東南アジア放浪記/イメージ画像

地元の商売人が集まる市場。本物だからおもしろい。観光地なんてくそくらえ~!

ベトナム4日目。この日の朝食はホテルの前に朝だけやってくる屋台で「バインミー(Banh mi)」を調達。バインミーはフランスパンの間に肉やら野菜やらを挟んだもの。要はバケットサンドだ。写真を撮るのを忘れてたのでネットから拝借。

Banh mi(バインミー)

言うまでもないが、僕が食べたのはこんな洒落たものではない。地元民相手の屋台なので、もっとシンプルというかワイルドというか、いかにも庶民の朝メシという見てくれ。値段も100円もしない。

しかし、なにせ70年の長きに渡ってフランスの植民地支配を受けてきたベトナム。その間にフランスパンは完全にベトナムの食文化に根ざした。日本に比べると格段に美味いパンの味。土台となるバケットが超美味だから、間に挟むものが貧相だろうと上等な朝食となるのだ。


メール処理など通常業務を済まして街へ出る。今日はチョロンに行く。チョロンはホーチミンシティのチャイナタウン。ベンタイン市場の前のロータリーからバスに乗って西へと向かう。

路線バス

海外で長距離じゃない市内の路線バスに乗ってるとけっこう疲れる。窓の外に次から次へとおもしろそうなものが出てくるから。それを頭を左右に振って目で追っかけてるとけっこう疲れるのだ。笑


30分もかからなかったと思う。目指すチョロンに到着。バスターミナルを起点に周囲を歩いてみたが、チャイナタウンという雰囲気はほとんど感じられない。マニラのチャイナタウンのほうがはるかに中華だ。そうとう現地化が進んでいるのだろう。

路上の食堂で早目の昼食を取り、今度はベンタン市場に向かう。場所がよく分からなかったのですれ違う若い子に何度か聞いてみたのだが、英語がまるで通じない。ついには高校生くらいの男の子に「Excuse me」と話しかけたら逃げられてしまった。笑) 逃げんでもええやん。


しばらくウロウロしてやっと到着。外の写真を撮り忘れたのでいきなり中の写真から。

ベンタン市場

このフロアでは衣料を売っていた。右を向いても左を向いても衣料だらけ。何十件という小さな店が並んで衣料を売っている。

ベンタン市場

また、各店ごとに扱う商品の専門性に違いがある。紳士衣料が専門の店、子供服を中心に扱う店、靴下がずらっと並ぶ店など。見ていて飽きない。

ベンタン市場

階下にも衣料品店がところ狭しと並ぶ。中央に深緑色をした大きな袋が奥に向かっていくつも並んでいるのが見えると思う。袋の中は入荷した衣料。この状態でトラックに載せられて郊外の工場からここへ運ばれてくるのだ。

ベンタン市場

そしてこの写真の中央下。こちらも衣料品店なのだが、衣料がビニール袋に入って直方体になっているのが分かるだろうか。買いに来たお客にはこの状態で売る。中には同じ衣料が入っている。ここは一般の消費者ではなく、ホーチミン市内の小売業者向けの卸売市場なのだ。


ここでは衣料品店だけを紹介したが、ベンタン市場は食品から文具、玩具、衣料に金物まで、およそ一通り何でも扱う大きな市場だ。そしてそのいずれもが上で紹介した衣料品ゾーンと同じような仕組みになっている。

ホーチミンシティ周辺の農村や工場などから商品がここに運ばれ、ホーチミン市内の小売業者がここから仕入れていく。産地と消費地とを結ぶまさに本物の市場なのだ。


ベンタン市場と似たような名前で紛らわしいのがベンタイン市場。僕がバスに乗ったロータリーにある恐らくベトナムで一番有名な市場だ。どんなガイドブックにも必ず載っており、ホーチミンシティを訪れる観光客でベンタイン市場を訪れない人はまずいないだろう。

で、僕も一応行ったんだけどね。もうね、まーったくもっておもしろくないのよ。いや、ホントに。

何がおもしろくないか。完全に観光地化してしまっているのだ。中で売られているのはSAIGONと書かれたTシャツだったり、おみやげ用に作りました感モリモリのベトナムコーヒー&フィルターセットだったり。ほんで、それを売ってるお店のおばちゃんが片言の日本語で「コレ、ヤスイ、カウネ」とか言ってきて。さらにそのおばちゃん相手に観光客が何とかして値切るぞオーラー出しまくりで対決してたり。

もうとにかく、本来の市場としての機能は完全に失ってしまっているのだ。完全に観光地。「市場型テーマパークinホーチミンシティ」って名前変えたほうが良いよ、って感じ。


それに比べればベンタン市場のほうが100倍おもしろい。なにせ卸売市場なので個人客なんて相手にしない。彼らにとってのお客様は仕入れに来たホーチミン市内の小売店主だけ。だから声なんてまったくかけられない。それどころかこっちが声かけてもまったく対応してくれない。笑

そして売られてるものが市民が日常で使うものばかり。ベトナムの小学生ってこんなノート使うんだなぁとか、こんな魚食べるんだとか、これ何に使うんだろ?とか。生活臭漂いまくりなので見てて飽きないのだ。観光客向けのおみやげを並べたベンタインとはぜんぜん違う。見るならベンタンだ。


そんなベンタン市場なのだが、今朝乗ってきたバスには僕以外にも1組、ガイドブックを手にした観光客がいた。また、10人くらいの欧米人のグループ客がガイドに連れられて見物に来ていた。

そうなのだ。ベンタインなんておもしろくない。どうせなら市民の息吹が聞こえるような市場を見たいと思うのは僕だけではない。そんな観光客がベンタンを目指してやってくる。

そしてそういった本物を見ようとする観光客はこれから確実に増えていき、恐らく何時の日か、ベンタン市場もまたベンタイン市場のようなつまらない観光地に成り下がってしまうのだろう。

観光地なんて見に行くものじゃない。見るなら本物。そして本物が観光地に成り下がる前に。

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