配偶者控除とは何か?
この記事を読めば、
- ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
- 所得税を計算する際の
- 配偶者控除の扱いと
- 配偶者控除を使った節税の仕方
が分かります。
ソーシャルレンディング、不動産投資型クラウドファンディングの利益次第では配偶者控除が受けられなくなりますので注意しましょう。
配偶者がソシャレンをやっている家庭は要チェックだよ!
タップできる目次
配偶者控除の概要
まず最初に、配偶者控除の重点を説明します。
- 納税者に配偶者がいると
- 一定の金額が
- 課税所得から引かれる
その結果、
- 課税所得が少なくなるので
- 税金が安くなる
です。
例えば、納税者が夫である場合の配偶者は妻で、夫が配偶者控除を受けることで夫の税金が安くなります。
それでは、配偶者控除で税金が安くなる仕組みを大まかに説明します!
配偶者控除で税金が安くなる仕組み
細かいことは置いておいて、大まかな仕組みをザックリ説明します。
例えば、次のような夫婦がいるとします。
- 夫:会社員、合計所得金額500万円
- 妻:パート、合計所得金額30万円
この場合、夫は所得税で38万円の配偶者控除を受けることができます。
これにより、夫の課税所得が38万円減るので、その38万円にかかる分の所得税が減ります。
仮に夫の所得税率が20%だとすると、
- 38万円×20%=7万6千円
支払わなければならない所得税が年間で7万6千円減ります。
住民税にも配偶者控除があるから、トータルの税負担はさらに減るよ。
配偶者控除が適用される条件
ただし、どんな夫婦でも配偶者控除が適用されるわけではありません。
配偶者控除を受けるための条件を見ていきます。
条件を満たす夫婦だけが配偶者控除を受けられるよ!
配偶者控除を受けるための条件
配偶者控除の適用を受けるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下である
- 給与所得のみである場合は給与収入が1,220万円以下
- 配偶者が民法上の配偶者である
- 事実婚(内縁)、同性婚、同棲などは不可
- 配偶者が納税者と生計を一にしている
- 下のHINT欄参照
- 配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下である
- 給与所得のみである場合は給与収入が103万円以下
- 配偶者が青色事業専従者として給与を受けていない、または、事業専従者でない
- 納税者が自営業者で
- その従業員として働いていると
- 配偶者控除を受けられない
例えば、夫が会社員で妻がパートタイマーであり、2人とも会社、パート先からのみ所得を得ているとします。
その場合、次のような状況であれば、夫が配偶者控除を受けることができます。
- 夫の給与収入が1,220万円以下
- 夫婦が婚姻届を出している
- 夫婦が同じ財布で生計を立てている
- 妻のパート収入が103万円以下
高額所得者じゃない普通の夫婦の場合は、妻のパート収入が103万円以下だったらOKってことね。
注意点
注意点は以下の通りです。
合計所得金額
会社からだけ収入を得ているごく普通の会社員について超ザックリで言うと、合計所得金額とは収入から給与所得控除を引いたものです。
収入が1千万円を超えると給与所得控除は一律220万円なので、収入が1,220万円ジャストの場合、合計所得金額は1千万円ちょうどになります。
したがって、納税者本人の収入が1,220万円を超えると配偶者控除を受けられなくなります。
同様に配偶者の所得がパートなど給与所得だけの場合、収入が162万5千円以下だと給与所得控除は一律65万円なので、収入が103万円の場合、合計所得金額は38万円ちょうどになります。
したがって、配偶者の収入が103万円を超えると配偶者控除を受けられなくなります。
いわゆる「103万円の壁」だね。
配偶者の定義
配偶者とは民法の規定による配偶者、つまり、婚姻届を提出し婚姻が成立している配偶者に限られます。(民法第739条)
したがって、事実婚や同性婚などの場合、配偶者控除を受けることはできません。
渋谷区のように同性婚への取り組みを進めている自治体であっても同様です。
副業などの扱い
いわゆる「103万円の壁」は、パートタイマーなど給与所得だけを受けている場合の話です。
例えば、配偶者がフリーランスでライターをしている場合、その収入は給与所得ではなく事業所得または雑所得に該当します。
このため、仮に収入が103万円であっても給与所得控除65万円は適用されず、合計所得金額は103万円のままとなり、配偶者控除は受けられません。
また、パートをしながらブログでアフィリエイトをしている場合、アフィリエイト収益は雑所得になるので給与所得控除を受けられません。
こういった場合、次の2つの合計が38万円以下である必要があります。
- パートなど給与の収入から65万円を引いたもの
- ライターやブログなど給与以外の収入から経費を引いたもの
なお、例えば給与収入が50万円だった場合、給与以外の収入から15万円(65万円-50万円)を引くことはできません。
給与所得控除の余った分を、給与所得以外から引き算して合計所得金額を減らすことはできないってことね。
離婚・再婚・死別などの扱い
配偶者であるかはその年の12月31日時点での婚姻状況によります。
ですので、12月30日以前に離婚した場合、12月31日時点では配偶者ではないため、配偶者控除は適用されません。
ただし、その年中に配偶者が死亡した場合は、その年の配偶者控除を受けることができます。
なお、その年中に配偶者が死亡し、その後12月31日までに再婚した場合、どちらか一方の配偶者についてのみ配偶者控除を受けることができます。(2人分ということで控除額を2倍にすることはできない)
ここまで、配偶者控除を受けるための条件でした!
また、夫が単身赴任していたり、子供が進学で一人暮らしをしていても、夫の給与で家族が暮らしていたり、子供に仕送りをしている場合などは「生計を一にする」に該当します。
逆に二世帯住宅で親夫婦と子供夫婦が同居していて、お互いに収入があって生活費を別会計にしている場合は、「生計を一にする」には該当しません。
配偶者控除の控除額と節税効果
それでは次に、配偶者控除の控除額と、税金がどれくらい減るかについて見ていきます。
具体的な金額を出して説明するよ!
配偶者控除の控除額
まず、配偶者はその年の12月31日時点での年令によって次の2つに分かれます。(所法第2条、第85条)
- 70歳未満:控除対象配偶者
- 70歳以上:老人控除対象配偶者
そして、配偶者控除の控除額は所得税、住民税(所得割)それぞれ下表の通りです。(所法第83条、地法第34条、第314条の2)
所得税 | ||
---|---|---|
納税者の 合計所得金額 |
控除額 | |
控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超~950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超~1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
1,000万円超 | 0円 | 0円 |
住民税 | ||
---|---|---|
納税者の 合計所得金額 |
控除額 | |
控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 33万円 | 38万円 |
900万円超~950万円以下 | 22万円 | 26万円 |
950万円超~1,000万円以下 | 11万円 | 13万円 |
1,000万円超 | 0円 | 0円 |
納税者の合計所得金額によって控除額が変わります。また、配偶者が70歳以上であると控除額が増額されます。
なお、納税者の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除は適用されません。
給与所得だけだと年収が1,220万円を超えると配偶者控除の対象外ってことか。困るなぁ…
困るほど稼いでないじゃん!
配偶者控除の節税効果
冒頭で説明した通り、配偶者控除が適用されると課税所得が減るため、減った分にかかる税金の分だけ、払わなければならない税金が安くなります。
所得税と住民税をあわせて、税金がどれくらい減るのか例を挙げて見てみます。
仮に次のような場合、
- 夫の合計所得金額:300万円
- 妻の収入(給与所得のみ):80万円
- 夫の所得税率:10%
妻の収入が給与所得のみであるため、給与所得控除65万円を引くと合計所得金額は15万円です。
38万円以下ですので所得控除の対象となり、夫に以下の配偶者控除が適用されます。
- 所得税:38万円
- 住民税:33万円
この38万円と33万円にかかるはずだった税金を夫が払わなくて良くなります。(住民税は一律10%)
- 所得税の減額:38万円×10%=3万8千円
- 住民税の減額:33万円×10%=3万3千円
したがって、この場合の配偶者控除による節税効果は7万1千円です。
使えるお金が月々6千円増えると考えると、けっこう大きいよね。
注意点
なお、課税所得が35万円以下の場合、住民税(所得割)の支払いは免除されます。
仮に配偶者の所得が給与所得だけの場合、給与所得控除65万円が適用されるため、給与が100万円以下であれば課税所得は35万円以下となり、住民税を払わなくて良くなります。
いわゆる「100万円の壁」です。
ただしこれは、配偶者が自分の分の住民税を払わなくて良くなるというだけのことです。
例えばさきほどの例の場合、妻の課税所得は80万円ー65万円=15万円ですので、妻は住民税を払わなくて済みます。
しかし、夫の課税所得は35万円を完全に超えていますので、夫は住民税を払わなければなりません。
100万円を超えなければ夫も住民税を払わなくて済む、ではないよ!
配偶者控除を受けるための手続き
配偶者控除を受けるには所定の手続きが必要です。
以下、簡単に説明します。
給与所得者の場合
納税者(配偶者ではなく納税者本人)が会社員など給与所得者の場合、年末調整を行うことで配偶者控除を受けることができます。
勤務先から配偶者控除等申告書が渡されますので、それに必要事項を記載します。
非給与所得者の場合
納税者が自営業者など非給与所得者の場合、確定申告を行うことで配偶者控除を受けることができます。
必要な提出書類
年末調整、確定申告いずれの場合も、配偶者控除を受けるために添付、提示が必要な書類はありません。
ただし、配偶者が海外に居住している場合は、そのことを示す書類などの提出が必要です。
住民税の扱い
年末調整や確定申告を行うと、配偶者控除についての情報が税務署から市町村役場に送られます。
そして、役場で住民税の配偶者控除の処理が行われますので、役場に行って住民税分の手続きをする必要はありません。
(以上典拠:所法第120条、第190条、第195条の2、所令第262条)
配偶者控除の手続きは他の所得控除に比べて簡単だよ!
ソーシャルレンディングと配偶者控除
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの税金対策に配偶者控除を活用できるでしょうか?
ソシャレンの節税に使えるかだよ!
ソーシャルレンディングの節税には使えない
ソーシャルレンディングや不動産クラファンは投資ですので、配偶者の有無とはまったく関係ありません。
ですので、ソシャレンや不動産クラファンの節税に配偶者控除を活用することはできません。
ソーシャルレンディングの収益に要注意
むしろ配偶者控除を受ける人は、ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングの収益に注意が必要です。
配偶者の合計所得金額が38万円を超えると、配偶者控除は受けられません。
この合計所得金額にはソシャレン、不動産クラファンで得た利益も含まれます。
例えば次のような場合、
- パートでの収入:103万円
- ソシャレン収益:5万円
パートでの収入は給与所得ですので、給与所得控除65万円が引かれて給与所得は38万円になります。
しかし、それとは別にソシャレンでの儲けが5万円ありますので、この人の合計所得金額は43万円となり、配偶者控除を受けることができなくなります。
103万円の壁を超えていなくても、パート以外の収入があったらアウトってことね。
給与所得控除の余りは使えない
さらに、給与所得控除で引ききれなかった分でソシャレン、不動産クラファンの儲けを消すことはできません。
例えば次のような場合、
- パートでの収入:60万円
- ソシャレン収益:40万円
パートでの収入から給与所得控除65万円を引くことはできますが、引ききれずに余った5万円を使って、
- パートでの所得:60万円ー60万円=0円
- ソシャレン所得:40万円ー5万円=35万円
- → 合計所得金額:0円+35万円=35万円
とすることはできません。
給与所得控除で減らすことができるのは給与所得だけです。
この人の場合は次のようになり、
- パートでの所得:60万円ー60万円=0円
- ソシャレン所得:40万円
- → 合計所得金額:0円+40万円=40万円
合計所得金額が38万円を超えるので、配偶者控除の適用対象外です。
65万円は何から引いてもOKってわけじゃないんだね。
ソーシャルレンディングは計画的に
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウドファンディングで儲けすぎると、38万円をオーバーして配偶者控除が受けられなくなります。
納税者の勤務先によっては家族手当などが支給されなくなる場合もあるでしょう。
せっかく儲けたのに家計トータルでマイナスになると意味がありません。
他の収入、支出に影響しないか、ソーシャルレンディング、不動産投資型クラウドファンディングはしっかり計画を立てた上でやりましょう。
ソシャレンは計画的にね!
配偶者控除のまとめ
それでは最後に要点をまとめます。
- 配偶者控除を受けると(納税者が夫の場合)
- 夫の課税所得が減るので
- 夫が払う税金が減ります
- 配偶者控除を受けるための条件は
- 一般的なサラリーマン家庭の場合
- 夫の年収が1,220万円以下で
- 妻の年収が103万円以下です
- 103万円の壁が当てはまるのは
- 妻の収入源がパートだけの場合で
- パート以外の収入は別計算です
- 配偶者控除の控除額は
- 納税者の所得に応じて変わります
- 配偶者が70歳以上かでも変わります
- 配偶者控除の手続きは
- 給与所得者は年末調整
- 非給与所得者は確定申告
- 添付書類は不要
- 配偶者控除とソーシャルレンディング
- ソシャレン、不動産クラファンで儲けすぎると
- 配偶者控除を受けられなくなります
- ソシャレンは計画的にやりましょう
配偶者控除だけを見ているとミスを犯しがちです。
副業やソーシャルレンディングなど他の収入にも注意しましょう。
また、配偶者控除を捨ててでも配偶者が多く稼いだ方が、家族トータルでは収益が上がる場合も当然あります。
配偶者控除を受けること自体を目的にするのではなく、どうすれば一家の収益が最も多くなるか、総合的に判断して下さい。
配偶者控除だけを見るのではなく、全体を見て考えてね!
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