東南アジア放浪記/イメージ画像

どうなる、日本の家電メーカー? 戦いどころを見誤ったシャープに未来はない。

ベトナム最終日もやはり街歩き。朝食後に紙ナプキンを購入しw、いったんホテルに戻ってメール対応など通常業務を済ます。最終日なのでチェックアウトしなければならない。荷物をまとめ室内をザッと片付け、枕元にチップの2万ドン紙幣を置き、この街での5日間を過ごした部屋を後にする。

恐らく過去45年の人生で乗ってきた中で最も低速で上下するこのホテルのエレベーターで1階に降り、フロントに荷物を預けて外に出る。さて、右か左か。今日は左にしよう。


ブイビエン通りをぶらぶらと東に進む。左手には初日にベトナムコーヒーを飲んだカフェ。店の子がまた飲まないかと誘うが、いやいや、1回飲めば十二分です。右手には2日前の夕方にマッサージを受けろと勧められ、2・3日中に来るよと袖にした店。あ、やばい、店の子と目が合いそう。笑

デタム通りとの交差点。今日は左からスタートした。今度は右に曲がってみよう。50メートルも行かないうちに幹線道路のチャンフンダオ通りにぶつかる。交差点にはピザハット。その横に2日前とは別の家電量販店があった。よし、入ってみよう。


ブラっと入った家電量販店。そこでは国ごとの強みというか特徴がモロに出ていた。興味深くもあり、物悲しくもあり、実に考えさせられる光景が広がっていた。

まず携帯電話。ここは圧倒的な韓国の天下だった。どこまでも延々と続くサムスンとLG、とにかくずーっとサムスンとLGが続いて、そのあとにノキアや台湾のhtc、日本メーカーはソニーエリクソンが数機種あるだけ。

デジカメ売り場

次にデジカメ。ここは逆に圧倒的なジャパンワールド。キャノン、コニカ、ニコン、ソニー、オリンパス。とにかく日本一色。日本製にあらざればデジカメにあらずといった様子。日本以外ではサムスンがちょっとあるだけだった。携帯とはまったく逆の状況だ。


混戦だったのがノートパソコン。東芝やソニー、レノボにhp、さらに台湾勢。混戦ってことは、ここが一番儲からないカテゴリーってことだ。ブランドや機能で高付加価値勝負をかけられないなら、見切りをつけて撤退したほうが良いように思う。

テレビ売り場

2階に上がるとテレビ売り場。ここも大混戦だった。メインを張っているのはサムスンではあったが、どこも同じような商品を大して変わらない値段で売っている。液晶テレビなんてパネルを仕入れて組み立てるだけ。性能で明確な差を付けられない以上、値段で差を付けるしかない。すでに中国メーカーが価格勝負を仕掛けてきている。ここも撤退すべきだな。

冷蔵庫売り場

次は3階。うわっ、冷蔵庫に洗濯機。白物家電か。一番儲からないところだ。日本の家電メーカーはいつまで白物家電を作り続けるのだろうか。日本の製造コスト、本社コストでハイアールに勝てるわけないだろうに。


そして4階。ここでは日本メーカーの対照的な姿が並んでいた。

シャープの炊飯器

上の写真、写っているのが炊飯器であることは分かると思う。それもかなり年季が入ったというか、そうとう旧式の炊飯器だ。この炊飯器、メーカーはなんとシャープだ。目の付け所がシャープのあの日本のシャープなのだ。これには頭を抱えた。

僕が子供の頃ですら、すでにこんな炊飯器は売られていなかった。お値段は100万ドン、日本円で5千円。これに保温機能を付けたものが6,000円。

ただ単にコメを炊くだけ、温めるだけ。こんな付加価値の付けようのない単機能の商品、値段勝負になるのは目に見えてる。シャープのような日本メーカーのコスト構造で中国や東南アジアのメーカーに勝てるわけがない。なぜこんな商品を売るのか。やっぱりシャープはダメだ。


一方、まったく違う戦い方をしていたのがタイガーと象印だ。

タイガーの炊飯器

タイガーも旧式の炊飯器を並べてはいたが、メインで売ろうとしていたのは上の写真、日本から輸入したIH炊飯器だった。お値段は日本円で5万円前後。象印も同様の戦略で、メイン商材は7万円前後のIHだった。

価格勝負で中国や現地のメーカーに勝てるわけがない。であるならば機能で勝負するしかない。地元メーカーでは絶対に作れないであろうIH炊飯器を日本から輸入し、ベトナムの富裕層向けに販売するという戦略。日本のメーカーが白物家電で勝とうとするとこれしか戦い方はないだろう。


日本のような高コスト体質のメーカーが付加価値の付けようがない単機能、低機能商品で新興国のメーカーに勝つなど不可能だ。単機能のジャー釜などシャープが手を出す商品ではない。

だがシャープはテレビから冷蔵庫、ソーラーパネルまで販売する総合家電メーカー。ホーチミンシティの家電量販店でどんな炊飯器を売っているかまでチェックの目が届かないのだろう。だから勝ち目のない勝負を続ける。

ところが象やタイガーはそうはいかない。なにせ売るものといえばジャー釜と水筒くらいしかない。どうすればベトナム市場で勝ち残っていけるのか、シャープとは比べ物にならないくらい必死に知恵を絞って考え抜いたのだろうと思う。


いずれにしてもシャープは終わった。関西人としては残念だけど。戦いどころを見誤ったメーカーに未来はない。

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