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国交省の不特事業検討会の結果を解説|投資家のためになるか?

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先月、国土交通省が不動産クラファンに関する検討会を開催しました。

詳細は国交省サイトですでに公開されています。

建設産業・不動産業:一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会 - 国土交通省
国土交通省のウェブサイトです。政策、報道発表資料、統計情報、各種申請手続きに関する情報などを掲載しています。

 

なぜこのような検討会が開催されたのか?

検討会では何が議論され、どのような方向性が示されたのか?

僕の感想と合わせて解説します。

タロウさん
タロウさん

我々の今後に関わる内容です!

 

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この記事の著者
投資家・ブロガー
タロウ

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファンディング専門の投資家です。
2018年にソシャレン・クラファン投資を始め、これまで500件を超える案件に2億円以上を投資し損失ゼロ。
安全性を最重視した投資情報を発信しています。

検討会開催の背景と議事概要

検討会開催の背景と議事概要のタイトル画像

 

検討会の概要

今回開催されたのは「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」という長い名前の検討会です。

左野くん
左野くん

ムダに長いw

プチ解説 不動産特定共同事業とは?

 

2025年4月22日に開催され、参加したのは以下のメンバーです。

  • 委員
    • 谷山 智彦(野村総合研究所 シニアチーフリサーチャー)
    • 田村 幸太郎(牛島総合法律事務所 弁護士)
    • 橋爪 宏徳(日本公認会計士協会  ファンド対応専門委員)
    • 本田 裕昭(JLL森井鑑定株式会社 執行役員副社長)
    • 唯根 妙子(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント)
  • オブザーバー
    • 一般社団法人 不動産証券化協会
    • 一般社団法人 不動産特定共同事業者協議会
    • 一般社団法人 不動産クラウドファンディング協会
    • 金融庁 企画市場局総務課信用制度参事官室
    • 消費者庁 消費者政策課
  • 事務局
    • 国土交通省 不動産・建設経済局不動産市場整備課

 

議論されるべき内容として、国交省は事前に以下を提示しました。

  • 充実すべき情報開示項目
    • 想定利回り、対象不動産の価格、利害関係人取引等
  • 規制など制度的対応
  • 行政による指導監督体制
  • 業界団体との連携

 

かなり細かい内容まで書かれていますので、事前に結論は決まっていて、それにお墨付きを与える儀式かなと。笑

右田さん
右田さん

ひねくれた見かたね。

 

検討会開催の背景

なぜこのような検討会が開催されたのか?

そこには国交省の危機感があると思います。

 

クラファン投資家の増加

今回の検討会開催の背景にあるのは、不動産クラファン投資家の増加です。

国交省の資料によると、不特事業に参加する一般投資家に占める不動産クラファン投資家の割合は、令和元年の20%から令和5年には67%にまで上がりました。

また、令和元年からの5年間で一般投資家は26.3万人増えましたが、そのうちの7割に当たる19.3万人が不動産クラファン投資家です。

国交省資料のグラフ1

 

案件数でも不動産クラファンが占める比率は令和元年の48%から令和5年には76%にまでなっています。

国交省資料のグラフ2

左野くん
左野くん

我々の存在感が高まった。

 

クラファン投資家への対応が必要に

しかしながら、我々不動産クラファン投資家の多くは不動産についてはド素人です。

ここらで対策を打っておかないと、大きな事件が起きかねないぞと。

それで今回の検討会を開催することになったのでしょう。

 

検討会の議事概要

では、検討会で委員の方々は何を議論し、どんな結論を出したのか?

国交省から議事概要が公開されています。

1,600文字とそこそこのボリュームですので、要点を以下にまとめます。

 

総論

  • 不動産クラファンの拡大で一般投資家が増加
  • 制度の充実を図るべき
  • 「破綻必至商法」をいかに防ぐかも重要
  • 様々な案件があり、それらに応じた規制の検討が重要
  • 不特事業は地方創生への貢献も期待される
  • 推進と保護のバランスを取りながら健全なマーケットを形成していくことが必要

 

一般投資家への情報開示の充実

  • 開示項目の充実を検討すべき
    • 不特事業では開発・改修も可能であることを踏まえて
    • Jリートの内容も参考に
    • 情報が多すぎると投資家が読みにくくなる点に留意
  • 「破綻必至商法」の防止について
    • 事業実態の把握が重要ポイント
    • 情報開示の充実、価格規制などの対応が重要
  • 高利回りについて
    • 投資家への大きな訴求点になっている
    • 利回りの根拠が明示されるべき
    • ハイリターンに伴うハイリスクも十分な説明が必要
    • 特に開発・改修を伴う案件
  • 対象不動産の価格や利害関係人取引について
    • 価格水準の妥当性の説明が必要
    • 不動産鑑定評価額の提示を業者に求めては?
  • 出資金の使用使途について
    • 使途を明示すべきでは
    • 対象不動産の取得先が利害関係人である場合、利害関係人を含めて何に用いられるのか
  • 開発・改修を伴う商品について
    • 事業内容やスケジュールの説明も必要
  • 商品の運用状況の報告について
    • 頻度や内容の充実を要検討(現在は年1回)

 

規制も含めた制度的な対応

  • 不特事業者の許可を2~3年の更新制にしては?
    • 現状は一度許可を取れば永遠にOK
  • 運用終了時に物件を利害関係人に売却する場合の価格
    • 不動産鑑定評価に準じた価格としては?
    • 「破綻必至商法」の防止、投資家への損失補填の防止の為
    • 不動産鑑定を義務化すると収益が出ない商品も出てくる
    • 事業性との両立への留意は必要
  • 不動産価格について
    • 第三者の目線が入ることが妥当
    • 一方で、開発案件ではどのような評価が妥当か要検討

 

行政による指導監督体制のあり方、業界団体との連携

  • 国交省、金融庁の積極関与
    • 監督者が都道府県である業者について
    • 都道府県の知識では的確な対応ができない商品もある
    • これらについては国交省、金融庁も関与すべき
  • 懸念される商品や事業者の事前把握
    • 国交省が行っている不動産証券化の実態調査を活用できないか
  • 行政と業界団体との連携
    • 行政の対応だけでは限界がある
    • 業界団体での事前チェックや自主規制も有効
    • 一般投資家からの相談窓口機能も果たしてほしい

 

さて、みなさん、どう感じましたでしょうか?

以下に僕が感じたことを書きます。

検討会議事概要への感想

検討会議事概要への感想のタイトル画像

 

良い内容もある

まず、良いと感じた内容です。

  • 出資金の資金使途の説明
  • 開発案件での事業内容やスケジュール
  • 運用状況の報告を増やす
  • 不特事業許可の更新制
  • 国交省、金融庁の積極的関与

 

投資判断につながる情報の開示はぜひ増やしてほしいです。

業者の経営状況や実態が時とともに変わる以上、許可は更新制にすべきだと思います。

 

投資家が情報を見ることを前提とするのか?

情報を増やしても投資家保護は進まない

今回の検討会では「情報開示の強化」がポイントとなっています。

つまり、「開示する情報を増やせば投資家保護が進む」という発想です。

果たしてそうでしょうか?

成立前書面どころか業者サイトの案件詳細すら読んでいない投資家が少なくありません。

ですので現実問題として、情報を増やしても投資家保護は進まないと僕は思います。

プチ解説 成立前書面とは?

 

読まないことを前提にしている可能性も

ただ一方で、国交省は投資家がろくすっぽ読まないことを前提としているのかな?とも。

右田さん
右田さん

どういうこと?

 

物件の評価額とか利害関係人への売却価格、事業内容その他諸々。

事細かに書かせることで、インチキな案件を組成できないようにする。

書かせることでリスキーな案件が入り込めないようにしているのかな?と。

であるならば、投資家が読まなくても問題ないのかもしれません。

左野くん
左野くん

書かせることがリスク抑止になると。

 

業界団体との連携には懸念

自主規制が有効なものになるのか?

検討会では「業界団体での事前チェックや自主規制」が求められています。

自主規制ルールは作るべきだと思いますが、業界団体に丸投げで良いのか?

どうしても業者寄りの内容になるでしょうから、どこまで有効なものになるか疑問です。

ルール作成の過程で行政の関与が必須かと。

 

業界団体に業務を押し付けるのか?

それと、業界団体に「一般投資家からの相談窓口機能」を持たせるとのことですが。

これは本来、国交省や消費者庁など行政が担当すべき業務です。

それを業界団体にタダで代行させるのはおかしいと思います。

立場的な強さを使って代行を強要するのであれば、不当な職権乱用です。

 

規制強化だけで良いのか?

リスク排除が基本方針のように感じる

検討会の議事などを見ていると、以下のような文言が多いです。

  • 破綻必死商法を防ぐ
  • 高利回りへの警戒
  • リスクの十分な説明
  • 鑑定評価の導入を増やす

 

これらを見るに、国交省は「リスクにつながる要因の排除」が基本方針であるように感じます。

ヤバいことにつながりそうなものは、とにかく取り除くってことです。

右田さん
右田さん

それで良いのでは?

 

面白みのない投資商品に成り下がらないか

僕のようなリスク全拒否のチキンインベスターはそれで全然OKです。

でも、投資家の中には6%くらいまでは手を出したいとか、リスクテイクして2桁利回りを狙いたい人もいるわけで。

そういう人にとっては、ガチ堅の利回り3%案件ばかりでは投資する気にならないですよね?

業者にとっても面白みのない投資商品になってしまいます。

 

リスクに対応できる投資家の育成も必要では?

リスク排除が過度になると、ブランコもジャングルジムもない公園になってしまうわけで。

安全な遊び方を教えていれば、いろんな遊具がある楽しい公園を残せたはずです。

それと同じで、ハイリスクだからとハイリターン案件を排除するのではなく、「ハイリスクと上手に付き合える投資家を育成する」というアプローチもあって良いのではないでしょうか?

安全な商品からリスキーな商品までいろいろある中で、自分のリスク許容度に合った商品を選べる。

そんな投資家を育成する金融教育を義務教育で行うべきだと思います。

その意味で今回の検討会に文部科学省が参加していなかったのは残念です。

 

どのような規制を打ち出すかを注視

以上、4月に行われたクラファン検討会について見てきました。

検討会を行ったということは、開示情報の拡充を含めた規制強化、法改正が行われることは確実です。

本当の意味で我々投資家にとってプラスになる規制強化になるのか?

今後の国交省の動きを注視しましょう。

タロウさん
タロウさん

過度な規制はご勘弁!

 

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