「やむを得ない事由」
ソシャレン・クラファン投資家で知らない人はいない超有名なフレーズです。
よく拝見しておりやす。
でも、これを具体的に説明できる人は少ないのでは?
そこで「やむを得ない事由」について詳しく調べてみました!
知っておくべき知識です!
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やむを得ない事由って何?
それではさっそく解説していきます。
やむを得ない事由とは?
「やむを得ない事由」とは出資中の案件を解約するための条件です。
ソシャレン・クラファン業者のFAQで、よく次のように書かれていますよね?
A:やむを得ない事由がある場合のみ、解約が可能です。
「やむを得ない事由」があれば解約OK。
なければ解約できませんってことです。
どの業者も書いてるよね。
根拠は商法第540条第2項
どの業者も書いている場合、たいていその根拠は法令にあります。
「やむを得ない事由」の根拠は商法第540条第2項です。
匿名組合の存続期間を定めたか否かにかかわらず、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、いつでも匿名組合契約の解除をすることができる。
契約解除?
ソシャレン・クラファンで投資する際、我々投資家は業者との間で匿名組合契約を締結します。
基本的に契約期間≒運用期間中は解約できません。
でも、「やむを得ない事由」がある場合は契約解除することで途中解約できますよってことです。
法で定めた具体例はない
でも、「やむを得ない事由」って人によって解釈が違いそうですよね?
「やむを得ない事由」とは具体的に何なのでしょうか。
政令で定められる場合も
例えば、裁判員法第16条第8号では裁判員を辞退できる条件として「やむを得ない事由がある」ことが挙げられています。
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。
八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり(中略)出頭することが困難な者
その前に「政令で定める」と書かれてますよね。
平成二十年政令第三号(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第十六条第八号に規定するやむを得ない事由を定める政令、PDF)ってのがありまして。
その中で妊娠中であること、介護が必要な親族がいることなど6項目が具体的事由として定められています。
ちゃんと決まってるのね。
法治国家っすから!
商法については規定がない
その法治国家のジャパンなんですが、商法第540条第2項の「やむを得ない事由」については政令の定めがないのです。
ではなぜ、こんな不明確な表現のままにしているのか?
裁判員法が議題となった2004年4月の衆議院法務委員会の会議録によると、鎌田さゆり議員(民主党、当時)が次のように発言しています。
局長、今そこまでおっしゃったのであれば、何もここで「やむを得ない事由」という誤解を招くようなあいまいな表現ですることないんじゃないかと思うんですよ、私は。
ごもっとも。
この表現の是非を問われた野沢太三法務大臣(当時)は次のように答弁しました。
法律の書きぶりとしてどちらがいいかということもあろうかと思いますが、やはり私ども、これからこの制度を新しく運用していくに当たりまして、あらゆる事態にできるだけ適用可能な表現をとっておくことが大事ではないかと思うわけでございます。
私も、いろいろな法律をこれまでつくってきたり、あるいは運用してきた中で、「やむを得ない事由によつて」というこの表現というのは、これから起こり得る事態を相当カバーできる大変上手な日本語ではないかと思っておりますので、その辺、ひとつ御検討をいただきたいと思います。
長文で失礼!
ソシャレン・クラファンで言うと、契約解除の事由になるようなことは多々想定される。
ビシッと固定してしまうと、想定外の事由が出てきたときに対応できない。
そこであえて「やむを得ない事由」としているってことでしょう。
やむを得ない事由の具体例
では、「やむを得ない事由」の具体例はないのかというと、法令以外ではあります。
経済産業省
まず、経済産業省が2008年に発表したコンテンツ産業新展開強化事業(PDF)という資料です。
弁護士が作った資料ですが、この中で商法第540条第2項の「やむを得ない事由」について次のように書かれています。
匿名組合員の出資義務の懈怠や営業者の営業遂行義務・利益分配義務等の懈怠が該当すると解されている
懈怠って?
怠けるって意味です。
業者が果たすべき義務を果たしていないことが、やむを得ない事由になるという解釈です。
栄税理士法人
栄税理士法人という税理士事務所が出した匿名組合の法務・会計・税務(PDF)という資料があります。
その中でも商法第540条第2項に関して同様のことが書かれています。
「やむを得ない事由」とは、
ア.匿名組合員の出資義務の懈怠
イ.営業者の利益分配の懈怠
ロ.出資金を契約に違反して利用した場合
など著しく匿名組合契約に違反した場合をいう。
業者が考えるやむを得ない事由
では、ソシャレン・クラファン業者は「やむを得ない事由」をどのように考えているのでしょうか?
いくつかの業者が具体的に規定しています。
業者の信用低下
信用低下を挙げているのはRimpleです。
やむを得ない事由とは、事業者の信用低下が明らかになった場合などを指します。
僕が知る限り、このパターンの業者が一番多いです。
ただ、何をもって事業者の信用低下とするかが不明確ではありますよね。
遅延1回で信用低下と言う人もいそう。
経営破綻
信用低下よりも具体化しているのがA fundingです。
「やむを得ない事由」とは、義務の履行不能のような場合、例えば営業者である弊社の経営破たんなどが考えられます。
経営破綻してから解約しても意味なくね?という突っ込みはさておき。笑
具体的に踏み込んではいますが、語尾が「考えられます」です。
というのも、やむを得ない事由の定義が法令で定められていない以上、最終的には裁判所の判断になるからです。
「やむを得ない事由」にならないケース
非常に詳しく書いているのがTECROWDです。
かなり長いので箇条書きで要約します。
- 「やむを得ない事由」に該当する事由
- 業者が契約上の重要な義務(不動産取引、収益や利益の分配など)を履行しない
- 業者が当該義務を履行することができなくなった
- 業者に重大な契約違反(不合理な価格で売却したなど)がある
- 業者に重大な法令違反がある
- 「やむを得ない事由」に該当しない事由
- 投資家が重篤な病気に罹患したり重傷を負った
- 地震・火災等に罹災した
- 上記に類する投資家の自己都合
「やむを得ない事由」に該当しないものを明記している点が特徴です。
これは書いてほしいよね。
重病は認められるとする主張も
ただ、TECROWDとは異なる説もあります。
サポート行政書士法人が不動産特定共同事業許可について書いた記事です。
こちらは商法第540条第2項ではなく、不動産特定共同事業法施行規則第11条第2項第7号に定める「やむを得ない事由」について書いたものです。
法律は異なりますが、こちらも契約解除の条件としての「やむを得ない事由」です。
記事では次のように書かれています。
「やむを得ない事由」とは、(中略)事業参加者が重篤な病気に罹患した場合や重傷を負った場合等が該当し、地震・火災などに罹災(りさい)した場合などの事業者参加者の自己都合は、「やむを得ない事由」に含まれません。
TECROWDが「事由」として認めない重病や重症を、「事由」に該当するとの主張です。
諸説あるわけか。
業者の姿勢が見える
ちょっと話がズレますが、途中解約に関する各社のFAQを読み比べると興味深いです。
Rimpleのように「やむを得ない事由がある場合だけOK」と、解約が限定的であることを強調する業者が最も多いですが。
TECROWDのように「やむを得ない事由」に当たらない例を出し、こういう場合は解約不可とまで言及する業者もあります。
その一方で「クーリングオフ期間は解約可能です」と解約可能なことだけ訴求する業者もある。
僕はこういうところでも業者の姿勢やモラルがうかがえると思っています。
業界で統一基準を定めるべきでは?
さて、ここまで見てきた通り「やむを得ない事由」に法的な定義はなく、各機関や業者が独自に定めているのが現状です。
そのため、すでにトラブルが起きています。
解約を拒否された
僕が読者から聞いた例では、ある業者に「やむを得ない事由」を理由に解約を求めたところ、それは事由にあたらないと拒否されたそうです。
それはお気の毒。
どっちが悪いかというより、不明確さにより起こるべくして起きたトラブルでしょう。
ソシャレン・クラファン投資家の増加により、これからトラブルが増える可能性が高いです。
他社でも起こる可能性
例えば、長引いているOwnersBookの大阪ホテル案件ですが。
連帯保証を実行しないことに対して「営業遂行義務の懈怠」だとして解約を求める。
そして、連帯保証の不実行が「やむを得ない事由」に当たるかを司法の場で争うとか。
もちろん、裁判になる可能性は低いですし、仮になっても99%原告敗訴でしょうが。
ただ、訴訟を提起されること自体が厄介ですよね。
イメージに響くしね。
基準が明確になることを期待
「やむを得ない事由」の定義が不明確であることは、我々投資家にとってありがたくないです。
また、業者にとってもトラブルの種を抱えることになりかねません。
業界統一の基準ができることを願っています。
ということで、長くなりましたが「やむを得ない事由」についてでした。
以上です!
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