香港消費者金融案件がクラウドバンクからバンカーズに移りました。
クラウドバンクの借り手をバンカーズが引き抜いた形です。
実はバンカーズによる引き抜きは他でも起きています。
バンカーズの借り手引き抜きの実態と投資家への影響を考察します。
仁義なき戦いです!
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バンカーズによる引き抜きの事例
純粋な引き抜きではないものも含めて、借り手が他社からバンカーズに移った事例を見てみます。
旧SBIソーシャルレンディング系
バンカーズへの借り手の移動が初めて起きたのは2021年10月です。
SBIソーシャルレンディングの終了
みなさんご存知の通り、SBIソーシャルレンディング(以下、SBI-SL)は2021年3月に新規の募集を停止しました。
これにより、同社の主力案件であった「不動産担保ローン事業者ファンド」の借り手7社が、SBI-SLという資金供給源を失いました。
堅い案件だったよね。
TH社がバンカーズに移動
そこで、7社のうちの1社であるTH社が、SBI-SLに代わってバンカーズで資金調達を行いました。
それが2021年10月25日に募集された「不動産担保ローン事業支援ファンド第1号」です。
その後もバンカーズでは2つのTH社案件が募集されています。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2021年10月25日 | 不動産担保1-1 | 4,180万円 |
2022年1月12日 | 不動産担保1-2 | 2,840万円 |
2022年10月17日 | 不動産担保1-3 | 4,120万円 |
さらに2社がバンカーズに移動
さらに2021年12月にはAF社(不動産担保ローン事業支援ファンド第4号)とDC社(不動産担保ローン事業支援ファンド第5号)がバンカーズに移りました。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2021年12月17日 | 不動産担保4 | 3,490万円 |
2021年12月18日 | 不動産担保5-1 | 5,500万円 |
2022年12月17日 | 不動産担保5-2 | 3,400万円 |
SBI-SLという資金供給源を絶たれた7社の内、3社がバンカーズに移ったことになります。
駆け込み寺状態ね。
旧スマートレンド系
次は旧スマートレンド系です。
maneo騒動のあおりを受けた悲運の業者
スマートレンド(以下、スマトレ)は旧maneoファミリーのソシャレン業者でした。
maneo騒動のあおりを受けて運営を終了しましたが、最後まで全案件が正常運用され、非常に優秀でした。
maneoファミリーでなければ今でも運営を続けていたであろう、悲運の業者です。
JC&G、新日本信用保証案件がバンカーズに移動
スマトレはオーシャンキャピタル(以下、OC社)の子会社で、借り手はすべてOC社の他の子会社3社でした。
スマトレからの資金調達ができなくなったため、まず2021年12月にJC&Gがバンカーズでの調達を行いました。
これまでに7案件の募集が行われています。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2021年12月8日 | フィンテック2-1 | 5,000万円 |
2022年3月15日 | フィンテック2-2 | 1億円 |
2022年4月6日 | フィンテック2-3 | 5,000万円 |
2022年6月23日 | フィンテック2-4 | 3億円 |
2022年7月12日 | フィンテック2-5 | 4億円 |
2022年8月6日 | フィンテック2-6 | 4億円 |
2022年9月19日 | フィンテック2-7 | 2億円 |
さらに2022年9月には新日本信用保証を借り手とする案件がバンカーズで募集されました。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2022年9月10日 | 家賃収納1 | 3億6,000万円 |
香港案件がバンカーズに移動
そして今回募集されたFinance One(以下、FO社)の香港案件です。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
1月14日 | 香港1-1 | 1億3,500万円 |
1月14日 | 香港1-2 | 1億3,500万円 |
1月14日 | 香港1-3 | 1億3,500万円 |
1月14日 | 香港1-4 | 1億3,500万円 |
1月14日 | 香港1-5 | 1億3,500万円 |
1月18日 | 香港1-6 | 1億3,500万円 |
1月18日 | 香港1-7 | 1億3,500万円 |
1月18日 | 香港1-8 | 1億3,500万円 |
1月18日 | 香港1-9 | 1億3,500万円 |
1月18日 | 香港1-10 | 1億3,500万円 |
実はFO社は2019年8月にクラウドバンクと提携しており、それ以降はクラウドバンクで募集が行われていました。
ですので、バンカーズがFO社をクラウドバンクから引き抜いた形とも言えます。
J.LENDING系
意外と知られていないのがJ.LENDINGからの引き抜きです。
まず、2022年2月にTT社の案件(フィンテック決済サービス事業支援ファンド第3号)がバンカーズで募集されました。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2022年2月1日 | フィンテック3 | 2,300万円 |
ただし、その後もTT社の案件はJ.LENDINGで募集されています。
一時的にバンカーズで募集しただけなのかもしれません。
お試しかな?
一方、EL社の案件(不動産担保ローン事業支援ファンド第6号)は2022年2月にバンカーズで募集が行われたあと、同年3月と4月にJ.LENDINGでも募集されました。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2022年2月22日 | 不動産担保6 | 1億1,000万円 |
2022年12月16日 | クレジット1 | 1億円 |
しかし、その後はJ.LENDINGでは募集されず、同年12月にバンカーズで2回目の募集が行われています。
こちらはもしかしたらバンカーズに完全に乗り換えたのかもしれません。
今後に注目です!
アズ企画設計
もう一つはアズ企画設計を借り手とする案件です。
こちらは以前からFunvestで募集されていましたが。2022年からバンカーズでも募集が行われています。
募集日 | 案件名 | 募集額 |
---|---|---|
2022年6月14日 | 不動産開発1 | 1億円 |
2022年10月13日 | 不動産開発2 | 1億7,000万円 |
2022年11月14日 | 不動産開発3 | 1億円 |
ただ、その後もFunvestでの募集は続いている他、大家どっとこむでも募集されたことがあります。
さらに、アズ企画設計は2022年2月にi-Bondと業務提携をしている上、アズ企画設計自身でも不動産特定共同事業の登録をしているのです。
なので、バンカーズが取ったというより、アズ企画設計が資金調達方法を模索していると考えた方が良いでしょう。
バンカーズの引き抜きが投資家に与える影響
では、バンカーズによる引き抜きは我々投資家にどのような影響を与えるのでしょうか?
懸念されるのは利回りの低下
最も懸念されるのは利回りの低下です。
借り手を引き抜く際に有効なのは貸出金利の低減です。
例えば、これまでクラウドバンクが香港に8%で貸し、手数料2%を引いて案件の利回りを6%にしていた。
そこにバンカーズが割り込み香港に6%で貸し、手数料2%を引いて案件の利回りを4%にした。
こうなると我々投資家にとっては同じ借り手で利回りが6%から4%に下がることになります。
クラバンのままの方が良いよね。
利回りの低下は起きていない
きっとそうだろうと思って調べてみたのですが。
どうやらそうなってはいないようです。
SBIソーシャルレンディング系
まずSBI-SL系です。
不動産担保ローン事業者ファンド時代は募集時の想定利回りが2~5%、分配時の実際の利回りは3%台中盤でした。
これに対してバンカーズに移ってからの利回りはすべて4%です。
借り手 | 利回り |
---|---|
TH社 | 4.0% |
AF社 | 4.0% |
DC社 | 4.0% |
ほぼ同じと言って良いでしょう。
スマートレンド系
次にスマトレ系ですが、maneoファミリー時代は6~12%という高利回りでした。
また、クラウドバンク時代の香港案件は直近で6.5%です。
これに対してバンカーズ移籍後はJC&Gと新日本信用保証案件が3.5~4%、香港案件は6.3~6.7%です。
借り手 | 利回り |
---|---|
JC&G | 4.0% |
新日本信用保証 | 3.5% |
香港 | 6.3~6.7% |
maneoファミリー時代が異常だっただけであり、バンカーズに移ったことで利回りが下がったとは言えないでしょう。
あの時代は狂ってた…
J.LENDING系
次にJ.LENDING系の2社です。
TT社ではバンカーズで4%になったあと、J.LENDINGでも4%に下がっています。
募集日 | 貸し手 | 利回り |
---|---|---|
2021年2月15日 | J.LENDING | 6.1% |
2021年6月11日 | J.LENDING | 4.7% |
2021年11月16日 | J.LENDING | 4.5% |
2022年2月1日 | バンカーズ | 4.0% |
2022年4月20日 | J.LENDING | 4.0% |
2022年8月29日 | J.LENDING | 4.0% |
これだけ見るとバンカーズが入ったことで利回りが下がったと見ることもできます。
一方、EL社ではバンカーズで4%に下がったあともJ.LENDINGでの利回りはさほど下がっていません。
募集日 | 貸し手 | 利回り |
---|---|---|
2021年8月13日 | J.LENDING | 7.0% |
2021年11月24日 | J.LENDING | 6.0% |
2022年2月14日 | J.LENDING | 6.0% |
2022年2月22日 | バンカーズ | 4.0% |
2022年3月14日 | J.LENDING | 6.0% |
2022年4月18日 | J.LENDING | 5.5% |
2022年12月16日 | バンカーズ | 4.0% |
以上より、バンカーズの参入で利回りが下がったと結論付けるのは無理があると思います。
アズ企画設計
アズ企画設計に至ってはFunvestの2.25%のあとに、バンカーズがそれより低い2%を出しています。
募集日 | 貸し手 | 利回り |
---|---|---|
2022年1月5日 | Funvest | 2.25% |
2022年2月7日 | Funvest | 2.25% |
2022年3月11日 | Funvest | 2.25% |
2022年6月14日 | バンカーズ | 2.0% |
2022年10月3日 | 大家どっとこむ | 4.0% |
2022年10月13日 | バンカーズ | 3.5% |
2022年11月14日 | バンカーズ | 3.5% |
2022年11月14日 | Funvest | 3.0% |
2023年1月5日 | Funvest | 3.0% |
さらに、大家4%、バンカーズ3.5%のあと、Funvestでさらに低い3%が2回続けて出ました。
2回とも満了しています!
投資家への影響はほぼない
これらの事実から、バンカーズの引き抜きによって利回りが下がったとは認められません。
よって、投資家への影響はほぼないと考えます。
明らかなデメリットはないよと。
バンカーズの今後に期待
以上、バンカーズによる借り手の引き抜き状況を見てきました。
借り手の引き抜きは人の畑を荒らすようなものであり、バンカーズの本気度が伺えます。
利回りが下がらずに投資の機会が増えるならば、投資家として歓迎すべきことでしょう。
バンカーズの今後に期待します。
次はどこを引き抜く?!
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