不動産クラウドファンディングには優先劣後出資以外に銀行融資が付いた案件があります。
今回はその特徴や注意点について解説します。
また、これに関連して先日募集された「みんなでシェアファンド 4号案件」について気になる点があります。
これについても合わせて紹介します。
いささか疑問が…
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銀行融資付き案件とは?
まず、銀行融資付き案件についての解説です。
優先劣後以外に銀行融資が付く
一般的な不動産クラファンの案件は優先出資(投資家分)と劣後出資(業者分)が物件取得のための資金となります。
銀行融資付き案件ではこれらに加えて銀行の融資が資金として加わります。
資金源 | 資金額 |
---|---|
銀行融資 | 7億円 |
優先出資(投資家分) | 2.1億円 |
劣後出資(業者分) | 0.9億円 |
合計10億円で物件を取得。
大規模な物件に投資できる
銀行融資付き案件のメリットは大規模な物件に投資できることです。
極端な大型案件や高利回り案件を除いてですが。
不動産クラファンで1案件で調達できる資金は投資家分、業者分合わせて20億円が上限ではないでしょうか?
これに銀行からの融資を加えることで、より高額な物件に投資できるということです。
ソーシャルレンディングになりますが、bitREALTYのレム案件をイメージすれば分かりやすいと思います。
物件価格178億円です!
銀行融資付き案件の注意点
次に銀行融資付き案件の注意点です。
値下げ余地が下がる
最大の注意点は普通の不動産クラファン案件と比べて物件の値下げ余地が下がる点です。
銀行融資付き案件のモデル例
銀行融資付き案件は例えば次のような資金構成になります。
資金区分 | 資金源 | 資金額 |
---|---|---|
融資(7億円) | 銀行融資 | 7億円 |
出資(3億円) | 優先出資(投資家分) | 2.1億円 |
劣後出資(業者分) | 0.9億円 |
劣後比率30%???
元本回収順位は第2位
物件を売却して資金を返すのですが。
注意して欲しいのが銀行分は融資であることです。
資金区分 | 資金源 | 資金額 |
---|---|---|
融資(7億円) | 銀行融資 | 7億円 |
出資(3億円) | 優先出資(投資家分) | 2.1億円 |
劣後出資(業者分) | 0.9億円 |
基本的に返済の優先順位は銀行融資が第1位です。
投資家分は銀行融資の次となります。
ですのでこの例の場合、物件が9.1億円以上で売れなければ元本は回収できない。
値下げ余地は0.9億円、つまり9%です。
優先劣後の部分だけ見ると劣後出資比率30%の楽勝案件と勘違いしがちです。
明示されない場合がある
もう一つ注意して欲しいのは銀行融資付きだと明示されないことがあることです。
その可能性があるのが先日募集された「みんなでシェアファンド 4号案件」です。
みんなでシェアファンド 4号案件
- 出資総額:5,000万円
- 優先出資:2,600万円
- 劣後出資:2,400万円
- 劣後出資比率:48%
- 利回り:6%
- 運用期間:12カ月
- 募集開始:2023年3月7日11時
この案件についてみんシェアの公式ツイッターでは「弊社初の借入併用型商品」と紹介しています。
【御礼】弊社初の借入併用型商品‘みんなでシェアファンド4号’の優先出資募集枠が即日完売いたしました。 https://t.co/OYWz2TLJWX @PRTIMES_JPより
— みんなでシェアファンド【公式】 (@min__share) March 9, 2023
また、募集翌日のプレスリリースでも「‘みんなでシェアファンド4号’(借入併用型)商品」としています。
しかしながら、みんシェアサイトの案件詳細ページでは銀行融資について何も触れられていないのです。
なんと!
みんシェアに悪意はないはず
なお、同社の名誉のために申し上げますと、意図的に隠そうとする悪意はなかったはずです。
なにせツイッターやプレスリリースで「弊社初の」とアピールしているわけですから。
初めてだったため、深く考えず案件詳細ページで従来の融資なし案件と同じ紹介の仕方をしてしまっただけだと思います。
それはそれで問題ですが…
しっかり案件を見よう
ただ、案件をよく見れば銀行融資があることには気付けたと思います。
当該物件は大阪府貝塚市にある築29年の鉄骨造3階建てアパートです。
総戸数は21戸で不動産情報サイトによると賃料は月額3.2万円。
満室で年間の賃料収入は806万円です。
- 出資総額:5,000万円
- 優先出資:2,600万円
- 劣後出資:2,400万円
出資総額5,000万円でこの物件を取得すると、表面利回りは16%になります。
- 806万円÷5,000万円=16.1%
高すぎませんか?
いささか悲観的に経費率30%、空室率20%、還元利回り7%としても6,451万円です。
- 3.2万円×70%×21戸×80%×12カ月÷7%=6,451万円
5千万円で買える物件とは思えないのです。
相場が分かれば良いのにね。
成立前書面は必ずチェック
おそらく今回のみんシェア4号は成立前書面にそのあたりが書かれていたはずです。
また、詳細ページに書かれていないけれど銀行融資が付いていた案件は他社でも過去に事例があります。
ですので、成立前書面は必ずチェックすることを強くオススメします。
面倒でも見ようね。
開発案件の場合のリスク
これは銀行融資付き案件に限ったことではありませんが、ついでに触れておきます。
評価額は収益還元法で出している
物件の評価額は主に収益還元法で出しています。
- 評価額=収益÷還元利回り
例えば、年間の営業純利益が400万円、還元利回りが4%ならば、評価額は1億円です。
開発案件は収益の実績がない
冒頭で上げたbitREALTYのレム案件の場合、主要テナントのホテルは2017年から営業しています。
すでに6年近く営業していますので、下の式の収益が現実に近く、評価額の精度も高いものとなります。
- 評価額=収益÷還元利回り
これに対して開発案件の収益は実績に基づかない想定に過ぎません。
評価額と実際の売却額とが乖離するリスクは踏まえておいた方が良いと思います。
銀行融資付き案件に注意
以上、僕が考える注意点等について書きました。
銀行融資付き案件には大きな物件を投資対象とできるメリットがあります。
一方で値下げ余地が大きく下がるというリスクも含んでいます。
なにより一番怖いのは、融資付きだと気づかずに「劣後30%!」と飛びついてしまうことです。
案件の細かいところまでちゃんと見た上で投資判断をしましょう。
以上です!
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