バニラエア、成田-セブに就航決定!

全日空系列の格安航空会社(LCC)であるバニラエア(Vanilla Air)が東京成田-セブ線に就航することが分かりました。Nikkei Asian Reviewが伝えました。(情報元:Vanilla Air taking wing to Philippines' Cebu

就航日は今年12月25日で、成田-セブ間を1日1往復で運行します。所要時間は5時間程度になるものと見込まれます。


バニラエアのセブ就航については今年の3月にフィリピンの航空情報サイトであるPhilippine Flight Networkが、サイパン、グアムと並ぶバニラエアの新規就航候補地の一つとして報じていました。(参考:VANILLA AIR PLANS LOW-COST FLIGHTS TO CEBU

またバニラエア自身も9月9日に自社ツイッターで新規路線予想キャンペーンを開始し、4つの候補地としてホノルル、セブ、グアム、石垣を挙げています。バニラエアは新規就航地の発表を9月下旬としていましたが、今回の日経の報道はこれを先取りしたものとなります。

セブはフィリピンを代表するビーチリゾートの一つとして知られており、近年ではフィリピン留学のブームで日本からの渡航者も増加しています。成田-セブ線にはフィリピン航空が毎日2往復、セブパシフィック航空が週4往復就航していますが、日本の航空会社は全日空がフィリピン航空便をコードシェア便としているだけでした。バニラエアは同路線に日本勢として初めて参入することになります。

バニラエア、成田-セブに就航決定!

バニラエアのセブ線参入はLCC競合の激化としても注目されます。日本とフィリピンを結ぶLCC路線は2008年にセブパシフィックがマニラ-大阪関西線に就航して以来、同社が独占してきました。

しかし今年4月にジェットスターが中部-マニラ線に就航し、日本とフィリピンを結ぶLCCは2社体制となりました。バニラエアはこれらに続く日本-フィリピン路線3社目のLCCとなります。利用者としては観光や英語留学で旺盛な需要が見込まれる成田-セブ線でLCC2社が競合することで、利便性の向上や料金ダウンが期待されます。


ただ、今回の報道によるとバニラエアは同路線の片道最低運賃を1万5千円に設定している模様です。競争相手となるセブパシフィックの割引プロモーションでのキャンペーン最低価格は1万円ですので、報道の通りであると価格面でバニラエアに勝ち目はありません。

バニラエアとしては週4便のセブパシフィックに対して毎日運行の利便性などサービス面で対抗する考えなのでしょうが、目標とする座席利用率80%に遠く及ばなかった場合は価格政策の見直しを迫られることも予想されます。


【以下加筆】上記記事掲載後、バニラエアから成田-セブ千就航についてのプレスリリースが発表されました。それによりますと、就航日は2016年12月25日で1日1往復が運行されます。使用機材はエアバスA320-200型機、エコノミークラス180席が配置されます。片道最低価格は14,890円です。

バニラエア、成田-セブに就航決定!

運行スケジュールは以下の通りです。成田→セブは来年2月19日から出発時刻が変更となります。

成田 > セブ
便名
搭乗期間
出発
到着
JW603
12/25-2/18
13:20
17:35
JW691
2/19-3/25
14:45
19:00
セブ > 成田
便名
搭乗期間
出発
到着
JW602
12/25-3/25
10:55
16:25

このスケジュールを見て気付くのはセブでの駐機時間が半日以上とあまりにも長過ぎることです。LCCは一つの機材を少しでも長く飛ばすことで経営の効率化を追求します。セブパシフィックでは到着してから折り返し便として出発するまでの時間は30~45分が基本です。セブ空港に夕方到着して翌日昼前に折り返す、つまり半日以上も機材を遊ばせておくバニラエアのこのスケジュールはLCCとしては異常です。

日本とフィリピンは2013年にオープンスカイ協定を結んでおり、以遠権も認められているはずです。セブ空港で半日以上も寝かしておくくらいならば、成田発セブ経由ボラカイ行きにでもすれば、セブパシフィックやフィリピン航空を使ってマニラ経由でボラカイに行く日本人観光客を多少なりとも奪えるでしょうし、リゾートLCCというバニラエアのブランドイメージにもマッチするのではないでしょうか。


次にバニラエア参入後の成田-セブ線がどのような競合状態になるか見てみましょう。少し分かりにくいですが便名の最初の2文字で航空会社を区別してください。JW:バニラエア、5J:セブパシフィック、PR:フィリピン航空です。成田→セブのバニラエアは(恐らく本気モードであろう)2月19日からのスケジュールとしています。

成田 > セブ
便名
運行曜日
出発
到着
5J5063
火木土日
12:05
16:20
PR433
毎日
14:40
18:40
JW691
毎日
14:45
19:00
PR435
毎日
20:30
00:15
セブ > 成田
便名
運行曜日
出発
到着
5J5062
火木土日
05:50
11:20
PR434
毎日
08:00
13:40
JW603
毎日
10:55
16:25
PR436
毎日
13:45
19:30

バニラエアは往路、復路ともフィリピン航空のスケジュールに合わせてきています。価格競争力でフィリピン航空から乗客を奪おうという戦略がうかがわれます。

ただ、往路のセブ到着は19時00分ですのでホテルに移動して寝るだけになってしまいます。セブパシフィックの16時20分着ですとホテルに着いて一息ついてから夕食を楽しむという動き方ができますので、時間帯的にはセブパシフィックのほうが有利でしょう。逆に復路のセブパシフィックは早朝5時50分発ですので、従来この便を利用していた乗客が10時55分発のバニラエアに流れる可能性はあります。


別の視点としてアライアンスが影響している可能性が考えられます。今年の5月に東アジア、アセアン諸国のLCC8社が加盟する航空連合であるバリューアライアンスが結成されましたが、バニラエアとセブパシフィックはともにこのアライアンスに加盟しています。

バリューアライアンスは8社間のチケット予約の相互乗り入れを中心とする比較的緩い航空連合ですが、もしかしたらアライアンス内の競合を避けるためにセブパシフィックとずらした運行スケジュールにした可能性もあります。


ただ、どうせ機材をセブで半日以上も寝かせるならばこんなスケジュールにしてくれても良かったのではないでしょうか。

成田 > セブ
便名
運行曜日
出発
到着
JW691
毎日
08:00
12:15
セブ > 成田
便名
運行曜日
出発
到着
JW603
毎日
14:30
20:00

がんばって早起きしてセブに昼前に着いてちょっと遅いですがフィリピン料理のお昼ごはん。最終日は少し早めのランチを食べてから余裕を持って空港に移動して昼過ぎの便で帰国。こちらのほうがLCCリゾートには向いているようにも思います。


いずれにしてもフィリピン勢の独占だった成田-セブ路線に日本の航空会社が参入し、価格のみならずサービス面でも競争が起こることは利用者としては喜ばしい限りです。他の日本-フィリピン路線にも新たなLCCが参入することを期待します。

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