先週、クラウドバンクやFundsなどのソーシャルレンディング業者から、「信託保全を開始する」というメールが届きました。
ソシャレン業者に信託保全が義務化されたという内容ですが。
なんのこっちゃ!というソシャレン初心者も多いのでは?
そこで今回は信託保全と義務化の背景を解説します。

投資家にとって良いことです!
ソシャレン、クラファン、全業者リストでチェック!

タップできる目次
ソーシャルレンディングに信託保全義務化
信託保全とは?
まず最初に信託保全とは何かを説明します。
知ってるよ!という方は次に飛んでください。→ 飛ぶっ!
分別管理とは?
ソシャレン業者では投資家から集めたお金と業者のお金とを分けて管理します。
帳簿は別の帳簿、銀行口座も別の口座で管理です。
- 投資家分の帳簿/口座
- 業者分の帳簿/口座
プチ解説 業者とは?
このように投資家と業者の資金を分けて管理することを分別管理といいます。
業者のサイトで「分別管理なので安全です!」とか書いてますよね。

良いことだ。
普通の分別管理は安全ではない
しかしこの分別管理、実はぜんぜん安全ではありません。
分別管理を三井住友みたいな普通の銀行で行っている場合、通帳と印鑑は業者が保管しています。
なので、業者が悪意をもって勝手に引き出すことが可能です。
また、普通の銀行での管理だと口座内のお金は業者の資産扱いになります。
そのため、業者が倒産すると口座内のお金は破産管財人の差し押さえ対象となるのです。

ヤバイじゃん!
信託保全で安全性向上
しかし、普通の銀行ではなく信託銀行で管理するとなると話は変わります。
信託銀行の場合、弁護士などが受益者代理人に指名され口座を管理するため、業者は勝手に引き出せません。
また、業者が倒産しても信託銀行内のお金は差し押さえの対象外です。
受益者代理人が投資家に返済を行います。
この一連の仕組みが信託保全です。
普通の銀行での分別管理ではなく、信託銀行での分別管理にすることで、信託保全により安全性が向上します。

それがソシャレンに義務付けられたと。
信託保全義務化の背景
ではなぜ今回、ソシャレンに信託保全が義務付けられたのか?
行政書士トーラス総合法務事務所の記事が分かりやすくまとめられていたので、これを参考に解説します。
ソシャレンで問題多発
発端は2018年から2019年にかけて、グリーンインフラレンディングなどの業者で起きた不祥事です。
(引用元:グリーンインフラレンディング)
複数の業者で不正などが行われ多くの投資家が被害に遭い、いまだに問題が解決していない投資家も多数います。
これをきっかけに金融庁が規制を強化し、諸悪の根源とされた借り手の匿名化義務の撤廃や、新規参入業者の審査の厳格化などが行われました。
こちらは借り手の匿名化について僕が過去にまとめた記事です。

プチ解説 借り手とは?
ソシャレンが信託保全義務化に
今回の信託保全義務化もこの流れの延長線上にあります。
2024年11月1日に金融商品取引法施行令が改正されました。
同施行令15条の4の2が変更され、ソシャレンが「電子申込型電子募集取扱業務」という区分に入ることになったのです。
この電子申込型電子募集取扱業務には金商法定義府令16条1項14号の2で信託保全が義務付けられています。
このため、ソシャレンにも信託保全が義務付けられることになったということです。
5月1日までに導入
上述の通り改正法が施行されたのは2024年11月1日ですが、既存業者には6カ月の経過措置が認められています。
ですので、各業者で5月1日までに信託保全が開始されるはずです。

実際はどうなの?
信託保全の導入状況
バンカーズは導入済み
すでに信託保全を開始済みなのがバンカーズです。
4月1日に会員宛てのメールで案内し、4月10日から信託保全を開始しています。
株式会社バンカーズは、投資家の皆様に、
より安心・安全な投資環境の提供を目指し、 2025年4月10日(木) より預託金の信託化を開始する予定ですので、 お知らせいたします。
プチ解説 会員とは?
Fundsなどが導入決定
他にFundsなどが信託保全の開始を発表済みです。
OwnersBookは期日は不明ですが開始すると自社サイトで発表しています。
業者 | 開始時期 |
---|---|
クラウドバンク | 4月23日 |
COOL | 4月28日 |
Funds | 4月30日 |
OwnersBook | 不明 |
他社は不明
他の業者ですが現時点でメールや自社サイトでの案内は行われていません。
業界団体から案内は来ているでしょうから、5月1日までには開始するでしょう。

忘れてたりして。
信託保全の注意点
信託保全の義務化に関して注意点をいくつか。
元本保証ではない
まず、信託保全の対象となる期間は借り手に貸す前、償還する前と、デポジット口座に置いている間だけです。
- 投資家から集めてから、借り手に貸すまで
- 借り手が返済してから、投資家に償還するまで
- デポジット口座に置いている間
プチ解説 償還とは?
プチ解説 デポジット口座とは?
借り手に貸している間は信託保全の対象外であり、借り手が返済不能になるなどで元本が戻ってこなくなる可能性はあります。
信託保全は元本保証ではありません。
プチ解説 元本とは?
空白期間がある
また、投資家が振り込む口座は従来通り普通の銀行の口座です。
すべての投資家の入金が完了してから業者が信託銀行に移します。
このように投資家のお金が業者の普通の銀行の口座に預けられている期間があり、ここは信託保全の対象外です。
このいわば空白の期間に業者が倒産すると、投資家のお金は破産管財人に差し押さえられます。

償還前にもあるわね。
出金までの時間が長くなる
デポジット口座からの出金ですが、信託銀行からの出金が加わるため、今までより時間がかかるようになります。
- 現在:普通の銀行 → 投資家
- 今後:信託銀行 → 普通の銀行 → 投資家
プチ解説 出金とは?
クラウドバンクは出金申請の締切が現在の15時から7時に繰り上げられます。
Fundsは現在は申請の翌営業日までに出金ですが、今後は2営業日までになりますので、最大で1日の長期化です。

これはしょうがないね。
強制出金は廃止
これまで、3カ月連続してマイページにログインがない場合、デポジット口座の残高は強制的に投資家の銀行口座に出金されていました。
信託保全の導入に伴い、この強制出金は廃止されます。
信託保全の義務化を歓迎
デポジット口座に大金をずっと置きっぱなしという人は少ないでしょう。
ですので、信託保全の導入でソシャレンの安全性が激的に向上するわけではありません。
しかし、こういう小さな安全向上の積み重ねが、大きな安全につながります。
今回の信託保全の義務化を歓迎しましょう。

良いことです!
コメント