SAMURAIが債権をサービサーに勝手に売却できないことを定めた「サービサー売却過半数合意ルール」。
投資家保護のためにSAMURAIが自主的に定めていたルールでした。
これがいつの間にか廃止されていました!
そして、SAMURAI FUNDにも廃止が継承されています。
この問題について詳しく解説します。
SAMURAI投資家は要チェックです!
タップできる目次
サービサーへの債権譲渡問題
まず最初に詳しい事情をご存じない方のために、ソーシャルレンディング業者によるサービサーへの債権譲渡問題を説明します。
ご存じの方が多いと思うので、見出しを見ながら流し読みしてください!
ソーシャルレンディングでの貸し倒れ
ソーシャルレンディングは貸金業ですので、貸し倒れは一定の割合で発生します。
良い悪いではなく、それが貸金業という商売です。
例えば、以下のような案件で借り手が返済できなくなったとします。
- 募集額:1億円
- 担保:評価額1億5千万円の川崎市の土地
- 保証:なし
この場合、まずは担保の土地の売却を試みます。
そして、売れなかった場合に登場するのが債権回収会社(サービサー)です。
サービサーって何をするの?
サービサーへの債権譲渡
サービサーは債権者(ソシャレン業者)に代わって債権回収業務を行います。
また、債権者がサービサーに債権を譲渡する場合もあります。
例えばさきほどの例で、ソシャレン業者が1億円の債権をサービサーに7千万円で譲渡します。
その結果、この案件に投資した人は7掛けで元本を返してもらえることになります。
そして、サービサーは借り手から8千万円を回収し、1千万円を儲けるって感じです。
債権者の手に負えない債権を安く買い取って自分で回収するわけか。
サービサーへの債権譲渡自体は問題ない
サービサーへの債権譲渡自体は問題ありません。
ソシャレン業者の独力では1円も取り戻せないかもしれない。
ならば、7掛けでもお金が戻ってきた方が良いですよね。
それでサービサーが1千万円儲けるのは、彼らのノウハウと労力の対価です。
世の中にはそういうご商売があって、必要とされるシーンがあるってことです!
サービサーへの問題がある債権譲渡
しかし、中には問題があると指摘せざるを得ない債権譲渡もあります。
その最たるものが「みんなのクレジット(以下、みんクレ)」による債権譲渡です。
みんクレは2019年2月に、31億円の債権をサービサーに譲渡しました。
その譲渡額、なんと9,660万円。簿価のわすか3%での譲渡です。
その結果、投資家には出資したお金の3%しか戻ってきませんでした。
面倒になってサッサと幕引きを図ったと指弾されても仕方がない事例でした。
これがサービサーへの債権譲渡問題です!
サービサー売却過半数合意ルールの制定
さて、ここからが本題です。
債権譲渡問題へのSAMURAIの対応
みんクレによる債権譲渡問題に、ソーシャルレンディング業者で唯一対応策を出したのがSAMURAIでした。
2018年12月7日、SAMURAIは自社サイトで「匿名組合契約及び契約締結前交付書面の文言の追加のお知らせ」を発表しました。
その中でSAMURAIは次のように指摘しました。
昨今貸付型クラウドファンディング業界において、営業者の判断で貸付債権を簿価に対してかなり低い価格で譲渡を実行するというケースが多々見られるように聞いており、貸付型クラウドファンディングにおいては、貸付債権の譲渡について一定の規律が必要であると考えております。
みんクレのように投資家に不当な損失を負わせることを防ぐために、なんらかのルールが必要である。
そしてSAMURAIが導入したのが「サービサー売却過半数合意ルール」です。
どんなルールなの?
サービサー売却過半数合意ルールとは?
「サービサー売却過半数合意ルール」(以下、過半数ルール)は僕が勝手に付けた名前です。
その内容は次のようなものです。
- SAMURAIが債権を
- 簿価の80%未満でサービサーに売却する場合
- 出資額ベースで50%を超える投資家の同意を必要とする
例えば、こんな感じです。
- 募集額=借り手への貸付額=債権の簿価=1億円の案件で
- 債権を7,900万円でサービサーに売却する場合
- 出資額ベースで5千万1円以上の投資家の合意が必要
5千万円以下の投資家の合意しか得られなかった場合は、債権を売却できないということです。
債権を8掛け未満でサービサーに売却するには過半数の投資家の合意が必要。
SAMURAIはこの過半数ルールで、みんクレのような問題の発生の防止を図りました。
ソシャレン業者の都合で好き勝手にサービサーに売れないってことね!
匿名組合契約に組合員の意思を反映させる画期的な取り組みでした!
過半数ルールの契約書などへの反映
そして、この過半数ルールはSAMURAIの契約書などへ次のように反映されました。(注釈など一部省略)
契約書を読むの面倒なんだけど。
面倒でしょうが、あとで関係してくるので太字部分だけでも読んでください。
匿名組合契約書
第7条の3
前項にかかわらず、営業者が本事業に係る営業者の貸付先に対する貸付債権を当該貸付債権の簿価の80%未満の価格で債権回収会社に売却しようとするときは、予め本匿名組合員及び他の匿名組合員に対し、当該売却についての同意するか否かを確認するものとし、(1)同意した他の匿名組合員からの出資に係る営業者出資金の残高及び(2)本匿名組合員が同意したときは本出資金残高の合計額が、出資金合計残高の50%を超える場合に限り、当該売却を行うことができるものとする。(出典:前掲文書)
契約締結前交付書面
二.【本事業に関する指図】
営業者が本事業に係る営業者の貸付先に対する貸付債権を当該貸付債権の簿価の80%未満の価格で債権回収会社(サービサー)に売却しようとするときは、予め各出資者に対し、当該売却についての同意するか否かを確認し、同意した出資者の出資金残高の合計額が全出資者の出資金残高の50%を超えた場合に限り、売却できるものとされています(出典:前掲文書)
過半数の同意が必要と規定
どちらも同じ内容です。
- 簿価の80%未満でサービサーに売却する場合は
- 出資額ベースで過半数の投資家の同意が必要
ここまで、過半数ルールについてでした!
サービサー売却過半数合意ルールの廃止
このSAMURAIの過半数ルール。
なんと、知らない間に廃止されていました!(僕だけ?)
過半数ルール廃止での変更内容
2019年7月30日に募集が行われたSAF不動産ローンファンド15号より、過半数ルールが事実上廃止されました。
具体的には契約書などの内容が次のように変更されました。
匿名組合契約書
第7条の3
前項にかかわらず、営業者が本事業に係る営業者の貸付先に対する貸付債権を当該貸付債権の簿価の80%未満の価格で債権回収会社に売却しようとするときは、予め本匿名組合員及び他の匿名組合員に対し、当該売却についての意向の確認を行うものとする。ただし、営業者は本匿名組合員及び他の匿名組合員の意見に拘束はされない。(出典:SAMURAI匿名組合契約書PDF)
契約締結前交付書面
二.【本事業に関する指図】
営業者が本事業に係る営業者の貸付先に対する貸付債権を当該貸付債 権の簿価の80%未満の価格で債権回収会社(サービサー)に売却しようとするときは、予め各出資者に対し、当該売却についての意向確認を行います。但し、 営業者は当該出資者の意見に拘束されません。(出典:SAMURAI契約締結前書面PDF)
なんかヤバい方向に変わったような気が…
変更内容のポイント
契約書などの変更内容のポイントは上掲2カ所の赤字の部分です。
1.「同意の確認」から「意向の確認」へ
まず、投資家からか確認する対象が変更されています。
- 変更前:売却に同意するか否かを確認する
- 変更後:売却についての意向を確認する
変更前は「売却にイエスかノーか」の確認でした。
それが変更後は「売却についてどう思いますか?」みたいな確認に変わっています。
それって聞いても意味なくない?
2.過半数の同意が不要に
そして、過半数ルールが廃止というか消え去っています。
- 変更前:同意が50%を超えた場合にのみ売却可能
- 変更後:SAMURAIは投資家の意見に拘束されない
投資家の意見に拘束されない。
つまり、投資家が賛成しようが反対しようがSAMURAIの判断でサービサーに売却できるということです。
サービサーへの問題ある売却に、投資家がストップをかけられなくなったわけだ。
過半数ルール廃止は新社長の意向か?
なぜ、過半数ルールは廃止されたのか?
過半数ルール制定から廃止までの推移
時系列で検証します。
日付 | 項目 | 過半数ルール |
---|---|---|
2017年11月2日 | SAMURAI&J PARTNERSの完全子会社化 | |
2018年12月7日 | 過半数ルール制定 | |
2019年3月27日 | Jトラストと業務提携 | |
2019年6月24日 | 日本保証ファンド2号 募集実施 | 適用 |
2019年6月28日 | 社長交代(澤田聖陽氏→中山幹之氏) | |
2019年7月3日 | 不動産ローン14号 募集実施 | 適用 |
不動産メザニン5号 募集実施 | 適用 | |
2019年7月30日 | 不動産ローン15号 募集実施 | 廃止 |
社長交代の前後に注目です!
社長交代後に過半数ルール廃止
社長交代の直前と直後に募集された3つの案件は、過半数ルールのままでした。
そして、交代から1ヶ月後に募集された案件から、過半数ルールが廃止されています。
ということは、廃止は新社長の意向なのかな?と推測してしまいます。
明確な根拠があるわけではありません!
Jトラストの藤澤社長は無関係?
これも推測ですが、Jトラストの藤澤信義社長はこの件に無関係だと思います。
SAMURAIの前身である旧スマートエクイティは、2017年11月にSAMURAI&J PARTNERSの完全子会社となりました。
その時点で藤澤氏はSAMURAI&Jの筆頭株主(持ち株比率32%)でした。
SAMURAIが過半数ルールを決めたのは、その1年後の2018年12月です。
こんな重要なルールがトップの耳に入らないとは考えにくく、ルール導入を藤澤氏は容認したのでは?と推測します。
なにはともあれ、過半数ルールは廃止されました!
過半数ルール廃止の問題点
過半数ルールの廃止について、僕は一つ大きな問題があると考えます。
過半数ルール廃止自体は一つの選択肢
僕は過半数ルールの廃止自体は、選択肢として有りだと思います。
過半数ルールの問題点
例えば、簿価の7掛けでのサービサーへの売却が、状況から考えて妥当な落としどころだったとします。
そうであっても、
みたいなファンキーでクレイジーな投資家が過半数を超えると、そこから先は身動きがまるで取れない膠着状態になるのです。
回収もできず、債権譲渡もできず、何もできない状態か…
過半数ルール廃止も有り
なので僕は、過半数ルールは良い面もあるが、イマイチな面もある。
なので、SAMURAIが過半数ルール廃止という判断をするのは有りだと思います。
投資家に案内しなかったことが問題
僕が問題だと思うのは、SAMURAIが過半数ルールの廃止を投資家に案内しなかったことです。
投資家に案内していない
過半数ルールができた2018年12月から廃止された2019年7月までの、SAMURAIサイトの「お知らせ」をすべて見てみました。
しかし、廃止に関する案内はどこにもありませんでした。
念のため、SAMURAIのブログも見ましたが、こちらにも記載はありませんでした。
ちゃんと案内しなきゃダメでしょ?!
案内なしは合法
SAMURAIが「お知らせ」などで変更を案内しなかったことは違法ではありません。
金融商品取引法は第37条の3で、取引契約の概要などを契約締結前書面で投資家に告知することを金商業者に義務付けています。
SAMURAIは変更後の内容を契約締結前書面に明記していますので完全に合法です。
「道義的にどーたらこーたら」と言う人がいますが、何をもって道義的とするかは人によって基準が異なるのでまったく無意味。
世の中にあるのは合法と違法だけです。
あんたも相変わらず極端だね。
ハッキリしてると言ってくれ!
案内すべきだったのでは?
とは言ってもです。
過半数ルールはサービサーへの売却を投資家が止められるという重要なものです。
だからこそ、SAMURAIは過半数ルールを投資家に案内したのでしょう。
であるならば、廃止にする際も同様に案内を行うべきだったのではないでしょうか?
投資家受けしそうなことは大きくアピールし、反感を買いそうなことはコッソリと。
そういう対応は金融商品を扱う事業者として、投資家の信頼を失うだけです。
正直、ちょっとガッカリしました!
気づいてなかったワイが大問題やw
で、それ以上に大問題なのが、このことに僕が今まで気づいていなかったことです。
僕はSAMURAIでは次の2案件に投資しています。
募集日 | 案件名 | 投資額 |
---|---|---|
2019年10月8日 | 日本保証さくらファンド1号 | 30万円 |
2019年10月17日 | Jトラスト保証付きインドネシア円建て1号 | 30万円 |
どちらも過半数ルールが廃止された後の案件です。
でも、気づいていませんでした。
はいそうです。ちゃんと読んでいませんでした!
保証付きだから大丈夫っしょ♪と手を抜きました!
ふだん、ちゃんと読めとか調べろとか偉そうに言っておきながら、みっともないったらありゃしない。
特大ブーメランだねw
猛省しております…
SAMURAI FUNDも過半数ルール非適用
なお、旧さくらと統合したSAMURAI FUND(新SAMURAI)も、過半数ルールは適用されていません。
SAMURAI FUNDに過半数ルールは適用されない
過半数ルールに関してSAMURAI FUNDの契約締結前交付書面では次のように規定されています。
(vi) その他の留意事項
① 本事業に関する指図
貸付先が期日までに約定弁済が出来ない場合もしくは弁済が出来ない恐れが生じたと営業者が判断した場合において、営業者が本事業に係る営 業者の貸付先に対する貸付債権を当該貸付債権の簿価の80%未満の価格で債権回収会社に売却しようとするときは、営業者は予め出資者に対し当該売却について通知し、出資者は当該売却に対する意向を表明できるものとします。但し、営業者は当該出資者の意見に拘束されません。(出典:SAMURAI契約締結前交付書面PDF)
簿価の8掛け未満でサービサーに売却する場合、投資家は意見を出すことはできます。
しかし、SAMURAIは投資家の意見とは無関係に売却できます。
過半数ルール廃止は改悪ではない
誤解のないように申し上げますと、投資家の意思に関わらずサービサーに売却できるのは他のソシャレン業者も同じです。
オナブもクラバンもSBIも投資家の同意を得ずにサービサーに売却できます。
過半数ルール時代のSAMURAIが他社に比べて良かっただけで、廃止したことで他社と同等に戻っただけです。
ですので、過半数ルール廃止がSAMURAIの改悪だという指摘は当たりません。
他のソシャレン業者と同じに戻っただけってことか。
旧SAMURAI投資家は注意を
ただ、旧SAMURAI時代から投資してきた方は注意が必要です。
- 以前は過半数ルール
- 簿価の8掛け未満で
- サービサーに売却する際は
- 過半数の投資家の合意が必要
- 合意なしで勝手に売却できない
- SAMURAI FUNDは過半数ルールなし
- 簿価の8掛け未満で
- サービサーに売却する際は
- 投資家に意見は聞くが
- SAMURAIの判断で勝手に売却できる
リニューアル記念の日本保証7%案件も過半数ルールなしです。
以前とは変わったことを踏まえた上で投資判断をしましょう。
「え~っ!過半数ルールなくなってたの?!」ってことがないようにご注意を!
以上、SAMURAIの過半数ルール廃止についてでした!
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