東南アジア放浪記/イメージ画像

ベトナムにもゲーセンはあった! やばいぞ、日本のソフトパワー。早く手を打たねば。

ホーチミン師範大学の近所にあったファッションビル。各フロアには日本と同じようにアパレルのショップが立ち並び、日本のものとそう変わらないような商品が売られていた。

さらに最上階にはイオンモールにあるようなフードコートがあり、ぱっと見る限り運営システムも日本と違いが見られない。途上国だからといって何から何まで日本より遅れているわけではない。カテゴリーによっては日本とまったく同じなのだ。

フードコートをのぞいたあと最上階をうろついていると、もう一つ日本と変わらないものがあった。ゲームセンターだ。


ゲームセンター

「ゲーセンか。日本もベトナムも若い子が遊ぶネタは一緒やなぁ。」

金属音が鳴り響き何となく薄暗い、日本と同じゲーセン特有の雰囲気。そしてそこに並ぶゲーム機も日本と変わらない。頭文字Dなどのレース系のほか、ダンスダンスレボリューションといった懐かしいゲーム機も並んでいる。

フロアにはコナミやセガなどのゲーム機がところ狭しと置かれている。こういったカテゴリーは日本メーカーの独壇場である。はずなのだが…

太鼓の達人

「ありゃ、UFOキャッチャーやられとるわ。釣りゲームもやられてしもたなぁ。あ、太鼓の達人。おぉ、太鼓はまだ無事やったか。」

何がやられて何が無事なのか? UFOキャッチャーと釣りゲーム、置かれていたゲーム機は日本製ではなく中国製。中国メーカーのゲーム機だったのだ。


かつて途上国のゲームセンターに置かれているゲーム機のほとんどは日本から輸入された中古品だった。今でも多くはそうで、ホーチミンシティのこのゲームセンターにも使い方などが日本語で表記されたゲーム機が数多く並んでいる。

ところが恐らく5年ほど前からではないだろうか。中国製のゲーム機がかなり並ぶようになってきたのだ。UFOキャッチャー然り、釣りゲーム然り、そのほとんどは日本のゲーム機のパクリだ。太鼓の達人はまだパクられていないようだが、レース系などでも中国メーカーのものがすでに出ている。

内容や遊び方が大して変わらなくて値段も安いならば、日本のお古より中国の新品のほうが良いだろう。中国本土だけでなく途上国でもこういった中国製のゲーム機が急速に普及してきているのだ。


パクるのが良いとか悪いとかをここで論ずるつもりはない。良いも悪いもパクられているのだから、善悪を論じたところで状況は変わらない。論ずるべきはこの状況に日本がいかに対応するかだ。

ゲームにせよアニメにせよ、日本のソフトパワーは世界で広く受け入れられている。しかしこのゲームセンターの状況が雄弁に語る通り、こういったコンテンツ系の商品もいずれはパクられタッチアップされるのだ。

ならば日本はどうすべきなのか? 一つはこのカテゴリーをあきらめて撤退すること。けどそれはイヤだよね。となるともう一つの選択肢。追いつかれないようにする。レース系が追いつかれた頃には太鼓を出している。太鼓が追いつかれた頃には更に新しいものを出している。それができるクリエイティブ系の人材を国として育成する、または育成できる環境整備をすべきではないだろうか。


こういった人材育成の点において、実は日本は中国に負けている面がある。北京オリンピックの前後あたりだったと思うが、中国政府がアニメ産業の育成を公式に打ち出した。なにせああいうお国柄なので、お上がこうと言ったら下々は一斉にイエッサ~となる。瞬く間に各地の大学や専門学校にマンガ学科やアニメ学部が作られたのだ。

クリエイティブ系の人材育成を国家がやるのか、育成する場所として大学が適切なのかはまた別の問題だ。それはそれとして、国家としてどの分野を強化するかを決め、そして決めたらすぐにそれを実行に移す。これが今の日本には求められており、この点については素直に中国の姿勢を学ぶべきだろう。

そしてそれは決して日本にできないことではない。石炭から造船へ、繊維から自動車へ、高度成長期の日本は当時の通商産業省が旗を振って産業構造の転換を一気に推し進めた。それに比べればソフトパワーでの人材育成など実に小規模なプロジェクトではないか。日本にできないはずがない。やろう。やるべきだ。

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