不動産クラウドファンディングの案件は、契約の種類によって2つのタイプに分かれます。
- 匿名組合型
- 任意組合型
この2つ、聞いたことはあるけれど違いをよく分かっていないという人が多いのでは?
は~い!
そこでこの記事では匿名組合型と任意組合型の違いを、初心者でも分かるようにやさしく解説します。
不動産クラファンで安全に投資するために必要な知識です。
ぜひ、理解してください。
ていねいに説明します!
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タップできる目次
任意組合型と匿名組合型の違い
そもそも組合とは?
「匿名”組合”」とか「任意”組合”契約」とか言うけれど、そもそも組合って何なのか?
たしかに!
自分1人で不動産投資をするのは、資金的にも能力的にも無理。
そこで、みんなで一緒に不動産に投資する投資組合を作るとイメージしてください。
LINEグループみたいな感じね。
で、そのグループには匿名組合と任意組合の2タイプがある。
そして、グループのルールが組合契約です。
それでは、匿名と任意の違いです!
違い1:業者の立ち位置
任意組合型では業者も組合員です。(民法667条)
投資家と同じ組合員として、グループの事業に参加します。
一方の匿名組合型では業者は組合員ではないです。(商法535条)
投資家だけが組合員で、業者はグループの外にいます。
プチ解説 業者とは?
この業者の立ち位置の違いが非常に重要です。
任意はグループ内で投資家と同じグループのメンバー、匿名はグループ外でメンバーではない。
ここをしっかり押さえてください。
タイプ | 業者の立ち位置 | 業者の立場 |
---|---|---|
任意組合型 | グループ内 | 同じメンバー |
匿名組合型 | グループ外 | メンバーではない |
違い2:投資家の出資対象
投資家は何に出資するのか?
任意組合型では投資家は不動産に出資します。(不動産特定共同事業法2条3項1号)
これに対し、匿名組合型では投資家は業者が行う不動産事業に出資です。(不動産特定共同事業法2条3項2号)
タイプ | 出資対象 |
---|---|
任意組合型 | 不動産そのもの |
匿名組合型 | 不動産事業 |
匿名組合型は不動産への出資ではありません。
事業への出資、つまり、業者が不動産事業を行うための資金の提供です。
資金提供とな!
プチ解説 出資とは?
違い3:物件を取得する人
任意組合型では投資家、業者を含む全メンバー(組合員)で物件を取得します。
「組合の事業」としての物件取得です。
一方、匿名組合型では業者が物件を取得します。
組合ではなく「業者の事業」としての物件取得です。
それだとどうなるの?
違い4:物件の所有権
任意組合型では全組合員で物件を取得しています。
物件は全組合員の共有物です。(民法668条)
なので、物件の所有権は全組合員にあります。
これに対して、匿名組合型で物件を取得したのは業者です。
このため、物件の所有権は業者にあります。(参考:匿名組合の財産の権利)
投資家に所有権はありません。
お金を出してるのに?
そうです。
東京ドームの株主にドームの所有権がないのと同じです。
違い5:投資家が持つ権利
さきほど説明した通り、任意組合型では物件の所有権は全組合員にあります。
このため、各投資家が出資と引き換えにゲットした権利は、不動産の共有持分(所有権の割合)です。(参考:任意組合型で投資家が所有するもの)
匿名組合型では投資家は業者が行う不動産事業に出資しています。
ですので、投資家が持つ権利は出資持分です。(商法535条)
プチ解説 出資持分とは?
この持つ権利の違いが相続税に影響します。
任意組合型の案件に1千万円投資し、その権利を子供が相続したとしましょう。
この場合、子供が相続したものの実体は不動産の共有持分です。
そのため、その価値は路線価などをもとに不動産として評価され、評価額は700万円とかに下がります。
その結果、現金1千万円を相続するよりも節税になるのです。(参考:任意組合型の相続対策効果)
任意組合型は相続対策商品です!
では、匿名組合型に1千万円投資し、その権利を子供が相続した場合はどうなるか?
子供が相続したのは出資持分、つまり、元本1千万円を受け取る権利です。
評価額は1千万円のままですので、節税にはなりません。(参考:匿名組合型の相続時評価額)
相続税対策なら任意組合型だね。
違い6:決定権の有無
物件をいくらで売るかなど、事業内容の決定権の有無です。
まず、任意組合型では原則として、組合員の過半数で決定し、各組合員で執行します。(民法670条1項)
つまり、投資家を含む全組合員が決定権を持ちます。
ただし、決定と執行を業者に委託することが可能で、その場合は決定権は業者にのみあり、投資家にはありません。(民法670条2項)
不動産クラファンの任意組合型はすべてこのパターンです。
匿名組合型では決定権は業者にあり、投資家にはありません。(商法536条3項)
どっちも決定権は業者か。
違い7:責任範囲
物件の外壁が崩落して通行人が死亡し、損害賠償が発生したとします。
任意組合型の場合、組合員所有の物件で、委託者を含む組合員が執行した業務での賠償発生です。
このため、損害賠償は全組合員が負担します。
その負担額は出資割合で按分されますが、仮に100万円出資の投資家の負担額が300万円の場合、投資家は追加で200万円出さなければなりません。
つまり、任意組合型では無限責任です。(参考:任意組合の債務)
これに対し、匿名組合型では業者所有の物件で、業者が執行した業務での賠償発生です。
損害賠償は業者がすべて負担します。(商法536条4項)
ならば投資家は無キズで済むの?
ただし、その賠償には投資家が出した出資金も当てられます。
このため、場合によっては投資家の元本は1円も戻ってきません。
逆に言うと負担は最大でも出資額までで済むので、投資家は有限責任です。(参考:匿名組合型の責任範囲)
プチ解説 元本とは?
違い8:所得区分
得られた利益、つまり分配金の所得区分にも違いがあります。
任意組合型では投資家=組合員が所有する不動産から得られた所得です。
このため、分配金の所得区分は不動産所得または譲渡所得になります。(参考:配当金の税務区分)
分配原資 | 所得区分 | |
---|---|---|
家賃収益 | → | 不動産所得 |
売却益 | → | 譲渡所得 |
プチ解説 分配原資とは?
なお、任意組合型の案件の多くで分配原資は家賃収益です。
このため、分配金の大半は不動産所得で、譲渡所得になることはあまりありません。
一方、匿名組合型では業者が行う不動産事業で得られた利益の分配を受けます。(商法535条)
投資家が所有する不動産から得たものではありません。
このため、分配金の所得区分は不動産所得ではなく雑所得です。(参考:匿名組合型の税制上の扱い)
この違いがどうなるの?
税金に関係します!
プチ解説 分配とは?
まず任意組合型ですが、不動産所得は他の不動産所得とのプラマイ(内部通算)はできません。
また、給与所得など他の所得とのプラマイ(損益通算)も不可です。(参考:任意組合型の運用時の取扱いポイント①)
譲渡所得は内部通算はできますが、損益通算はできません。(参考:不動産の譲渡所得間での内部通算)
所得区分 | 内部通算 | 損益通算 |
---|---|---|
不動産所得 | ✕ | ✕ |
譲渡所得 | ◯ | ✕ |
課税方式ですが、不動産所得は総合課税方式で、給与所得など他の所得との合計で所得税率が決まります。(参考:総合課税の対象)
高所得者ほど不利です。
所得区分 | 課税方式 |
---|---|
不動産所得 | 総合課税 |
譲渡所得 | 分離課税 |
譲渡所得は分離課税ですが、上述の通り不動産クラファンの任意組合型では譲渡所得はほとんどありません。(参考:譲渡所得の分離課税)
結局、総合課税か。
次に匿名組合型です。
匿名組合型はすべて雑所得なので、内部通算はできますが損益通算はできません。(参考:匿名組合型の運用時の取扱いポイント①)
所得区分 | 内部通算 | 損益通算 |
---|---|---|
雑所得 | ◯ | ✕ |
また、課税方式は総合課税です。(参考:総合課税の対象)
所得区分 | 課税方式 |
---|---|
雑所得 | 総合課税 |
それと、確定申告について。
任意組合型は不動産所得なので、確定申告の際に収支内訳書の提出が必要です。
税務署が作った記入方法などを解説した資料を見てみてください。
絶望的に面倒であることが見た瞬間に分かります。笑
それに比べれば匿名組合型の確定申告ははるかに簡単です。
任意組合型の確定申告は地獄です!
任意組合型と匿名組合型の違いのまとめ
違いの一覧
最後に任意組合型と匿名組合型の違いをまとめます。
項目 | 任意組合型 | 匿名組合型 |
---|---|---|
業者 | 業者も組合員 | 組合員じゃない |
出資対象 | 不動産そのもの | 業者が行う事業 |
物件取得 | 投資家を含む組合員 | 業者 |
所有権 | 投資家を含む組合員 | 業者 |
権利 | 不動産の共有持分 | 出資持分 |
相続税 | 節税効果あり | 節税効果なし |
決定権 | 業者 | 業者 |
責任範囲 | 無限責任 | 有限責任 |
所得区分 | 大半が不動産所得 | 雑所得 |
内部通算 | 不動産所得:✕ 譲渡所得:◯ |
◯ |
損益通算 | ✕ | ✕ |
課税方式 | 大半が総合課税 | 総合課税 |
確定申告 | 絶望的に面倒 | 比較的簡単 |
相続がないなら匿名組合型
では、任意組合型と匿名組合型のどちらが良いのか?
さきほどの表から投資家に直接的に影響する違いを抜き出してみましょう。
青は両者で異なるものです。
項目 | 任意組合型 | 匿名組合型 |
---|---|---|
相続税 | 節税効果あり | 節税効果なし |
決定権 | 業者 | 業者 |
責任範囲 | 無限責任 | 有限責任 |
内部通算 | 不動産所得:✕ (譲渡所得:◯) |
◯ |
損益通算 | ✕ | ✕ |
課税方式 | 大半が総合課税 | 総合課税 |
確定申告 | 絶望的に面倒 | 比較的簡単 |
相続税対策は任意組合型の方が有利。
責任範囲は有限責任の匿名組合型の方が有利。
確定申告も匿名組合型の方が有利。
決定権と税金は大差ありません。
項目 | 任意組合型 | 匿名組合型 |
---|---|---|
相続税 | ◯ | ✕ |
責任範囲 | ✕ | ◯ |
確定申告 | ✕ | ◯ |
ということで、相続税対策が目的ならば任意組合型、そうでないならば匿名組合型がおすすめです。
- 相続対策が目的 → 任意組合型
- 相続対策は不要 → 匿名組合型
以上、不動産クラウドファンディングの匿名組合型と任意組合型の違いでした。
ぜひ理解を!
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