先日、VIFAが第1号案件の募集を行いました。
その際、投資対象物件から得られる賃料が非開示だったのです。
これは不動産クラウドファンディングの案件として不適切ではないでしょうか?
詳しく解説します。
投資家は怒るべきです!
取りもれているAmazonギフト券、ありませんか?
タップできる目次
VIFAの賃料非開示の詳細
VIFAとは
VIFAは今年の4月に運営を開始した不動産クラファン業者です。
運営会社 | レクストアセットマネジメント |
---|---|
運営開始 | 2024年4月 |
上場 | 非上場 |
利回り | 12% |
運用期間 | 3カ月 |
運営会社は大阪の不動産会社で、グループ全体でブランドバックなどの中古品や骨董品の買取、販売なども行っています。
近年は空き家再生事業などにも取り組んでおり、その流れで不動産クラファンに参入したようです。
プチ解説 業者とは?
プチ解説 利回りとは?
プチ解説 運用期間とは?
第1号案件で賃料を非開示
第1号案件の概要
そのVIFAが5月に第1号案件の募集を行いました。
案件の概要は以下の通りです。
- 利回り:12%
- 運用期間:3カ月
- 募集額:900万円
- 劣後出資比率:48.9%
- 募集方式:抽選
- 募集期間:5月30日10時~6月17日18時
投資対象は大阪府松原市の区分マンション。
賃料を分配原資とするインカムゲイン型の案件でした。
典型的なデビュー案件だね。
プチ解説 案件とは?
プチ解説 劣後出資比率とは?
プチ解説 抽選方式とは?
プチ解説 区分マンションとは?
プチ解説 分配とは?
プチ解説 分配原資とは?
プチ解説 インカムゲイン型とは?
プチ解説 デビュー案件とは?
サイトで賃料を開示せず
この案件には1つ非常に大きな問題があったと考えます。
それは賃料が開示されなかったことです。
VIFAサイトの案件詳細ページに記載があるのは、投資対象物件の名称や住所などだけ。
収支計画はおろか、毎月の家賃がいくらかすら書かれていなかったのです。
成立前書面には?
プチ解説 成立前書面とは?
成立前書面には「非開示」と
サイトに書いていない業者でも成立前書面には書いているものです。
しかし、VIFAの成立前書面には賃借人が同意しなかったため賃料は非開示と。
家賃が分からない…
収支不明の状態で投資判断を迫る
今回の案件はインカムゲイン型です。
賃料から得られる収益で投資家は分配金を得ます。
それゆえ、賃料が分からない状態では分配の可否を判断できません。
自分が投資する物件で、家賃が月々いくら入ってくるか分からない。
投資家は収支不明の状態で投資判断を迫られたのです。
判断のしようがないよね。
僕はこれまでの6年間で数百枚の成立前書面を見てきました。
記憶にある限り、賃料非開示は初めてです。
前代未聞です!
賃料非開示は不適切
今回のVIFAの賃料非開示について、問題点が3つあると考えます。
1つ目は不動産クラファンの案件として賃料非開示は不適切であることです。
非開示は違法ではない
さきに断っておくと、非開示とすることは違法ではありません。
成立前書面に記載する事項を定めているのは、不動産特定共同事業法施行規則43条1項です。
賃料については同項19号のイで次のように定められています。(一部略)
テナントの総数、全賃料収入、全賃貸面積、全賃貸可能面積及び直前五年の稼働率の推移
書かなきゃダメじゃん。
プチ解説 不動産特定共同事業とは?
ところが、19号の最後には次の一文があります。
(やむを得ない事情により開示できない場合にあってはその旨)
すなわち、やむを得ない事情を示せば開示しなくて良いということです。
VIFAは成立前書面で「やむを得ない事情」を明確に示しています。
よって、今回の成立前書面で賃料を非開示としたのは合法です。
じゃぁ、非開示で良いの?
非開示は法の趣旨に反する
良くないです。
大臣が定める施行規則は、内閣が定める施行令や国会が定める法律よりも下位の法令です。
- 不動産特定共同事業法
- 不動産特定共同事業法施行令
- 不動産特定共同事業法施行規則
(以下、不動産特定共同事業法を不特法と略します。)
よって、不特法施行規則は不特法の内容や趣旨を踏まえたものでなければなりません。
では、そもそも不特法とは何のための法律なのか?
その目的は不特法第1条に書かれています。
この法律は、不動産特定共同事業を営む者について許可等の制度を実施して、その業務の遂行に当たっての責務等を明らかにし、及び事業参加者が受けることのある損害を防止するため必要な措置を講ずることにより、その業務の適正な運営を確保し、もって事業参加者の利益の保護を図るとともに、不動産特定共同事業の健全な発達に寄与することを目的とする。
事業参加者、つまり投資家と業者の利益を保護することが目的。
その目的を達成する手段として、事業参加者の損害を防ぐための措置を講ずる。
その具体的措置の一つが不特法24条1項が定める成立前書面です。
不動産特定共同事業者は、不動産特定共同事業契約が成立するまでの間に、その申込者に対し、不動産特定共同事業契約の内容及びその履行に関する事項であって主務省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。
そして、その「主務省令で定めるもの」というのが、不特法施行規則43条1項の各号で定める事項なのです。
法第二十四条第一項の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
ここまでをまとめると、
- 不特法の目的は事業参加者の利益保護
- それを実現するために損害防止措置を講ずる
- その措置の一つが成立前書面
- その書面に書かないといけないのが賃料
つまり、事業参加者、ここでは投資家の利益を保護し、損害を防止するために、賃料の開示が必要なのです。
賃料が非開示だと収支が黒字になるか判断できない。
投資家の利益を保護し、損害を防止することができず、不特法1条に反することになる。
軽々しく非開示にして良いものではありません。
やむを得ない事情を書けば良いってものではないです!
非開示はやむを得なかったのか?
今回の件が問題だと思う2つ目は、非開示はやむを得なかったのかです。
面積は開示している
さきほど述べた通り、非開示は抑制的であるべきであり、やむを得ない場合に限られるべきです。
では、今回は本当にやむを得なかったのか?
そこで疑問に思うのが、物件の面積は開示していることです。
そうなの?
成立前書面の9ページでは賃借人不同意により、面積は非開示となっています。
ところが、同5ページでは「床面積65.25㎡」と明記されているのです。
また、VIFAサイトでも「床面積65.25㎡」と記載があります。
ほんとだ!
やむを得ず非開示だったのか?
賃借人は開示に同意しなかったのに、うっかりミスで書いてしまったのであれば、それはそれで問題ですが。
面積がOKであるのならば、賃料もOKにしてもらえなかったのでしょうか?
頼み込んだけどどうしてもOKがもらえず、泣く泣くやむなく非開示にしたのか?
VIFAがどこまで真剣に開示しようとしたかには疑問が残ります。
本当にやむを得なかったのか。
投資対象として不適切
問題点の3つ目は、今回の物件が投資対象として適切であったかです。
賃料非開示の物件を投資対象として良いのか
家賃がいくら入り、経費でいくら出ていき、結果いくら儲かる。
それが分からないと投資の是非は判断できません。
賃料が分からず適切な投資判断ができないような物件を投資対象として良いのでしょうか?
別の物件で案件を作るべきだった
賃料を開示できない物件は投資対象として不適切です。
VIFAは別の物件で案件を作るべきだったと考えます。
賃料の分からない物件で投資したくないよね。
今回限りにしてほしい
今回のVIFAの賃料非開示は違法ではありません。
しかし、賃料非開示は不特法の趣旨に反しますし、そのような物件は投資対象として明らかに不適切です。
また、他の業者で賃料非開示なんてことをしているところはありません。
こんなことを繰り返されると、まっとうにやっている業者の信用にも関わりかねない。
このような案件が二度と出ないことを祈ります。
今回限りで!
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