配偶者特別控除とは何か?
この記事を読めば、
- ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
- 所得税を計算する際の
- 配偶者特別控除の扱いと
- 配偶者特別控除を使った節税の仕方
が分かります。
2018年に変更された新しい内容で説明します。
103万円を超えた人でも控除を受けられるよ!
タップできる目次
配偶者特別控除の概要
まず最初に、配偶者特別控除の重点を説明します。
- 納税者に配偶者がいると
- 一定の金額が
- 課税所得から引かれる
その結果、
- 課税所得が少なくなるので
- 税金が安くなる
です。
平均的なパターンとして、納税者である夫に配偶者である妻がいる場合、夫が配偶者特別控除を受けることで夫が払う税金が安くなります。
妻が主に家計を支えていて夫が主夫の場合は、妻の税金が安くなるよ!
配偶者特別控除で税金が安くなる仕組み
まず最初に、配偶者特別控除で税金がどのように安くなるか、細かい例外などを無視して一般的なパターンで簡単に説明します。
仮に次のような夫婦がいるとします。
- 夫:会社員、合計所得金額600万円
- 妻:パート、合計所得金額103万円
この場合、夫は21万円の配偶者特別控除を受けることができます。
これにより、夫の課税所得が21万円減りますので、その21万円にかかる税金が減ります。
仮に夫の所得税率が20%だとすると、
- 21万円×20%=4万2千円
夫が払わなければならない所得税が4万2千円安くなる、ということです。
配偶者特別控除は住民税にもあるので、住民税も安くなるよ。
配偶者特別控除が適用される条件
結婚していれば誰でも配偶者特別控除を受けられるわけではありません。
配偶者特別控除が適用されるための条件を説明します。
すべての条件を満たす場合だけ、配偶者特別控除で税金が安くなるよ!
配偶者特別控除を受けるための条件
以下の条件をすべて満たす場合、配偶者特別控除を受けることができます。
(なお、以下で「納税者本人」は例えば夫で、「配偶者」は例えば妻のです。)
- 納税者本人のその年の合計所得金額が1,000万円以下である
- 給与所得のみの場合、給与収入が1,220万円以下
- 配偶者が民法が規定する配偶者である
- 事実婚(内縁)、同性婚、同棲などは不可
- 配偶者が納税者本人と生計を一にしている
- 下のHINT欄参照
- 配偶者のその年の合計所得金額が38万円超123万円以下である
- 給与所得のみの場合、給与収入が103万円超201万6千円未満
- 配偶者が青色事業専従者として給与を受けていない、または、事業専従者でない
- 納税者本人が自営業者であり
- その従業員として働いている場合
- 配偶者特別控除を受けられない
難しい単語が並んで分かりにくいですが、会社員と兼業主婦の夫婦で勤務先以外からの収入がない場合、次のようであれば配偶者特別控除を受けることができます。
- 夫の年収が1,220万円以下
- 夫婦が婚姻届を出している
- 夫婦が同じ生計である
- 妻の年収が103万円超201万6千円未満
201万6千円未満だったら妻がパートじゃなくて会社員でも控除を受けられるのね。
人手不足なので女性をもっと働かせたいという政府の思惑があるんじゃないかな?
注意点
注意点は以下の通りです。
合計所得金額
合計所得金額とは所得控除をする前の合計所得です。
勤務先からだけ給与を得ている会社員やパート、アルバイトについて細かい点を無視して言うと、合計所得金額=収入ー給与所得控除です。
給与収入が1,220万円の場合の給与所得控除は220万円ですので、給与収入が1,220万円を超えなければ合計所得金額は1,000万円を超えません。
ですので、夫の年収が1,220万円以下であれば配偶者特別控除の条件を満たします。
また、給与収入が201万2千円以上~201万6千円未満の場合、給与所得控除後の給与所得は122万8,400円なので、合計所得金額は123万円を超えません。(201万6千円の場合、給与所得は123万1,200円)(所法別表第5)
ですので、妻の年収が201万5,999円以下であれば配偶者特別控除の条件を満たします。
夫婦で年収1,400万円くらいでも控除を受けられるわけだね。
201万6千円以上だと受けられなくなる(201万6千円の壁)が正解です。
配偶者の定義
「民法が規定する配偶者」とは、市区町村役場に婚姻届を提出した夫婦の配偶者です。(民法第739条)
一部の自治体でパートナー証明書などの取り組みが進んでいますが、これらは民法が定める婚姻届には当たりません。
したがって、事実婚や同性婚などには配偶者特別控除は適用されません。
どちらか片方しか受けられない
例えば、夫婦どちらも年収が120万円の場合、夫婦ともに納税者本人の条件と配偶者の条件の両方を満たします。
ですが、
- 夫が納税者で妻が配偶者で、同時に
- 妻が納税者で夫が配偶者
として、夫、妻ともに配偶者特別控除を受けることはできません。(所法第83条の2)
配偶者特別控除を受けることができるのは、夫か妻かどちらか1人だけです。
法律ってこんなことまでちゃんと決めてるのね。笑
給与所得控除の控除対象
給与所得控除を引くことができるのは給与収入だけです。
例えば、配偶者がパートで年収が160万円の場合、給与所得控除は65万円なので、給与所得は160万円ー65万円=95万円です。
他に所得がなければ合計所得金額は95万円なので、配偶者特別控除の適用対象となります。
しかし、次のような場合、
- パートの年収:20万円
- アフィリエイト収入:140万円
トータルの年収はさきほどと同じ160万円ですが、アフィリエイト収入は給与収入ではないので、トータルの160万円から65万円を引くことはできません。
- パートの所得:20万円ー20万円=0円
- アフィリエイトの所得:140万円
- → 合計所得金額:140万円
給与所得控除65万円の残りの45万円をアフィリエイト収入から引くことはできませんので、合計所得金額は140万円になります。
123万円を超えているので、この人は配偶者特別控除を受けることはできません。
65万円って何からでも引けるわけじゃないんだね。
また、夫が単身赴任していたり、子供が進学で一人暮らしをしていても、夫の給与で家族が暮らしていたり、子供に仕送りをしている場合などは「生計を一にする」に該当します。
逆に二世帯住宅で親夫婦と子供夫婦が同居していて、お互いに収入があって生活費を別会計にしている場合は、「生計を一にする」には該当しません。
配偶者特別控除の控除額と節税効果
配偶者特別控除の控除額と節税効果について説明します。
配偶者特別控除で税金がどれだけ減るか見ていくよ!
配偶者特別控除の控除額
配偶者特別控除の控除額は、所得税、住民税ともに納税者本人と配偶者の合計所得金額により下表の通りです。(所法第83条の2、地法第34条、第314条の2)
配偶者控除は70歳以上の配偶者の場合に控除額の上積みがありますが、配偶者特別控除では70歳以上でも同額です。
所得税の控除額
例えば、納税者本人の合計所得金額が500万円、配偶者が100万円の場合、控除額は26万円です。
所得税 | |||
---|---|---|---|
配偶者の合計所得金額 | 納税者本人の合計所得金額 | ||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
|
38万円超~85万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
85万円超~90万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
90万円超~95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
95万円超~100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
100万円超~105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
105万円超~110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
110万円超~115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
115万円超~120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
120万円超~123万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
123万円超 | 0円 | 0円 | 0円 |
住民税の控除額
例えば、納税者本人の合計所得金額が920万円、配偶者が120万円の場合、控除額は4万円です。
配偶者の合計所得金額 | 納税者本人の合計所得金額 | ||
---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
|
38万円超~90万円以下 | 33万円 | 22万円 | 11万円 |
90万円超~95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
95万円超~100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
100万円超~105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
105万円超~110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
110万円超~115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
115万円超~120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
120万円超~123万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
123万円超 | 0円 | 0円 | 0円 |
納税者の合計所得金額が1,000万円を超えるか、配偶者の合計所得金額が123万円を超えると、配偶者特別控除を受けられなくなるのね。
配偶者特別控除の節税効果
配偶者特別控除を受けると、所得税と住民税がどれくらい減るか見てみましょう。
仮に次のような場合、
- 夫の合計所得金額:400万円
- 妻の合計所得金額:90万円
さきほどの表から控除額は以下の通りです。
- 所得税:36万円
- 住民税:33万円
所得税と住民税の課税所得から36万円と33万円が差し引かれますので、この36万円と33万円に本来かかるはずだった税金を払わなくて済むようになります。
仮に夫の所得税率が20%(住民税率は一律10%)だとすると、
- 所得税の減額:36万円×20%=7万2千円
- 住民税の減額:33万円×10%=3万3千円
配偶者特別控除の節税効果は、所得税、住民税あわせて10万5千円となります。
夫婦の所得合計が490万円で税金が10万円ちょっと安くなるってのは大きいな!
配偶者特別控除を受けるための手続き
配偶者特別控除を受けるための手続きは、配偶者本人が給与所得者であるか否かで異なります。
配偶者特別控除を受けるのに必要な手続きを説明するよ!
給与所得者の場合
納税者本人が会社員など給与所得者である場合、年末調整を行うことで配偶者特別控除を受けることができます。
勤務先から「給与所得者の配偶者控除等申告書」が配布されますので、必要事項を記入して勤務先に提出します。
非給与所得者の場合
納税者本人が自営業者など非給与所得者の場合は、確定申告を行うことで配偶者特別控除を受けることができます。
会社員や公務員、パート、アルバイトは年末調整、自営業者やフリーランスは確定申告ってことか。
必要な提出書類
配偶者特別控除を受けるために必要な提出書類はありません。
配偶者が海外に住んでいるなど特殊な場合を除いて、年末調整、確定申告ともに添付する書類は不要です。
住民税の扱い
所得税の年末調整、確定申告を行うと、住民税の配偶者特別控除の処理は自動的に行われます。
市区町村役場に行って控除の手続きを行う必要はありません。
(以上典拠:所法第120条、第190条、第195条の2、所令第262条)
ソーシャルレンディングと配偶者特別控除
配偶者特別控除をソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの節税対策に使うことはできません。
それどころか、ソシャレン、不動産クラファンで儲けすぎると、配偶者特別控除を受けられなくなります。
ソシャレン、不動産クラファンをやっている夫婦は要注意だよ!
ソーシャルレンディングの税金対策には使えない
配偶者特別控除は、配偶者の生活を支える納税者の税負担を軽くする制度です。
投資とは何ら関係ありません。
ですので、配偶者特別控除でソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの税金を減らすことはできません。
それどころか、ソシャレン、不動産クラファンで儲けすぎると、配偶者特別控除を受けられなくなります。
ソシャレンで儲けすぎるとヤバイってこと!?
ソーシャルレンディングの分配金も所得
上述した通り、配偶者特別控除を受けるには次の2つの条件を満たす必要があります。
- 納税者本人の合計所得金額:1,000万円以下
- 配偶者の合計所得金額:38万円超123万円以下
この合計所得金額にはソシャレン、不動産クラファンの分配金も含まれます。
ソシャレン、不動産クラファンの分配金も合わせたものが合計所得金額です。
儲けすぎると配偶者特別控除を受けられない
例えば配偶者の所得が次のような状況だとします。
- パートの給与所得:120万円
- ソーシャルレンディングの分配金:5万円
やれやれ、なんとか123万円以内に収まってくれたわ!
と、喜んでいる奥さん、それはスイ~ト!
奥さんの合計所得金額はソシャレン分も合わせた125万円です。
123万円を超えているので配偶者特別控除は受けられません。
これは夫の場合も同様です。
合計所得金額がギリギリ1,000万円に収まっていても、ソシャレン、不動産クラファンで利益が出て、合計が1,000万円を超えてしまったらアウトです。
ソシャレンで中途半端に儲けて配偶者特別控除を受けられなくなったら、トータルではマイナスになるかもしれないぞ。
ソーシャルレンディングは計画的に
ソシャレン、不動産クラファンを、おこづかいレベルではなくガッツリやっている人は対策が必要です。
例えば、ソシャレンで利益が出すぎた場合はパートの勤務時間を調整するとか。
夫の合計所得金額に余裕があるならば、夫の名義でソシャレンをやるとか。
1,000万円、123万円を超えないように、ソーシャルレンディング、不動産投資型クラウドファンディングは計画的にやりましょう。
ソシャレンで儲けがいくら出るかも、事前に正確に把握しておこうね!
配偶者特別控除のまとめ
それでは最後に、配偶者特別控除の要点をまとめておきます。
- 配偶者特別控除を受けると(納税者が夫の場合)
- 夫の課税所得が減るので
- 夫の払う税金が減ります
- 配偶者特別控除を受けるための条件は
- 一般的なサラリーマン家庭で
- 夫婦ともに給与以外に収入がない場合
- 夫の年収:1,220万円以下
- 妻の年収:103万円超201万6千円未満
- 配偶者とは民法上の配偶者です
- 事実婚、同性婚などは対象外です
- 配偶者特別控除の控除額は
- 夫婦それぞれの合計所得金額で決まります
- 70歳以上の増額はありません
- 所得税、住民税ともに税金が減ります
- 配偶者特別控除を受けるための手続きは
- 給与所得者:年末調整
- 非給与所得者:確定申告
- 提出書類:原則不要
- ソーシャルレンディングの収益に注意!
- 夫婦どちらの場合も
- ソシャレン、不動産クラファンで儲けすぎて
- 合計所得金額の上限を超えると
- 配偶者特別控除を受けられなくなります
- ソシャレンは計画的に!
なお、配偶者特別控除を受けることが必ずしも有利とは限りません。
配偶者特別控除を受けるために妻の年収を無理に201万6千円未満にするより、バリバリ稼いで年収1千万になった方が夫婦の合計所得は増えますよね。
どうすれば家族の収益が最大のプラスになるか、ソーシャルレンディングも含めて総合的に判断しましょう。
配偶者特別控除だけではなく、家庭の収支全体を見てね!
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