金より時間、地位より自由、安定より放浪 ~オッサン個人事業主の東南アジアぶらぶら一人旅~
ベトナムといえばバイク。と噂には聞いていたが。聞くと見るとでは大違い。半端なしにバイクがすごい。これ見るだけでもベトナムに来る価値あるかも知れんわ。
とにかく右見ても左見てもバイク。ただひたすらバイク。バイク、バイク、バイク。それがイナゴの群れのようにドバーって走ってくる。イナゴの群れって見たことないけどw
僕は中国で6年ちょっと暮らしていたので、道を渡るのは相当鍛えられたつもりだった。けっこう自信あった。でもホーチミンシティに来て自信がくだけた。怖いわ、この街で道渡るの。中国で道渡るの一番怖いのは大連だけど、ホーチミンシティはそれ以上。道を渡るのに覚悟がいる。それはさておき。
ホーチミンシティにはバス路線が細かくあるのだが、走っているバスを見ていたらけっこう空いていることに気付いた。昨日も夕方の5時過ぎにバスに乗ったのだが、帰宅ラッシュの時間帯にもかかわらず、座席は半分くらいしか埋まってなかった。路上は家路につくバイクだらけなのに。
それはつまり、バスより便利なバイクを買うだけの経済力があるってことなのだろう。
で、計算してみた。バスとバイクのコスト比較を。ちょっと数字が続きます。
まず、バスの運賃は市内均一で4,000ドン。往復で8,000ドン。日本円で約40円。家から職場に行って帰るのにバスだと1往復40円かかるということ。
次にバイク。スタンドで調べてみたら、ガソリンは1リッター120円だった。仮にバイクの燃費がリッター30kmで、通勤に片道3km、往復で6km走るとすると、1リッターで5往復できることになる。1リッター120円で5往復だから1往復24円だ。バスだと40円なので、確かにバイクのほうが安い。
しかし、バイクを買わないことにはバイクに乗れない。バイクは1台いくらするのか? ホテルのフロントの子に聞いたら、スーパーカブみたいなので1台10万円、スクータータイプだと15万円とのことだった。
バスの運賃よりバイクのガソリン代のほうが安いといっても、その差は1日わずか16円。1週間5日勤務で80円。1年53週として4,000円の差にすぎない。10万円のバイク代を取り返そうと思ったら、10万円÷4,000円=25年もかかる。
これはどう考えても、コストよりも便利さを取っている。1日16円を節約するためにバイクに乗っているのではなく、バスよりバイクのほうが便利だからバイクに乗っている。ホーチミンシティの人たちは便利さのために10万、15万を支払える経済力になっているということだ。
現時点ですでにホーチミン市民は便利さのためにバイクを買える水準に達している。そして実際に買っている。であるならば、いずれより便利な自家用車を求めるようになるだろう。今の中国人民の多くがすでにそうなっているように。では果たしてそれはいつ頃のことになるのだろうか?
調べてみたら、ホーチミン市民の平均年収は25万円くらいとのことだった。バイク1台の価格が年収の半分ってことだ。日本の自動車メーカーがインドやインドネシアでエントリーユーザー向けに売り出す車が、確か1台50万円だったと思う。それをベトナム人が年収の半分で買うとすると、その時の年収が100万円になっているということになる。
ベトナムの経済成長率が7%くらいだったと思う。経済成長率と同率で年収が伸びると仮定すると、今が25万だから、今から21年後に100万に達する。今はバイクに乗っているホーチミン市民たちが、21年後にはバイクではなく車に乗るようになるということだ。
ハノイも同等の所得水準と仮定して、ホーチミンとハノイを合わせた人口は現在1,300万人。21年後だと農村からの都市流入がそうとう進んでいるだろうから3,000万人はいくだろう。
1世帯5人と仮定すると600万世帯。1世帯に車1台とすると600万台だ。トヨタの年間販売台数が1,000万台だから、その6割に匹敵する市場が21年後に生まれるということだ。これはとんでもなく大きなビジネスチャンスだ。
が、しかし、同時に大きなリスクでもある。
現在インドネシアが同じようなバイク王国状況らしい。経済状況もベトナムと基本的に同じ。インドネシアの人口はベトナムの2倍強くらいだったと思うから、同じ頃にインドネシアでは1,500万台くらいの車が走るようになる。インドはきっとそれ以上だろう。
となるとだよ、読者のみなさん。ガソリン足りんようになるぞ! 21年後というと僕の世代が60代半ば。定年退職する頃にはガソリンが1リッター300円とかなってるかもしれない。そうそう気楽に車乗れんようになるぞ。
ガソリンが足りんと言うことは、原油が足りんということだ。原発は減らすそうなので、火力発電所のコストが上がって電気代も上がるかもしれない。
ナフサとかナイロンとか、石油化学製品も値上がりするだろう。パンツのゴムが切れても、そうそう買い換えられんぞ。紐でしばって結ばないかんようになるんとちゃうか?笑
夕方のホーチミンシティの交差点の脇で、行き交うバイクを見ながらずーっとそんなことを考えていた。
でもきっとそうなるよ。僕らのパンツのゴムがどうなるかはともかく、こいつら20年後にはきっと車に乗ってる。そういう勢いというか、欲望というか。中国の道端で感じるのとまったく同じものをこの街でも感じる。きっと間違いない。
欲しいものがある。手に入れたいものがある。そして、がんばれば多分それが手に入りそうな気がする。そういう実感を持てる。そんな空気をこの街からは感じる。
欲しいものがある。手に入れられそうな未来を感じられる。日本と中国、ベトナム、フィリピンで何が違うか。きっとそこが一番大きな違いなんだろう。