仮想通貨投資での税金、確定申告の手続きには平均取得価額が必要です。
この記事では
- 平均取得価額の計算方法
- 総平均法
- 移動平均法
- どちらが良いか
- 年度をまたぐ平均取得価額の扱い方
などについて、分かりやすく解説します。
超初心者向けです!
タップできる目次
平均取得価額が必要な理由
まず最初に、仮想通貨投資の税金計算でなぜ平均取得価額が必要なのかを説明します。
すでにご存知の方は次の章に飛んでください。
仮想通貨売買での所得の出し方
仮想通貨の売買によって発生した所得は次の式で出します。
- 所得=売却価額-取得価額
例えば次のような場合だと(以下、イーサを例にします)(※1 取得価額または売却価額、以下同)
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 ※1 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
1ETH=18万円で買ったイーサ2枚を1ETH=25万円で売ったので、
(25万円×2枚)-(18万円×2枚)=14万円
所得は14万円となります。
簡単だね。
売買を繰り返すと取得価額が分からなくなる
確かに引くだけなので簡単です。
しかし、売買が何回も繰り返されると話が変わってきます。
下の例で5月に売却したイーサの取得価額はいくらでしょう?
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
どれがどれやら…
平均取得価額の利用で解決
これを解決するのが平均取得価額(取得価額の平均)です。
一定期間の平均取得価額を出し、それに売却した枚数をかけて取得価額を出します。
- 所得=売却価額-取得価額
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
これは「平均20万円で買ったイーサを3枚売ったら90万円入ってきたので利益は30万円」という考え方です。
- 30万円=90万円-60万円
- 60万円=20万円/ETH×3ETH
何度も売買していくらで買った分を売ったのか分からない。
そこで平均を出したら20万円だったので、どれも20万円で買ったものとして扱う。
これが平均取得価額の考え方です。
どうやって平均を出すの?
平均取得価額の2つの出し方
平均取得価額の計算方法には次の2つがあります。
- 総平均法
- 移動平均法
以下、順に解説していきます。
総平均法での平均取得価額の計算方法
それでは、総平均法での平均取得価額の計算方法を解説します。
1年分をまとめて出す
総平均法とは?
総平均法では一定期間の平均取得価額を単純平均で出します。
へ?
ピンとこないですよね?笑
実例で示します。
総平均法での計算例
総平均法での税金処理では1年分の取引をまとめて平均取得価額を出します。
ある年の仮想通貨の売買が以下のようだったとします。
合計6回の売買です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
ここから購入だけを抜き出し、取得価額の合計と取得枚数の合計を出します。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
合計 | 18 | 414万円 |
そして、「取得価額の合計」を「取得枚数の合計」で割ったものが平均取得価額です。
平均取得価額は1ETH=23万円です。
単純に割るんだ!
総平均法での所得の計算
次に総平均法での所得の計算の方法です。
さきほどの表に戻ります。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
総平均法では3月と5月に売ったイーサはどちらも取得価額が23万円/ETHだったとします。
この年の売却は以下の2回でしたので
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
- 売却価額:170万円
- 3月分:50万円
- 5月分:120万円
- 取得価額:138万円
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 23万円×(3月の2枚+5月の4枚)
- 所得:170万円-138万円=32万円
所得は32万円です。
考え方はシンプルね。
総平均法のメリット・デメリット
総平均法のメリット
総平均法のメリットは平均取得価額の計算が単純で簡単な点です。
また、計算をするのが年に1回だけなので楽です。
次の移動平均法と大違いです!
総平均法のデメリット
一方のデメリットですが、実際の売買感覚に合いません。
3月分、5月分ともに23万円で買ったことにするのですが。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
5月分はともかく、3月分はどう考えても23万円で買ってないですよね?
違和感ありまくり。
また、1年間の取引がすべて終わるまで平均取得価額を出せません。
つまり、所得=納税額が年末ギリギリまで分からないということです。
納税資金の準備に影響するかも。
移動平均法での平均取得価額の計算方法
次に移動平均法での平均取得価額の計算方法です。
非常に複雑でややこしいです。
途中で分からなくなったらギブアップして総平均法にしましょう。笑
僕も総平均法です!
売買のたびに出す
移動平均法とは?
1年分をまとめて出す総平均法に対して、移動平均法では売買をするたびに平均取得価額を出します。
これも例を見ながら説明しましょう。
移動平均法での計算例
さきほどと同じ例を使います。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
まず、1月の購入後の時点では
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
購入にかかった費用は90万円で手元にあるイーサは5枚。
したがって、平均取得価額は18万円となります。
これは納得。
2月の購入では、購入前の時点で平均取得価額18万円のイーサが5枚、90万円分あります。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 |
ここに、イーサ5枚、100万円分が加わりました。
- 2月購入前:90万円分、5枚
- 2月購入分:100万円分、5枚
- → (90万円+100万円)÷(5枚+5枚)=19万円
この結果、平均取得価額は19万円となります。
平均取得価額が変わった!
続いて3月です。
ここで売却が入ります。
3月に売却した2枚は直前の平均取得価額19万円で購入したものと見なします。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 |
したがって3月の売却による所得は12万円です。
- 売却価額:50万円
- 取得価額:38万円
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 19万円×2枚
- 所得:50万円-38万円=12万円
移動平均法では所得は売却のたびに計算します。
1年分まとめてじゃないんだ。
さらに4月です。
3月売却後の時点で手持ちのイーサは8枚。
平均取得価額は直前のものを引き継ぎます。
よって購入前のイーサの持ち分は8枚で152万円分です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 |
これに、4月に買った6枚、156万円分が加わる。
- 4月購入前:152万円分、8枚
- 4月購入分:156万円分、6枚
- → (152万円+156万円)÷(8枚+6枚)=22万円
よって、4月購入後時点での平均取得価額は22万円です。
さらに5月の売却です。
5月に売った4枚の平均取得価額は直前の22万円です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 |
22万円で買った4枚を120万円で売った。
- 売却価額:120万円
- 取得価額:88万円
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 22万円×4枚
- 所得:120万円-88万円=32万円
よって、5月の売却による所得は32万円です。
面倒くさ~い!
最後に6月の購入です。
6月購入前の時点でのイーサの持ち分は10枚、平均取得価額は22万円です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 14 |
ここに68万円で買った2枚が加わります。
さぁ、どうなるでしょう?
自分で計算してみてください。
出ましたか?
答えはこちら!
- 6月購入前:220万円分、10枚
- 6月購入分:68万円分、2枚
- → (220万円+68万円)÷(10枚+2枚)=24万円
6月購入後の平均取得価額は24万円です。
面倒くせ~!!!
移動平均法での所得の計算
移動平均法での所得の計算方法は見てきた通りです。
直前の平均取得価額を使って所得を計算します。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
- 3月分
- 売却価額:50万円
- 取得価額:19万円×2枚
- → 所得:50万円-38万円=12万円
- 5月分
- 売却価額:120万円
- 取得価額:22万円×4枚
- → 所得:120万円-88万円=32万円
移動平均法のメリット・デメリット
移動平均法のメリット
移動平均法のメリットは実際の売買感覚に合う点です。
総平均法では3月売却分の取得価額を23万円として扱うため、実態と合いません。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
これに対して移動平均法では3月売却分の取得価額は19万円、5月売却分は22万円です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
実際の感覚に合っている点で移動平均法は優れています。
移動平均法のデメリット
デメリットは言うまでもなく手間がかかり非常に面倒な点です。
複雑な計算を売買のたびに行う必要があります。
毎回はさすがにキツイ…
初心者には総平均法がおすすめな理由
平均取得価額の計算方法を2つ見てきましたが、初心者には総平均法がおすすめです。
その理由を説明します。
理由1.手間がかからない
理由の1つ目は手間がかからない点です。
初心者にイチオシの投資方法は仮想通貨積立、特に毎日積立なのですが。
移動平均法では売買のたびに計算が必要なので、毎日積立だと1年に365回計算が必要になります。
勘弁しろよ~www
総平均法だと1年に1回です。
理由はこれで十分ですよね?笑
理由2.最終的な所得は同じになる
理由の2つ目はトータルの所得が変わらない点です。
単年では所得に差が出る
単年単位で見ると総平均法と移動平均法では所得に差が出ます。
さきほどの例で総平均法の年間所得は32万円。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
- 売却価額:170万円
- 3月分:50万円
- 5月分:120万円
- 取得価額:138万円
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 23万円×(3月の2枚+5月の4枚)
- 所得:170万円-138万円=32万円
対する移動平均法の年間所得は44万円です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
- 3月分
- 売却価額:50万円
- 取得価額:19万円×2枚
- → 所得:50万円-38万円=12万円
- 5月分
- 売却価額:120万円
- 取得価額:22万円×4枚
- → 所得:120万円-88万円=32万円
- 合計:12万円+32万円=44万円
総平均法の年間所得32万円より12万円も多いです。
ぜんぜん違う!
これだけ違うと当然かかる税金も変わってきます。
トータルでは所得は変わらない
ですが、取得したすべての仮想通貨を売却するまでのトータルで見ると所得は変わりません。
ここまでの例で、残ったイーサを7月にすべて売却したとしましょう。
総平均法の場合
売却時のレートが1ETH=40万円だったとします。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
7月 | 売却 | 40万円 | 12 | 480万円 |
購入は変わらないので平均取得価額は23万円のままです。
- 売却価額:650万円
- 3月分:50万円
- 5月分:120万円
- 7月分:480万円
- 取得価額:414万円
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 23万円×(3月の2枚+5月の4枚+7月の12枚)
- 所得:650万円-414万円=236万円
トータルの所得は236万円です。
移動平均法の場合
こちらも同じく1ETH=40万円とします。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
7月 | 売却 | 40万円 | 12 | 480万円 | 0 |
- 3月分
- 売却価額:50万円
- 取得価額:19万円×2枚
- → 所得:50万円-38万円=12万円
- 5月分
- 売却価額:120万円
- 取得価額:22万円×4枚
- → 所得:120万円-88万円=32万円
- 7月分
- 売却価額:480万円
- 取得価額:24万円×12枚
- → 所得:480万円-288万円=192万円
- 合計:12万円+32万円+192万円=236万円
こちらもトータルでの所得は236万円です。
ピッタリ一致だ!
手間のかからない総平均法で良い
移動平均法には実際の売買感覚に合うというメリットがあります。
しかし、あまりにも手間がかかります。
そして、最終的な所得が一致するならば、途中で取られる税金もおおむね同じです。
であれば、手間のかからない総平均法で良いのではないでしょうか?
ちなみに、別に届出をしない限り、確定申告でも総平均法が適用される決まりになっています。
役所のお墨付きです!
年度をまたぐ平均取得価額の計算方法
仮想通貨を年末までに売りきらず年度をまたいで保有する場合、翌年の平均取得価額はどのように計算するのでしょうか?
総平均法、移動平均法それぞれの場合について説明します。
総平均法の場合の計算方法
年度末の在庫数と在庫高を翌年に引き継ぐ
総平均法の場合、年度末の仮想通貨の在庫数と在庫高を翌年に引き継ぎます。
そして、翌年中の取得数、取得価額と合算して平均取得価額を出します。
はにゃ?
よく分かりませんよね?笑
実例で説明します。
年度末の在庫数と在庫高を出す
まず、年度末の在庫数と在庫高を出します。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 |
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 |
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 |
これが1年間の売買で、年末時点でのイーサの在庫数は12枚、平均取得価額は23万円でした。
総平均法では年末時点で平均取得価額23万円のイーサが12枚あると考えます。
したがって、年末時点の在庫高は276万円です。
- 年末在庫高=平均取得価額×年末在庫数
- 23万円×12枚=276万円
年末時点でイーサ12枚、276万円相当を持っているということです。
これが翌年スタート時点での期首在庫となります。
翌年の平均取得価額を出す
翌年、以下の3回の売買を行ったとします。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
期首 | 23万円 | 12 | 276万円 | |
2月 | 購入 | 29万円 | 8 | 232万円 |
6月 | 売却 | 30万円 | 12 | 360万円 |
9月 | 売却 | 32万円 | 8 | 256万円 |
平均取得価額は「期首在庫高+期中購入額」を「期首在庫数+期中購入数」で割ります。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
期首 | 23万円 | 12 | 276万円 | |
2月 | 購入 | 29万円 | 8 | 232万円 |
20 | 508万円 |
平均取得価額=508万円÷20枚=25.4万円/ETH
この年の平均取得価額は1ETH=25.4万円です。
1回じゃなく複数回買ったら?
同じように足して割ります!
総平均法で所得を出す
復習のため、この年の所得を出しておきましょう。
売却は以下の2回です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
6月 | 売却 | 30万円 | 12 | 360万円 |
9月 | 売却 | 32万円 | 8 | 256万円 |
- 売却価額:616万円
- 6月分:360万円
- 9月分:256万円
- 取得価額:508万円
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 25.4万円×(6月の12枚+9月の8枚)
- 所得:616万円-508万円=108万円
この年の所得は108万円です。
手持ちのイーサをすべて売却したので、1年目の32万円と合わせて140万円の所得でした。
儲かったね。
移動平均法の場合の計算方法
次は移動平均法の場合の計算方法です。
最終の平均取得価額を引き継ぐ
移動平均法では前年最終の平均取得価額を引き継ぎ、その前とまったく同じように計算を続けます。
実例で説明します。
年度またぎでも計算方法は同じ
さきほどの総平均法とまったく同じ売買をしたとします。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
翌年 | |||||||
2月 | 購入 | 29万円 | 8 | 232万円 | 20 | ||
6月 | 売却 | 30万円 | 12 | 360万円 | 8 | ||
9月 | 売却 | 32万円 | 8 | 256万円 | 0 |
それでは、2月の購入後の平均取得価額から出していきます。
購入前は平均取得価額24万円のイーサを12枚持っていました。
12枚で取得価額288万円です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
翌年 | |||||||
2月 | 購入 | 29万円 | 8 | 232万円 | 20 |
これに、2月に買った8枚、232万円分が加わります。
- 6月購入前:288万円分、12枚
- 6月購入分:232万円分、8枚
- → (288万円+232万円)÷(12枚+8枚)=26万円
よって、6月購入後時点での平均取得価額は26万円です。
年またぎでも計算方法は変わらないんだ!
移動平均法で所得を出す
引き続き、6月の売却での所得を出します。
6月に売った12枚の平均取得価額は、さきほど出した26万円です。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
翌年 | |||||||
2月 | 購入 | 29万円 | 8 | 232万円 | 20 | → | 26万円 |
6月 | 売却 | 30万円 | 12 | 360万円 | 8 |
26万円で買った12枚を360万円で売ったと考えるので、
- 売却価額:360万円
- 取得価額:312万円
- 26万円×12枚
- 所得:360万円-312万円=48万円
6月の売却で得られた所得は48万円です。
所得の出し方も年またぎの影響なしね。
最後に9月の売却による所得です。
平均取得価額は直前の26万円をそのまま引き継ぎます。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 | 在庫 | → | 平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 | 5 | → | 18万円 |
2月 | 購入 | 20万円 | 5 | 100万円 | 10 | → | 19万円 |
3月 | 売却 | 25万円 | 2 | 50万円 | 8 | ||
4月 | 購入 | 26万円 | 6 | 156万円 | 14 | → | 22万円 |
5月 | 売却 | 30万円 | 4 | 120万円 | 10 | ||
6月 | 購入 | 34万円 | 2 | 68万円 | 12 | → | 24万円 |
翌年 | |||||||
2月 | 購入 | 29万円 | 8 | 232万円 | 20 | → | 26万円 |
6月 | 売却 | 30万円 | 12 | 360万円 | 8 | ||
9月 | 売却 | 32万円 | 8 | 256万円 | 0 |
26万円で買った8枚を256万円で売った。
- 売却価額:256万円
- 取得価額:208万円
- 26万円×8枚
- 所得:256万円-208万円=48万円
9月の売却での所得は48万円です。
年度またぎでも所得は一致する
総平均法、移動平均法それぞれで出した2年間の所得を見てみましょう。
総平均法 | 移動平均法 | ||
---|---|---|---|
1年目合計 | 32万円 | 1年目3月 | 12万円 |
1年目5月 | 32万円 | ||
2年目合計 | 108万円 | 2年目6月 | 48万円 |
2年目9月 | 48万円 | ||
合計 | 140万円 | 合計 | 140万円 |
年度をまたいだ場合でも、仮想通貨をすべて売り切った時点での所得合計は、総平均法と移動平均法で同じです。
平均取得価額の注意点
平均取得価額の注意点を挙げます。
レートではなく約定金額で計算する
平均取得価額は購入時のレートではなく約定した金額をベースに計算します。
年間の取引が下記のイーサ1回だけだった場合、
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 154,732円 | 0.01 | 1,547円 |
1ETHあたりの平均取得価額は154,700円です。
平均取得価額=1,547円÷0.01ETH=154,700円/ETH
平均取得価額は取得に使った実費から算出します。
取得時のレート154,732円が平均取得価額になるのではありません。
平均「取得」価額だからね。
レンディング報酬も含めて計算する
レンディング報酬の取得価額はゼロ円
レンディング、ステーキングなどの報酬(利子、賃借料)も平均取得価額の計算に反映させます。
その際の報酬の取得価額はゼロ円です。(取得に費用がかかっていないから)
実例
例えば、2月にレンディングの報酬を1ETH受け取ったとします。
時期 | 区分 | レート | 枚数 | 価額 |
---|---|---|---|---|
1月 | 購入 | 18万円 | 5 | 90万円 |
2月 | 報酬 | 1 | 0円 |
この時、平均取得価額は15万円になります。
90万円÷6ETH=15万円/ETH
仮にこの6ETHを120万円で売却すると、所得は30万円です。
120万円-(15万円×6ETH)=30万円
6ETHの取得に90万円しか使ってないから。
移動平均法は税務署への届け出が必要
確定申告を移動平均法で行う場合は、事前に税務署への届出が必要です。
届出用紙(PDF)を確定申告までに税務署に提出します。
詳細は下記ページを参照してください。
確定申告を総平均法で行う場合は届出は不要です。
平均取得価額のまとめ
それでは最後に要点をまとめます。
平均取得価額のポイント
- 確定申告では「所得」が必要
- 所得=売却価額-取得価額
- 取得価額=平均取得価額×売却枚数
- 総平均法or移動平均法で出す
- 総平均法
- 1年分をまとめて出す
- 取得価額の合計÷取得枚数の合計
- 計算簡単で手間いらず
- 実際の売買感覚に合わない
- 移動平均法
- 売買のたびに出す
- (直前の在庫高+取得価額)÷(直前の在庫枚数+取得枚数)
- 出した平均取得価額を次の売買の計算に使う
- 実際の売買感覚に合う
- 手間がかかり超面倒
- 初心者は総平均法
- 手間いらず
- 最終的な所得はどちらでも同じ
- 年度またぎ
- 総平均法:年度末の在庫数と在庫高を翌年に引き継ぐ
- 移動平均法:年度をまたいでも同じ計算方法
- 注意点
- レートではなく約定金額で計算
- レンディング報酬等も含める
- 移動平均法は要届出
総平均法をしっかり理解しよう!
見てきた通り移動平均法は絶望的に面倒です。笑
やりたくね~
どちらで計算しても売りきった時点で所得は一致するのですし。
積立+長期保有で仮想通貨投資をする初心者ならば、総平均法で問題ありません。
この記事の総平均法の説明を何度も読み返し、しっかり理解して確定申告を行ってください。
僕も総平均法です!
仮想通貨投資の税金全般については、こちらの記事で分かりやすく解説しています。
ぜひ読んでみてください!