トラストレンディングで詐欺まがいの事件が発生しました。
これについて、証券取引等監視委員会とトラストレンディングが文書を発表しましたが、
- エーアイトラスト株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
- 証券取引等監視委員会による勧告について(PDF)
- 損害賠償等請求訴訟の提起に関するお知らせ(PDF)
- 役員の異動に関するお知らせ(PDF)
グチャグチャややこしく書いててよく分からないですよね?
そこで、ソーシャルレンディングで847万円を投資中のソシャレン投資家が、図を使って詳しく分かりやすく解説します。
みなさんの参考になれば幸いです。
タップできる目次
問題は4つ
まず、2019年2月22日の勧告で指摘された問題は、以下の4つです。
- 高速道路案件
- コンサル案件
- 燃料案件
- 資金流出問題
これら4つについて、
- 何が起きたのか?
- 誰が何をしたのか?
- 何が問題なのか?
を説明します。
まずは、高速道路案件からです。
高速道路案件
募集された対象案件
高速道路案件について、トラストレンディングは以下の33個の案件に小分けして、募集を行いました。
- 債権担保付ローンファンド(105号~111号)
- Trust Lendingセレクトファンド(113号~138号)
つまりこの33案件で、監視委が勧告した問題が起こっています。
投資家からの出資総額は15億7千万円です。
募集時の説明
33案件の募集にあたって、トラストレンディングはサイト上で次のように説明しました。
- 国交省とNEXCO中日本が新東名の工事を発注する
- これを元請負会社が受注する
- そして借入人A(建設業者)が下請けする
- トラレンが借入人Aに投資家のお金を貸す
- 借入人Aはそのお金を工事費用などに使う
- 借入人Aは元請負会社から受け取る工事代金で返済する
募集時の説明図に注目
上記の説明にあたって、トラストレンディングは以下の図を付けていました。
先ほどの図と見比べてください。
トラレンの説明文には書かれていませんが、図には清水建設があります。
この図を見ると、
- 国交省・NEXCO中日本 →
- 清水建設 →
- 元請負会社 →
- 借入人A
と、仕事が流れている。
つまり、大手ゼネコンの清水建設が国交省から受注した公共事業という印象を受けます。
ここまでがトラストレンディングの募集時の説明です。
監視委の勧告内容
さて、これに対する証券取引等監視委員会の勧告です。
2つのことが書かれています。
事業実体がない
勧告から引用します。
上記の各工事について、各JVから元請負会社を経由して本借入人Aが発注を受けた事実はなく
赤のバツを見てください。
国交省から清水建設が受注したのか?は書かれていません。
ですが、清水建設 → 元請負会社 → 借入人Aと、発注が流れた事実はない。
つまり、借入人Aが実施する高速道路工事は初めから存在しなかった、ということです。
投資家への説明がウソになった
さきほどの勧告の続きです。
このため、本借入人Aに対しては、上記の取得勧誘時の表示のような、高速道路関係の工事受注を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていない。
超分かりにくいですね。僕が日本語で説明します。笑
青のバツを見てください。
募集時にトラレンは「借入人Aはお金を工事費用などに使う」と、投資家に説明しました。
ですが、工事自体が存在しないのだから、工事費用に使うことなんてできませんよね?
「工事費用に使う」と説明したのに、工事費用には使わなかった。
結果としてトラレンは、投資家にウソの説明(虚偽の表示)をした、ということです。
虚偽の表示をする行為
つまり、トラレンが投資家に対して、
- 工事がないのに、工事があると説明
- 工事費用に使わないのに、工事費用に使うと説明
して募集を行ったことが、金融商品取引法が定める「虚偽の表示をする行為」にあたるということです。
これを問題として、監視委が勧告を行いました。
エーアイトラスト社の説明
知らなかった
さて、実際には工事がないのに、トラストレンディングはなぜ投資家に対して募集を行ったのでしょうか?
トラストレンディングを運営するエーアイトラスト社の発表は次の通りです。
当社が本件ファンドの調査を行った結果、本借入人(借入人Aのこと)は本件工事を受注していないことが判明し
いや、冗談でしょ?って感じですが。
つまり、こういうことです。
あのね、監視委に言われて調べてみたの。
そしたらね、工事はなかったの。
工事がないのにお金貸しちゃった。
てへぺろ!
いやはや、この一文はさすがに唖然としました。
詐欺だった
エーアイトラスト社の発表によると、今回の高速道路案件は、
- 元請負会社
- 借入人A
の2社による詐欺だったようです。
トラストレンディングは2社から次のように説明を受けていました。
- 元請負会社は清水建設から新東名の工事を受注している
- 借入人Aは元請負会社から工事を正式に受注している
- 元請負会社から借入人Aへの支払い債権を、トラレンからの借り入れの担保とすることに、元請負会社は同意している
清水から工事受けてるよ。借入人Aも受けてるよ。担保もバッチリだよ。
このように説明され、さらに工事現場にも案内され、さらにさらに担保の書類に判子も押されたそうです。
で、フタを開けたらウソだった。
損害賠償請求訴訟を提起
今回の詐欺事件を受けて、エーアイトラスト社は損害賠償請求訴訟を起こしました。
貸した金を返せ!ということです。
- 被告:元請負会社と借入人A
- 請求額:16億4,000万円
請求額ですが、実は高速道路案件にはトラレンもお金を出していました。
投資家と一緒にトラレンも投資していた、ということです。
- 投資家分:15億7,200万円
- トラレン分:6,800万円
なお、投資家分が優先出資です。
つまり、満額が戻ってこない場合は、投資家分の返済が優先されます。
以上が高速道路案件についての説明です。
疑問
疑問に思った点を2つだけ。
16億円のために詐欺をするだろうか?
エーアイトラスト社の説明によると、元請負会社は2つの工事を清水建設から受注しています。
清水→元請負→借入人Aとつながった工事はないけれど、清水→元請負の工事は存在するということです。
そこで疑問なのですが、元請負会社は清水から直接受注できるくらいの、技術なり実績なり信用がある。
そんな会社がたかだか16億円のために、あえて詐欺をやるでしょうか?
バレる詐欺をするだろうか?
もう一つ。
工事の実体がない以上、借入人Aはいずれトラレンに返済できなくなります。
つまり、いずれウソが発覚するということです。
バレるのがミエミエの詐欺を普通しますかね?
以上2点、なぜこんな詐欺をしたのか?
果たしてこれは単純な詐欺事件なのか?
ちょっと疑問です。
コンサル案件
2つ目はコンサル案件です。
募集された対象案件
コンサル案件について、トラストレンディングは以下の8個の案件に小分けして募集を行いました。
- Trust Lendingセレクトファンド(147号~154号)
つまりこの8案件で、監視委が勧告した問題が起こっています。
投資家からの出資総額は2億4千万円です。
募集時の説明
8案件の募集にあたって、トラストレンディングはサイト上で次のように説明しました。
- 依頼元会社は複数の公共事業を受注している
- 公共事業のうちの2つは、土木事業と環境事業である
- 借入人B(コンサル業)は、これら複数事業間の調整など、効率化のためのコンサル業務を行う
- コンサル業務の経費として使うため、借入人Bはトラレンからお金を借りる
- 依頼元会社が借入人Bに支払うコンサル料で、借入人Bがトラレンに返済を行う
- なお、実際には借入人Bの借入額分を、依頼元会社が直接トラレンに支払う
要は、依頼元会社が仕事をたくさん受けてゴッチャゴチャ状態になっている。
借入人Bに「お金払うから上手いこと調整してね♪」ってことです。
募集時の説明図
トラレンの説明ページには、高速道路案件と同じように図が付いていました。
パターンが見えてきましたね。笑
この図を見ると、依頼元会社があたかも中央省庁発注の案件を、地方自治体経由で受注しているように見えます。
さて、実態はどうだったのでしょう?
監視委の勧告内容
主に3つの問題が指摘されています。
公共事業は2つだけだった
勧告から引用します。
(土木事業と環境事業)の他に具体的に予定されている公共事業プロジェクトはない
は?なんですと?
トラストレンディングは説明ページで次のように書いていました。
効率向上の対象となるプロジェクトには、土木建築事業や環境の再生・保全といった大規模な案件も含まれ
「も」ですよ?
「土木事業や環境事業も含まれ」って書く以上、それ以外の水産事業や福祉事業とかも含まれる。
つまり、公共事業は少なくとも3つ以上あることになりますよね?
でも、2つだけだったそうです。笑っちゃうわ。
土木事業は事業実体がない
再度、勧告から引用します。
上記「依頼元事業者」は本借入人Aであり
なんと依頼元会社は、さきほどの高速道路案件でトラレンからお金を借りた、建設業者の借入人Aだったそうです。
「土木建築事業」案件は高速道路事業(上記記載の「本ファンドA」の貸付対象事業)
そして土木事業とは、さきほどの新東名の高速道路事業そのものだったのです。
ですが、さきほど見たように、高速道路案件は実際には存在しませんでした。
つまり、土木事業は事業実体がなかったということです。
環境事業も事業実体がない
もう一つの環境事業ですが、
「環境の再生・保全」案件は除染事業(平成30年12月7日付行政処分勧告記載の「本債権ファンド」の貸付対象事業)
震災に伴う原発の除染事業でした。
トラストレンディングは昨年12月に1回目の勧告を受けています。
そして勧告の中で、トラレンが過去に募集を行った除染事業は事業実体がなかった(行われていなかった)と指摘されています。
この除染事業が、今回の環境事業であるというのです。
つまり、環境事業も事業実体がなかったということです。
コンサル事業は事業実体がなかった
以上より導き出されることは…
- 土木と環境以外の公共事業は存在しなかった
- 土木(高速道路)も存在しなかった
- 環境(除染)も存在しなかった
つまり、
- 公共事業は一つも存在しなかった
それはつまり、
コンサル事業そのものが、初めっから存在しなかった、ということです。
どっひゃ~
虚偽の表示をする行為
ここから先は高速道路案件と同じです。
トラレンはコンサル事業が存在しないのに、コンサル事業のための資金ですと言って、投資家からお金を集めた。
この行為が「虚偽の表示をする行為」にあたるとして、監視委が勧告を行いました。
エーアイトラスト社も発表の中で、これを全面的に認めています。
コンサル案件の説明は以上です。
疑問
2つ疑問があります。
なぜ訴訟を起こさないのか?
今回の件、構図を見る限り、
- 公共事業が存在しないことを隠して、AがBを騙した
- AとBが共謀してトラレンを騙した
このどちらかしか考えられないですよね?
騙されたという点では高速道路案件と同じです。
なのに、トラレンはなぜ損害賠償請求を提起しないのでしょうか?
よく分からないです。
刑事じゃないの?
もう一つ。これ、詐欺でしょ?
民事じゃなくて刑事事件なのではないでしょうか?
トラレンが裁判起こす起こさない以前に、警視庁が動くべき事案だと思うのです。
法律のことはよく分からないので、間違ってるかもですが。
燃料案件
募集された対象案件
燃料案件について、トラストレンディングは以下の13個の案件に小分けして募集を行いました。
- 燃料卸売事業者ローンファンド(193号~200号、203号、207号~210号)
つまりこの13案件で、監視委が勧告した問題が起こっています。
投資家からの出資総額は6億2千万円です。
虚偽の説明を行っていた
これはショボショボなので、ポイントだけサクッと説明します。
トラストレンディングは本事業について下記のように説明していました。
初年度売上30億円をボトムラインとして継続成長が計画されている売上規模となります。
これに対する監視委の勧告は次の通りです。
「30億円をボトムラインとして」と記載しているところ、これについては何ら根拠の無いものであり
要は確たる根拠もないのに「最低でも30億円はいきまっせ~!」と吹いていた、ということです。
誤解を生ぜしめるべき表示をする行為
そしてこのことが、金商法が定める「誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」にあたるとして、監視委が問題としています。
ただ単に調子乗って吹いただけですからね。
高速道路やコンサルにくらべると、深刻度は大きくありません。
以上、燃料案件でした。
資金流出問題
一転して、これは深刻な問題です。
順を追って詳しく説明します。
山本案件
2017年2月から2018年11月までの間に、以下の5つの案件の募集が行われました。
- 高速道路案件
- コンサル案件
- 除染案件
- 燃料案件
- IoT案件
上の4つはここまでで紹介した4案件と同一のものです。
これらをトラストレンディングに紹介したのは、山本幸雄氏です。
以下、これら5案件を山本案件と呼びます。
15億8千万円が流出
山本案件は上記期間に募集が行われ、すでに投資家に返済された分を除くと52億円あります。
このうち、15億8千万円が山本氏の関連会社に流出していた、というのです。
図で示すとこういうことです。
山本案件で投資家から集めたお金の内、まだ投資家に返していないお金が52億円あります。
そのうちの15億8千万円が、山本氏の関連会社に流出した、ということです。
トラレンの管理責任
この件について、監視委は次の2点を指摘しています。
- 貸付実行後のモニタリングなどを行っていなかった
- 集めたお金が募集時に説明した通り使われているか、十分に確認していなかった
要するに、
ということです。
監視委によると、これが金商法が定める「業務の運営に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当します。
そのため、エーアイトラスト社に対して改善などを命ずることになります。
山本氏を解任
この件についてのエーアイトラスト社の対応です。
実は、山本氏は同社の取締役でした。
今回の一件を受けて、同社は2月20日付で山本氏を解任しました。
また、山本氏と関連会社に対する法的措置も検討するとのことです。
以上が資金流出問題についてです。
疑問
ちょっと腑に落ちないのが、山本氏についての経緯です。
発表内容を時系列で並べます。
- 2017年2月:山本案件の募集を開始
- 2018年10月5日:山本氏が取締役に就任
- 2018年11月:山本案件の募集を終了
- 2019年2月20日:山本氏を解任
トラレンの発表によると、取締役就任後、山本氏から新たな案件の紹介はありません。
案件の募集も就任1ヶ月後に終了しています。
2018年12月7日に監視委から1回目の勧告を受けていますので、11月には調査が始まっていたでしょう。
調査中に資金を関係会社に流すとか考えにくいですよね。
となるとですよ、山本氏は何のために取締役に就いたのでしょうか?
また、トラレンはなぜ山本氏を取締役にしたのでしょうか?
双方のメリットがイマイチ見えない。見えないところに何があるのか?
ここが謎です。
投資家への影響
以上、4つの問題について説明しました。
次にこれらが投資家に与える影響を考えます。
なお、あくまでも超ネガティブで超悲観的な僕の推測です。
18億1千万円毀損の可能性
貸付けは行われている
下記2案件で投資家から集めたお金は、それぞれ借入人Aと借入人Bに渡っています。
- 高速道路案件:15億7千万円
- コンサル案件:2億4千万円
これ、監視委の勧告が武家諸法度なみに分かりにくいのですが。
- 高速道路関係の工事受注を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていない
- 公共事業プロジェクトに対するコンサルティング業務等の実施を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていない
これ、「貸付けは行われていない」という意味ではありません。
「○○に使うための貸付けは行われていない」という意味です。
投資家に説明した高速道路やコンサルに使う目的では貸付けられなかった、というだけで、貸付け自体は行われています。
だからこそ、エーアイトラスト社は高速道路案件について、損害賠償請求訴訟を提起したのです。
毀損の可能性
では、借入人Aと借入人Bに渡ったお金は、今どこでどうなっているのか?
それはAとBしか知りません。今後の裁判と捜査で明らかになるでしょう。
ただ場合によっては、全額もしくは一部が毀損する可能性があります。
もちろん考えたくはないですが。
15億8千万円毀損の可能性
もう一つは山本マネーです。
山本案件で関連会社に流出した15億8千万円がどうなっているのか?
これについても毀損の可能性があります。
両者は別か重複か?
最も心配なのは、
- 高速道路+コンサルの18億1千万円
- 山本案件の15億8千万円
この2つが別なのか、重複しているかです。
つまり、高速コンサルの18億1千万円の中に、山本案件の15億8千万円が含まれているかどうかです。
もし重複しているのならば、毀損は最大18億1千万円で済みます。
重複しておらず別であれば、最大で33億9千万円になります。
監視委は勧告の中で
- 山本案件の募集残は52億円
- そのうち、少なくとも15億8千万円が流出
と書いているだけで、重複しているかには触れていません。
なぜ、投資家にとって最も肝心なところを書いてくれないのでしょうか?
資金の行方について、明確な説明が待たれます。
パワーワードに騙された
最後に。
実態はグリフラと同じ
多くの投資家がこう思っているはずです。
僕もその一人です。
でも今になって思うと、トラストレンディングって上場企業系でも証券会社系でもない。
その意味で、ラキバンやグリフラと一緒だったのですよね。
2つのパワーワード
なのになぜ信用してしまったのか?
- 元官僚
- 公共事業
元官僚が役員にズラッと並んで、まさか変なことはしないだろう。
公共事業で詐欺まがいなことは起こらないだろう。
この2つのパワーワードに、僕たちはコロッとやられてしまったのではないでしょうか?
業者選びを明確な基準で
今後への教訓として、やはり利用する業者は明確な基準で選ばなければなりません。
その基準は、元官僚でもなければ、公共事業でもありません。
「上場企業系、証券会社系、不動産クラファン」です。
怪しい業者から資金を引き上げ、信頼度が高い業者に乗り換えましょう。
トラストレンディングから少しでも多く、資金を引き上げられることを祈っています。
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