小規模企業共済等掛金控除とは何か?
この記事を読めば、
- ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
- 所得税を計算する際の
- 小規模企業共済等掛金控除の扱いと
- 小規模企業共済等掛金控除を使った節税の仕方
が分かります。
それではさっそく説明スタートです!
あまり聞かない所得控除だと思うので、基礎から分かりやすく説明するよ!
タップできる目次
小規模企業共済等掛金控除の概要
小規模企業共済等掛金控除とは、
- 老後の生活資金などのために
- 掛けている保険金に対する
- 所得控除
です。
- 掛けている保険金と同じ額が
- 課税所得から差し引かれ
- 課税所得が減る分
- 所得税と住民税が安くなります
厚生年金や国民年金の保険料には社会保険料控除が適用されますよね?
それと同じ性質のものだと考えて下さい。
将来のための保険金の支払いで負担が生じる分、税金の負担を軽減するのが小規模企業共済等掛金控除だよ!
小規模企業共済等掛金控除の対象
小規模企業共済等掛金控除の対象となるのは、次の4つの共済などです。
- 小規模企業共済
- 企業型確定拠出年金(日本版401k)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 心身障害者扶養共済
(典拠:所法第75条)
控除の対象となるのはこの4つに支払われる保険金、掛金だけです。
それぞれについて簡単に説明します。
小規模企業共済等掛金控除の対象を説明するよ!
小規模企業共済
個人事業主や中小企業の経営者が、老後の生活資金のために掛ける積み立てです。
小規模事業者は大企業の社員と違って、退職金などがありませんよね。
それを補うために、毎月お金を積み立てて退職時や廃業時に受け取るという、自分で作る退職金のようなものです。
- 運営者
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構
- 加入できる人
- 個人事業主
- 個人事業主の共同経営者
- 小規模企業の役員
- 農事組合法人の役員
- 税理士法人など士業法人の社員
- 月あたりの掛金の上限
- 7万円
個人事業主などは老後の備えという面で、会社員などに比べて不利です。
その不利な分を、小規模企業共済で補うということです。
個人事業主とかが毎月コツコツ積み立てて、リタイアするときに退職金代わりに受け取るってことだね。
企業型確定拠出年金
企業型DCとか日本版401kとよばれるものです。
企業が掛金を出し従業員が退職後のために自分で資産運用します。
企業が全額負担する福利厚生という意味では退職金と同じですが、従業員が自分で運用するという点が異なります。
- 対象者
- 60歳未満の企業の従業員(公務員は対象外)
- 仕組み
- 企業が掛金を払い
- 従業員がその掛金を使って
- 定期預金などで運用し
- 60歳以降に受け取る(例外あり)
- 運用対象
- 定期預金
- 保険
- 投資信託など
- 月あたりの掛金の上限
- 厚生年金基金か確定給付型企業年金がある企業:27,500円
- いずれもない企業:55,000円
イメージとしては、
- 会社が毎月2万円とかお金を出してくれて
- 従業員がその2万円を使って
- 定期預金とか投資信託をして
- 60歳以降に受け取る
という感じです。
投資信託の場合は値下がりする可能性がありますが、そもそも自腹ではなく会社が出してくれたお金なので、損をするわけではありません。
定期預金で手堅く貯めておけば、2万円×勤続期間分が追加の退職金になるって感じね。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
さきほどの企業型確定拠出年金が会社がお金を出してくれるのに対して、自分でお金を出すのが個人型確定拠出年金です。
老後のために自分で積み立てをするという感じです。
- 対象者
- 60歳未満の国民年金保険加入者
- 仕組み
- 自分で掛金を払い
- その掛金を使って
- 定期預金などで運用し
- 60歳以降に受け取る
- 運用対象
- 定期預金
- 保険
- 投資信託など
- 月あたりの掛金の上限
- 自営業者:68,000円
- 会社員
- 確定給付型企業年金に加入している:12,000円
- 企業型確定拠出年金に加入している:20,000円
- どちらにも加入していない:23,000円
- 公務員:12,000円
- 専業主婦:23,000円
お金を出すのが会社ではなく自分という点を除けば、基本的な仕組みは企業型確定拠出年金と同じです。
小規模企業共済等掛金控除の意義
例えば毎月2万円をiDeCoで定期預金するのと、普通に銀行に定期預金するのと何が違うのか?
仮に月々2万円、年間24万円定期預金をするとします。
iDeCoを使った場合、定期預金と同額の24万円を課税所得から引き算できます。
その結果、減った24万円にかかる所得税と住民税が減ります。
普通に銀行に預けた場合は、この課税所得からの引き算ができません。
これがiDeCoを含む小規模企業共済等掛金控除のメリットです。
同じように定期預金で24万円預けるならば、iDeCoにした方が税金が減って有利ってことね。
ただし、iDeCoにしてしまうと60歳になるまで引き出せない点に注意してね!
心身障害者扶養共済
主に障害者の親が子供の将来のために掛ける保険です。
自分が死んだあと、障害者である子供が少しでも経済的に困らないように積み立てる保険というイメージです。
- 運営者
- 都道府県と政令指定都市
- 加入できる人
- 障害者を扶養している65歳未満の保護者
- 月額の掛金
- 9,300円~(加入時の保護者の年齢で変動)
- 支給額
- 月額2万円(終身)
親だけでなく、障害者の配偶者や兄弟なども加入できます。
また、月額の掛金を2倍払うことで、支給額を2倍(月額4万円)にすることができます。(3倍以上にはできません。)
世の中のいろんな人のために、いろんな保険制度があるんだね。
小規模企業共済等掛金控除の控除額
小規模企業共済等掛金控除の適用を受けると、どれくらいの金額が所得控除されるのでしょうか。
控除の上限額と合わせて説明します。
小規模企業共済等掛金控除で受けられる所得控除額を見ていくよ!
掛金の金額=控除額
小規模企業共済等掛金控除を利用すると、さきほど挙げた4つの共済などの掛金と同じ額が、所得から控除されます。(所法第75条)
例えば、iDeCoで月々2万円、年間で24万円を積み立てたとします。
この場合、24万円全額が所得から控除され、結果として24万円にかかる所得税と住民税を払わなくて済みます。
控除額の上限はない
例えば医療費控除では、控除額の上限は200万円です。200万円を超えて所得控除を受けることはできません。
これに対して、小規模企業共済等掛金控除では控除額に上限はありません。
支払った掛金、保険金の全額が所得控除されます。
ただし、掛金や保険金には上限があります。
例えば上で紹介した通り、公務員がiDeCoで積み立てることができるのは月額1万2千円までです。
この場合、小規模企業共済等掛金控除の控除額は、実質的に年間14万4千円が上限となります。
それでも14万4千円が所得控除されれば、税金が3~4万円は安くなるから節税効果は大きいよね!
小規模企業共済等掛金控除の節税効果
ここまで、小規模企業共済等掛金控除の仕組みや制度を見てきました。
今ひとつイメージがわかないと思うので、小規模企業共済等掛金控除で税金がどのように減るのか具体的な例で見てみます。
小規模企業共済等掛金控除の節税効果を見ていくよ!
小規模企業共済等掛金控除による節税の具体例
例1.iDeCoを利用している場合
例えば、次のような場合で考えてみます。
- 自営業者
- iDeCoの掛金:5万円/月
- 所得税率:10%
- 住民税率:10%
この場合、iDeCoでの年間の掛金60万円が所得から控除されます。
その結果、この60万円にかかる税金が減ります。
- 所得税:60万円×10%=6万円
- 住民税:60万円×10%=6万円
合わせて12万円の節税です。
12万円の節税ってことは、使えるお金が12万円増えるってことだよね。大きいなぁ。
例2.企業型確定拠出年金とiDeCoを併用している場合
例えば、次のような場合です。
- 会社員
- 企業型確定拠出年金の掛金:2万円/月
- iDeCoの掛金:2万円/月
- 所得税率:20%
- 住民税率:10%
この場合、年間の掛金合わせて48万円が所得から控除されます。
その結果、この48万円にかかる税金が減ります。
- 所得税:48万円×20%=9万6千円
- 住民税:48万円×10%=4万8千円
企業型確定拠出年金、iDeCo、両方合わせて年間14万4千円の節税効果です。
所得税と住民税のダブル節税だから、掛金が大きくなるほど節税効果も大きくなるわね。
小規模企業共済等掛金控除の手続き
小規模企業共済等掛金控除の適用を受けるにはどうすれば良いか?
会社員などと自営業者などの場合に分けて説明します。
税金を減らすための手続きだよ!
会社員などの場合
会社員などで企業型確定拠出年金の掛金が給与天引きされ年末調整されている場合、しなければならないことは基本的にありません。
しかし、給与天引き以外で共済などの掛け金を払っている場合、例えば
- 企業型確定拠出年金の他にiDeCoもやっている
- 家族に障害者がいて心身障害者扶養共済に加入している
といった場合は、以下の手続きが必要です。
- 給与所得者の保険料控除申告書に支払った掛金の額を記載する
- 記載した申告書を雇用主に提出する
- その際、支払った掛金の証明書を添付または提示する
なお、給与天引きされ年末調整されている場合、証明書の添付、提示は不要です。(所令第262条)
会社員で給与天引きならば何もしなくてOK。天引き以外にもある場合は総務や経理に相談だね。
自営業者などの場合
自営業者などの場合は確定申告をすることで、小規模企業共済等掛金控除が適用されます。
確定申告の際には支払った掛金の証明書の添付が必要です。(典拠:所令第319条)
なお、小規模企業共済で前納した掛金は、1年以内のものに限り、支払った年の控除対象となります。
支払った証明書っぽいものは、とりあえず確定申告が終わるまで取っておいた方が良いよ!
ソーシャルレンディングと小規模企業共済等掛金控除
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングに、小規模企業共済等掛金控除を活用できるでしょうか?
ソシャレン、不動産クラファンの節税に使えるか説明するよ!
直接の活用はできない
小規模企業共済等掛金控除をソーシャルレンディングなどに直接活用することはできません。
ただ、ソシャレンや不動産クラファンをやっている人は、一般に投資や資産運用への関心が高いです。
そのため、企業型確定拠出年金やiDeCoをやっている可能性があります。
もしそうであれば、小規模企業共済等掛金控除を有効に活用しましょう。
ソーシャルレンディングの利益を打ち消す
ソーシャルレンディングも不動産投資型クラウドファンディングも総合課税の対象です。
ソシャレンや不動産クラファンで得た利益は、給与などの収入と合算し、そこから所得控除が行われます。
例えば、次のような場合、
- ソシャレンで得た利益:20万円
- iDeCoの掛金:20万円
小規模企業共済等掛金控除を適用させることで所得から20万円が控除され、ソシャレンで得た利益が打ち消されます。
結果的に、ソシャレンで源泉徴収された所得税が戻ってきて、住民税も支払わなくて済みます。
損益通算とは仕組みが違うけれど、結果としてソーシャルレンディングの節税につながるわけね。
小規模企業共済等掛金控除は節税効果が大きい
例えば自営業者の場合、iDeCoの掛金の上限は月額68,000円です。
年間で816,000円ですので、仮に所得税率が20%だとすると、
- 所得税:816,000円×20%=163,200円
- 住民税:816,000円×10%=81,600円
合わせて244,800円の節税になります。
公務員ですと上限は月額12,000円、年間144,000円ですが、それでも、
- 所得税:144,000円×20%=28,800円
- 住民税:144,000円×10%=14,400円
合わせて43,200円の節税です。
ソシャレン、クラファン投資家で、企業型確定拠出年金やiDeCoをやっている人にとって、小規模企業共済等掛金控除は効果が大きい節税ツールです。
合法的な節税策なので、小規模企業共済等掛金控除を有効に活用しようね!
小規模企業共済等掛金控除のまとめ
以上、小規模企業共済等掛金控除について説明してきました。
最後におさらいの意味で重点をまとめます。
- 小規模企業共済等掛金控除は将来のための掛金の負担を軽減します
- 小規模企業共済等掛金控除を使うと
- 課税所得が減るので
- その分にかかる税金が減ります
- 小規模企業共済等掛金控除の対象は以下の4つです
- 小規模企業共済
- 企業型確定拠出年金(日本版401k)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 心身障害者扶養共済
- 小規模企業共済等掛金控除の控除額は
- 支払った掛金、保険金の
- 全額です
- 所得税と住民税がダブルで節税できます
- 小規模企業共済等掛金控除の手続きは
- 会社員は基本的に不要
- 天引き分以外があれば会社に申告
- 自営業者などは確定申告します
小規模企業共済等掛金控除は節税効果が大きいです。
有効に活用して上手に節税しましょう!
みなさんの節税の参考になったらうれしいです!
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