ソシャレン、不動産クラファンで蓄電池案件が増加中です。
高利回りで人気ですが、リスクも潜んでいます。
7年前のあの悲劇が再現されるかも?
注意点とあわせて解説します。
なお、この記事は7月7~11日のXでのポストを編集したものです。
すでに見ている方は読む必要はありません。

見ていない方はご一読を!
ソシャレン、不動産クラファン、全業者リストでチェック!

タップできる目次
蓄電池案件増加の背景とリスク
系統用蓄電池とは?
蓄電池案件を理解するには、まず“系統用”蓄電池の理解が必要です。
プチ解説 案件とは?
発電所併設の蓄電池とは違う
太陽光など再エネ系の発電所に併設され、電気が余った時に蓄電、足りない時に放電する。
これは蓄電池ではありますが、系統用蓄電池ではありません。

そうなんだ!
電力系統とは?
そもそも、系統用蓄電池の「系統」とは何か?
発電所から家庭などに電気を送る。
この「発電から配電までの一連のシステム」のことを電力系統といいます。
系統用蓄電池は、この「電力系統のための蓄電池」です。

なんで必要なの?
電力系統と需給バランス
電力系統では需要と供給が一致することが必要です。
このバランスが崩れると、電圧の乱れや大規模停電につながります。

「供給量=使用量」じゃないとダメ。
再エネ発電がバランスを崩す
ここで問題になるのが太陽光発電などの再エネ発電です。
再エネ発電は天候などで発電量が変動します。
このため、発電しすぎたり、足りなかったりで、需給バランスを崩してしまうのです。
これまでのバランス調整方法
このバランスのズレをこれまでは火力発電の出力増減で調整してきました。
しかし、脱炭素のため火力発電は縮小の方針です。
もう一つの方法として、再エネ発電の出力抑制でもバランス調整を行っています。
でもこれって、発電できる電気を捨てているようなもので、もったいないですよね?

せっかく発電できるのにね。
系統用蓄電池でバランス調整
そこで新たな方法として登場したのが、系統用蓄電池を使ったバランス調整です。
電力系統全体で電気が余っているときは、蓄電して供給を減らす。
逆に、電気が足りないときは放電して供給を増やす。
系統用蓄電池で電力系統全体のバランス調整を行うのです。
電力システム全体の社会インフラ
再エネ発電所に併設された蓄電池は、その発電所単体の需給バランスを調整するだけ。
電力系統に接続されていないので、全体のバランス調整には使えません。
これに対して系統用蓄電池は、電力系統に接続され、電力システム全体のバランス調整を行います。
電力システムを維持するための社会インフラなのです。

社会全体のために必要だと。
そしてこのことが、蓄電池案件増加の遠因でもあります。
系統用蓄電池への参入業者増加の背景
ソシャレン、不動産クラファンで蓄電池案件が増えているのは、系統用蓄電池事業に参入する業者が増えているからです。
なぜ増えているのでしょう?
業者の参入が急増中
系統用蓄電池事業に参入する業者はどれくらい増えているのか?
資源エネルギー庁によると、東京電力など電力会社への系統用蓄電池の接続申請が、2024年は前年の3倍に急増しています。

なんで増えてるの?
再エネ拡大には系統用蓄電池が必要
理由は政府の方針です。
政府は脱炭素実現のため、再エネ発電をさらに拡大する方針です。
しかし、再エネ拡大には1つ大きな問題があります。
それは、再エネを増やせば増やすほど、電力系統の需給バランスのズレが大きくなることです。
バランスのズレが大きくなると、より大きなバランス調整機能が必要。
バランスのズレが3倍になると、系統用蓄電池も3倍必要になる。
つまり、再エネ拡大には系統用蓄電池の拡充が不可欠なのです。

再エネを増やすために、系統用蓄電池を増やすのか!
とは言え、政府が自前で系統用蓄電池を増やすわけにもいきません。
そこで求められるのが、民間事業者の参入拡大です。
民間事業者の参入拡大策
参入拡大のために政府は2つのことを行ってきました。
まず、系統用蓄電池で儲ける場としては、主に3つの市場があります。
これらの市場を整備することで、事業者が儲けやすくしました。
- 卸電力市場
- 需給調整市場
- 容量市場
もう一つの促進策は補助金です。
令和6年度予算では400億円が計上されています。
系統用蓄電池が新たな投資対象に
政府の方針と施策により、系統用蓄電池が儲かる事業になった。
このため、新たな投資対象として系統用蓄電池に参入する民間事業者が増えているのです。

新たな儲け話ってことか。
蓄電池案件が増えている理由
では、参入する事業者が増えると、なぜ不動産クラファンで蓄電池案件が増えるのでしょうか?
多額の資金が必要
土地の取得から蓄電池の設置など、蓄電所の開発には多額の資金が必要です。
三菱総研によると、蓄電池や電力変換装置の調達、工事費などで、設置コストは1kWhあたり6.8万円かかります。(2024年)
仮に5MWhの規模だと3.4億円、この他に土地代なども必要です。

そんなにかかるんだ!
不動産クラファンで資金調達
この費用を民間事業者が自社でまかなえれば良いのですが。
仮にまかなえない場合、蓄電所用に取得する土地を担保に銀行から融資を受けられるか?
土地の担保だけで設備費や工事費まですべての資金の融資を受けるのは無理でしょう。
だから、不動産クラファンで資金調達するのです。
プチ解説 担保とは?

銀行が無理だから不動産クラファンで!
蓄電池案件の例
不動産クラファンではどのような蓄電池案件があるのか、いくつか紹介します。
FUNDI、ヤマワケエステート
FUNDIとヤマワケエステートは土地の取得から蓄電池の導入、設置など、蓄電所の開発まで関与します。
- 土地を取得
- 蓄電所を開発
- 蓄電池事業の運営希望者に売却
らくたま
らくたまは土地の転売だけです。
蓄電所の開発などは行いません。
- 土地を取得
- 蓄電所開発業者に売却
CAPIMA
ソーシャルレンディングのCAPIMAにも蓄電池案件があります。
蓄電池開発業者の資産を担保に、開発資金を融資する案件です。

蓄電池案件ってどうなの?
蓄電池案件は不動産クラファンにふさわしいのか?
不動産クラファンの蓄電池案件ってどうなのか?
蓄電池事業の資金を不動産クラファンで調達することの是非を考えます。
リスクが高い
案件の内容が「蓄電所の開発まで」を含む場合、次の2点からリスクが高いです。
- 完成した蓄電所の買い手が限られる
- 売れなかった場合、残るのは蓄電池などの設備と安い土地だけ
蓄電所の土地代だけでなく、蓄電池などの設備費や工事費まで投資家から調達した。
それで蓄電所が売れなかった場合、まず間違いなく元本毀損になるでしょう。
プチ解説 元本毀損とは?
リスクを投資家に転嫁している
本来は参入する開発業者が「自社資金+補助金」で蓄電所を開発すべきです。
もしくは、不動産などの資産を担保に、銀行から融資を受けて開発するべきでしょう。
しかし、資金も資産もないので不動産クラファンで投資家から資金調達する。
それって、資金も資産もない開発業者の事業者リスクを投資家に転嫁しているということではないでしょうか?

投資家がリスクを負わされている…
蓄電池案件はソシャレンのほうが向いている
土地代5千万円と設備費他4億円で投資家から4.5億円を集めた。
それで完成した蓄電所が6億円で売れれば万々歳です。
でも売れなかった場合、残るのは行き場をなくした蓄電池と5千万円の土地だけ。
投資家に4.5億円を返すのは不可能でしょう。

元本毀損…
これがソーシャルレンディングであれば話は変わってきます。
開発業者の資産を担保に4.5億円を貸し、業者はその4.5億円で蓄電所を開発する。
蓄電所が売れなかった場合、担保を処分して投資家に4.5億円を返すことができます。
不動産クラファンよりソシャレンのほうが安全性は高まるはずです。
不動産クラファンの蓄電池案件はあっても良いが
とは言え、担保にする資産がないから不動産クラファンで資金調達するわけで。
これからも不動産クラファンで蓄電池案件は出てくるでしょう。
また、リスクテイクするからハイリターンが得られるわけで。
リスク承知で高利回りを狙う投資家向けの選択肢として、不動産クラファンの蓄電池案件はあっても良いと思います。
ただその場合でも、一切注意ゼロでというわけにはいきません。

何をすれば?
蓄電池案件の注意点
リスク対策は取られているか?
不動産クラファンの蓄電池案件では、蓄電所が売れないことが最大のリスクとなります。
そこで大切なのが、売れないというリスクへの対策が取られているかです。
FUNDIとヤマワケエステートの案件では、次のような対策が取られました。
- FUNDI
- 売買契約済み
- 買取保証
- ヤマワケエステート
- 売買契約済み
- 蓄電池設備に担保設定
リスク対策は有効に機能するか?
リスク対策が取られていればそれでOKというわけではありません。
その対策が有効に機能するかのチェックも必要です。
- 売買契約、買取保証は履行されるのか?
- 蓄電池設備の担保で元本は回収できるのか?
高利回り狙いで蓄電池案件に投資するのは選択肢としてあり。
ただし、リスク対策の有無とその有効性は必ず確認しましょう。
7年前の悲劇が再現か?
最後にこの記事の主題である、僕が蓄電池案件に感じる不安です。
蓄電池案件にただよう既視感
上述した蓄電池案件が増えている背景をまとめると次のようになります。
- 政府が系統用蓄電池を推進
- 系統用蓄電池が新たな投資対象に
- 参入業者が増加するも多額の資金が必要
- 不動産クラファンで資金調達
ソシャレン、不動産クラファンを長くやっているベテラン勢のみなさん、気づきますよね?
ソシャレンの再エネ案件と同じです。

どうゆうこと?
ソシャレン再エネ案件と同じ構図
2018年前後に多く募集されたソシャレンの再エネ案件は、今の蓄電池案件とまったく同じ構図です。
- 政府が太陽光など再エネ発電を推進
- 再エネ発電が新たな投資対象に
- 参入業者が増加するも多額の資金が必要
- ソシャレンで資金調達

一緒だ!
ソシャレン再エネでは良からぬ参入業者が紛れていました。
このため、グリーンインフラレンディングでは100億円を超える被害が発生。
クラウドバンクでは今も多くの案件が延滞中です。
蓄電池案件が第二のソシャレン再エネ案件に
蓄電池案件でも不動産クラファンを利用して資金調達しようと、良からぬ業者が紛れ込む可能性がゼロとは言えません。
例えば次のようなパターンが考えられます。
- クラファン業者が投資家から4.5億円を集める
- 5千万円で土地を取得
- 4億円で開発業者に蓄電所開発を委託
- 完成した蓄電所を開発業者が取得
- 運営希望会社に売却
こうすれば開発業者は投資家の資金で蓄電所を開発、販売できます。

投資家の資金を使って売却益をゲット。
これが最後まで上手くいけば、投資家も分配金を得られてハッピーですが。
経営能力の不足などで開発業者が途中で経営破綻した場合、元本毀損につながります。
これが現実化したのが7年前のソシャレン再エネ案件。
そして、蓄電池案件はまさに7年前の再エネ案件と同じ構図になっているのです。
警戒感を持って判断を
もし7年前と同じように良からぬ業者が紛れ込んできたら?
多くの投資家が百万円単位の被害に遭った悲劇が再現されるでしょう。
高利回りばかりに注目が集まる蓄電池案件ですが。
利回りに振り回されず警戒感を持って、業者と案件をしっかり見極める必要があるのではないでしょうか?

要注意です!
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