勤労学生控除とは何か?
この記事を読めば、
- ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
- 所得税を計算する際の
- 勤労学生控除の扱いと
- 勤労学生控除を使った節税の仕方
が分かります。
マイナーな所得控除ですが、使い方次第で節税につながります。
アルバイトで稼いでいる学生さんは必見だよ!
タップできる目次
勤労学生控除の概要
まず最初に、勤労学生控除の重点を説明します。
- 学生がアルバイトなどをすると
- 一定の金額が
- 課税所得から引かれる
その結果、
- 課税所得が少なくなるので
- 税金が安くなる
です。
学費や生活費のために働いている学生を、納税負担を軽減することで支援する制度です。
次に、勤労学生控除で税金が安くなる仕組みを大まかに説明するよ!
勤労学生控除で税金が安くなる仕組み
次のような学生の場合で考えてみます。
- 年間の収入:130万円
- 収入の内訳:バイト先からの給与所得だけ
この学生の場合、以下の勤労学生控除を受けることができます。
- 所得税:27万円
- 住民税:26万円
これによって、課税所得が減りますので、減った課税所得に本来かかるはずだった税金を払わなくてよくなります。
課税所得が195万円以下の場合の所得税率は5%、住民税は一律10%ですので、
- 所得税の減額:27万円×5%=13,500円
- 住民税の減額:26万円×10%=26,000円
あわせて39,500円、払わなければならない税金が減ります。
税金が4万円減るってのは学生にとっては大きいよね。
勤労学生控除の対象者
では、どのような場合に勤労学生控除を受けることができるのか?
勤労学生控除が適用される条件を見ていきましょう。
アルバイトをしている学生ならば、必ず適用されるわけではないよ!
勤労学生控除を受けることができる条件
勤労学生控除を受けることができるのは、以下の4条件をすべて満たす人です。
- 給与所得など勤労による所得がある
- 合計所得金額が65万円以下である
- 合計所得金額のうち、勤労以外による所得が10万円以下である
- 以下のいずれかに所属する学生である
- 小中学校、高校、大学、高専など
- 一定の課程を履修させる専修学校、各種学校
- 一定の課程を履修させる職業訓練法人
(典拠:所法第2条)
勤労学生控除の対象となる学生
細かい点はこのあとで書きますが、勤労学生控除を受けられるのは、思いっきりザックリ言うと、
- アルバイトや起業などで収入を得ており
- 合計所得金額が65万円以下である
- 各種学生
つまり、収入がある学生です。
ポイントとなるのが「合計所得金額」ですが、こちらも思いっきりザックリ言うと、次の2つの合計額です。
- バイト代から給与所得控除65万円を引いた額
- 自分でやっている商売の収入から経費を引いた額
ですので、アルバイトだけをしている人は、年間のバイト代から65万円を引いた金額が65万円以下ならば、勤労学生控除を受けられます。
逆に言うと、年間のバイト代が130万円以下ならば勤労学生控除の対象です。
起業して自分で商売をやっている人は、収入から原価や経費を引いた額が65万円以下ならば控除の対象です。
起業して自分の商売をやりながらバイトもしている人は、上の1と2の合計が65万円以下、例えば次のようなパターンならば控除対象です。
- バイト代30万円-給与所得控除65万円=0円
- 商売の収入100万円-経費その他40万円=60万円
- 1+2=60万円
企業もアフィリエイトもせず、収入源はアルバイトだけという一般的な学生ならば、年収130万円以下なら勤労学生控除が適用されると考えてOKだよ!
注意点
さきほど挙げた勤労学生控除の対象となる4条件について、注意点は以下の通りです。
給与所得など勤労による所得
- 「給与所得」は給与収入から給与所得控除を差し引いた金額です
- 「勤労による所得」とは、事業所得、給与所得、退職所得、雑所得です(所法第2条)
- 「勤労による所得」には仕送りや奨学金は含まれません
- 「勤労による所得」には一時的な短期のアルバイトも含まれます
- ブログやYouTubeなどで得たアドセンス、アフィリエイト収益は雑所得ですので「勤労による所得」に含まれます
ブログやYouTubeで稼いでいる学生は要注意だね。
合計所得金額
合計所得金額とは以下の1~4の合計です。
- 以下の合計額
- 事業所得
- 不動産所得
- 給与所得
- 利子所得
- 配当所得
- 短期譲渡所得
- 雑所得
- 以下の合計額の2分の1
- 長期譲渡所得
- 一時所得
- 退職所得
- 山林所得
ごく普通の会社員、自営業者についてザックリ言うと、すべての収入から給与所得控除と経費を差し引いたものです。
奨学金の扱い
- 貸与型奨学金は借金ですので所得には含まれません
- 給付型奨学金は非課税なので65万円には含まれません(所法第9条)
- ただし、給付型奨学金の年間の受給額が110万円を超えると贈与税がかかります
奨学金が年間110万円以下であれば、気にしなくて良いってことだね。
勤労以外による所得
「合計所得金額のうち、勤労以外による所得が10万円以下である」について。
「勤労以外による所得」に該当するのは次の所得区分です。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
なお、銀行の利子所得は源泉分離課税ですので、そもそも合計所得金額に入りません。
また、特定口座(源泉徴収あり)で運用している株や投資信託の配当所得、譲渡所得は源泉分離課税ですので、合計所得金額に入っていません。
ですので、アパートの大家でもやっていない限り、普通の学生はこの10万円の規定は気にしなくて大丈夫です。
学校の範囲
勤労学生控除の対象となる学生の所属先として認められるのは以下の学校などです。(所法第2条)
- 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校(学校教育法第1条)
- 専修学校、各種学校
- 国、地方公共団体、私立学校法人、宗教法人などが設置し
- 所令第11条の3で定める課程を有する
- 専修学校または各種学校
- 職業訓練校
- 所令第11条の3で定める課程を有する
- 認定職業訓練を行う職業訓練法人
なお、夜学、大学院も含まれます。
また、履修後に一般の学生と同じ資格が与えられる通信教育生も勤労学生の対象として認められます。(所基通2-43)
専門学校、専修学校は含まれるものと含まれないものがありますので、学校に確認が必要です。
分からないことは自分で判断せずに聞こうね。
勤労学生控除の控除額と節税効果
勤労学生控除が適用されると、いくらの所得控除が受けられるのか。
その結果、税金がどれだけ安くなるのか見ていきます。
ここからは具体的な金額の話だよ!
勤労学生控除の控除額
勤労学生控除の控除額は以下の通りです。(所法第82条、地法第34条、第314条の2)
- 所得税:27万円
- 住民税:26万円
所得税、住民税を計算する際に、課税所得からそれぞれの控除額が差し引かれます。
具体的に税金がどのように減るのか、最も多いアルバイトだけで収入を得ている学生を例に説明します。
収入の上限は130万円
勤労学生控除を受けることができる条件は、「合計所得金額 ≦ 65万円」です。
所得をアルバイトなど給与所得だけで得ているならば、「給与所得 ≦ 65万円」となります。
さらに、給与所得は収入から給与所得控除(収入が162万5千円以下の場合は65万円)を引いたものですので、「収入-65万円 ≦ 65万円」となります。
分かりやすく整理すると以下の通りです。
- 合計所得金額 ≦ 65万円
- 給与所得 ≦ 65万円(収入源が給与所得だけ)
- 収入-65万円 ≦ 65万円(給与所得=収入-給与所得控除)
- 収入 ≦ 130万円
つまり、アルバイトなど給与所得だけを得ている学生の場合、年収が130万円以下であることが勤労学生控除を受ける条件です。
ですので、勤労学生控除を受けている学生の年収は130万円以下となります。(給与所得だけを得ている場合)
130万円を超えると勤労学生控除の対象外になるから、130万円以下の学生についてだけ考えれば良いってことだね。
所得税はかからない
その上で、税金がどのようになるか見ていきます。
まず、所得税の額は次のように決まります。
- 収入から以下を引いて課税所得を出す
- 給与所得控除
- 所得控除
- 課税所得と税率から税額を出す
収入が130万円以下の場合、給与所得控除は65万円です
また、勤労学生控除を受ける学生の場合、所得控除には少なくとも次の2つが含まれます。
- 基礎控除:38万円(すべての納税者が受ける控除)
- 勤労学生控除:27万円
したがって、さきほどの所得税の出し方は次のようになります。
- 収入から以下を引いて課税所得を出す
- 給与所得控除:65万円
- 基礎控除:38万円
- 勤労学生控除:27万円
- 以上3つの合計:130万円
- 課税所得と税率から税額を出す
さきほど説明したように、勤労学生控除を受ける学生の収入は130万円以下です。
そこから給与所得控除など130万円を引くのですから、課税所得は必ずゼロになります。
したがって、所得税もゼロになります。
つまり、勤労学生控除を受ける場合、所得税はゼロです。
所得税の節税効果
節税効果も見ておきましょう。
収入が120万円の学生が勤労学生控除を受けなかったとします。
この場合、さきほど説明した通り給与所得控除と基礎控除だけが収入から引かれますので、課税所得額は27万円です。
27万円の場合の所得税率は5%なので、所得税は13,500円です。
- 課税所得=120万円-65万円-38万円=17万円
- 給与所得控除:65万円
- 基礎控除:38万円
- 所得税=17万円×5%=8,500円
勤労学生控除を受けることで、この8,500円を払わずに済むようになります。
仮に収入が上限の130万円であれば、同じように計算すると所得税は13,500円です。
したがって、勤労学生控除の所得税の節税効果は最大で13,500円です。
学生にとっては1万円は大金だから、勤労学生控除を受けられたらうれしいよね。
124万円以下であれば住民税はゼロ
勤労学生控除を受ける場合、住民税(所得割)は次のようにして出します。
- 収入から以下を引いて課税所得を出す
- 給与所得控除:65万円
- 基礎控除:33万円
- 勤労学生控除:26万円
- 以上3つの合計:124万円
- 課税所得×10%=住民税
※ 所得税と住民税では基礎控除と勤労学生控除の金額が違います。
したがって、勤労学生控除を受ける場合、収入が124万円以下であれば住民税は発生しません。
住民税の節税効果
仮に収入が130万円であった場合、勤労学生控除の有無で住民税がいくら変わるか見てみましょう。
- 勤労学生控除を受けない場合
- 収入:130万円
- 給与所得控除:65万円
- 基礎控除:33万円
- → 課税所得=130万円ー65万円ー33万円=32万円
- → 住民税=32万円×10%=32,000円
- 勤労学生控除を受ける場合
- 収入:130万円
- 給与所得控除:65万円
- 基礎控除:33万円
- 勤労学生控除:26万円
- → 課税所得=130万円ー65万円ー33万円-26万円=6万円
- → 住民税=6万円×10%=6,000円
- 節税効果=32,000円ー6,000円=26,000円
以上より、勤労学生控除による住民税の節税効果は最大で26,000円です。
勤労学生控除では所得税よりも住民税の方が節税効果が大きいんだね。
勤労学生控除を受けるための手続き
勤労学生控除を受けるにはどうすれば良いのか。
手続きなどについて説明します。
この手続きをしないと税金が安くならないよ!
給与所得者は年末調整
アルバイトなどの給与所得者の場合、年末調整を行うことで勤労学生控除を受けることができます。
年末が近づくと勤務先から配られる扶養控除等申告書に、学校名など必要な内容を記載します。(所法第194条)
非給与所得者は確定申告
学生で起業しているなど非給与所得者の場合は、確定申告を行うことで勤労学生控除を受けることができます。
バイトを掛け持ちしているなど、2ヶ所以上から給与を得ている場合も確定申告が必要です。
バイトを掛け持ちしている学生は要注意だね。
必要な書類
専修学校や職業訓練校などの学生が年末調整または確定申告を行う場合、次の2点を証明する書類が必要です。(所法第120条、第194条、所規第47条の2、第73条の2)
- その学校が法律で定める条件を満たしていること
- 学生がその学校の学生であること
これらの書類は学校の学生課などで発行してもらえます。
勤労学生控除のデメリット
税金が減って良さ気に見える勤労学生控除ですが、実はデメリットもあります。
親と相談した上で控除を受けないと、大変なことになる場合もあるよ!
扶養控除
子供の合計所得金額が年間38万円以下の場合、親は扶養控除を受けることができます。
仮に子供の収入がアルバイト先からの給与所得だけの場合、子供の年収が103万円以下であれば親が扶養控除を受けられるということです。
- 合計所得金額 ≦ 38万円
- 給与所得 ≦ 38万円
- 収入-給与所得控除65万円 ≦ 38万円
- 収入 ≦ 38万円+65万円=103万円
扶養控除を受けることで親の課税所得額が減るので、それにかかる分の親の税金が減ります。
扶養控除を受けられなくなる
逆に言うと、子供が勤労学生控除を受けるくらい稼いで収入が103万円を超えると、親が扶養控除を受けられなくなります。
その結果、課税所得が増えるので、その分だけ親の税金が増えることになるのです。
子供が勤労学生控除で税金が減っても、扶養控除がなくなった親の税金が増えちゃうわけだ!
親の税金がどれくらい増えるか
扶養控除の控除額は子供の年令によって次のように決まっています。
年齢 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
~15歳 | 0円 | 0円 |
16~18歳 | 38万円 | 33万円 |
19~22歳 | 63万円 | 45万円 |
23~69歳 | 38万円 | 33万円 |
親が扶養控除を受けられなくなると、親の税金はどれくらい増えるでしょうか?
次のような親がいたとしましょう。
- 親の所得税率:10%
- 子供の年齢:20歳
- 所得税の扶養控除額:63万円
- 住民税の扶養控除額:45万円
現在、扶養控除を受けることで親の課税所得は所得税で63万円、住民税で45万円減っています。
その結果、それぞれにかかる分の税金が少なく済んでいます。
- 所得税の減額:63万円×10%=6万3千円
- 住民税の減額:45万円×10%=4万5千円
- 節税額の合計:10万8千円
扶養控除を受けることで、親の税金が10万8千円安くなっているということです。
もし、子供の収入が103万円を超えると扶養控除を受けられなくなります。
その結果、親の税金が10万8千円増えてしまうのです。
勤労学生控除で子供の税金が4万円減っても、親の税金が11万円近く増えたら、家族全体では7万円くらいの税金アップになってしまうんだ!
事前に親に相談すべき
親の税金が10万8千円増えたといっても、子供の収入が103万円を超えていますので、家族トータルでの収益は増えています。
ですので、扶養控除を受けられなくなる=損だから避けるべき、とは言えません。
ただ、国民健康保険の負担が増えたり、企業によっては独自に家族手当を設けている場合などもありますので、103万円を超える場合は事前に親に相談すべきでしょう。
子供の知らないところで影響が出るかもしれないから、必ず親に一言かけておこうね!
ソーシャルレンディングと勤労学生控除
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングと勤労学生控除には何か関係があるのか?
勤労学生控除をソシャレン、不動産クラファンの税金対策に使えるのか見ていきます。
ソシャレンをやっている学生は要チェックだよ!
ソーシャルレンディングの収益は雑所得
勤労学生控除を受けるためには重要な条件がありました。
- 合計所得金額が65万円以下である
この合計所得金額には給与所得などの他に雑所得が含まれます。
そして、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで得た収入は雑所得です。
仮にアルバイトとソーシャルレンディングをやっている学生の場合、勤労学生控除を受けるには、
- アルバイト代(給与所得)
- ソシャレンの収益(雑所得)
この2つの合計が65万円以下でなければなりません。
バイト代だけじゃなくてソシャレン、クラファンの儲けも頭に入れておかないといけないんだ。
給与所得控除でソシャレンの儲けは消せない
注意して欲しいのは、給与所得控除は給与所得からしか引き算できないことです。
例えば、次のような場合、
- アルバイト代:45万円
- ソシャレンの収益:75万円
65万円の給与所得控除を引き算できるのは、アルバイト代からだけです。
- 給与所得=45万円ー65万円=0
- 雑所得=75万円
- → 合計所得金額=75万円 → 勤労学生控除を受けられない
両方からあわせて65万円引けるわけではありません。
したがって、次のようにはなりません。
- 給与所得=45万円ー45万円=0
- 雑所得=75万円-20万円=55万円
- → 合計所得金額=55万円 → 勤労学生控除を受けられる
ですので、勤労学生控除を受けるためには、次の状況にする必要があります。
- (アルバイト代-65万円)+ソシャレン収益 ≦ 65万円
65万円の余った分でソシャレンの儲けを減らすことはできないってことね。
ソーシャルレンディングは計画的に
勤労学生控除を受ける前提であれば、ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングへの投資は計画的に行いましょう。
また、投資する際の銀行の振込手数料や、ソシャレンの勉強のために買った書籍代などをこまめに記録するべきです。
確定申告の際に必要経費として計上し、収益を減らすことができます。
ソシャレン、クラファンは総合課税で税率が高くなるから、細かい経費もしっかり計上しようね!
勤労学生控除のまとめ
それでは最後に、勤労学生控除の要点をまとめます。
- 勤労学生控除を受けると
- 課税所得が減るため
- 支払う税金が減ります
- 勤労学生控除を受ける主な条件
- 勤労による所得がある学生
- 合計所得金額が65万円以下
- バイトだけならば年収130万円以下
- 勤労学生控除の条件の主な注意点
- アフィリエイトも所得に含まれる
- 奨学金は含まれない
- 勤労学生控除の控除額
- 所得税:27万円
- 住民税:26万円
- 最大で39,500円の節税
- 勤労控除を受けるための手続き
- 1ヶ所からのバイト収入だけ:年末調整
- 2ヶ所以上からのバイト収入:確定申告
- 起業している:確定申告
- 勤労学生控除のデメリット
- 親の税金が増える
- 事前に親と相談すべき
- 勤労学生控除とソーシャルレンディング
- ソシャレンの収益も所得に入る
- バイト代だけではないので要注意
勤労学生控除は学生の税負担が減るという点でメリットがあります。
しかし、親の扶養控除がなくなるというデメリットもあります。
勤労学生控除を使った方が良いのか悪いのか。
家族全体の収益を考えて、親子でしっかりソロバンをはじきましょう。
税金だけを考えるのではなく、一家の収益全体で考えようね!
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