2022年9月のイーサのアップデート「The Merge」では、ハードフォークで2つの新しい仮想通貨が誕生しました。
- Ethereum PoW(ETHW)
- Ethereum Fair(ETHF)
仮想通貨業者にイーサを預けていた場合、これら新しい仮想通貨を付与されることがあります。
税金はどうなるの?
付与されたETHWとETHFの税金と確定申告はどうなるのか?
この記事ではETHWとETHF(以下、ETHW等)を付与された場合の税金と確定申告の扱いについて解説します。
各業者の付与状況も紹介します!
タップできる目次
仮想通貨で税金が発生する条件
まず最初に、仮想通貨で税金が発生する条件を簡単に説明します。
ご存じの方は次の章に飛んでください。
実際に発生し確定した所得に課税
課税所得となるのは実際に発生し確定した所得です。
ですので、含み益の状態では税金はかかりません。
課税所得の出し方
仮想通貨の課税所得は以下の方法で算出されます。
- 課税所得=収入-取得価額-経費
例えば次のような場合、
- 300万円で1BTCを購入した
- 後日、310万円で1BTCを売却した
- その際、銀行の振込手数料が1千円かかった
課税所得は9万9千円です。(所得税法施行令119条の6)
ETHWとETHFの取得価額はゼロ円
仮想通貨の取得価額は取得時の時価が適用されます。
しかし、ハードフォークでの取得時(=新通貨の誕生時)は、取引相場が存在しません。
このため取得時の時価はゼロ円、取得価額もゼロ円となります。(国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱いについて PDF)
ETHW等の取得価額もゼロ円です。
タダでもらった形だ。
ETHWとETHFに税金がかかるケース
ETHWとETHFに税金がかかるかは以下の2点で決まります。
- ETHW等が付与された状況
- 付与されたETHW等の現在の状況
具体的に見ていきましょう。
現物で付与された場合
誕生したETHW等そのものが仮想通貨業者から付与された場合です。
現在の状況によって次の2パターンに分かれます。
保有している場合は非課税
現在もそのまま保有している場合は含み益の状態です。
まだ所得は発生していませんので税金はかかりません。
将来、売却(円に交換)した時点で所得が発生します。
その場合の課税所得は売却代金すべてです(取得価額がゼロ円だから)。
売ってなかったら確定申告は不要ね。
売却した場合は課税
すでに一部またはすべてを売却している場合、売却額全額が課税所得になります。
上述の通り、取得価額がゼロ円だからです。
現金で付与された場合
業者が付与されたETHW等を現金に換算し、現物の代わりに現金が付与された場合、付与された現金全額が課税所得となります。
次のような理屈です。
- ETHWが付与された
- 取得価額はゼロ円
- 業者が日本円に交換した
- 仮に1千円とする
- 交換した1千円を投資家に付与した
- 1千円の所得を得た
- 取得価額ゼロ円だから
タダで千円札をもらったのと同じです!
ETHWとETHWの各業者の付与状況
各業者ごとにETHWとETHFがどのように付与されたかは以下の通りです。
SBI VCトレード
SBI VCトレードにおけるETHW等の付与状況は不明です。
SBI VCトレードは2022年8月26日に「イーサリアムのアップグレード「The Merge」に関する当社の方針について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWにつきましてはThe Merge後のETHWの状況を注視した上で、ETHWの取扱、ETH保有者への付与等を検討してまいります。
しかしその後、ETHW等の付与についてSBI VCトレードから発表は一切ありません。
Coincheck
CoincheckにおけるETHW等の付与状況は不明です。
Coincheckは2022年8月30日に「Ethereumのアップグレード「The Merge」に関する当社の方針について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWの取扱いおよび現物の付与は、現時点で未定です。ETHWの価値、安全性、流動性などを総合的に判断し、取扱いおよび現物の付与を検討いたします。
しかしその後、ETHW等の付与についてCoincheckから発表は一切ありません。
Zaif
ZaifにおけるETHW等の付与状況は不明です。
Zaifは2022年9月15日に「The Mergeアップグレードについてのよくあるご質問」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWを取り扱わないことを決定した際には付与も行いません。
本記事執筆時点でZaifはETHW等を取り扱っていません。
そのため、ETHW等の付与を行っていない可能性があります。
しかし上記発表以降、ETHW等の付与についてZaifからの発表は一切ないため、実際にどうなのかは不明です。
GMOコイン
GMOコインでは日本円で付与されました。
ETHW分
2022年9月28日に「イーサリアムのアップグレードに係るETHW相当額の日本円交付について」が発表されました。
- ETHWについては日本円での交付を行う
- 換算レートは1ETHあたり1,301円
- 交付日は2022年10月5日
当時、僕は0.07481220ETHを保有していました。
そのため、97円が10月5日に付与されました。
1,301円×0.07481220=97.33円
ETHF分
2022年10月14日に「イーサリアムのアップグレードに係るETHF相当額の日本円交付について」が発表されました。
- ETHFについては日本円での交付を行う
- 換算レートは1ETHあたり79円
- 交付日は2022年10月21日
当時、僕は0.07481220ETHを保有していました。
そのため、5円が10月21日に付与されました。
79円×0.07481220=5.91円
確定申告
僕はThe Mergeにともない、GMOコインで合わせて102円の所得を得ました。
よって、この102円を雑所得として確定申告します。
DMM Bitcoin
DMM BitcoinにおけるETHW等の付与状況は不明です。
DMM Bitcoinは2022年8月26日に「イーサリアム(ETH)の「The Merge」アップグレード及びETHPoWの対応方針について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWの取扱いに関しては未定ですが、トークン付与数量を確定するため、ネットワークアップグレードの実施時点において、現物のイーサリアム(ETH)の保有量の記録保管を実施いたします。
ETHW等の付与についてはまったく触れられていません。
その後も関連する発表は一切なく、ETHW等の付与がどうなったかは不明です。
HashHubレンディング
HashHubレンディングはETHW等を付与しませんでした。
HashHubレンディングは2022年8月17日に「「The Merge」および「EthereumPoW」に関する対応方針」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
EtheremPoWをサポートしません。利用規約の第12条(ハードフォーク等)に基づき、もし新たに付与された暗号資産等が発生した場合においてもユーザの皆さまから当社への当該通貨の請求権は発生しないものとします。
BTCBOX
BTCBOXにおけるETHW等の付与状況は不明です。
BTCBOXは2022年9月5日に「イーサリアム(ETH)の入出庫停止について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
当社でのETHWの取扱い付与は、現時点で未定です。ETHWの安全性、安定性などを総合的に判断し、取扱いおよび現物の付与を検討いたします。
しかしその後、ETHW等の付与についてBTCBOXからの発表は一切ありません。
bitbank
bitbankでは日本円で付与されました。
ETHW分
2022年10月19日に「2022年9月15日のETHアップグレードにて生じたETHWの付与・取扱方針およびシステムメンテナンスに関するお知らせ」が発表されました。
- ETHWについては日本円に換金して付与する
- 換算レートは1ETHあたり1,305円
- 付与日は2022年10月19日
ETHF分
2022年11月17日に「2022年9月15日のETHアップグレードにて生じたETHFの付与・取扱方針およびシステムメンテナンスに関するお知らせ」が発表されました。
- ETHFについては日本円に換金して付与する
- 換算レートは1ETHあたり80円
- 付与日は2022年11月17日
bitFlyer
bitFlyerでは日本円で付与されました。
ETHW分
2022年10月17日に「ETHPoWトークン相当額の日本円交付について」が発表されました。
- ETHWについては日本円での交付を行う
- 換算レートは1ETHあたり1,307円
- 付与日は2022年10月18日
なお、ETHFについては発表はなく対応は不明です。
BITPOINT
BITPOINTにおけるETHW等の付与状況は不明です。
BITPOINTは2022年9月2日に「イーサリアムの大型アップグレードに伴う当社の対応方針について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWの取扱いおよび付与は、現時点においては未定です。
ETHWの付与に替えて、暗号資産相当額の金銭をお客様に交付する可能性がございます。
しかしその後、ETHW等の付与についてBITPOINTから発表は一切なく状況は不明です。
BitLending
BitLendingはETHWを現物で付与しました。
BitLendingは2022年9月13日に「イーサリアムの大型アップデート「The Merge」でハードフォークが発⽣した場合、新暗号資産の付与を実施」を発表しました。
この中でETHWの付与については以下の通りです。
BitLendingではフォークされた暗号資産のサポートと付与を実施する予定です。
僕は当時、BitLendingでイーサを1.02458197 ETH保有していました。
そして同数の1.02458197 ETHWが付与されました。
なお、ETHFについては発表が一切ありません。
確定申告
上述の通り、ハードフォークで発生し取得した新通貨は売却した時点で所得が発生します。
僕はまだ売却しないため所得は発生しておらず、この分についての確定申告は行いません。
Himalaya
Himalaya(旧Bitgate)におけるETHW等の付与状況は不明です。
Himalayaは2022年9月1日に「イーサリアム(ETH)のアップグレード「The Merge」に関する弊社の対応方針について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWの取扱いについては未定となっております。
しかしその後、ETHW等の付与についてHimalayaから発表は一切ありません。
Huobi
HuobiにおけるETHW等の付与状況は不明です。
Huobiは2022年8月16日に「ETH2.0 Merge(マージ)のアップグレードおよびETHW(Ethereum PoW)への取組みについて」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
ETHWトークンの取扱いの対応につきましては、現時点で未定です。
しかしその後、ETHW等の付与についてHuobiから発表は一切ありません。
LINE BITMAX
LINE BITMAXにおけるETHW等の付与状況は不明です。
LINE BITMAXは2022年月日に「イーサリアム(ETH)の「Merge(マージ)」について」を発表しました。
この中でETHW等の付与については以下の通りです。
現在、ETHWの配布等に関しては未定となっております。
対応方針に変更がある場合は、お知らせ等にてお客さまにご案内いたします。
しかしその後、ETHW等の付与についてLINE BITMAXから発表は一切なく状況は不明です。
楽天ウォレット
楽天ウォレットでは日本円で付与される予定です。
楽天ウォレットは2022年12月1日に「ETHWの付与方針に関するお知らせ」を発表しました。
この中でETHWの付与については以下の通りです。
ETHWについて、日本円に換金して付与する方針を決定しました。
日本円付与時期については、現在最終的な手続きを確認中であり、確定次第速やかにお知らせいたします。
新通貨を安全に売却できる暗号資産取引会社を確認後、当社任意のタイミングでETHWの売却を行った後に、お客様の弊社口座に日本円にて付与いたします。
また、権利調整に伴う売却のために当社に費用が発生した場合には、その費用を差し引いた額を権利調整額とさせていただきます。
本記事執筆時点で楽天ウォレットから追加の発表はありません。
ただ、付与すると発表した以上、いずれ付与されると思います。
なお、ETHFについては発表が一切ありません。
各業者の付与状況のまとめ
各業者の付与状況をまとめると下記一覧表の通りです。
業者 | 付与状況 |
---|---|
SBI VCトレード | 不明 |
Coincheck | 不明 |
Zaif | 不明 |
GMOコイン | ETHW、ETHFともに日本円で付与 |
DMM Bitcoin | 不明 |
HashHub | 付与せず |
BTCBOX | 不明 |
bitbank | ETHW、ETHFともに日本円で付与 |
bitFlyer | ETHWについて日本円で付与 |
BITPOINT | 不明 |
BitLending | ETHWについて現物で付与 |
Himalaya | 不明 |
Huobi | 不明 |
LINE BITMAX | 不明 |
楽天ウォレット | ETHWについて日本円で付与予定 |
ほとんどの業者が未定とアナウンスしたあとは放ったらかし。
ETHW 、ETHFともにどうするか明確にしたのはGMOコイン、bitbank、HashHubレンディングの3社だけです。
いい加減な業者が多いですね。
困ったものです…
ETHWとETHFの税金と確定申告のまとめ
最後に要点をまとめます。
税金と確定申告のまとめ
要点は以下の通りです。
- 税金が発生する条件
- 実際に発生した所得に課税
- 含み益は非課税
- ETHW等の取得価額はゼロ円
- ETHW等で税金がかかるケース
- 現物で保有は非課税
- 売却したら課税(売却額全額)
- 現金で付与されたら課税(全額)
- 業者別の状況
- GMO、bitbank:現金付与
- bitFlyer:現金付与(ETHWのみ)
- 楽天:現金付与予定(ETHWのみ)
- BitLending:現物付与
- HashHub:付与せず
- その他:不明
正しく納税しよう
BitLendingで現物付与された分は、そのまま持っている方が大半だと思います。
楽天ウォレットはまだ付与されていないので、令和5年分として来年確定申告することになるでしょう。
不明の業者では付与されていないはずなので、申告が必要な所得はゼロ。
GMOコインなど現金で付与された分は令和4年分で確定申告です。
不明な点は国税庁の相談窓口に問い合わせ、正しく確定申告し正しく納税しましょう。
以上です!
仮想通貨の税金と確定申告について、詳しくはこちらの記事で分かりやすく解説しています。