障害者控除とは何か?
この記事を読めば、
- ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
- 所得税を計算する際の
- 障害者控除の扱いと
- 障害者控除を使った節税の仕方
が分かります。
所得税、住民税に加え、相続税の控除についても解説します。
できるだけ分かりやすく説明するよ!
タップできる目次
障害者控除の概要
まず最初に、障害者控除の重点を説明します。
- 納税者本人や家族に障害があると
- 一定の金額が
- 課税所得から引かれる
その結果、
- 課税所得が減るので
- 支払う税金が減る
です。
一般論として障害者は健常者に比べて所得が低く、また生活コストもかかるため、障害者控除で税負担を軽くするということです。
それでは、障害者控除で税金が安くなる仕組みを大まかに説明します!
障害者控除で税金が安くなる仕組み
次のような納税者がいたとします。
- 課税所得:500万円
- 家族の1人が重度の障害者
- 自宅で一緒に暮らしている
この場合、この納税者は以下の障害者控除を受けることができます。
- 所得税:75万円
- 住民税:53万円
課税所得が所得税で75万円、住民税で53万円減るということです。
この結果、控除する前と後で支払う税金が次のように変わります。
(※ 所得税率が20%の場合、所得税額=課税所得×20%-427,500円、住民税は一律で課税所得×10%)
【控除前】
- 所得税:500万円×20%-427,500円=572,500円
- 住民税:500万円×10%=500,000円
- 合計:1,072,500円
【控除後】
- 所得税:(500万円-75万円)×20%-427,500円=422,500円
- 住民税:(500万円-53万円)×10%=447,000円
- 合計:869,500円
あわせて203,000円、払わないといけない税金が減りました。
見方を変えると、所得税の課税所得から控除された75万円にかかるはずだった20%分と、住民税の53万円にかかるはずだった10%分が減ったということです。
- 所得税:75万円×20%=15万円
- 住民税:53万円×10%=5万3千円
- 税金の減額合計:20万3千円
これが障害者控除で税金が安くなる仕組みです。
控除された分にかかるはずだった税金が免除される。これが所得控除の基本だよ!
障害者控除の対象
障害者控除では納税者本人や納税者の家族が障害者である場合、納税者本人の税金が安くなります。(家族が払う税金が安くなるのではありません。)
そして、障害者控除の適用対象となる「納税者の家族」や「障害者の範囲」には法律の決まりがあります。
法律の決まりについて具体的に見ていくよ!
障害者控除を受けられる人
以下の人が障害者である場合、納税者本人が障害者控除を受けることができます。
- 納税者本人
- 同一生計配偶者
- 納税者の配偶者で
- 納税者と生計を一にしており
- 年間の合計所得金額が38万円以下である者
- 但し、青色事業専従者等を除く
- 扶養親族 ※1
- 以下のいずれかであり
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)
- 都道府県知事から養育を委託された児童(里子)
- 市町村長から養護を委託された老人
- 納税者と生計を一にしており
- 年間の合計所得金額が38万円以下であり
- 青色事業専従者としてその年に給与をもらっていない、または
- 白色事業専従者でない者
- 以下のいずれかであり
なんか難しいことが書いててピンとこないんだけど。
ザックリ言うと、
- 納税者本人や家族が障害者である場合
- 納税者本人が所得控除を受けることで
- 納税者本人の税金が安くなる
ということです。
分かりにくい人は、家族に障害があったら市役所に相談でOKだよ!
また、夫が単身赴任していたり、子供が進学で一人暮らしをしていても、夫の給与で家族が暮らしていたり、子供に仕送りをしている場合などは「生計を一にする」に該当します。
逆に二世帯住宅で親夫婦と子供夫婦が同居していて、お互いに収入があって生活費を別会計にしている場合は、「生計を一にする」には該当しません。
障害者の対象範囲
障害者控除の適用対象となる障害者とは、以下のいずれかに該当する人です。
なお、障害の程度が重い場合は「特別障害者」となります。(所得控除がさらに優遇されます。)
- 精神障害者
- 精神上の障害により、普段から物事の理解力、判断力を欠く人
- 全員が特別障害者
- 知的障害者
- 以下のいずれかに知的障害者と判定された人
- 児童相談所
- 知的障害者更生相談所
- 精神保健福祉センター
- 精神保健指定医
- 内、重度と判定された人は特別障害者
- 以下のいずれかに知的障害者と判定された人
- 精神障害者
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
- 内、障害等級が1級の人は特別障害者
- 身体障害者
- 身体障害者手帳の交付を受けている人
- 内、障害の程度が1級または2級の人は特別障害者
- 戦傷病者
- 戦傷病者手帳の交付を受けている人
- 内、障害の程度が特別項症から第3項症までの人は特別障害者
- 原爆被爆者
- 厚生労働大臣から原爆被爆者の認定を受けている人
- 全員が特別障害者
- 重度の長期要介護者
- その年の12月31日時点で
- 継続して6ヶ月以上に渡り
- 身体の障害が原因で寝たきりであり
- 複雑な介護を必要とする程度にある人
- 全員が特別障害者
- 満65歳以上の障害者
- 満65歳以上で
- 上の1、2、4に準ずると
- 市町村長、特別区長、福祉事務所長が認定した人
- 内、特別障害者に準ずると認定された人は特別障害者
8の65歳以上の障害者については役場に確認が必要だね。
手帳についての注意点
障害者手帳等について注意点があります。
手帳の交付を受けていない場合
障害者手帳等の交付を受けていない場合であっても、以下の2条件をともに満たす場合、障害者控除を受けることができます。
- 交付を受けていない手帳が以下のいずれかである
- 身体障害者手帳
- 戦傷病者手帳
- 以下のいずれかに該当する
- 上記手帳の交付を申請中である
- 上記手帳の交付を受けるための医師の診断書がある
- 障害者であると上記手帳に記載されることが明らかである
- 上記手帳が交付される程度の障害があることが明らかである
(典拠:所基通2-38)
手帳が交付されることが確実だったら、交付前でも見なし認定してくれるってことね。
身体障害7級の扱い
身体障害の程度が7級に相当する場合は身体障害者手帳は交付されないため、障害者控除を受けることはできません。
療育手帳の被交付者
療育手帳は児童相談所または知的障害者更生相談所が知的障害があると判定した人に対して交付されます。
したがって、療育手帳の交付を受けた人は前節「障害者の対象範囲」の2の知的障害者に該当するため、障害者控除を受けることができます。
(以上典拠:TA No.1160)
この章のまとめ
内容がややこしいと思うので、ここまでを超単純化してまとめます。
- 納税者本人や家族に
- 国が定めるレベルの障害がある場合
- 納税者本人が障害者控除を受けることで
- 課税所得が減るので
- 税金が減る
障害者や障害者を持つ家庭の税負担を軽くするのが障害者控除ってことか。
障害者控除の控除額と節税効果
障害者控除で受けられる控除額はいくらか?
控除を受けることで税金がどれくらい減るのか?
具体的に見ていきます。
ここから具体的なお金の話をしていくよ!
障害者の区分
障害者控除の控除額は障害者の区分によって金額が異なります。
障害者の次の3つに区分されます。
- 一般の障害者
- 特別障害者
- 障害の程度が重い障害者
- 同居特別障害者
- 特別障害者であり
- 以下のいずれかに該当し
- 同一生計配偶者
- 扶養親族
- 以下のいずれかと常に同居している人
- 納税者本人
- 納税者の配偶者
- 納税者と生計を一にする親族
同居特別障害者が分かりにくいですよね?
もうちょっと分かりやすく説明してほしいな。
同居特別障害者
同居特別障害者とは、細かい点をすべて無視して単純化して言うと、(カッコ内は例)
- 納税者の家族や親族であり
- 特別障害者に該当し
- 納税者本人や家族や親族と
- 常に同居している人
のことです。例えば、
- 納税者の子供で
- 重度の障害があり
- 納税者である親や家族と
- 一緒に住んでいる
場合、同居特別障害者に該当します。
ポイントは「常に同居」です。
例えば、納税者の妻が特別障害者だとします。この妻が、
- 夫や家族と同居している場合 → 同居特別障害者
- 老人ホームに入居している場合 → 特別障害者
です。
超ザックリで言うと、こうなります。
- 家族と同居している特別障害者=同居特別障害者
一緒に暮らすと負担が増えるので、控除額で優遇するということなのでしょう。
同居する場合を優遇することで、在宅介護を選択する人を増やそうとしてるのかもしれないね。
なお、同居特別障害者は「納税者の家族や親族」です。
納税者本人は同居特別障害者には該当しません。
障害者控除の控除額
障害者控除の控除額は、所得税と住民税それぞれ次の表の通りです。(所法第79条、地法第34条)
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
一般の障害者 | 27万円 | 26万円 |
特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
これらの金額が課税所得から引かれるので、その金額に本来かかるはずだった税金がなくなります。
課税所得から控除額が引かれることで税金が安くなるってことね。
所得税と住民税の節税効果
では、具体的に税金がいくら減るのか、いくつかの例で見てみます。
1.一般の障害者の場合
例えば、次のよう納税者がいるとします。
- 課税所得額:300万円
- 所得税率:10%
所得税率が10%の場合、所得税額=課税所得額×10%-97,500円。住民税(所得割)は所得額に関係なく課税所得額×10%ですので、
- 所得税=300万円×10%-97,500円=202,500円
- 住民税=300万円×10%=300,000円
です。
もしこの人が一般の障害者であった場合、障害者控除の控除額は以下の通りです。
- 所得税:27万円
- 住民税:26万円
この金額が課税所得から引かれるので、控除後の税金は次のようになります。
- 所得税=(300万円-27万円)×10%-97,500円=175,500円
- 住民税=(300万円-26万円)×10%=274,000円
したがって、障害者控除による節税額は以下の通りです。
- 所得税:202,500円-175,500円=27,000円
- 住民税:300,000円-274,000円=26,000円
所得税が27,000円、住民税が26,000円、あわせて税金が53,000円減りました。
控除額と税率をみると分かる通り、減った課税所得額にかかるはずだった税金が減ったということです。
- 所得税:控除額27万円×税率10%=27,000円
- 住民税:控除額26万円×税率10%=26,000円
これが基本パターンです。しっかり理解してね!
2.特別障害者の場合
納税者の親が重度の障害者で、納税者が生活費を負担している(生計を一にしている)ものの、普段から老人ホームに入居しているとします。
この場合、障害者はその家族らと常に同居はしていませんので、同居特別障害者ではなく特別障害者に該当します。
同居していないから普通の特別障害者ってことだね。
よって、納税者の所得控除額は
- 所得税:40万円
- 住民税:30万円
です。
納税者の課税所得からこれらの金額が引かれますので、引かれる分にかかるはずだった税金が減ります。
仮に所得税率が20%(住民税は一律10%)である場合、
- 所得税:40万円×20%=8万円
- 住民税:30万円×10%=3万円
所得税、住民税あわせて11万円、税金が減ります。
3.同居特別障害者の場合
単身赴任中の納税者の中学生の子供が特別障害者であり、納税者の妻と同居しているとします。
この場合、納税者と子供は一緒には暮らしていませんが、納税者と生計を一にしている(納税者の収入で生活している)ため、納税者の扶養親族に該当します。
さらに、納税者の配偶者と常に同居していますので、この子供は納税者の同居特別障害者に該当します。
したがって、納税者が受ける障害者控除の控除額は以下の通りです。
- 所得税:75万円
- 住民税:53万円
仮にこの納税者の所得税率が20%である場合、控除される分にかかるはずだった税金が減りますので、
- 所得税:75万円×20%=15万円
- 住民税:53万円×10%=5万3千円
所得税、住民税あわせて20万3千円の税金が減ります。
控除額にかかるはずだった税金が減る。もう分かったよね!
相続税の障害者控除
所得税、住民税とは別に、相続税についても障害者控除があります。
障害者が相続を受ける場合、健常者よりも相続税が安くなるということです。
親が亡くなった後の障害者の経済状況を考慮して、税負担を軽減するってことだよ!
相続税の障害者控除は税額控除
まず大切なポイントとして、所得税、住民税と相続税とでは、障害者控除の控除の仕方が異なります。
所得税、住民税の障害者控除は所得控除です。
課税所得が減ることで、それにかかる分の税金が減ります。
これに対して、相続税の障害者控除は税額控除です。
控除額がまるまる税金から差し引かれます。
例えば控除額が20万円の場合、減る税金の額は以下の通りです。
- 所得控除(所得税、住民税):20万円×税率
- 税額控除(相続税):20万円
例えば所得税率が20%の場合、所得控除では4万円しか減りません。
これに対して税額控除では、税金がまるまる20万円安くなります。
所得控除は税率分だけだけど、税額控除ではまるまる全額分安くなるってことね。
相続税の障害者控除を受けられる人
相続税の障害者控除を受けることができるのは、次の条件をすべて満たす障害者です。
- 85歳未満である
- 相続等を受けた時点で日本国内に住所がある
- 相続等を受けた時点で障害者である
- 障害者の範囲は所得税法の定めに準ずる
- 相続等を受けた人が法定相続人である
相続税の障害者控除の控除額
控除額は一般の障害者と特別障害者で異なり、以下の式で算出します。
- 一般の障害者:85歳になるまでの年数×10万円
- 特別障害者:85歳になるまでの年数×20万円
(典拠:相法第19条の4)
なお、1年未満の期間は切り上げます。(例:10年2ヶ月→11年)
どれくらい税金が減るか見てみるよ!
相続税の障害者控除の節税効果
例えば、次のような場合、
- もともとの相続税額:300万円
- 障害の区分:一般の障害者
- 年齢:65歳
相続税は次のようになります。
- 控除額=(85歳ー65歳)×10万円=200万円
- 控除後の相続税額=300万円-200万円=100万円
相続税が200万円減って100万円になりました。
所得控除じゃなくて税額控除だから、控除額がまるまる税金から引かれるんだね。
注意点
相続税額よりも控除額の方が多い場合、例えば次のような場合では、
- もともとの相続税額:150万円
- 控除額=(85歳ー65歳)×10万円=200万円
150万円を引いて相続税はゼロになりますが、引ける控除額が50万円余っちゃいますよね?
この場合の余った50万円は、その障害者の扶養義務者の相続税額から税額控除します。(典拠:相法第19条の4)
例えば、扶養義務者のもともとの相続税が120万円だった場合、相続税が50万円減って70万円になります。
ここまでで障害者控除の対象や金額の話は終わりです!
障害者控除を受けるための手続き
障害者控除を受けるための手続きについて説明します。
他の控除に比べて簡単です。
必要な手続き
会社員など給与所得者は、年末調整の際に会社から渡される扶養控除等申告書に、障害者が誰であるかや障害の程度などを記載します。
自営業者などの非給与所得者は、確定申告を行うことで障害者控除を受けることができます。
なお、年末調整または確定申告を行うと、住民税の障害者控除の手続きが自動的に行われます。
市役所に行って特別な手続きをする必要はないってことね。
必要な書類
年末調整や確定申告の際に提出が必要な書類はありません。障害者であることを証明する書類も不要です。
年末調整も確定申告もどちらもしなかったら、障害者控除を受けられないので注意してね!
ソーシャルレンディングと障害者控除
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングと障害者控除との間に関連性は一切ありません。
障害者がソーシャルレンディングをするからといって、特に税制上の優遇策があるわけでもありません。
ですので、ソシャレンや不動産クラファンの税金対策に障害者控除を活用することはできません。
ただ、障害者控除を受けることで全体の納税額を減らすことはできるわけですから、障害者控除自体は有効に活用しましょう。
トータルの税金が減ればそれでOKだよね。
障害者控除のまとめ
それでは、最後に要点をまとめておきます。
- 障害者控除を受けると
- 課税所得が減るので
- 支払わないといけない税金が減ります
- 障害者控除の対象者は次のような人です
- 障害を持つ
- 納税者本人や
- 納税者の家族
- 障害者控除の対象範囲は次のような人です
- 精神障害者
- 知的障害者
- 身体障害者
- 戦傷病者
- 原爆被爆者
- 重度の長期要介護者
- 満65歳以上の障害者
- 障害者控除の控除額は次の3区分で異なります
- 一般の障害者
- 特別障害者
- 同居特別障害者
- 障害者控除では次のような税金が安くなります
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 障害者控除を受けるには次のいずれかの手続きが必要です
- 年末調整
- 確定申告
障害者控除は申請しなければ受けられません。
受けられるはずの控除を見逃さないように注意しましょう。
分からないことは役場や税務署に電話して聞こうね!
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