウェーが悪い(キリッ!)
12月20日付の環球時報の社説を見てみます。
冒頭はこんな論調です。
- 政治犯にノーベル賞あげたノルウェーが悪い(うりゃ!)
- 内政干渉して代価を払うことになった(どや!)
- ヨーロッパの他の国が中国ビザ取りやすくなったけどノルウェーは除外(ざま~)
- 中国へのサーモンの輸出がめっちゃ減った(さけ~)
- ノルウェーは深刻に反省し教訓を得た(よっしゃ~!)
中華第一主義の読者の期待にぴったりフィットで応えます。
さすが、中国の産経新聞!
寛容さを示す環球時報
ところが途中から論調が変わります。
- ノルウェーにも自分たちの価値観があることは理解する
- 中国も弱い者いじめをしたり中国に合わせろと言うつもりもない
- 両国の力の差は大きいが、力を持ってノルウェーを脅かしたりしない
- 国同士のつきあい、文明間の交流は自己中であってはならない
- 中国とヨーロッパが摩擦と衝突を重ね、雨降って地固まり、相互理解に結びつくことを希望する
- 国家同士の尊重は困難ではあるが、それでもなお我々はその高みを目指そうではないか!
なに?環球むっちゃエエやつやん!笑
中国政府も抑制的な反応
実は環球時報だけではありません。
産経新聞は「ノルウェーは深く反省して教訓を学んだ」と書いています。
事実、中国外交部の華春瑩報道官も12月20日の記者会見で「ノルウェーが教訓を学んだ」と述べています。
ですが、王毅外務大臣はノルウェー外相との会談で、中国、ノルウェー「双方」が教訓を得たと述べています。
中国政府の思惑
この抑制姿勢の背景には次のような思惑があると想像します。
- 関係改善の働きかけがノルウェー側からあった
- 反省、教訓など中国に有利な文言を得た
- 一つの中国の原則尊重の言質も取った
- つまり外交的に中国の全面勝利を得た余裕
- 人権問題が発端だけに問題を大きくしたくない
- 近ごろイメージ悪いので対外融和的な姿勢を示したい
環球時報に見るジャイアニズム
しかし、これが中国の基本的な外交姿勢だと思ってはいけません。
寛容さを示した環球時報ですが、次のようなことも書いています。
- ノルウェーは6年かけて中国を怒らせてはいけないことを理解した
- 2010年のノルウェーの態度は分不相応であった
- 中国を尊重することは対中関係発展の大前提である
- それを満たして初めて中国も相手国を尊重する
- ノルウェーは人口わずか500万人である
- 中国とノルウェーの力量の差は桁違いである
- (2010年の平和賞授与を指して)ノルウェーは中国に説教しようとしたが、ゴーカートしか運転できないゲーム小僧が、他人に大型トラックの運転を教えるようなものだ
強いやつの言うことを聞け。
強いやつを怒らせるな、逆らうな。
基本的にジャイアニズムなのです。
中国の強大主義外交
中国の外交を突き詰めて言うと「強いやつの言うことを聞け」です。
中国の立場に立ってソフトに言うと「中国に従ったほうが得だろ?」です。
東南アジアで言えばカンボジア、ラオス、そして新たにフィリピン。
強い中国に歯向かうのか?
それとも勝ち馬に乗って甘い汁を吸うのか?
美味しい勝ち馬に値する強さを身に付け、その強さで支配する。
これが中国の基本的な考え方です。
それがグローバルスタンダード
みなさん、すでにお気づきでしょう。
そうなんです。
アメリカもロシアも同じです。
強大さで無理筋を通す。
甘い汁を吸わせられる勝ち馬になる。
中国も結局は米露と同じ道を歩んでいるのです。
中国も強大さに従っている
そしてこれは矛盾ですが、中国もその強大さに屈しています。
アメリカの潜水機器を回収した事件。
最終的に中国が返還に応じました。
これ、中国が悪いみたいに言われています。
本当にそうでしょうか?
潜水機器を回収した中国は悪くない
例えば仲の悪いご近所さんがいたとします。
そのご近所さんがドローンを飛ばしてうちの家の様子をうかがっている。
近寄ってきたドローンをつかまえた。
「返さんかい、ぶち殺されんどぉ、われぇ~!」
怒鳴るご近所さんをガン無視でドローン回収。
何が悪いですか?
中国も強大主義に従っている
中国側の道理に照らし合わせれば、今回の件で中国は正当です。
自国の安全を守るために行動しただけです。
でも、アメリカは強い。今は勝てない。
だからアメリカに屈して穏便に幕引きを図ったのです。
くそっ、アメ公が!って思いながら。
中国が目指すもの
つまりこういうことです。
奴隷貿易しかり、アフリカ分割しかり、インディアン虐殺しかり、
アヘン戦争しかり、香港割譲しかり、頤和園略奪しかり、
極東軍事裁判しかり、原爆投下しかり、捕鯨禁止しかり。
何が正しいかを決めるのは強者である。
中国は強大主義でルールメイカーになろうとしているのです。
強者が正義を決める
何が正しいかに答えはない。
強い者が何が正しいかを決める。
これがイギリスが、フランスが、アメリカが実現し、そして今、中国が目指しているものです。
我が国はどうあるべきか?
今回、中国は強大主義外交でノルウェーを屈服させました。
それは賢明な選択です。
なぜならば、スペイン、ポルトガルから米ソに至るまで、それで成功してきたからです。
では我が国はそれにいかに対抗するか?
強くなるしかないのです。
中国の強大主義に屈しないだけの強さを持つしかないのです。