大阪ホテル案件に関してOwnersBookへの批判が止まりません。
ただ、OwnersBookの対応は同種の他社の対応と比較して極端に悪いものではないのも事実です。
にも関わらず、なぜOwnersBookはこれほどまでに批判されるのか?
その原因の一つが初動のミスにあると考えます。
初動のミス?
今回は2018年に起きたある延滞事件と比較し、OwnersBookが初期対応で犯したミスを考察します。
出だしでミスってなければ…
落ちてるアマギフを拾いましょう!
タップできる目次
OwnersBookは同等の他社以上に批判されている
感情を抜いてファクトベースで客観的に見た場合ですが、OwnersBookは過度に批判されていると感じます。
誤解を招きかねない内容ですので、感情を排して冷静に読んでいただければ幸いです。
オナブ擁護ではないよ。
OwnersBookの対処はそこまで悪くない
元本毀損回避策は土地売却のみ
現在、延滞解消に向けてのOwnersBookの対処は担保となった土地の売却です。
客観的事実としてこの土地を可能な限り高額で売却する以外、元本毀損を回避、もしくは毀損を最小化する方法はありません。
連帯保証人は実質的に借り手と同一で、保証能力は期待できないでしょうから。
他に手はないと…
元本毀損絶対拒否派もいる
もちろん、元本が毀損しても良いからサッサと終わらせてほしいという、毀損容認早期終結派もいるでしょう。
しかし、元本割れは一切容認できないという元本毀損絶対拒否派がいることもまた事実です。
- OwnersBook被弾者
- 毀損容認早期終結派
- 元本毀損絶対拒否派
売れるまで延滞はセット
つまり、OwnersBookは2つの選択肢のいずれかを選ぶしかない。
- 売れる価格で売って早期に終結させる
- 元本最大回収となる売却を目指す
仮に後者を選ぶ場合、売却実現まで延滞になるのは当然です。
そして、OwnersBookは後者を選び延滞が続いている。
売却するまで終われない…
OwnersBookの投資家への「対応」についてはベストとは言えないかもしれない。
しかし、債務不履行という現状への「対処」についてに限定するならば、そこまで悪くないと思うのです。
不満かどうかは別の問題としてです!
情報発信も他社より劣っていない
情報発信は他社より良い
また、情報発信についても十分か否かはともかく、他社より劣ってはいないです。
これは客観的事実に基づく比較評価です。
先日、延滞中7社の情報発信状況を調査した記事を書きました。
7社の発信状況を比較すると下表のようになります。
業者 | 延滞発生の報告 | 経過報告 |
---|---|---|
OwnersBook | 自社サイトで公表 (トップページに掲載) |
有(2月1回ペース) (サイトで公開) |
オルタナバンク | 自社サイトで報告 (会員限定公開) |
なし (今後は月イチ) |
クラウドバンク | 自社サイトで公表 (トップページに掲載) |
有(月イチペース) (サイトで公開) |
TOMOTAQU | 自社サイトで公表 (過去NEWSに掲載) |
なし |
バンカーズ | 自社サイトで公表 (過去NEWSに掲載) |
有(月イチペース) (出資者にメール) |
bitREALTY | 出資者にメール | なし |
property+ | 出資者にメール | なし |
自社サイトで非会員も閲覧できる形で公表しているのはOwnersBookとクラウドバンクだけです。
公開で経過報告をしているのも両社だけ。
トモタクのようにサイトでの第一報だけで終わっている業者もあれば、bitREALTYやproperty+のように出資者だけにメール1回で終わらせている業者もある。
少なくとも情報公開の方法や頻度について、OwnersBookは他社と比べて劣ってはいないです。
内容は?
発信内容も極端に悪くはない
情報発信の内容については、クラウドバンクに比べるとかなり劣ります。
ただ、その他の5社と比べて極端にひどいかというと、そこまでではないです。
見積もりの根拠の開示を求める声がありますが、僕は過去6年ソシャレンをやってきて、そのレベルの資料を出した業者を見たことはありません。
他社同等に不十分なのに他社以上に叩かれている
他社同等に不十分
あくまでも感情を完全に廃したファクトベースで見た場合の話としてですが。
OwnersBookが現状選べる選択肢は2つです。
- 売れる価格で売って早期に終結させる
- 元本最大回収となる売却を目指す
後者を選ぶ以上、高値での売却実現まで延滞になるのは当然の帰結。
情報発信については十分に満足できるレベルではないものの、他の6社と比べて特に劣るわけでもない。
せいぜい他社同様に不十分といったところでしょう。
他社同様によろしくないと。
他社以上に叩かれている
延滞を食らっている投資家から不満が出るのは当然のことです。
ただ、現在のOwnersBookは同等に不十分な他社よりはるかに叩かれていると思いませんか?
6カ月延長で追加情報ゼロのトモタク、メールでの事実通知だけで放置のbitREALTY。
OwnersBookほどには叩かれていないじゃないですか?
確かに。
なぜ、OwnersBookはこれほどまでに批判されるのか?
その原因の一つが初動のミスにあると僕は考えます。
ここからが本題です!
OwnersBookは初動を誤った
OwnersBookが他社以上に批判される原因は、問題発生直後の初動にあると考えます。
SBIソーシャルレンディングの元本毀損事件
初動のミスが原因と考えるのは6年前の旧SBIソーシャルレンディングの元本毀損事件があるからです。
ここ数年でソシャレンを始めた方はご存知ないと思うので、簡単に紹介します。
不動産バイヤーズローンファンドで延滞発生
2018年7月に旧SBIソーシャルレンディング(以下、SBI-SL)の不動産バイヤーズローンファンド16~22号で借り手が債務不履行となり延滞が発生しました。
当初の延滞額は以下の通りです。
案件 | 募集額 | 当初延滞額 |
---|---|---|
16号 | 9億5,200万円 | 4億9,000万円 |
17号 | 5億8,500万円 | 7,000万円 |
18号 | 1億6,000万円 | 8,800万円 |
19号 | 3億1,100万円 | 1億8,100万円 |
20号 | 1億9,150万円 | 1億3,950万円 |
21号 | 6億7,000万円 | 7,000万円 |
22号 | 3億2,000万円 | 2億9,700万円 |
合計 | 31億8,950万円 | 13億3,550万円 |
募集額の4割が延滞に。
投資家のお金13億円が消えてなくなる危機でした。
オナブの2倍近い…
元本の6%が毀損で終戦
7案件の募集の際、SBI-SLは担保が評価額の65~80%で売却できれば元本は回収できるとしていました。
しかし、延滞金を全額回収できたのは2案件だけ。
他の5案件では全額回収はできず、あわせて1億8千万円の元本毀損で終戦となったのです。
案件 | 当初延滞額 | 元本毀損額 |
---|---|---|
16号 | 4億9,000万円 | 2,218万円 |
17号 | 7,000万円 | 0円 |
18号 | 8,800万円 | 0円 |
19号 | 1億8,100万円 | 4,451万円 |
20号 | 1億3,950万円 | 3,425万円 |
21号 | 7,000万円 | 2,470万円 |
22号 | 2億9,700万円 | 5,818万円 |
合計 | 13億3,550万円 | 1億8,382万円 |
投資家のお金が消えた…
募集額、すなわち投資家が出資した総額に対する元本毀損率は全体で5.8%。
案件 | 募集額 | 元本毀損額 | 毀損率 |
---|---|---|---|
16号 | 9億5,200万円 | 2,218万円 | 2.3% |
17号 | 5億8,500万円 | 0円 | 0% |
18号 | 1億6,000万円 | 0円 | 0% |
19号 | 3億1,100万円 | 4,451万円 | 14.3% |
20号 | 1億9,150万円 | 3,425万円 | 17.9% |
21号 | 6億7,000万円 | 2,470万円 | 3.7% |
22号 | 3億2,000万円 | 5,818万円 | 18.2% |
合計 | 31億8,950万円 | 1億8,382万円 | 5.8% |
20号と22号の出資者に至っては、自分のお金の2割近くが失われたのです。
100万円だったら20万円…
SBI-SLが絶賛された要因は初動の良さ
SBI-SLは絶賛された
こうして不動産バイヤーズローンファンドは元本毀損で終わりました。
ところが、ソシャレン投資家の多くがSBI-SLを絶賛したのです。
なんで!
おかしいと思いませんか?
担保が評価額の6~8割で売れれば大丈夫と言っておきながら、最大で2割弱の元本毀損。
どう考えてもSBI-SLの失態です。
今のOwnersBook以上にフルボッコにされてもおかしくないのに、ソシャレン界隈の世論はSBIマンセー。
絶対おかしいと思い僕は反対記事をアップしましたが。
僕のような意見は圧倒的少数派でSBI-SL絶賛の嵐となったのです。
なぜそんなことに?
理由は3つあります。
理由1:他がひどすぎた
一つは他がひどすぎたことです。
SBI-SL事件が起こる前年にみんなのクレジットが97%の元本毀損で終戦。
年初にはラッキーバンクで元本毀損発生。
6月にグリーンインフラレンディングで100億円を超える延滞。
さらに7月には四天王と称された業界の雄、maneoマーケットが金融庁から行政処分。
とにかく他がどうしようもなくひどすぎた。
それらと比較してSBI-SLがはるかにマシに見えたことが絶賛につながった大きな要因でしょう。
評価がマシマシで底上げされた。
理由2:早期解決した
理由の2つ目は早期解決したことです。
延滞発生が2018年7月、終戦が翌2019年1月ですので、7カ月で解決に至っています。
延滞発生で運用期間を1年延長したOwnersBookの対応とは真逆です。
理由3:ウケの良い初動をした
もう一つの理由が初動の良さです。
狙ったのかは分かりませんが、投資家に分かりやすく受けの良い対処を早期に集中して行いました。
延滞発生からのSBI-SLの対処は以下の通りです。
日付 | 対処 |
---|---|
2018年7月9日 | 延滞発生を公表(競売手続きを検討) |
2018年7月25日 | 進捗報告1(担保の競売、差押申立を実施) |
2018年7月30日 | 進捗報告2(19号の一部債権を回収) |
2018年8月31日 | 16号の一部債権回収を報告 |
2018年9月18日 | 進捗報告3(17~22号の債権回収の進展なし) |
2018年9月20日 | 進捗報告4(一部債権譲渡で5.5億円を回収) |
2018年10月31日 | 進捗報告5(一部債権譲渡で3億円を回収) |
2019年1月24日 | 進捗報告7(担保競売で2億円を回収、終戦) |
7月9日の第一報で早くも担保不動産の競売手続きの検討に言及しています。
発生3週間後の進捗2報では回収金を8月15日に19号出資者の口座に送金すると発表。
進捗4報では17・18号の全額回収を報告。
早い段階で投資家が単語の意味を理解しやすい対策を取り、目に見える成果を出しています。
また、債権回収が進展していないという不都合な情報も含めて、こまめに発信していることにも注目です。
(参考:SBIソーシャルレンディングより延滞中の案件に関して貸付債権の回収の進捗報告他、SBIソーシャルレンディングから分配不能のお知らせ!債権回収状況の解説他)
当初イメージが続くネット世論の特性
SBI-SLの一連の対処が本当に正しかったのかは分かりません。
もしかしたら、急いで競売などせず状況を見ながらじっくり進めた方が回収率は上がったかもしれない。
でも、Xとかヤフコメとか見ていると感じますが、ネット世論って最初に形成されたイメージ、論調が続きがちですよね?
そして、いったん世論が形成されると異論を出しにくい。
下手に異論を唱えると世論大勢派から叩かれる。
ありがちよね。
SBI-SLは事件発生当初に担保競売や差押申立など、単語の意味が分かりやすく、評価されやすい対処を矢継ぎ早に打った。
それにより極めて早い時期にSBI-SL絶賛の世論が形成された。
それ以降は何をやってもSBIマンセーで、それが最後まで続く。
これが元本毀損という大失態で終わったにも関わらず、SBI-SLが絶賛された要因の一つではないでしょうか?
初動で世論を味方につけた!
OwnersBookは初動をミスった
逆に初動でミスを犯したのがOwnersBookです。
初動にポジティブな内容がなかった
延滞発生初期のOwnersBookの対処は次のようなものでした。
日付 | 対処 |
---|---|
2021年3月31日 | 返済遅延、運用期間1年延長を発表 |
2022年1月17日 | 返済遅延の継続を発表 |
2022年3月24日 | 事実上の運用期間再延長を発表 |
第一報で投資家に伝えられた内容は以下です。
- 借り手が期日までに返済できなくなった
- 運用期間を1年延長する
- 借り手は物件の売却に尽力する
- 進捗があったら報告する
お金が戻ってくるかも?と期待させるような内容が一切ありません。
安心につながらない…
それどころか以下の記載がある始末です。
当社は適切な情報開示に努めてまいる所存です。大変恐縮ですが、直接お問い合わせをいただきましても、皆さまに公表している以上のご回答はできかねますこと、予めご了承のほどお願い申し上げます。
おっしゃる通りなのでしょうが、投資家からすれば「問い合わせするなってことかよ!」となりますよね。
カチンとくる。
さらに、最初の1カ月で3回の発表をしたSBI-SLに対し、OwnersBookは第一報から10カ月近く音沙汰なしでした。
仮に進展がなくても報告があるかないかで印象は変わります。
事実、クラウドバンクは進捗がなくても月次の報告を欠かしていません。
第一報を補う詳細報告とか、延滞後初めて利払いがあったとか、初期にもう少し発信をしておけば印象は変わったのではないでしょうか?
さすがに10カ月放置は…
対株主発表が決定打
もう一つ大失敗だったと思うのが、再延長決定後の株主に対する発表です。
最初の発表から1年経った2022年4月8日、ロードスターキャピタルは「連結子会社における債権の取立不能のおそれに関するお知らせ」を発表しました。
その中で大阪ホテル案件が自社の経営に与える影響について以下の記載があったのです。
6.今後の見通し
当該貸倒引当金繰入額につきましては、2022年12月期第1四半期の営業損益もしくは経常損益に影響する見込みです。
一方で、本件貸付は匿名組合契約に基づく出資を原資とした貸付であり本件貸付から生ずる損益は最終的には匿名組合出資者が享受します。そのため、2022年12月期通期の当社グループの業績予想に与える影響については、営業損益・経常損益への影響は上記のとおりですが、同額を匿名組合出資者に匿名組合損益分配額として損益配当するため、当期純利益への影響はございません。
要は「損失はソシャレン投資家が負うので株主のみなさんはご安心を」ということです。
事実はその通りですし、株主対策でしょうがなかったのかもしれません。
しかし、大阪ホテル案件の出資者の立場ではどうでしょうか?
いきなり1年間延長された上に問い合わせするなと言われ、10カ月音沙汰なしで放置された末に再延長、挙句の果てに損失は大阪ホテル出資者が負うので株主様はご安心を。
ブチ切れますよ、普通。
ないがしろにされてると感じるよね。
当初に悪いイメージを形成
初動でSBI-SLのような投資家ウケの良い対処や発信を出せなかった。
その後、1年近く放置。
ついには投資家軽視発表で決定打。
最初の1年でOwnersBookはヒールになってしまった。
それ以降は今の岸田さんと同じで、何をやっても何を言っても無条件にフルボッコにされる。
やった内容、言った内容に関係なく、主語が岸田orオナブであればすべて悪。
これがOwnersBookが同等に不十分な他社以上に批判されている原因だと思うのです。
初動のミスが最後まで…
トラブル対策は初動が大切
OwnersBookと同等に不十分な業者は他にもある。
にも関わらずOwnersBookがとりわけ盛大に叩かれている。
最初に形成されたイメージが今も響いているわけであり、初動がいかに大切かを痛感します。
一方で我々投資家には初動のミスに引きずられない冷静な観察、判断が求められるでしょう。
心したいものです。
世論に踊らされることなく!
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