東南アジア放浪記/イメージ画像

ベトナムにだってコンビニはある。世界最強の日本のコンビニはベトナムで勝てるか?

夕暮れ時の公園で欧米人観光客相手に英会話の練習を果敢に挑む若者たちを見たあと、素直にフォングーラオ通りをホテルに向かえば良かったのだが。魔が差したと言おうか。ベンタインから南西に伸びる幹線であるチャンフンダオ通りを歩いてみた。

2つ目の交差点からブイビエン通りに入ればホテルに戻れるのだが、なんとなく歩きたい気分だったのでスルーして前進。途中で右手の脇道に入り、路地をあちらに曲がり、こちらに折れ、ふらりふらりと歩いて行く。

さすがフランスパンの街。店先にバケットを山積みにしたパン屋があり、明日の朝食にするのだろうか、それを何本も袋に放り込んで家路につく市民。その傍らの惣菜屋では、ショーケースの前でおっちゃんとおばちゃん今夜の晩ご飯の品定め。


そんな光景を楽しんでいてふと我に返る。「あれ?ここどこ?」 ポケットから地図を取り出し広げてみる。うーん、さっぱり分からない。どうやら道に迷ったようだ。40過ぎで迷子。笑

しょうがないのでとりあえず適当に歩いてみるが、やはり分からない。道ばたで談笑している若い2人連れに声をかける。英語はまったく通じないのだが、あの手この手のジェスチャーで道を尋ねる。ようやく地図上の現在地が判明。右手に進んでいけばブイビエンに戻れそうだ。


ホテルを目指して歩き出す。すると路地裏には似つかわない小ぎれいな建物が姿を表した。コンビニだった。

B's Mart

このコンビニの名は「B's Mart」。店内は見事に日本のコンビニそのまま。まったく変わらない。日本と同じようにおにぎりも売っている。ちょっとした惣菜のようなものも売っていたので、今夜の酒のつまみに買って帰る。


このB's Mart。看板の緑色を見てピンときた人はかなり勘が良い。実はつい最近までファミリーマットだったのだ。

2009年にベトナムに進出したファミリーマートは2013年までに店舗数を40店あまりにまで増やした。ところが現地のパートナー企業の本業が傾き、タイの企業に買収されてしまった。相手先との交渉がうまくいかなかったのだろうか、提携は解消となり1店舗を残して他はすべて相手に譲渡することとなった。

そして譲渡を受けたタイ企業が新たに付けた名前がB's Mart。僕が訪れたこの店はつい1ヶ月ほど前までファミリーマートだったのだ。店内が日本と同じなのも当たり前。


日本を離れるとよく分かるのだが、日本のコンビニというのは本当にすごい。とにかく便利。あって助かる、ないと困る。ここまで便利な商店は他にはない。コンビニは日本のインフラだ。

鈴木敏文がセブンイレブンを生み出し、ローソンやファミマ、ミニストップなどが競い合って育てたコンビニは、日本が誇る世界的な発明品と言って良いと思う。そしてその日本式コンビニは、中国や台湾、さらにフィリピンなど東南アジア諸国でも広く受け入れられている。


では、ファミリーマートと袂を分かったB's Martだが、これから上手くいくだろうか? 恐らくオペレーションやシステムが徐々に崩れてくると思う。今はファミマのレベルだが、半年もしないうちに似ても似つかないレベルまで落ちるのではないだろうか。

コンビニのオペレーションやシステムは、なぜそうやっているのかという根本の発想が理解できないと維持できない。そしてその根本とはいわゆる日本的な考え方や発想をベースにしている。いわばコンビニのDNAといったものは簡単に真似できるものではないのだ。

それは中国に住んでいた時に実際に目にした。店舗オペレーションを維持するためには、従業員の教育や本部からの定期的なチェック、指導などが欠かせない。中国に進出した日本のコンビニの中で、このレベルが一番低いのがローソンだった。ローソンは新しい店を出しても半年もしないうちにオペレーションが崩れていた。

これに対して崩れないのがファミマとセブン。どんな手を使っているのかは分からないが、コンビニのオペレーションレベルを維持するというのはそうそう簡単なことではないのだ。


なので、ファミマと別れたB's Martのオペレーションレベルは必ず下がってくると僕は予想する。では、B's Martはこれから業績が傾いたりつぶれたりするのか? うーん、そこなんだよなぁ。

先ほど中国のローソンはオペレーションレベルが必ず下がると書いた。ではレベルが下がったローソンから客が逃げていくのか? 実は逃げないのだ。中国人のお客は特に不満を感じることなく、レベルが下る前と同じようにローソンを利用する。

なぜか? 日本人が求めるほどのレベルを中国人は求めていないのだ。日本人が100のレベルでようやく満足するところ、中国人は70で十分だと思っている。だからオープンした時に100だったローソンのレベルが半年後に80に下がっても、70で良しとする中国人にとってはこれっぽっちも問題はないのだ。

日本人の基準というのはあくまでも日本人にとっての基準にすぎない。日本の基準が世界標準ではない。中国には中国の基準があり、ベトナムにはベトナムの基準がある。これを勘違いすると痛い目に遭うことになる。


長旅の末、ようやくたどり着いたホテル。今夜のビールはこれ。

サッポロプレミアム

サッポロプレミアム、17,000ドン(80円)。これが大当たりでムッチャ美味かった。日本でも売れよって思うほど。

日本人の基準から言えば非常に美味いこのビール。さてさて、ベトナム人の基準に合うでしょうか?

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