ソーシャルレンディングの借り手企業の匿名化問題。
業界最大手のSBIソーシャルレンディングがついに匿名化を解除しました。
もちろん、匿名化解除自体は良いことです。
ただ、匿名化解除の本来の意義から考えた場合、疑問が残ります。
良い方向なのですが、手放しでは喜べない内容です!
タップできる目次
SBIソーシャルレンディング匿名化解除第1号案件
SBISLの記念すべき匿名化解除第1号案件はこちらです。
不動産ディベロッパーズローンファンド14号
募集案件の概要は以下の通りです。
- 募集総額:16億3,500万円
- 利回り:7.0%
- 運用期間:24ヶ月
事業の概要は以下の通りです。
- 借り手が募集した資金を用いて
- 横浜市内にビジネスホテルを建設し
- 借り換えor売却を行い
- 元利金を支払う
オーバーローンやん!
横浜のビジネスホテルなら硬いよねと思って詳細を見たのですが。
担保を見てビックリです。
- 建設予定地(担保評価額7億5,200万円)
- 建設予定のホテルの建物
- 借り手の出資持分
土地担保が募集額(借入額)の半分もありません。
それを補うのが建設予定のホテルの建物ということなのでしょうが。
建つか建たんか分からんホテルを担保に金を貸せるかいな!
タロウさんは究極の小心者だからね。笑
銀行は貸してない?
また、土地の面積やホテルの階数から推測すると、建設費が7~8億円くらいかかるように思います。(専門外なので根拠は薄いです。)
もしそうだとすると、
- 土地代(=担保評価額):7億5,200万円
- 建設費:7~8億円
- 募集額:16億3,500万円
ほぼ全額をSBIソーシャルレンディングから借り入れることになります。
それはつまり、銀行が貸してくれない案件ということですよね?
しかも運用期間は24ヶ月。怖いので僕はパスしました。
銀行が貸さない相手に24ヶ月というのは、確かに盤石の安全とは言いにくいよね。
SBIソーシャルレンディングの匿名解除の実情
さて、ここからが本題です。
SBIソーシャルレンディング初の匿名解除の内容を見てみます。
主な開示項目
会員限定情報ですので内容を絞りますが、借り手について次のような項目が情報開示されています。
- 名称
- 所在地
- 業種
- 事業内容
- 設立時期
- 財務状況
- 担保物件の所在地(町名まで)
- 土地面積
- 建設予定ホテルの構造
- 部屋数
- その他
今までろくに情報を出してこなかったSBIソーシャルレンディングがここまで情報を出したこと自体は、前向きに評価されるべきと思います。
今までのSBIと比べると、かなり情報を出してきたね!
借り手企業はSPC
しかし、借り手企業についての情報を見てみると、
- 借り手企業は合同会社
- 総資産1万円
- 設立から昨年度まで未稼働
これ、どこからどう見てもSPC(特別目的会社)じゃないですか!
ナンチャッテ匿名化解除
みなさん、どうですか?
SPCの名称が明記されて、それで借り手企業が開示された、と感じますか?
こんなの借り手企業の匿名化解除でも何でもないですよ。
ぶっちゃけ予想通りでしたが、やっぱりガッカリです!
匿名化解除の本来の意義
借り手企業の匿名化解除の本来の意義は、投資家が安心できることです。
百歩譲って、その情報を基に投資家が投資の是非を判断できることです。
例えば、匿名化解除に真っ先に動いたFundsでいうと、実質的な借り手が東証一部のアイフルだから安心して投資できる。
もしくは、東証二部のデュアルタップだってことで、同社についていろいろ調べて投資判断をする。
これが本来の匿名化解除の意義です。
SPCのホニャラカ合同会社ですよと言われて、どうやって安心し、何を調べろというのでしょうか?(調べること自体は可能ですが。)
SPCはペーパーカンパニーに過ぎないもんね。
親会社が分からないと意味がない
SPCはあくまでも名目上の借り手に過ぎず、実質的な借り手はSPCの親会社です。
その親会社が清水建設や東横インだったら、安心するなり調べたりできます。
でも、親会社が横浜市内のスーパーで、新規事業として参入するビジネスホテルの第1号案件だったらどうですか?
安心どころか絶望的に不安じゃないですか。
親が分からないSPCって、こんなの借り手企業の匿名化解除とは言えません。
SBIソーシャルレンディングにもデメリット
これって投資家にとってメリットがゼロであるだけでなく、SBISLにとってデメリットがあると思います。
投資家みんながみんな、きっちり内容を読んで調べるわけではありません。
SBISLが匿名化解除と聞いて、さすが王者SBI、これで安心して投資できる!
そうやって案件の内容を見ずに投資する投資家が必ず増えます。
そんな投資家が増えることが、果たして長期的にSBISLと業界のプラスになるのでしょうか?
メクラ投資家が増えることはソシャレン業界にとってマイナスだと僕は思います。
一律的な匿名化解除には反対
すべての借り手を匿名化解除すべきではない
以前から申し上げている通り、僕は一律的な匿名化解除には反対です。
ソーシャルレンディング業者にとって、借り手企業は投資家と同等に大切なお客様です。
投資家の要望だけ聞き入れて、借り手企業の要望を切り捨てるのはアンフェアです。
企業名を開示したくないという借り手企業の要望にも応えるべきです。
開示度合いに応じて利回りを変えれば良い
その上で、情報の開示量に応じて利回りに差を付ければ良いのではないでしょうか。
以前の記事で書きましたが、例えばこんな感じです。
情報項目 | 案件A | 案件B | 案件C |
---|---|---|---|
企業名 | □○不動産 | △◇建設 | 非開示 |
売上高 | 234億円 | 345億円 | 75億円 |
経常利益 | 21億円 | 非開示 | 非開示 |
延滞率 | 0% | 0% | 非開示 |
自己資本比率 | 42% | 非開示 | 非開示 |
利回り | 4% | 6% | 8% |
そして、どの案件に投資するかは投資家が自ら判断し責任を負う。
判断と自己責任を問われる中で、投資家も鍛えられ業界全体の健全な発展につながると僕は考えます。
情報開示で低利回り、非開示で高利回り、どちらに投資するか投資家が判断するってことです!
SPCの名称開示は匿名化解除ではない
SBIソーシャルレンディングは開示第2号の不動産Neo(旧不動産Plus)案件では借り手企業名を明示しています。
ですので、決してSBISLの匿名化解除を全否定しているのではありません。
ただ、SPCの名称を開示して、これで匿名化解除しましたよっていうのは、それはちょっと違うのではないか。
SPCの名称開示が匿名化解除と同等に扱われ、SPCの名称を開示した業者が必要以上にポジティブに評価されることに違和感を覚えます。
開示の案件もあれば非開示の案件もある。それが普通で投資家が選べば良いだけの問題では?
コメント