ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで得た所得には、所得税の他に住民税がかかります。
この記事では、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの
- 住民税の算出方法
- 住民税の納付方法
- 住民税の納税が免除される条件
- 住民税免除の誤解
について説明します。
この記事を読めばソシャレンと不動産クラファンの住民税が一通り分かるよ!
タップできる目次
ソーシャルレンディングの住民税の算出方法
それではまず、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの住民税の算出方法を、基礎から分かりやすく説明します。
(※ なお、初心者向けに話を簡単にするため、調整控除を含む税額控除が一切ない前提で説明します。)
できるだけていねいに説明するよ!
ソーシャルレンディングの住民税は所得割
住民税には次の2種類があります。
- 所得割:所得の金額に応じて税額が決まる
- 均等割:所得の金額に関係なく税額が定額
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで得られる分配金にかかる住民税は所得割です。
ってことは、ソシャレンで儲かれば儲かるほど、支払う住民税も増えるんだね。苦笑
ソーシャルレンディングの住民税の税率
住民税の税額は課税所得に住民税率をかけて求めます。住民税の税率は10%です。
10%の内訳は都道府県民税と市区町村民税に分かれます。
区分 | 都道府県民税 | 市区町村民税 |
---|---|---|
政令指定都市の場合 | 2% | 8% |
上記以外の場合 | 4% | 6% |
政令指定都市であるかで内訳は変わりますが、僕たちが払うのがトータル10%であることは同じです。
なお、一部の自治体では税率が上記とは異なります。(例:名古屋市市民税7.7%、神奈川県県民税4.025%)
名古屋に住むと住民税が0.3%安くなるんだ。うらやましいなぁ~
ソーシャルレンディングの住民税の出し方
住民税の算出式
住民税は次の式に当てはめて算出します。
- 住民税=課税所得×10%-税額控除
(※ この記事では税額控除はないものとして話を進めます。)
ソーシャルレンディングの住民税算出の基本
そして、
- 住民税=課税所得×10%
- 課税所得=所得-所得控除
- 所得=収入-経費
- → 課税所得=収入-経費-所得控除
- → 住民税=(収入-経費-所得控除)×10%
ですが、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングに適用される所得控除はありません。
したがって、ソシャレン、不動産クラファンの住民税の算出式は、
- 住民税=(収入-経費)×10%
となります。
例えば次のような場合、
- OwnersBookの分配金:50,000円
- 勉強するために購入した書籍代:2,000円
- セミナーの参加費と交通費:3,000円
住民税は次のように算出されます。
- (50,000円-2,000円-3,000円)×10%=4,500円
入ってきた分配金から掛かった経費を引いて、ゼロを1個取れば良いってことか。
ソーシャルレンディングの損益の通算
なお、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングでは、発生した損失を所得から差し引くことができます。
例えば次のような場合、
- FANTAS fundingの分配金:50,000円
- maneoで生じた損失:30,000円
- 勉強するために購入した書籍代:2,000円
住民税は次のようになります。
- (50,000円-30,000円-2,000円)×10%=1,800円
アフィリエイトや仮想通貨とか、雑所得内の損益はすべてプラマイできるよ。
細かい注意点
細かい点として、課税所得は千円未満を切り捨て、住民税は100円未満を切り捨てます。
例えば、次のようになります。
- ソシャレンの分配金:32,980円
- ソシャレンの経費:1,000円
- → 課税所得=32,980円-1,000円=31,980円 → 31,000円で計算
- → 住民税=31,000円×10%=3,100円
ソーシャルレンディングの住民税の納付方法
次に、住民税の納め方です。
納付方法は2つだよ!
基本は窓口での納付
基本は市区町村役場の住民税窓口での納付です。
窓口で住民税の申告を行うと納付書が発行され、銀行やコンビニなどで一括または4回に分割して支払います。(「普通徴収」といいます)
都道府県民税もまとめて納付しますので、都道府県庁に行く必要はありません。
確定申告での住民税の申告
確定申告を行うと、住民税に関するデータが市区町村役場に送られ、住民税の処理が行われます。
支払い方法については以下の2つから選択できます。
- 納付書を使っての支払い(普通徴収、窓口の場合と同じ)
- 給与からの天引き(特別徴収)
特別徴収を選択した場合、副収入があることを勤務先に知られることになる点に注意しましょう。
確定申告で住民税の納付が完了するんじゃなくて、確定申告をしてから支払うってことね。
住民税の納税が免除される条件
次のいずれかに該当する場合、住民税を支払う必要はありません。
- 生活保護を受けている
- 障害者、未成年者、寡婦、寡夫で、前年の合計所得金額が125万円以下
- 総所得金額等が非課税限度額以下
- 課税所得がゼロ
ここでは3と4について詳しく説明します。
住民税が免除される条件だよ!
1.総所得金額等が非課税限度額以下である場合
総所得金額等が非課税限度額以下ならば住民税は免除されます。(地方税法附則第3条の3)
「総所得金額等」とは、ごく一般的な給与所得者や自営業者の場合、すべての所得の合計額とおおむねイコールです。
「非課税限度額」は以下の通りです。
扶養親族等がいない場合 | 35万円 |
---|---|
扶養親族等がいる場合 | 35万円×(本人、控除対象配偶者、扶養親族の人数の合計)+32万円 |
例えば次のような場合、
- 総所得金額等:140万円
- 給与所得:135万円
- ソシャレンの所得:5万円
- 家族構成:本人、扶養している妻と大学生の子供1人
- 非課税限度額:35万円×3+32万円=137万円
総所得金額等140万円が非課税限度額137万円を超えていますので、住民税を支払わなければなりません。
この人の場合、総所得金額等が137万円以下だったら、住民税を払わなくて済むってことか。
2.課税所得がゼロの場合
最初の方で説明した通り、住民税は次の式に当てはめて算出します。
- 住民税=課税所得×10%=(所得-所得控除)×10%
したがって、課税所得がゼロになれば、住民税を払わなくて良いと言うか、住民税が発生しません。
ですので、例えばさきほどの人のように総所得金額等が非課税限度額を超えていても、
- 総所得金額等(=合計所得金額):140万円
- 基礎控除:33万円
- 配偶者控除:33万円
- 扶養控除:45万円
- 社会保険料控除:15万円
- 生命保険料控除:10万円
- 医療費控除:5万円
- → 課税所得=150万円-33万円-33万円-45万円-15万円-10万円-5万円=-1万円
所得控除がたくさん付いて課税所得がゼロになると、住民税の納税は不要です。
かなり無理のある計算だと思うけど。笑
ソーシャルレンディングの住民税免除の誤解
一部のサイトなどで「~の場合は住民税を納税しなくて良い」と書かれているもののうち、以下のものは間違いです。
次のような場合、住民税は免除されないよ!
収入が100万円以内であれば免除-その1
次の説は場合によっては間違いです。
- ソシャレンも含めた収入が100万円以下であれば
- 住民税は払わなくて良い
給与所得者ならば免除
さきほど説明した通り、総所得金額等が非課税限度額以下ならば住民税の納税は不要です。
仮に給与所得者で次のような状況の場合、給与所得控除が65万円ありますので、総所得金額等は35万円になります。
- 総収入:100万円
- 給与収入:90万円
- ソシャレンの収入:10万円
- 総所得金額等=(90万円-65万円)+10万円=35万円
- 家族構成:本人のみ → 非課税限度額:35万円
扶養家族等がいなければ非課税限度額は35万円ですので、住民税は免除されます。
このことから「収入が100万円以下であれば住民税は免除」と書いているサイトがあります。
非給与所得者は免除にならない
ただし、これが当てはまるのは給与所得者の場合だけです。
なぜならば、自営業者など非給与所得者には給与所得控除は適用されないからです。
例えば、非給与所得者が次のような状況で経費がない場合、
- 総収入:100万円
- 給与収入:90万円
- ソシャレンの収入:10万円
- 総所得金額等=90万円+10万円=100万円
- 家族構成:本人のみ → 非課税限度額:35万円
となり、総所得金額等が非課税限度額を超えるため、住民税は免除されません。
つまり「100万円以下は免除」は給与所得者については正しいですが、非給与所得者については正しくありません。
収入が100万円以内であれば免除-その2
また、給与所得者についても100万円の法則が当てはまらない場合があります。
ポイントは「給与所得控除は給与収入からしか差し引くことができない」点です。
例えば次のような場合、給与所得控除は65万円ですが、給与収入が60万円ですので60万円しか差し引くことができません。
- 総収入:100万円
- 給与収入:60万円
- ソシャレンの収入:40万円
- 総所得金額等=(60万円-60万円)+40万円=40万円
- 家族構成:本人のみ → 非課税限度額:35万円
給与所得控除が5万円余りますが、ソーシャルレンディングの収入40万円から差し引くことはできないのです。
このため、総所得金額が非課税限度額を上回るので、住民税は免除されません。
給与所得控除は給与からしかマイナスできないことに注意だね。
ソシャレン所得が20万円以下であれば免除
次の説は間違いです。
- 給与所得以外の所得が20万円以下であれば
- 確定申告は必要ない
- したがって、ソーシャルレンディングの所得が20万円以下であれば
- 住民税は払わなくて良い
1ヶ所から給与を得る給与所得者で、給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円以下であれば、確定申告を行う必要はありません。(所得税法第121条)
ですが、「確定申告が必要ない=住民税が免除される」ではありません。
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの所得が20万円以下であれば確定申告は不要ですが、住民税は免除されません。
仮に20万円であれば、20万円×10%=2万円の納税が必要です。
ただ単に所得税の確定申告をしなくて良いってだけの話で、住民税の納税が免除されるわけではないのね。
源泉徴収されているので納税不要
次の説も間違いです。
- ソシャレンと不動産クラファンは源泉徴収されている
- なので、住民税は別途に支払わなくて良い
株や投資信託の配当所得、譲渡所得は、住民税の源泉徴収(正しくは特別徴収)の対象です。(地方税法第71条の30、同50)
なので、株や投資信託では住民税は源泉徴収されているので、別途に支払う必要はありません。
これに対し、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの所得は雑所得に区分されますが、雑所得は住民税の源泉徴収の対象ではありません。
ソシャレンと不動産クラファンでは住民税は源泉徴収されていないので、別途支払う必要があります。
ソシャレンと不動産クラファンで源泉徴収されているのは所得税だけだよ!
20%源泉徴収されているので納税不要
次の説も間違いです。
- 株や投資信託は20%源泉徴収されている
- ソシャレンと不動産クラファンも20%源泉徴収されている
- なので、住民税を別途に支払う必要はない
同じ20%でも内訳が違います。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
株や投資信託 | 15% | 5% |
ソシャレンやクラファン | 20% | - |
株や投資信託の住民税は5%で、源泉徴収されます。
これに対し、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの住民税は10%で、源泉徴収はされていません。
同じ20%でも、株や投資信託は源泉徴収で住民税を納税しているのに対し、ソシャレンと不動産クラファンでは源泉徴収されていない、つまり住民税を納税していません。
したがって、住民税を別途に支払う必要があります。
年末調整されているので納税不要
こちらも完全な間違いです。
- 給与所得者は年末調整をしている
- なので、ソシャレンと不動産クラファンの住民税は別途に支払わなくて良い
確かに、給与所得に対する住民税の支払い処理は年末調整で完了しています。
しかし、年末調整の対象は給与所得など勤務先が関わるものだけです。
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの収入については年末調整されていませんので、住民税は支払っていない状態です。
したがって、別途に支払わなくてはなりません。
よく考えたら、僕がソシャレンをやっていることを会社は知らないし、知られたくないもんな。
住民税未納に伴う延滞金と強制執行
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの住民税を払わなかった場合、延滞金などのペナルティが課されます。
払わずに済ませられるほど、お上は甘くないよ!笑
住民税の延滞金
住民税を期日までに納付しなかった場合、下記の料率で算出した延滞金が発生します。(地方税法第326条)
延滞期間 | 年利 |
---|---|
1ヶ月以内 | 2.6% |
1ヶ月超 | 8.9% |
例えば、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで住民税が5万円発生し、これを6ヶ月間滞納した場合、住民税5万円に加えて1,900円の延滞金を支払わなければなりません。
利回り4%、運用期間6ヶ月の案件に10万円投資した場合の分配金が2千円だから、それがパーになると考えると大きいなぁ。
最終的には強制執行
そのまま延滞を続けると、役所から督促状が送られてきたり、職員が訪ねてきたりします。
そして、最終的には資産の差し押さえなどの強制執行が行われます。
強制執行が行われるのは数年間に渡って滞納した場合ですが、逆に言うと数年経とうとも見逃してはもらえないということです。
ソーシャルレンディングの住民税は踏み倒せないってことか。
ソーシャルレンディングの住民税のまとめ
長くなりましたので最後にまとめます。
- ソシャレンの住民税の出し方
- 税率は10%
- 住民税=(収入-経費)×10%
- ソシャレンの住民税の払い方
- 市区町村役場で申告または確定申告
- 普通徴収:銀行やコンビニで支払い
- 特別徴収:給与から天引き
- 住民税免除の条件
- 総所得金額等が非課税限度額以下
- 本人だけ:35万円
- 本人+扶養1人:102万円
- 本人+扶養2人:137万円
- 本人+扶養3人:172万円
- 課税所得がゼロ
- 総所得金額等が非課税限度額以下
- 住民税が免除にならないケース
- 収入100万円以下だが非給与所得者
- 収入100万円以下だが給与収入が65万円未満
- 確定申告不要でも住民税は免除されない
- ソシャレンの住民税は源泉徴収されていない
- ソシャレンの住民税は年末調整されていない
- 住民税未納のペナルティ
- 延滞金
- 強制執行
- 住民税は踏み倒せない
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングでは、住民税を別途に支払わないといけない。
このことを絶対に忘れないでください。
何をすれば良いか分からない人は、役所か税務署に電話をするのがオススメだよ!
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