ソーシャルレンディングのOwnersBookで利回りが急上昇しています。
業界大手に何があったのか?
投資家への影響とあわせて考察します。
大幅に上昇です!
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タップできる目次
OwnersBookの利回りの変化
まず、OwnersBookの利回りがどれくらい上がったか事実を確認します。
今年3月から急上昇
これまでは4.5%前後
これまでOwnersBookの利回りは4.5%前後でした。
2024年も1~2月の平均は4.6%です。
上場系としては高めだよね。
プチ解説 上場企業系とは?
3月以降は5%台
利回りが急上昇したのは3月2つ目の案件として募集された恵比寿マンション案件です。
利回りはその前に募集された本所吾妻橋案件の4.7%を大きく上回る5.6%でした。
それ以降もずっと5%台が続き、平均利回りは3月が5.3%、4月は5.5%と上昇を続けています。(4月26日に出た2.2%の案件を除く、以下同)
プチ解説 案件とは?
異常な急上昇
3~4月の平均利回りは5.3%ですので、従来から1%近く上昇した形です。
期間 | 平均利回り |
---|---|
2022年 | 4.4% |
2023年 | 4.5% |
2024年1~2月 | 4.6% |
2024年3~4月 | 5.3% |
ソーシャルレンディング業者の利益率は一般に1~3%程度と言われています。
その中での1%近くのアップですので、明らかに異常な上昇です。
何があったの?
利回り急上昇の要因と背景
利回りの急上昇には様々な要因や背景があるはずです。
運用期間の長期化は要因ではない
長くする代わりに利回りアップ
利回りアップでまず考えられるのが、運用期間の長期化です。
一般に運用期間が長くなるほどリスクが上がるので、投資家は敬遠します。
そこで、利回りを上げることで投資家に訴求するということです。
長いけど儲かるよと。
運用期間は長期化していない
しかし、OwnersBookで運用期間は長期化していません。
平均運用期間はおおむね20~25カ月で、最近は以前よりむしろ短くなっています。
ですので、運用期間の長期化はOwnersBookの利回り急上昇の要因にはあたりません。
他に要因が?
抽選案件の応募減が要因か?
僕が注目したのは抽選案件での応募額の減少です。
プチ解説 抽選とは?
これまでは5-6億円
OwnersBookの募集には先着方式と抽選方式があります。
これまで、抽選方式では1回の募集で平均5~6億円の応募が集まっていました。
さすが人気業者。
2023年10月から急減
それが、2023年10月の渋谷戸建素地案件で、応募額が3億円を割りました。
さらに、続く2案件で2.5億円、2億円と続落したのです。
募集日 | 案件名 | 応募額 |
---|---|---|
2023年10月25日 | 渋谷戸建素地 | 2億9,634万円 |
2023年11月13日 | 世田谷マンション | 2億4,783万円 |
2023年12月13日 | 江東区マンション | 1億9,547万円 |
ただ、この3案件は運用期間が29~31カ月と長かったことが影響したのかもしれません。
事実、その後に募集された運用期間19カ月の戸塚区マンション案件では、応募額は4億円に戻っています。
その後も続く応募の急減
とは言え、江東区マンション案件の応募額1億9,547万円は、2020年10月以来、3年ぶりとなる2億円割れでした。
さらに、4億円に戻った戸塚区マンション案件以降は応募額が再び減少に。
2024年2月には2案件連続で応募が1億円台となったのです。
募集日 | 案件名 | 応募額 |
---|---|---|
2024年2月20日 | 練馬マンション | 1億5,074万円 |
2024年2月21日 | 世田谷戸建素地 | 1億3,679万円 |
しかも、応募額1億3,679万円の世田谷戸建素地案件の運用期間は、OwnersBookでは短めの19カ月でした。
2023年12月に募集された同じ19カ月の戸塚区マンション案件の3分の1しか応募が集まらなかったのです。
募集日 | 案件名 | 運用 | 利回り | 応募額 |
---|---|---|---|---|
2023年12月18日 | 戸塚区マンション | 19カ月 | 4.8% | 4億2,485万円 |
2024年2月21日 | 世田谷戸建素地 | 19カ月 | 4.7% | 1億3,679万円 |
一気に激落ち…
抽選倍率も急落
また、抽選倍率も急落しています。
2月の2億円割れ2案件では、いずれも抽選倍率が1倍台でした。
募集日 | 案件名 | 応募額 | 倍率 |
---|---|---|---|
2024年2月20日 | 練馬マンション | 1億5,074万円 | 1.8倍 |
2024年2月21日 | 世田谷戸建素地 | 1億3,679万円 | 1.6倍 |
OwnersBookの抽選案件で倍率が2倍を割ったのは2022年11月以来です。
しかも2022年11月のときは、2倍割れと言っても4億円の応募を集めています。
ここまで応募が集まらなくなり、さすがにマズイとなったのではないでしょうか?
他社の利回りアップが影響
応募が集まらなくなった背景として、ヤマワケショックの影響が少なからずあるでしょう。
ヤマワケエステートが高利回り案件を連発。
いくつかの業者が対抗で利回りをアップし、それらの業者に投資家の資金が回った結果、OwnersBookに流れる投資家の資金が減少。
かつては1回の募集で5~6億円の応募が集まっていたのに、ついには1億円台2連発となったのかもしれません。
あおりを食ったのかも…
中期経営計画も影響?
満了はしている
ただ、応募が減ったと言っても、これまですべての案件で募集した満額が集まっています。
他社は気にせず今までの利回りでマイペースを貫くという選択肢もあったでしょう。
それをしなかった背景には運営会社であるロードスターキャピタル社(以下、ロ社)の中期経営計画があるのかもしれません。
どんな計画?
プチ解説 満了とは?
今年は昨対倍増を計画
ロ社の2023年12月期の決算説明資料では中期経営計画の基本方針を次のように定めています。
コーポレートファンディング事業を経営基盤とし、アセットマネジメント事業とクラウドファンディング事業の規模拡大による企業価値向上を目指す。
そして、OwnersBookへの投資家の投資額について、2024年度は200億円を計画しているのです。
年度 | 実績/計画 |
---|---|
2022年 | 75億円 |
2023年 | 93億円 |
2024年 | 200億円 |
2024年は中期経営計画の最終年です。
計画実現のためには応募額の減少を放置できない。
他社への資金流出を食い止めるため、利回りアップに踏み切ったのではないでしょうか?
計画未達は避けたいと。
利回り急上昇の投資家への影響
OwnersBookの利回りの急上昇ですが、投資家への影響はあるのでしょうか?
OwnersBookの運営にダメージはない
利益を削ってはいない
まず、今般の利回りアップでOwnersBookは自社の利益を削っていないです。
OwnersBookの借り手への貸付金利は、大半の案件で利回りのマイナス0.1%です。
そして、今般の利回りアップに伴い、貸付金利もアップしています。
期間 | 利回り | 貸付金利 |
---|---|---|
2022年 | 4.4% | 4.3% |
2023年 | 4.5% | 4.4% |
2024年1~2月 | 4.6% | 4.5% |
2024年3~4月 | 5.4% | 5.3% |
つまり、OwnersBookが自社の利益を削って利回りを上げているのではないのです。
そうなんだ!
プチ解説 貸付金利とは?
想定外ではあるはず
とは言え、2021年12月期のロ社の決算説明資料では、OwnersBookの利回りは2.5~5.0%を目標としていました。
ですので、自社の利益を削ってはいないものの、5%オーバーの利回りは想定外ではあるでしょう。
投資家としてはうれしいけど。
借り手に変化はないか注意を
そうでしょうか?
僕は利回りアップで喜んでばかりはいられないと思います。
利回り1%アップとセットで、貸付金利も1%アップしている。
当然、借り手は困りますよね。
期間 | 利回り | 貸付金利 |
---|---|---|
2022年 | 4.4% | 4.3% |
2023年 | 4.5% | 4.4% |
2024年1~2月 | 4.6% | 4.5% |
2024年3~4月 | 5.4% | 5.3% |
借り手に過度の負担は生じていないか?
1%アップでも借りざるを得ない信用力の低い借り手に変わっていないか?
OwnersBookで投資する際は、借り手のチェックが今まで以上に重要になると思います。
ご注意を!
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