OwnersBook大阪ホテル案件は1割程度の元本毀損で終結することになりました。
今回は本件から投資家が学ぶべきことについて考えます。
なお、本稿では大阪ホテル案件へのOwnersBookの対応の是非は一切問いません。
と言うより、是非を問うたところでどうしようもないという内容です。
そしてこれは、OwnersBookに限らずすべてのソーシャルレンディング業者、不動産クラウドファンディング業者に共通です。
説教臭い話は聞きたくないという方は、ここで画面を閉じることを強くおすすめします!
今回は辛口です!
30社以上を忖度なしのホンネで解説します!
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業者は投資家の要求に従う義務はない
2021年3月31日にOwnersBookから大阪ホテル案件の運用期間延長が発表されました。
この直後からX(旧Twitter)や掲示板などで、オナブはこうすべき!という投資家の声が現在に至るまで上り続けています。
しかし、そのいずれについてもOwnersBookに従う義務はないです。
その理由をOwnersBookの「匿名組合契約約款」をもとに解説します。
営業への関与
営業者の営業
まず、掲示板等(以下、同)で次のような声が上がりました。
- 土地を速やかに売却すべき
- 競売等の価格を公表せよ
これらはすべて営業者(OwnersBook)の営業にあたります。
ここでいう「営業」とはOwnersBookから借り手への貸付、管理、回収、投資家への償還、及び、これらに関連、付随するすべての行為を指します。
営業への関与はできない
投資家の営業への関与について、匿名組合契約第5条は次のように定めています。
第5条(本営業の遂行)
2 本営業は、営業者の判断において行い、営業者は、本営業の遂行につき、本約款に明示的に定める場合を除き、本匿名組合員の同意を要しないものとします。
また、本匿名組合員は、本約款に明示的に定める場合を除き、本営業の遂行に一切の関与をすることはできないものとします。
- 営業の内容は業者が判断する
- 投資家の同意は要しない
- 投資家は営業に関与できない
投資家はこの契約に同意した上で出資しています。
よって、OwnersBookに土地の売却などを要求する権利は一切ないです。
ガッツリ決められてる…
担保権実行の指示
- さっさと担保を売却せよ
- 連帯保証を実行させよ
担保をどうするかについても投資家は指示できません。
第9条(担保権の実行)
1 本匿名組合員は、本借入人が本貸付契約に係る借入債務について期限の利益を喪失した場合に、営業者がその裁量に従い、営業者が本借入人から設定を受けた担保権を実行することを、予め承諾し、これを撤回しないものとします。
- 業者は担保権を実行する
- 担保権の実行は業者の裁量で行う
- そのことを投資家は承諾し撤回できない
業者の裁量による担保権の実行を承諾しているのですから、投資家が指示することはできません。
なお、連帯保証は担保権に含まれます。
水も漏らさぬ契約内容ね。
OwnersBookによる保証の要求
- 損失はオナブが保証しろ
言うまでもなく、これも通りません。
第19条(責任財産限定特約、強制執行不申立)
1 営業者による本匿名組合契約に基づく債務の支払いは、営業者が本匿名組合契約に基づき取得又は受け入れた財産、その他本営業に関して取得し又は受け入れた財産のみを引当として、その範囲内でのみ行われ、営業者の有する他の資産には一切及ばないものとし、本匿名組合員はこれを異議なく承諾し、これを撤回しないものとします。
- 元本償還は大阪ホテル案件に係る財産のみで行う
- OwnersBookの財産は償還に充当しない
投資家はこれを承諾し撤回しないと約束しています。
よって、OwnersBookに元本毀損分の補てんを求める権利はないのです。
それに、
第20条(不保証)
本匿名組合員は、自らの判断と責任において本匿名組合契約に基づく出資を行うものであり、営業者は、本匿名組合員に対する出資金の返還及び本営業の結果について何ら保証しないものとします。
最初っから元本償還を保証しないと言われていますから。
契約書って怖いね…
ちなみに、19条3項では次のように定められています。
3 本匿名組合員は、第16条第1項による契約終了の時点又は第18条に基づく清算の終了時点において、本匿名組合契約に基づく未払債務が残存する場合には、当該未払債務に係る請求権を当然に放棄したものとみなされることに同意するものとします。
- 運用終了後は戻っていない元本について請求できない
約1割の元本毀損について、あとになってからOwnersBookに返せと言うこともできません。
問い合わせへの回答要求
問い合わせの自粛要請
OwnersBookは大阪ホテル案件について状況報告を10回以上に渡り行っていますが。
その末尾には常に以下の記載がありました。
当社は適切な情報開示に努めてまいる所存です。大変恐縮ですが、直接お問い合わせをいただきましても、皆さまに公表している以上のご回答はできかねますこと、予めご了承のほどお願い申し上げます。
要は問い合わせの自粛要請です。
これに関して次のような声がありました。
- 対応が不誠実だ
- 問い合わせに回答すべきだ
実はこれも微妙なのです。
営業への協力義務
第25条(本匿名組合員の協力)
営業者の本営業の円滑な遂行のため必要な事項については、本匿名組合員はこれに協力するものとします。
問い合わせ自粛要請に応じないことをもって、営業への協力を遂行していないと見なされる可能性があります。
可能性は低いでしょうが…
事前提示情報の十分性
善管注意義務違反
- 旗竿地だなんて聞いてない
- 事前に提示した情報が不正確、不十分だ
これらについてOwnersBook側の落ち度を問うならば、依拠できる契約は次の2つくらいしかないと思います。
第14条(善管注意義務)
営業者は、関係各法令の規定に従い、本営業を善良なる管理者の注意をもって執り行うものとします。
第29条(規定外事項)
本約款に定めのない事項については、民法、その他関係法令・条例及び商取引の慣行に従い、営業者及び本匿名組合員との間で誠実に協議のうえ決定するものとします。
とは言え、善管注意義務にしても誠実な協議にしても、OwnersBookと投資家との間で意見の一致には至らないはずです。
あるべき論、理想論、希望的観測ではなく現実問題として。
OwnersBookが「旗竿地だと最初に言ってなかったのは私どもが悪うございました。元本すべてお返しします!」と言うと思いますか?
まぁ、ありえないよね。
でも、落ち度ではあるだろ?
最後は訴訟
問題はそこです。
善管注意義務に反するかを判断するのは投資家ではありません。
となると、最後は司法の場で争うことになります。
ではうかがいますが、あなたは訴訟を提起しますか?
しませんよね。
僕も同じ立場ならしません。笑
なのでどうにもならないのです。
確かに訴訟は面倒…
オナブへのプレッシャーにはならない
書き込みがプレッシャーに?
Xへのポストや掲示板への書き込みがOwnersBookへのプレッシャーになるとの声もありますが。
現実を見る限り、プレッシャーにはまったくなっていません。
OwnersBookの影響度は極小
まずそもそも論として、ロードスターキャピタル社の売上高に占めるOwnersBook事業の比率は2%足らずです。
大阪ホテル案件のロ社への影響度は限りなくゼロなのです。
その証拠に、延長が決まった2021年3月31日以降もロ社の株価は上昇を続けています。
大阪ホテル案件でロ社のダメージは限りなくゼロです。
OwnersBookも好調
また、OwnersBook自体も相変わらず好調です。
延長決定以降、すべての案件で募集満額を集めています。
会員数の増加ペースも延長決定前後でまったく変わっていません。
こういう言い方をすると不愉快に感じるでしょうが、大多数の投資家のOwnersBookへの信頼は揺らいでいない。
ムカついてしょうがないでしょうが、事実がそれを証明しているのです。
不愉快極まりない。
メディアも金融庁も取り上げない
また、メディアはまったく報道しませんし、金融庁が動く気配もなしです。
報道する(=販売部数につながる)ほどのネタでもない、明確な事件性はない。
これがメディア、金融庁の判断なのでしょう。
つまり、OwnersBookへのプレッシャーにはまったくなっていないということです。
メディアや金融庁が動いても効果はない
仮にメディアや金融庁が動いたとしても、元本償還への効果は限りなくゼロです。
グリーンインフラレンディング事件ではメディア、金融庁ともに動きました。
では、元本は戻ってきましたか?
1円も戻ってきてないじゃないですか。
あるべき論や希望論ではなく現実として、マスコミや金融庁が動いても元本は戻ってきません。
納得はできないけど…
本件から投資家が学ぶべきこと
以上より、大阪ホテル案件から我々投資家が学ぶべきことです。
特にソシャレン、クラファン初心者の方は肝に銘じてください。
あとから言ってもどうしようもない
OwnersBook擁護ではない
この記事の趣旨は決してOwnersBook擁護ではないですし、被害に遭った投資家を自業自得とディスるつもりもないです。
ましてや、僕はOwnersBookの関係者でもなければ工作員でもありません。笑
そこまで堕ちてません!
契約書で鉄壁の防御態勢
ここまで匿名組合契約約款を見てきた通り、業者側は鉄壁の防御態勢を築いています。
契約書を作ったことがある人は分かるでしょうが、あらゆるケースを想定してリスクを徹底的につぶし逃げ道を作ります。
業者にとって最も大切なことは、投資家ではなく会社と従業員とその家族を守ることですから。
業者にとって有利な契約内容にするのは当然なのです。
良し悪しではなく現実として。
投資家が圧倒的に不利
そして、その契約書に同意しない限り、我々投資家は投資できない。
投資をあきらめるか、業者有利の契約書に同意するか、2つしか選択肢がない。
契約締結において投資家は圧倒的に不利な立場にいる。
それを分かった上で投資していますか?
「待つだけ投資」の真意
待つしかできない
ソシャレン、クラファンが手軽にできることを評して「待つだけ投資」という言い方をします。
確かに待つだけで他にすることはありません。
しかし、匿名組合契約を見てきた通り、何かしたくても何もできない。
業者がやることを指をくわえて見守り、業者の決定に唯々諾々と従うのみ。
つまり、ひとたび運用が始まったが最後、待つしかできない。
これが「待つだけ投資」の真意なのです。
待つだけ「しかできない」投資か…
「待つしかできない」は全業者共通
そして、待つしかできないのはOwnersBookだけではありません。
バンカーズなど他のソシャレン業者も同様の規定を持っています。
不動産クラファン業者も同様。
ソシャレン、クラファンはすべて「待つしかできない投資」なのです。
どうすれば良いの?
事前にできることに万全を尽くそう
できるのは事前だけ
では、我々投資家はどうすれば良いのか?
運用が始まったあとは何もできません。
となると、できるのは運用が始まる前、実際には応募前だけです。
手を抜くな
では、事前にできることは何か?
- 案件詳細や書面をよく読む
- ちゃんと調べる
- しっかり考える
- その上で判断する
よく読み、ちゃんと調べ、しっかり考えた上で判断する。
要は手を抜くな、楽をするな、横着するなってことです。
手軽な「待つだけ」は応募したあとの話。
応募する前まで手軽で良いわけではないのです。
耳が痛い。
万全を尽くそう
業者は契約書で鉄壁の防御を固めています。
あとになってから投資家にできることは何もありません。
必死に稼いだお金を守るために何かできるのは応募する前だけ。
事前にできることに万全を尽くしましょう。
説教臭くて失礼!
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