国土交通省が「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会」の中間整理を公表しました。
今後の不動産クラファンに大きな影響を与えるものです。
その内容を紹介するとともに、感じたことを述べます。

我々に影響大です!
最新のキャペーン情報です。

タップできる目次
国交省検討会中間整理の内容と所感
検討会設置の背景と狙い
不動産クラファン市場の急拡大
不動産クラファンを含む不動産特定共同事業(以下、不特事業)は1995年に創設されました。
2017年の法改正で不動産クラファンが登場。
2022年頃から業者が一気に増え、不動産クラファン市場が急拡大しました。
プチ解説 不動産特定共同事業とは?
プチ解説 業者とは?
不動産ド素人の大量流入
急拡大の背景にはスマホをポチポチで投資できる手軽さがあったのですが。
その手軽さゆえに、僕を含む不動産ド素人が不動産クラファンに大量流入。
よく分からずに不動産投資に手を出す投資家が激増して現在に至ります。
安心して投資できる環境の整備
このままではいずれ大きな問題が起きかねない。
それが現実となったのが、ヤマワケエステートの札幌宮の森案件です。
事ここに至って国交省がついに重い腰をアップ。
不動産ド素人がメインプレーヤーとなった不動産クラファンは、情報開示の充実などを検討する必要がある。
そうすることで「投資家がよりわかりやすく安心して投資できる市場の整備」を実現しなければならない。
こうして立ち上げられたのが「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての検討会(以下、検討会)」です。
中間整理を公表
第1回の検討会は2025年4月に開催されました。
その後、2回の検討会を経て、8月1日に中間整理が公表されました。
以下、中間整理の内容を紹介し、それぞれに対する考えを述べます。
契約前書面における記載事項の拡充
契約前書面とは、いわゆる成立前書面のことです。
書面への記載内容を増やすことで、投資家が案件の内容をより理解でき、より適切な投資判断をできるようにするとしています。
書面に掲載すべきとされたのは以下の5項目です。
プチ解説 成立前書面とは?
プチ解説 案件とは?
1.想定利回り
商品の募集に際し、想定利回りを広告する場合には、その設定根拠(算定式や配当額の根拠等)を説明すること。
利回りの妥当性を判断する材料になるという点で賛成です。
ただ、単に説明さえすれば良いのか?説明の妥当性は問われないのか?
問われないならば、適当な説明で投資家に安全だと錯覚させかねず、逆効果になります。
投資家が説明の妥当性を判断できるのかという根本的な問題もあるでしょう。
また、みんなの年金やKORYO Fundingのように、利回りが毎回同じ業者はどうするのか?
特にGALA FUNDINGやRimpleのような営業ツール型の業者は、利回りの妥当性など皆無でしょう。
しかし安全性は極めて高く、投資家にとってはありがたい案件です。

こういった業者がこれまで通り案件を出せなくなると困ります。

僕の大好物です!
2.対象不動産の取得価格
対象不動産の取得価格が妥当であることの根拠を説明すること。また、不動産鑑定評価を取得していない場合には、その理由を説明すること。
現在は書面では取得価格の記載だけで、「妥当であることの根拠」はありません。
根拠の記載自体は望ましいです。
追加で注文をつけると、まず取得価格の内訳を明示してほしい。
物件価格だけなのか、不動産取得税なども含めた価格なのか、現状では分からないからです。
また、「不動産鑑定評価を取得していない場合には、その理由を説明すること。」について。
理由を説明すれば取得免除になるのか?それで良いのか?
現在、書面には月々の賃料の記載が法律で義務付けられていますが、これについて「記載できない場合はその理由を」との但し書きがついています。
賃料記載は義務ではあるが、理由を書けば記載しなくてよいということです。
そして実際、「入居者がいるため」といった理由で賃料を記載していない業者が複数あります。
それと同じことにならないか?
なお、鑑定取得を一律に義務化することには反対です。
業者にとって鑑定コストが重荷になり、利幅が薄い案件は組成できなくなるからです。
募集額が少ない案件や、地方の空き家再生といった案件はできなくなりかねません。
3.利害関係人取引
利害関係人との間で取引(売買・賃貸借)がある場合には、取引価格が妥当であることを、不動産鑑定評価額、地価公示価格や周辺の不動産取引価格情報等の客観性ある価格を示しつつ説明すること。その際、不動産鑑定評価を取得していない場合は、過去の非利害関係人取引の価格も示しつつ説明すること。
必要だとは思いますが、記載の仕方はそうとう工夫する必要があると思います。
利害関係人取引なんて大半の不動産クラファン投資家は知りませんよ。
恥ずかしながら、僕も不動産クラファンをやるまで利害関係人って単語を見たことがありませんでした。
4.出資金の使途
出資金の使途を説明すること。
投資家から集めたお金を何に使うのか?
これはぜひともお願いしたいです。
ただ、業者側の反発が強いのではないでしょうか?
さきほどの対象不動産の取得価格もそうですが、その物件をいくらで仕入れたとか、リノベーションにいくらかかるとか、手の内を見せるようなものです。
そういった情報を公にすることが義務となると、そんな業者には物件を売りたくないという所有者が出るかもしれませんし。
業者に過度な負担とならない落とし所を探る必要があると思います。
業者が商売をやりにくくなって一番困るのは、我々投資家ですから。
5.開発等を伴う商品
開発等を伴う商品の場合は、その内容(建築確認等の取得有無(有の場合はその概要)、資金計画、スケジュール)を説明すること。
これも書いてくれたほうが良いと思います。
その妥当性を我々が判断できるかは自信がないですが。

不動産ド素人ゆえに。
成立前書面への記載だけでは不十分
なお、不動産クラファン投資家の大半は成立前書面なんて読んでいません。
なので、書面に記載するだけでは国交省が目指す「投資家がよりわかりやすく安心して投資できる市場の整備」は実現しないです。
業者サイトの案件説明ページへの記載も必須でしょう。
また、サイトに記載する場合も、利害関係人取引とか建築確認といった用語をそのまま書くべきではありません。
不動産業界外の一般人は知らないからです。
どのように書けば我々不動産ド素人でも理解できるか?
そこまで踏み込まないと、投資家の被害を防ぐことは不可能です。
運用期間中における提供情報の拡充
投資家が案件の運用状況を適時・適切に把握できるように、財産管理報告書に2項目を追加すべきとしています。
1.出資金の使途の実績
出資金の使途の実績を説明すること。
成立前書面に記載した通りに、投資家のお金を使っているかです。
計画と異なる場合には、その理由と今後の運用への影響も書くべきでしょう。
2.開発等を伴う商品
開発等を伴う商品の場合は、当該開発等の進捗状況を説明すること。
これも成立前書面に記載した通りに進捗しているかですね。
必要な内容だと思います。
財産管理報告書への記載で良いのか?
中間報告ではこれらの記載を財産管理報告書にするとしています。
果たしてそれで投資家保護は実現するのか?

問題でも?
財産管理報告書は「一年を超えない期間ごとに」作成することが義務付けられています。
現状、不動産クラファン案件の多くは運用期間が1年以内です。
このため、大半の案件で財産管理報告書は運用終了後に発行されています。
それで国交省がいう「運用状況を適時・適切に把握」が可能になるのか?
資金使途に大きな狂いが出ていたと運用が終わったあとで言われてもなぁと。
業者の負担との兼ね合いになるでしょうが、もう少し短いタームで投資家に情報提供されるべきだと思います。
また、記載する場所はサイトの案件説明ページにすべきです。
公開情報としてサイトへ記載してほしい
その際、その案件に投資していない会員、さらには非会員でも見られる状態で記載してほしい。
各業者の案件がこれまでどのように運用されてきたかを知ることが、投資家の業者選びの材料になるからです。
上手く運用してきた業者にとっては、アピールの場になります。
過去に予定変更などが起きている業者にとっても、いかにリカバリーしたかを示すことができるでしょう。
また、都合の悪い事実も公表することで、透明性をアピールすることができます。
いくつかの業者で情報隠蔽的なことが起きており、少なからずの投資家が透明性に敏感になっているのが現状です。
逆手に取って公開することで、投資家を味方につけられます。
対象不動産の売却価格等における公正性の確保
商品の償還時に対象不動産を利害関係人に売却する場合等には、低価格での売却による不当廉売や、高価格での売却による損失補填を防止する観点から、売却価格の適正性を確保することが重要である。
このため、商品の償還時に対象不動産を利害関係人に売却する場合等には、原則として、証券化対象不動産としての不動産鑑定評価額に即した価格で売却を行うことを求めてはどうか。
う~ん、これは…
確かに不当廉売など業者側の不正防止に役立つでしょう。
しかし同時に、普通に売れば300万円の損失が出るので、業者が市場価格より300万円割高で買い戻す。
そうすることで元本毀損を防ぐ、といった手が使えなくなります。
つまり、投資家にとってデメリットにもなる内容です。
また、上述した毎回同じ利回りの業者はどうするのか?
鑑定取得コストが業者の経営に影響を与えないか?
いろいろと問題、課題があるように感じます。
行政による監督の充実
業者、案件ともに激増した現状で、行政による監督をより効率的・効果的に行うために、以下3点の充実を訴えています。
1.「不動産証券化の実態調査」の充実・活用
国土交通省が毎年実施する「不動産証券化の実態調査」において、不動産特定共同事業について、利害関係人取引の有無、運用実績など、その調査項目の充実を図り、監督に活かすこと。
また、法40条に基づく調査として実施すること。
またさらに、調査の結果については、投資家の市場動向の把握にも資するよう、公表する項目を充実すること。
国交省が行う調査の項目を増やすそうですが。
それが投資家にとってどのようなメリットがあるのか、正直よく分かりません。
2.国による都道府県への技術的助言等の積極的な実施
都道府県が監督する不動産特定共同事業であっても、事案の内容に応じ(例えば難度の高い事案等)、国も参画した立入検査や技術的助言を積極的に実施すること。
これは絶対に必要だと思います。
都道府県の担当者は不動産クラファン専門でやっているわけではありません。
不動産クラファンのことを隅から隅まですべて理解しているとは限らない。
その不足を国が補うことは、絶対かつ早急に必要だと思います。
3.業界団体との連携による自主ルール等の検討
制度面の充実に加え、事業者からも、商品の内容に応じた適切な情報提供に取り組むことが重要であることから、不動産特定共同事業の業界団体においては、投資家への情報提供等に関する自主ルール・規制の導入を検討してはどうか。
一般社団法人不動産クラウドファンディング協会(以下、協会)に、自主規制ルールを作らせるということだと思いますが。
う~ん、どうかなぁ…
まず、本来的にこれって国がやるべき仕事でしょ?
それを民間にタダで丸投げって、なんじゃ、そりゃ、と。
また、協会が有効なルールを作れるのか?
協会所属の業者には、情報公開に積極的なところもあれば、その逆のところもあるわけで。
純粋に投資家保護を第一としたルールを作れるのか?
そして、協会に所属していない業者はどうするのか。
まずは緊急措置として協会がルールを作り、協会会員に遵守させる。
その後、協会ルールをたたき台に、国が全業者統一のルールを作り法制化する。
そうしたほうが良いような気がします。
総論としては歓迎
以上、検討会の中間整理について見てきました。
いろいろとケチ、注文をつけてきましたが、総論としては歓迎です。
”早急に”実現させてほしいと思います。
これは日本人の悪いところトップ3に入ると思うのですが、最初からパーフェクトを求め、完璧以外は許容しない。
だから、ドローンにしても自動運転にしても、米中のはるか後塵を拝することになるのです。
不完全でも良いから速攻で立ち上げる。
そして、走りながら猛スピードで改善を繰り返し続ける。
95%になってから立ち上げるのではなく、40%で立ち上げて走りながら毎日1%上げていく。
こっちのほうが絶対に良い。
不動産クラファンの制度見直しも同様です。
その意味では、中間整理の一番最後に書かれたこの一文が実行されるかが鍵かと。
※本中間整理後も、市場環境の変化に合わせて、その時々の状況に応じた制度充実の検討を行うことが重要
検討会の今後に期待しましょう。

注目です!
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