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TSONの2024年6月期決算を深堀り!業績回復は本当か?

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TSON FUNDINGを運営するTSONの2024年6月期決算が公表されました。

営業利益、当期純利益が前年比で大幅増。

クラファン投資家の間ではTSON FUNDINGに対する楽観ムードが広がっています。

 

しかし、こういう時こそポジティブな情報だけではなく、ネガティブな情報も知り、総合的に判断すべきです。

そこで本記事では今回公表された決算への疑問点、問題点を指摘します。

タロウさん
タロウさん

プラマイ両面から判断を!

 

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この記事の著者
投資家・ブロガー
タロウ

ソーシャルレンディング、不動産クラウドファディング専門の投資家です。
2018年にソシャレン・クラファン投資を始め、これまで400件を超える案件に2億2千万円以上を投資し損失ゼロ。
安全性を最重視した投資情報を発信しています。

「決算情報のお知らせ」メールについて

「決算情報のお知らせ」メールについてのタイトル画像

10月10日にTSON FUNDINGから「決算情報のお知らせ」というメールが届きました。

このメールの内容からです。

 

営業利益アピールに異議あり

メールでは営業利益、当期純利益が前年比で大幅増であることが強調されています。

TSONの2024年6月期決算

 

これについて、まず営業利益の増加をアピールすることには異議を唱えざるを得ません。

 

営業利益で評価するのはおかしい

一般に営業利益は本業の儲けを示します。

では、TSONではどうなのか?

TSONのビジネスモデルは次のようなものです。

  1. TSON FUNDINGで資金を調達する
  2. 調達した資金で物件を開発する
  3. 売却して利益を上げる

 

TSON FUNDINGは本業を構成する主要要素といえます。

それを理解した上でTSONの損益計算書を見ると、奇妙なことに気づくでしょう。(単位:千円)

科目 金額
売上高 4,124,929
売上原価 3,356,453
売上総利益 768,475
販売費及び一般管理費 649,310
営業利益 119,164
営業外収益
 受取利息 7
 受取配当金 8,516
 出資金評価益 4,950
 雑収入 8,018 21,493
営業外費用
 支払利息 19,348
 社債利息 678
 不動産特定共同事業分配金 129,130 149,157
経常損失 8,499
特別利益
 債務免除益 57,700 57,700
税引前当期純利益 49,201
法人税、住民税及び事業税 4,899
法人税等調整額 ▲13,061 ▲8,162
当期純利益 57,363

 

ブルーのところ。

TSON FUNDINGの分配金が営業外費用に振り分けられているのです。

左野くん
左野くん

それがどしたの?

 

経常利益で評価すべき

TSON FUNDINGが本業を構成している以上、分配金は本業にかかるコストと見なせます。

しかし、TSONの営業利益は分配金が引かれる前のものです。

分配金という本業にかかるコストが反映されていない営業利益で、TSONの本業の業績を判断するのは妥当でしょうか?

TSONの場合、営業利益が本業の儲けを表しているとは言えません。

分配金を引いたあとの経常利益で評価すべきです。

 

経常利益は赤字

では、その経常利益はどうかと言うと、8,499千円の赤字です。(下表の単位は百万円、以下同)

年度 2020 2021 2022 2023 2024
経常利益 34 138 20 ▲30 ▲8

 

赤字幅は縮小したものの、経常赤字が2期続いています。

つまり、TSONは本業では儲かっていません。

百歩譲ってもメールに書かれているような大幅に儲かっている状態とは言えないのではないでしょうか?

右田さん
右田さん

赤字だもんね。

 

当期純利益は倍増していない

次に当期純利益です。

「前年比+219.6%」としていますが、これは3つの点で誤解を招く表現だと考えます。

TSONの2024年6月期決算

 

前年比を出すこと自体がおかしい

まず、前年比を出すこと自体がおかしいです。

2023年の当期純利益は▲48百万円、つまり赤字でした。

年度 2020 2021 2022 2023 2024
純利益 23 90 16 ▲48 57

 

これが2024年は57百万円の黒字になったわけですが。

黒字転換の場合、プラス何%という表示はしないのが普通です。

 

219.6%は謎の計算

次に219.6%の根拠ですが、次のような計算をしています。

  • (昨年の純損失+今年の純利益)÷昨年の純損失
  • (47,954+57,363)÷47,954=219.6%
左野くん
左野くん

なんか違和感が。

 

図にすると違和感の正体が分かるでしょう。

説明図

「昨年の赤字」と比較して、「昨年の赤字+今年の黒字」が2.19倍という謎解釈。

今年の純利益が昨年の純利益の2.19倍になったわけではないのです。

右田さん
右田さん

そもそも去年は赤字だし。

 

「+」219.6%もおかしい

さらに言うと「+」219.6%もおかしいです。

次の2つは意味が違います。

  • 前年比200%
  • 前年比+200%

前者は前年の200%になった、つまり前年の2倍です。

これに対し、後者は前年に前年の200%がプラスされた、つまり前年の3倍です。

 

営業利益については、前年の65百万円に、その82.7%が上乗せされ、119百万円なので正しく表現されています。

年度 2020 2021 2022 2023 2024
営業利益 37 151 61 65 119
  • 65×82.7%=54
  • 65+54=119

TSONの2024年6月期決算

 

しかし、当期純利益についてはさきほど見た通り、219.6%になっただけであり、219.6%が上乗せされたわけではありません。

「前年比+219.6%」は純利益が前年の3倍に増えたと誤解させる表現です。

タロウさん
タロウさん

明らかな間違いです!

 

今年の最終黒字は本業の成果ではない

もう一つ大きな問題があります。

それは、今年の最終黒字は本業の成果ではないことです。

 

確かに当期純利益は57,363千円の黒字になっています。

しかし経常利益は8,499千円の赤字です。

なぜ経常の赤字が最終で黒字になったのか?

その答えは損益計算書にあります。

科目 金額
売上高 4,124,929
売上原価 3,356,453
売上総利益 768,475
販売費及び一般管理費 649,310
営業利益 119,164
営業外収益
 受取利息 7
 受取配当金 8,516
 出資金評価益 4,950
 雑収入 8,018 21,493
営業外費用
 支払利息 19,348
 社債利息 678
 不動産特定共同事業分配金 129,130 149,157
経常損失 8,499
特別利益
 債務免除益 57,700 57,700
税引前当期純利益 49,201
法人税、住民税及び事業税 4,899
法人税等調整額 ▲13,061 ▲8,162
当期純利益 57,363

 

特別利益として債務免除益57,700千円を計上したため、最終黒字になったのです。

左野くん
左野くん

債務免除益?

 

債務免除益とは債権者が債権を放棄することで発生する利益です。

例えば、経営支援のために銀行が融資をチャラにしてくれた場合がこれにあたります。

右田さん
右田さん

借金をなかったことにしてくれたみたいな。

 

TSONの債務免除益の具体的な内容は分かりませんが。

確実に言えるのは、本業の成果で黒字になったわけではないことです。

当期純利益がこんなに出たよ!とアピールできる決算内容ではないと考えます。

TSONの2024年6月期決算

 

経営改善は進んでいるのか?

先日のメールには「経営改善により」と書かれていました。

経営改善は進んでいるのか、過去5年の売上高などを見てみましょう。

 

TSON FUNDINGが赤字を出している

下表は過去5年の売上高などをまとめたものです。(百万円)

確かに2020年比で2024年は売上高が2.4倍、営業利益が3.2倍と大きく成長しています。

しかし、TSONで本業の儲けを示す経常利益は2期連続の赤字

その大きな要因はTSON FUNDINGの分配金です。

年度 2020 2021 2022 2023 2024
売上高 1,697 2,344 3,566 4,708 4,125
売上原価 1,388 1,884 2,901 3,951 3,356
売上総利益 310 460 665 758 768
販管費 273 309 604 693 649
営業利益 37 151 61 65 119
営業外収益 4 8 4 18 21
営業外費用 7 22 45 113 149
内、分配金 - 17 42 101 129
経常利益 34 138 20 ▲30 ▲8
純利益 23 90 16 ▲48 57

 

下から3行目を見てください。

2024年の場合、営業外費用149百万円の内、9割弱の129百万円が分配金でした。

これが営業利益を食いつぶし、経常利益で赤字となっているのです。

右田さん
右田さん

分配金で赤字に…

 

分配金を減らせるか?

経常黒字にするには分配金を減らす必要があります。

ただ、TSON FUNDINGは現在の利回り5.5~6.0%でも応募が多数集まっているとは言えません。

その上、最近の不動産クラファンは利回り水準が高騰しつつあります。

ヤマワケエステートの松戸案件のイメージ画像

 

利回りを下げると応募=TSONの事業資金が集まらなくなる。

かと言って、利回りを上げると経常利益が出ない。

TSON経営陣にとっては頭の痛い状況でしょう。

 

経営改善が進んでいるようには見えない

それと「経営改善により」について。

下表は売上原価などの対売上高比率です。

年度 2020 2021 2022 2023 2024
売上原価率 82% 80% 81% 84% 81%
販管費率 16% 13% 17% 15% 16%
営業利益率 2% 6% 2% 1% 3%
経常利益率 2% 6% 1% - -
純利益率 1% 4% 0% - 1%

 

見ての通り、2024年は前年比で売上原価率が3%ダウン、営業利益率は2%アップしています。

しかし、過去5年を通して見ると、2021年を別として大きな変化はありません。

経営改善は道半ばではないでしょうか。

左野くん
左野くん

これからに期待。

決算説明資料について

決算説明資料についてのタイトル画像

TSONからは決算説明資料も公開されています。

僕は不動産クラファン各社のデータを日々収集している変質者でして。笑

何点かツッコミます。

 

リーディングカンパニーは盛りすぎ

決算説明資料ではTSON FUNDINGを次のように称しています。

不動産特定共同事業者のリーディングカンパニー

 

その根拠として募集額が100億円以上としているのですが。

100億超えならTSON FUNDING以外にもCREAL(618億円)、ヤマワケエステート(311億円)、TECROWD(182億円)など、上には上がいます。

TSONの決算説明資料1

 

また、100億超えの中でも案件数が圧倒的No.1と書いていますが。

これは累計です。

累計なら2020年からやっているTSON FUNDINGが有利になるのは当然のこと。

昨年10月から今年9月までの直近1年間で見ると、募集案件数はTSON FUNDINGが58件に対して、ヤマワケエステートは139件です。

右田さん
右田さん

半分以下じゃん。

 

まだソーシャルレンディングが全盛だった2018年からFANTAS fundingとともに業界を開拓し、道なき道を切り開いてきたCREALがリーディングカンパニーを名乗るのなら分かりますが。

TSON FUNDINGがリーディングカンパニーとは、さすがに盛りすぎです。

 

案件数はNo.1ではない

累計の案件数は204件でNo.1としていますが、これにも異議があります。

TSONの決算説明資料2

 

まず、204件はTSONがTSON FUNDINGとは別にやっている書類ベースで契約する案件を含めたものです。

しかし、不動産クラファンはインターネット上で契約を完結するものを指します。

書類ベースを除くとTSON FUNDINGの累計案件数は9月末時点で151件です。

さきほどのページでは「不動産クラファン業界で」と書いておきながら、こちらのページでは不動産クラファン以外もカウントするのはダブスタです。

 

百歩譲って書類ベースを含めても、累計案件数No.1はFANTAS fundingの244件です。

ではなぜTSON FUNDINGをNo.1としているかと言うと、さきほどの画像の右下に小さい文字でこう書いてあるからです。

※ 100億円以上の不動産クラウドファンディング運用事業者

 

FANTAS fundingは累計43億円ですので、100億円以上には属しません。

だから、100億円以上ならTSONがNo.1だよと。

自社に都合が良い条件をつけてNo.1と言われてもですね。

 

ちなみにTSON FUNDINGはサイトトップページで案件数などがNo.1としています。

TSON FUNDINGのサイトトップページ

こちらも小さな文字で注釈が。

中部地方に本社がある不動産特定共同事業者

 

そんなこと言いだしたら、KORYO Fundingは茨城県No.1ですし、ジョイントアルファは5年連続の四国No.1です。

左野くん
左野くん

わかちあいは滋賀県No.1

 

数字を正しく見よう

以上、TSONの決算などについて見てきました。

 

会社員をやったことがある方なら分かるでしょうが、企業は見てほしい数字を見てほしい形で出します

それは民間企業として当然のことです。

僕自身、サラリーマン時代はそうしていましたし、みなさんもそうでしょう。

そうである以上、数字を受け取る側はその前提で数字を受け取り、対処する必要があります。

 

その数字の実態は何なのか?

出されていない数字はなぜ出されていないのか?

それらの数字の裏に何があるのか?

 

企業が出してきた数字をそのまま見ていては、正しい判断はできません。

出されていないものも含めて数字を正しく見て、正しく判断しましょう。

 

なお、今回の記事はネガティブな面のみを取り上げています。

決算説明資料にはポジティブな情報も出ていますので、そちらも見た上で総合的に判断することをおすすめします。

タロウさん
タロウさん

以上です!

 

コメント

  1. 通りすがり より:

    盛る体質をしきりに述べておいて、ポジティブな情報も出ています、とは、一体どう解釈せよと?

    • タロウ タロウ より:

      盛っている部分があるのも事実、ポジティブな情報が出ているのも事実です。
      それをどう解釈するかは人それぞれじゃないですか。
      ご自由にどうぞ。笑

  2. Jaco より:

    私も同じく、グリフラで大きな損失を出して以降、投資する前に各社の決算を記録し業績と財務状況を確認しています。読み方はよくわかりませんが、利益と財務状況の変化だけでも確かめています。各社とも利益は出していますが、自己資本比率とか流動負債比率は一様に悪化しています。これはいいな、と思えるのはほんの数社で、これに限ってしまうと投資の機会がほとんどなくなってしまいます。悩ましいところです。ちなみにTSONは昨年の償還以降撤退です。
     いつも記事、参考にさせていただいています。これからも、すばらしい切り口の記事楽しみにしています。

    • タロウ タロウ より:

      こんにちは~
      僕もソシャレンを始めた4日後にグリフラ事件が勃発したのがトラウマになってまして。
      自己資本比率、流動比率、固定比率、負債比率は必ずチェックしてます。
      あと、それの変化。この業者、この2年で財務良くなりつつあるなぁ、みたいな。
      やっぱりどの業者を選ぶかが最重点ですよね。

  3. うさ より:

    こんにちはー
    今回もよきご解説ありがとうございます!
    やっぱりいいことばかりやたらアピル人とか企業は要注意ですねー笑
    しっかり違う側面も見る必要があることを再確認させていただきました。
    TSONは上場廃止以降様子見てましたが、こういう体質の企業だと撤退しようと自分も思いました。

    • タロウ タロウ より:

      こんにちは~
      企業ですからアピールしないとしょうがない面はありますけどね。そのアピールの仕方次第かなと。
      なお、今回取り上げたのはあくまでもネガティブな点ですので。TSONの体質がそうだと全面的に決めつけているわけではないですので、その点はご留意を。