扶養控除とは何か?
この記事を読めば、
- ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで
- 所得税を計算する際の
- 扶養控除の扱いと
- 扶養控除を使った節税の仕方
が分かります。
子供や親を養っている世帯主の税負担を軽減するための制度です。
家族がいる人は要チェックだよ!
タップできる目次
扶養控除の概要
まず最初に、扶養控除の重点を説明します。
- 納税者に家族がいると
- 一定の金額が
- 課税所得から引かれる
その結果、
- 課税所得が少なくなるので
- 税金が安くなる
です。
例えば、夫に子供がいる場合、夫が扶養控除を受けることで夫が支払う税金が安くなります。
子供ではなく自分の親を養っている場合も扶養控除を受けることができるよ!
扶養控除で税金が安くなる仕組み
それではまず、扶養控除で税金が安くなる仕組みを大まかに説明します。
例えば、次のような家族の場合、
- 夫:会社員
- 妻:パートタイマー
- 子供:高校生(17歳)
夫が38万円の扶養控除を受けることができます。(夫の代わりに妻が受けることも可能)
その結果、夫の課税所得が38万円減るので、38万円にかかるはずだった税金を払わなくて良くなります。
仮に夫の所得税率が10%の場合、
- 38万円×10%=3万8千円
ですので、夫が払う所得税が3万8千円減ります。
所得税だけでなく住民税も扶養控除で安くなるし、子供が2人いたら扶養控除も2人分受けられるよ。
扶養控除が適用される条件
扶養控除は家族がいれば必ず受けられるわけではありません。
扶養控除が適用されるための条件を説明します。
すべての条件を満たす場合にだけ、扶養控除を受けられるよ!
扶養控除を受けられる条件
納税者が養っている親族等が以下のすべての条件を満たす場合、納税者は扶養控除を受けることができます。
- 配偶者でない
- 以下のいずれかに該当する
- 親族(下のHINT欄参照)
- 都道府県から養育を委託された児童(里子)
- 市区町村から養護を委託された老人
- 納税者と生計を一にしている
- 「生計を一」については下のHINT欄参照
- 年間の合計所得金額が38万円以下である
- 給与所得のみである場合は年収103万円以下
- 青色事業専従者として給与を受けていない、または、事業専従者でない
- 納税者が自営業者で
- 親族等がその従業員として働いていると
- 納税者は配偶者控除を受けられない
- 年齢が16歳以上
- その年の12月31日現在の年齢
- 他の納税者の扶養控除対象となっていない
ややこしくて分かりにくいと思いますが、一般的な家庭の場合、
- 16歳以上の子供や
- 自分の親を養っていて
- 子や親の合計所得金額が38万円以下
であれば、世帯主が扶養控除を受けられると考えて下さい。
所得が高くない家族を養っていればOKなわけね。
合計所得金額
合計所得金額とはザックリ言うと所得控除をする前の各所得の合計額です。
勤務先からだけ収入を得ている会社員やパートタイマーの場合、合計所得金額は「年収ー給与所得控除」と考えてかまいません。
なお、副業やブログ運営、ソーシャルレンディングや株などで利益を得ている場合、それらの所得も合計所得金額に含まれます。
例えば、次のような場合、
- 給与の年収:100万円
- 給与所得控除:65万円
- ソーシャルレンディング収入:20万円
合計所得金額は100万円ー65万円+20万円=55万円です。
38万円を超えますので、扶養控除の対象外となります。
ソーシャルレンディングやアフィリエイトの収入も含めて、合計所得金額が38万円以下じゃないといけないってことか。
扶養親族が年金受給者である場合
親など年金受給者が扶養親族となる場合の注意点です。
年金収入は雑所得に区分されますが、公的年金(厚生年金、国民年金など)の雑所得は以下の式で算出されます。
- 公的年金の雑所得額=年金収入額ー公的年金等控除額
そして、公的年金等控除額は年齢によって以下の通りです。
- 65歳未満:70万円
- 65歳以上:120万円
上述の通り、合計所得金額が38万円以下であれば扶養控除の対象となります。
したがって、年金受給者で公的年金以外に収入がない場合、年間の年金収入額が以下の通りであれば扶養控除の対象となります。
- 65歳未満:108万円以下
- 65歳以上:158万円以下
年金受給者である親に株の配当金やアパート収入などがあると、それらも合わせた金額が38万円以下じゃないとダメだよ!
その他の注意点
扶養控除が受けられる条件について、その他の注意点は以下の通りです。
配偶者は対象外
配偶者は親族ですが扶養控除の適用対象外です。
ですので、16歳未満の子供だけを持つ夫婦は扶養控除を受けることはできません。
配偶者控除を受けられるから扶養控除は対象外ってことね。
同性婚や事実婚の連れ子などの扱い
同性婚や事実婚は所得税法では婚姻と認められません。
したがって、同性婚や事実婚の配偶者の子供(連れ子)や親などは納税者の親族には該当せず、扶養控除を受けることはできません。
一人暮らしをしている学生の扱い
一人暮らしをしている学生であっても、親から仕送りを受けて生活している場合は「生計を一にする」に該当するため、扶養控除の対象となります。
ただし、合計所得金額が38万円(給与収入だけの場合は年収103万円)を超えると対象外となります。
勤労学生控除を受けると親の税負担が増える場合があるので、事前に親に相談しようね!
年齢が16歳以上
基準となるのは12月31日時点の年齢です。(所法第85条)
ですので、誕生日が12月31日の場合も扶養控除の適用対象となります。
複数人数で扶養している場合
例えば、実家にいる親の生活費を兄弟で負担している場合、扶養控除の対象となります。
ただし、扶養控除を受けられるのは兄弟の内の1人だけです。(所法第85条、所令219条)
例えば、兄弟で半額ずつ控除を受けることはできません。
「他の納税者の扶養控除対象」について
例えば、子供を夫の扶養親族として夫が扶養控除を受けている場合、子供をさらに妻の扶養親族として妻が扶養控除を受けることはできません。(所法第85条、所令219条)
つまり、1人の扶養親族に対して扶養控除を二重取りすることはできないということです。
ただし、長男を夫の扶養控除、次男を妻の扶養控除のように、夫婦で扶養を分けることはできます。
夫婦それぞれの年収や税率もふまえて、いろいろシュミレーションして決めるのが良さそうね。
「血族」は本人と直接に血がつながっている人(養子を含む)です。「姻族」は結婚した相手の血族です。例えば、夫の姻族は妻の両親や祖父母、兄弟などです。
また、夫が単身赴任していたり、子供が進学で一人暮らしをしていても、夫の給与で家族が暮らしていたり、子供に仕送りをしている場合などは「生計を一にする」に該当します。
逆に二世帯住宅で親夫婦と子供夫婦が同居していて、お互いに収入があって生活費を別会計にしている場合は、「生計を一にする」には該当しません。
扶養控除の控除額と節税効果
次に扶養控除で受けることができる控除額と、それによる節税効果を見ていきます。
扶養控除で税金がどれくらい減るか、具体的に見ていくよ!
扶養控除の控除額
扶養控除の控除額は扶養親族の年齢などによって、扶養親族1人あたり以下の通りです。(所法第84条、措法第41条の16、地法第34条、第314条の2)
扶養親族の状況 | 所得税 | 住民税 | |
---|---|---|---|
15歳以下 | 0円 | 0円 | |
16~18歳 | 38万円 | 33万円 | |
19~22歳 | 63万円 | 45万円 | |
23~69歳 | 38万円 | 33万円 | |
70歳以上 | 納税者と非同居 | 48万円 | 38万円 |
納税者と同居 | 58万円 | 45万円 |
扶養親族が2人いたら2人分、3人いたら3人分控除されるよ。
「同居」について
扶養親族が70歳以上の場合、納税者と同居していると控除額が上積みされます。
この「同居」の判断基準は以下の通りです。
- 病気治療のために入院している場合:期間が1年以上に渡る場合であっても同居と見なす
- 老人ホームに入所している場合:同居と見なさない
また、同居の相手は以下のいずれかです。(措法第41条の16)
- 納税者本人
- 納税者の配偶者
したがって、例えば納税者が単身赴任していて、納税者の70歳以上の親が納税者の妻と同居している場合、控除額上積みの対象となります。
高齢者と同居すると納税者の負担が増すので、税負担を軽くするってことか。
扶養控除の節税効果
それでは、扶養控除で実際にどれくらい節税できるか、例を挙げて見てみましょう。
次のような家族がいたとします。
- 夫:世帯主
- 妻:配偶者、同居
- 子:20歳、別居、合計所得金額20万円
- 親:75歳、同居、合計所得金額0円
妻は配偶者ですので扶養控除は受けられません。(配偶者控除または配偶者特別控除は可能)
大学生の子供が地方で一人暮らしをしていますが、仕送りを受けていて扶養控除の対象だとします。
この場合、夫は子と親を扶養しているとして、次のように扶養控除を受けることができます。
- 子の分
- 所得税:63万円
- 住民税:45万円
- 親の分
- 所得税:58万円
- 住民税:45万円
したがって、夫は所得税で121万円、住民税で90万円の扶養控除を受けることができます。
その分にかかる税金を払わなくて良くなりますので、仮に夫の所得税率が20%(住民税は一律10%)だとすると、
- 所得税の減額:121万円×20%=24万2千円
- 住民税の減額:90万円×10%=9万円
扶養控除による節税額は合わせて33万2千円となります。
扶養控除って大きいのね。
扶養控除を受けるための手続き
扶養控除を受けるために必要な手続きなどを説明します。
手続きをしないと扶養控除を受けられないよ!
給与所得者の場合
扶養控除を受ける納税者(さきほどの例では夫)が会社員など給与所得者である場合、年末調整を受けることで扶養控除を受けられます。
年末が近づくと勤務先から「給与所得者の扶養控除等申告書」が配られますので、これに必要な内容を記入して提出します。
なお、ソーシャルレンディングの分配金など給与所得以外の所得がある場合は、年末調整とは別に確定申告が必要です。
非給与所得者の場合
納税者が自営業者やフリーランスなど給与所得者ではない場合、確定申告を行うことで扶養控除を受けられます。
会社員や派遣社員など給料をもらっている人は年末調整、副業の収入がある人や自営業の人は確定申告だよ。
必要な提出書類
扶養控除を受けるにあたって、年末調整、確定申告ともに提出や添付が必要な書類はありません。
ただし、子供が留学しているなど扶養親族が海外に居住している場合は、子供に生活費を海外送金していることが分かる書類などが必要です。(所法第120条、所令第262条)
必要な提出書類の例外
納税者が実家に住む親の生活費を負担している場合、生計を一にしているので扶養控除の対象となります。
この場合、生活費を負担していることを証明する書類などの提出は、法律では義務付けられていません。
しかし、不正防止の目的で銀行の振込票などの提出を勤務先から求められる場合があります。(TA No.1180)
住民税の扶養控除申請
年末調整か確定申告を行うと、住民税の扶養控除の処理が自動的に行われます。
したがって、市区町村役場などに行って住民税の扶養控除の申請などを行う必要はありません。
ソーシャルレンディングと扶養控除
ソーシャルレンディングや不動産投資型クラウファンディングの節税に、扶養控除を活用できるか見ていきます。
家族がいる人はソシャレン、不動産クラファンに要注意だよ!
ソーシャルレンディングの節税には使えない
扶養控除は養う家族がいる場合に税負担を軽くするものです。
投資であるソーシャルレンディング、不動産投資型クラウドファンディングとは何ら関係がありません。
ですので、ソシャレン、不動産クラファンの節税に扶養控除を活用することはできません。
ソーシャルレンディングの分配金も所得
扶養控除を受ける上で重要な条件がこちらです。
- 扶養親族の合計所得金額が38万円以下
この合計所得金額にはソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの分配金も含まれます。
また、給与所得控除で引くことができるのは、給与収入からだけです。
ソシャレンの分配金100万円から給与所得控除65万円を引いて、所得金額を35万円とすることはできません。
ソシャレンの分配金は給与じゃないから給与所得控除で引けないのね。
ソシャレンで儲けすぎると扶養から外れる
例えば、大学生の子供がアルバイトとは別に、親に内緒でソーシャルレンディングをしていたとします。
そして、ある年の収益が以下のようだった場合、
- アルバイト収入:60万円
- ソシャレン分配金:50万円
アルバイト収入は給与所得控除65万円でゼロにできますが、ソシャレンの分配金は50万円のままです。
したがって、子供の合計所得金額は50万円となり、扶養控除の適用条件を満たさなくなります。
親の税金が増える
この結果、この子供が20歳の場合、親は以下の扶養控除を受けられなくなります。
- 所得税:63万円
- 住民税:45万円
したがって、今まで払わずに済んでいたこれらにかかる税金を、親が新たに払わなければならなくなります。
仮に親の所得税率が20%の場合、
- 所得税の増額:63万円×20%=12万6千円
- 住民税の増額:45万円×10%=4万5千円
親が払う税金が17万1千円増えることになるのです。
ソシャレンで50万円も稼いだんだから大したものだけど、親にとっては困った子供だよね。笑
家族でコンセンサスを取っておこう
子供が稼いだ50万円には20%の税金がかかりますので、手取りは40万円です。
親の税金17万1千円を引いても22万9千円ですので、家族トータルでは収益は増えています。
扶養控除を受けることが常に最もオトクだとは限りません。
ただ、親の勤務先で家族手当がある場合がありますし、子供が健康保険料を払う必要が出る場合などもあります。
ですので、子供が高校生や大学生であっても、こういったお金の話については家族で情報を共有しておくべきでしょう。
子供のうちからお金の勉強をさせておくことは、これからの時代で大切なことだよ!
扶養控除のまとめ
扶養控除の要点について最後にまとめます。
- 扶養控除を受けると(夫が受けた場合)
- 夫の課税所得が減るので
- 夫が払わないといけない税金が減ります
- 扶養控除を受けるための条件は
- 納税者が自分の16歳以上の子供や親と
- 生計を一にしていて
- 子供や親の合計所得金額が38万円以下
- 扶養控除の控除額は
- 子供や親の年齢などで変わります
- 所得税:38~63万円
- 住民税:33~45万円
- 扶養控除を受けるための手続きは
- 給与所得者:年末調整
- 非給与所得者:確定申告
- 提出書類:原則不要
- 子供や親のソーシャルレンディングに注意
- ソシャレン、不動産クラファンの収益も
- 合計所得金額に含まれるので
- それらも足して38万円を超えると
- 世帯主が扶養控除を受けられなくなる
- 家族間で情報共有を!
扶養控除は養う家族が多い人にとって非常に頼りになる制度です。
子供の一人暮らしなど同居していなくても適用されるケースもあります。
内容をしっかり理解して有効に活用しましょう。
子供が知らない間にソシャレンで大儲けしていないように注意してね!笑
コメント