東南アジア放浪記/イメージ画像

ベトナムの家電量販店へ。どうしたソニー、松下? 日本のモノ作りはかくあるべし!

ホーチミンシティでのぶらぶら歩きは続く。庶民の集う下町の市場を後にして次はどこへ行こうか? 市場のすぐ前の交差点に出てみる。行き交うたくさんの車、そしてベトナムだけに大量のバイク。信号がない上に五叉路になっていてシッチャカメッチャカ。その交差点の向かいにビルがあった。

家電量販店

どうやら家電量販店のようだ。特に家電好きというわけではないのだが、ベトナムの家電量販店なんてなかなか見る機会がない。ちょっとのぞいてみよう。


ビルに近づいて壁面を見る。家電メーカーの看板が出ている。

看板

ふぅ。一等地に韓国メーカー、その下に日本メーカー。ベトナムに限ったことじゃない。フィリピンでも中国でもこうだ。途上国ではこれが普通なので今さらなんとも思わない。

店内に入ってみる。家電の花型といえば今でもテレビ。薄型テレビがズラッと並んでいる。入り口から入ったすぐのところにサムスン、次がLG、そのあとにソニー、パナソニックなど日本メーカーが続く。これももはや驚かない。


ところがだ、薄型テレビの値段を見て驚いた。ソニーも松下もシャープもLGの値段と変わらない。物によっては日本メーカーのほうが安い。そして売り場で一番強気の値付けをしていたのは、なんとサムスンだったのだ。

売り場で一番高いのがサムスン。サムスンよりもソニーや松下のほうが安く売られている。これはさすがにショックだった。悪夢としか言いようがない。ついにここまで来たのか。


なぜこんなことになってしまったのだろうか。僕は日本でバイヤーをしていた頃から思っていたのだが、日本のメーカーは顧客よりもモノや技術の方を見ている。顧客のニーズに合わせるのではなく、良いモノを作るとか、高い技術を目指すとか、そっちの志向が強すぎるように思う。それを頭ごなしに悪いと言うつもりはない。その姿勢があったからこそ日本のメーカーが高い技術を誇れるようになったことは事実だ。

しかし、日本のメーカーは最終消費者向けのモノ作りに向いていないと僕は思う。顧客ではなく技術に目が向いてしまう。それゆえ、このスペックだと最終売価が高くなるからここはスペックを落とそうといった割り切りができない。顧客の求めるスペックではなく、メーカーとして、技術者として作りたいスペックで製品を世に出してしまう。それで売れるわけがない。バイヤーとしてそんな商品をいくつも見てきた。

これは良し悪しではなく向き不向きの問題だ。おそらくこの先100年やっても、日本の家電メーカーが最終消費者向けの製品で韓国や中国、台湾のメーカーに勝てる日は永遠にやってこない。日本のメーカーには無理だ。向いていない。高い技術を追求すれば顧客に顔を向けてなくても売れる時代はもう終わったのだ。


では日本のメーカーはどうすれば良いのだろうか? 先ほど「向き不向きの問題」と書いた。今の日本のメーカーに向いている製品、それは生産財や中間財、原料や素材といったメーカー向けの製品ではないだろうか?

テレビを作るのではなく、テレビの部品を加工する高精度の工作機械とか、テレビモニタに使う液晶パネルをナノメートル単位で加工する製造装置とか、スマホやタブレット端末のタッチパネルの表面の皮膜とか。そういった製品のほうが価格よりも性能や機能で勝負できるし、付加価値も付けやすい。日本のメーカーや日本人にはそっちの方が向いていると僕は思う。


消費者向け商品から撤退するのか?という人もいるだろうが、それは決して悪い選択ではない。もはや消費者用家電製品は儲かるカテゴリーではなくなってきている。ただひたすら価格の叩き合い。そんな市場でわざわざ日本が戦う必要はないではないか。

むしろ、そういった儲からない商品を作るための生産財や素材を作り、中国や韓国のメーカーに売ってしっかり儲けさせてもらい、儲からない市場での殴り合いは中韓のメーカーにお任せする。「おたくらお好きにど~ぞ。うちは高みの見物させてもらいますわ。」 そのほうがよほど利口なのではないだろうか?

ホーチミンシティの家電量販店でそんなことを考えてみた。

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