中国のビジネスホテル

おすすめのホテルチェーン

日本に東横インやアパホテルがあるように、中国にも数多くのビジネスホテルチェーンがあります。ここではその中から日本人におすすめのビジネスホテルを紹介します。

如家酒店(Home Inn)

如家酒店

如家酒店は中国最大のビジネスホテルチェーンです。如家酒店単体で2,700店、グループ全体で中国全土355都市に3千店を展開しています。日本最大手の東横イン250店の10倍以上の規模です。

中国ビジネスホテルの先駆者

如家酒店は中国最大のオンライン旅行会社(Online Travel Agency、OTA)である携程旅行網(Ctrip)が、2001年にビジネスホテルの設立を計画したことから誕生しました。

如家酒店

当時の中国ではビジネスホテルはまだ皆無で昔ながらの一般的なホテルがほとんどでした。そんな中国で如家はビジネスホテルを急速度で展開しました。如家の成功を見て後を追う同業他社が続出し、中国ビジネスホテル業界の先駆者となりました。

業界のリーディングカンパニー

2002年6月に携程旅行網は中国の旅行会社大手である首都旅游集団と合弁会社を設立し、7月に如家酒店の実質的第1号店となる北京燕莎店をオープンしました。そして翌年3月には早くもフランチャイズ店第1号店を開設し、ビジネスホテルのフランチャイズチェーン化を果たしました。

如家酒店

さらに、2005年7月にインターネットでのオンライン予約システムを導入し、2006年10月には中国のホテルチェーンとして初めて米国ナスダック市場に上場するなど、中国のビジネスホテルのリーディングカンパニーの役割を果たしてきました。

買収で巨大グループに成長

初年度で早くも20店舗を開設した如家酒店は2007年10月に同業の七斗星酒店を買収し、店舗数を330店に伸ばしました。2011年5月には当時300店舗を抱え業界5位であった莫泰168を買収し、1千店舗を突破、市場シェアは25%に達しました。

如家酒店

さらに2012年12月には安徽省のe家快捷酒店を買収するなど拡大を続け、グループ全体で12ブランド3千店を擁する中国最大のホテルチェーンに成長を遂げています。

徹底した標準化

如家酒店の最大の特長は徹底した標準化です。如家酒店の初期のキャッチフレーズは「不同的城市 一样的家(違う街でも同じ家)」でしたが、現在でもハンガーのかかっている位置、ハンガーの色、色ごとの本数までどの店舗でも同じです。

中国のビジネスホテルはフランチャイズ化が進んでおり、個人経営のホテルが大手チェーンにフランチャイズ加盟することがよくあります。その際、看板を付け替えるだけのチェーンが少なくなく、特に漢庭酒店、格林豪泰などは店舗ごとの差が非常に大きいです。

如家酒店

これに対して如家酒店はベッド、テレビなど備品の交換は言うまでもなく、外壁の塗り替え、床材、壁材、浴室のタイル、さらには洗面台、便器、シャワー設備まですべて如家酒店の標準仕様のものに交換します。日本でもここまでやっているホテルチェーンは皆無のはずです。

如家酒店は真摯に愚直に標準化を徹底することで、コスト削減による宿泊費の低減、設備、作業の標準化による出店スピードの加速を実現し、中国最大手の地位を手にしたのです。

如家酒店の強み

我々日本の旅行者にとって如家酒店を利用する最大のメリットは、まずどこにでもあることです。中国の中規模以上の都市で如家酒店がない都市は皆無です。上述の通り標準化が徹底されてますので、如家酒店に一度慣れると他の都市で利用するときも使いやすいです。

中国のビジネスホテルの黎明期に真っ先に成長した企業ですので、どこの街でも利便性の高い場所に立地している点もポイントが高いです。

如家酒店

また、細かい点ですが如家酒店の外壁は黄色です。黄色は中国人が好きな色ですが、外壁すべてが黄色という建物はあまりありません。真っ黄色の如家酒店はかなり目立ちますので初めて訪れる街でも探しやすく、これは地味に便利です。

如家酒店の弱み

まず、デザイン面が日本人向けではありません。布団カバーがピンクの店舗が今でも少なからず残っており、日本人的にイマイチに感じると思います。

如家酒店

そして決定的なのは日本人が泊まれる店舗が少ないことです。外国人が泊まれないホテルのページで詳しく説明しますが、中国では外国人を宿泊できるホテルとできないホテルに分かれています。

以前は如家酒店の多くの店舗が外国人受入れの資格を持っていたのですが、2014年頃から資格が取り消しとなる店舗が増えてきました。街によってはすべての店舗が外国人不可というところもあり、この点については早期の改善が期待されます。

莫泰酒店(motel168)

莫泰酒店

莫泰酒店は如家酒店グループ傘下のビジネスホテルです。中国全土100都市に500店を展開していますが、日本人には意外と利用する機会が多いホテルかもしれません。

おしゃれ系ビジネスホテル

莫泰酒店は上海の老舗レストランチェーンである美林閣が2002年に設立しました。中国で最も早い時期に生まれたビジネスホテルチェーンの一つです。

莫泰酒店

安いだけでなくおしゃれでハイセンスであることを特長とし、部屋の真ん中に円筒形のガラスでできたシャワールームを設置するなど、中国人受けする派手な演出を得意としていました。

また、ホテル名から分かる通りアメリカのモーテルをモデルとしており、創業時の中国では自家用車の普及率がまだ低かったにも関わらず、無料の駐車場を完備するなど先進的な取り組みも見られました。

如家グループ入り

オープン当初は莫泰168というホテル名でしたが、これは当時の上海で一泊168元がかなりの低価格であったためです。しかし、いずれ物価が上昇すれば168元を維持できなくなるのは考えれば分かることで、実際数年後には莫泰268というセカンドブランドを出す迷走ぶりでした。

莫泰酒店

これではいずれ倒産するだろうと思って見ていたのですが、倒産することはありませんでした。経営の行き詰まりにより2011年に業界最大手の如家酒店に買収されたからです。現在は如家グループの一員となり、ホテル名から168は取り除かれ莫泰酒店にリブランドされています。

莫泰酒店の強み

店名に168と付けるなど経営センスには疑問符がついた莫泰酒店ですが、特に初期に作られた店舗は建物がけっこうしっかりしています。中国の建築物は3年も立たないうちに外壁にヒビが入ったりするのですが、莫泰酒店は10年以上たってもしっかりしている物件がよくあります。

莫泰酒店

また、中国では許可を得たホテルでないと外国人を宿泊させることができませんが、実は莫泰酒店は外国人宿泊可能な店舗の比率が非常に高いホテルチェーンの一つでした。現在もその傾向は継続されており、地盤の上海での店舗数が多いこともあり、日本人旅行者の選択肢となる可能性が高いのではないかと思います。

莫泰酒店の弱み

上述の部屋のド真ん中円筒シャワーなど日本人的には邪魔でしかない設備も以前はありましたが、如家グループに入ってからそういった設備は改装の際に撤去が進んでいます。経営も運営も如家化してきましたので、特に不便を感じることは少ないでしょう。

莫泰酒店

ただ、如家グループになってから大規模改装などに合わせてブランドが如家酒店に変わったり、大規模店では莫泰酒店と如家酒店のダブルブランドになるなど如家化が進んでいます。このため、以前泊まった莫泰酒店が知らない間に如家酒店に変わっていて、予約しようとする際に見つからないといったことがあります。

錦江之星(Jinjiang Inn)

錦江之星

錦江之星は中国全土にグループホテルの金広快捷酒店、百時快捷酒店と合わせて千店舗のビジネスホテルを展開する大手チェーンです。日本人に最もおすすめなビジネスホテルです。

国有企業のビジネスホテル

錦江之星の親会社は中国最大級の総合旅行会社の一つである錦江国際集団です。日本人にもおなじみの上海外灘の和平飯店を運営している他、上海地区のKFC、吉野家の運営会社の大株主でもあります。

錦江之星

錦江国際集団は上海市政府のトップが会長を務める国有企業です。ですので、錦江之星は中国国有企業系で最大手のビジネスホテルチェーンでもあります。

中国初のビジネスホテル

錦江之星は上海人の徐祖栄氏が設立しました。錦江国際集団が米国カリフォルニア州にレストランを進出した時、同社社員の徐氏が総支配人として着任しました。しかし、レストラン事業は上手くいかず2年後に帰任することとなりました。

錦江之星

帰国前に友人を訪ねた際に利用したモーテルの簡素なサービスと低価格にビジネスチャンスを見出した徐氏は、中国に戻るとビジネスホテル設立の準備を始め、1997年に上海市内にある錦江国際集団系列の遊園地のそばに中国初となるビジネスホテルをオープンさせました。

現在業界最大手の如家酒店が1号店をオープンしたのはその5年後の2002年です。後発に追い越されたのは両者の母体がIT系の民間企業と総合旅行業の国有企業であった違いによるものでしょう。

錦江之星の強み

錦江之星も設備やサービスの標準化に力を入れており、その徹底度合いは如家酒店に匹敵します。しかも国有企業でありながら高いレベルでサービスの標準化が行われており快適に過ごすことができます。

錦江之星

ホテルの外装は白で統一されており、室内の備品も木目を多用した落ち着いたデザインのものが中心です。割りと派手めの如家酒店に比べて日本人好みの内装といえます。

また、国有企業ゆえに許認可が通りやすいのだと思いますが、外国人宿泊可能の店舗が非常に多いです。数えたことはありませんが、恐らく全店の9割前後が外国人受入れの資格を持っています。

錦江之星の弱み

錦江之星は宿泊費が高めです。同じ立地、部屋タイプでも如家酒店や莫泰酒店に比べると2割程度高いことが多いです。

錦江之星

その代わりアメニティや備品は錦江之星のほうが良いです。如家酒店よりも石けんが大きく泡立ちが良く、ハンガーも肩の部分が丸くなったものを使っています。

また、一般のビジネスホテルの使い捨てスリッパは薄っぺらでペラペラですが、錦江之星だけはクッションが入って厚みのあるものを使っています。予算がギリギリならば如家、少し余裕があるときは錦江と使い分けてみてはどうでしょうか。

その他のビジネスホテル

中国にはこの他にも無数のビジネスホテルチェーンがあります。個人的におすすめはしませんが代表的なものを紹介しておきます。

漢庭酒店(Hanting Hotel)

2005年創業のビジネスホテルチェーンです。華住酒店グループ全体で全国に2千店以上を展開する中国最大手の一つです。

漢庭酒店

会員がチェックインをすると会員カードがドアキーになったり、会員は退店時に手続きを一切せずにチェックアウトできるなど、日本のビジネスホテルよりも先進的な取り組みをしています。

漢庭酒店の弱みは標準化の徹底がなされていないことです。大当たりの店舗もある一方、フランチャイズ入りした加盟店を一切改装せず一昔前の中国の3つ星ホテルのままの店舗もあります。当たればラッキー、外れたら最悪なのが漢庭です。

7天連鎖酒店(7 days Inn)

7天連鎖酒店も2005年創業のビジネスホテルです。鉑涛グループ全体で全国に2千店を展開しており、如家、錦江、漢庭とならぶ中国の4大ビジネスホテルチェーンの一つです。

7天連鎖酒店

創業者の鄭南雁氏はもともとはIT系で、如家酒店を作った携程旅行網で経営陣の一人でした。如家酒店が急拡大した時期に携程を辞めて7天酒店を創業しましたので典型的な後追いです。

7天連鎖酒店をおすすめしにくい点は料金システムにあります。7天の宿泊費に含まれているのは部屋代だけで、アメニティ関係は一切含まれていません。自分で持っていくかホテルで購入または事前予約する必要があります。

歯ブラシやシャンプーくらいまではそれでも良いのですが、タオルも別料金なのです。ハンドタオルはともかくバスタオルを持っていくのは面倒ですし、現地で買うと荷物が増えます。これが最大のマイナスポイントです。

速8酒店(Super 8 Hotel)

Super 8 Motelsはアメリカを本拠とする世界最大のバジェットホテルチェーンです。世界各国でマイクロテルやラマダを運営するウィンダムホテルのグループ企業です。中国には2004年に進出しました。

速8酒店

速8酒店は古いホテルをフランチャイズ化して看板をかけ替えただけという店舗がとにかく多いです。ビジネスホテルと言ってるけれど、中身は一昔前の3つ星ホテルというイメージです。

格林豪泰酒店(Green Tree Inn)

格林豪泰酒店は2004年創業のビジネスホテルチェーンです。中国全土で千数百店舗を展開する中堅どころです。

創業して3年くらいの間は清潔感もあり快適に過ごせる良いホテルでした。ところが店舗展開を進めるにつれて漢庭や速8と同様に標準化が進まず、古い3つ星ホテルの看板を変えただけという店舗が増えてきました。

格林豪泰酒店

また、如家酒店に買収される前の莫泰168もそうだったのですが、田舎の農家のご老人のツアー宿泊客が一時期急増しました。ちょうど中国のビジネスホテル業界の競争が激化した頃で、地方の旅行会社と提携して団体客で客室稼働率を手っ取り早く上げようとしたのだと思います。

しかし、かつての日本で農協の団体ツアーがそうであったように、田舎のじいさま、ばあさまですから部屋のドアを開けっ放しにして早朝から大声でのホテル内井戸端会議が繰り広げられます。静かに過ごしたい宿泊客にはなかなか厳しい環境で、こういった点も客離れに繋がったのかもしれません。

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